オーバーロード ~死を司る者~   作:かみか宮

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11.ニグン、死者の館へ

アインズとクロムがナザリックの外で冒険者をやっている間、ナザリックでは……

 

「皆の者、この者が新しくナザリックの僕となった者です」

 

「ど、どうも」

 

アルベドがアンデッドとなったニグンを紹介する。実のところを言うと、僕や守護者達はニグンの事を認めたくはないが、ニグンを転生させたのは至高の御方であられるクロムだ。至高の御方の所有物にはケチをつける訳にはいかない。

 

「ニグン……だったかしら?」

 

「は、はい、そうですアルベド様」

 

「あなたはクロム様に命令されたことをなさい。案内は……ユリ、あなたがしてちょうだい」

 

「かしこまりました」

 

眼鏡をかけたメイドが答える。

 

「それでは各員、持ち場に付きなさい」

 

そう言うと、集まっていた僕達はそれぞれの持ち場へと向かった。ニグンはユリに「こちらです」と言われ、その後を黙ってついて行った。話によると、このナザリック内で転移が出来るのは至高の御方と現在は一部の守護者だけだとか。

地下へ地下へと降りていくと、館が見えてきた。

 

「あちらがクロム様の管理されておられる死者の館になります」

 

「死者の館?」

 

「ええ、レイス系のモンスターを大量に配置したクロム様の館です。クロム様は基本的にこちらの館で過ごしていました。そしてあなたの仕事はこの館の管理だとアルベド様から伺っております」

 

「あ、ああ。クロム様からの直々のご命令…です」

 

「そして……彼らはあなたの配下として使えとのことです」

 

ユリが指さす方向には、死霊(レイス)とゴーストが一体ずついた。

 

「彼らは特別なモンスターです」

 

「特別……?」

 

「ええ、この館では至高の御方が作られたNPC以外は会話はできません。しかし、彼らは会話が可能です。もう一人喋れるモンスターはいるのですが……彼はあなたの配下ではありませんので」

 

「そ、そうですか」

 

と、言いつつもニグンは冷や汗を流していた。ユグドラシルでは弱い部類の二体だが、この世界では十分の強さを誇っている。だからこそ、ニグンはこんな強いモンスターまでこの墳墓にはいるのかと驚愕していた。

 

「さあ、自己紹介をなさい」

 

「はい、私はシュルツ様の部下のレレイと申します」

 

「私はドゥルガー様の部下、ゴートです。これからよろしく」

 

「わ、私はニグン・グリッド・ルーインだ。よ、よろしく」

 

「では、私は他に仕事があるので失礼します」

 

そう言ってユリは更に下の階層へと降りて行った。

 

「ではニグン、この館について教えよう」

 

「よ、よろしく頼む」

 

「この館は我らが主、クロム様がお作りになられた館。クロム様はアンデッドでありながらもレイスに似た力を持っておられます。そこで作られたのがこの館です」

 

「この館には私とレレイと同じ死霊(レイス)やゴーストが館内を徘徊しております。通常時は侵入者を探知すると迎撃行動を行います。この館には私達以外にも他のモンスターも存在していますが、基本的には私達のような下位のモンスターは一階しか徘徊を許されておりません」

 

「で、では二階は?この館は外見だけだと四階まであるようだが……」

 

「ええ、四階と地下があります。二階には蒼褪めた乗り手(ペイルライダー)が徘徊しております。そして三階には私達の上官であり、クロム様が直々に創造していただいたシュルツ様とドゥルガー様が待機しております。その他にも、具現化した死の神(グリムリーパー・タナトス)が5体、待機しています。現在はシュルツ様はクロム様と行動中、ドゥルガー様は空中からナザリックの半径5km以内を警戒中です」

 

「そして最上階、つまり四階には我々の主、クロム様がおられます。クロム様は最上階にて侵入者を待つという立場です。我々の目的はクロム様の元まで侵入者を行かせないことです。そして地下には、万が一、万が一クロム様が倒された時、地下へと続く階段が三階に現れるのですが、我々は地下に入ることを許可されておりません。話によると、この地下には裏階層守護者が待機しているようです」

 

「そ、その方の姿を見たことは?」

 

「……ありません。姿を知っておられるのは至高の御方と階層守護者の方々のみです」

 

「そ、そうか……それで私は何をすればいいと思う?」

 

「そうですね。一階と二階の管理をすればよいかと。三階から上は具現化した死の神(グリムリーパー・タナトス)の領域ですから」

 

「では入りましょう」

 

レレイとゴートが扉を開けると、中では死霊(レイス)やゴーストが飛び回っていた。モンスター達はこちらを見ると、手を振ってきた。

 

「全員話は聞いております。まあ、言葉は理解できるんですが喋れないので、私達が代弁しております」

 

「ではニグン殿、お入りください」

 

「……ああ」

 

ニグンは館に入ると、その内装の豪華さに言葉が出なくなった。天井にはシャンデリアがあるし、壁にはさぞ有名な画家が描いたのであろう名画とも言える作品が飾ってあった。

館の中は広く、ダンスホールを思わせられる。一階ではレレイやゴートが言った通り、死霊(レイス)やゴーストが徘徊していた。たまに壁の中から現れるのには驚かされる。しばらくすると階段を見つけた。館の中は無駄に個室が多く、しかも中にはハズレと書かれた紙が壁に貼り付けられていた。二階へ上ってみると……蒼い馬に乗った禍々しい騎士が徘徊していた。文献でしか見たことがないが、蒼褪めた乗り手(ペイルライダー)だと直感的に分かった。それに、このモンスターは自分が使役していた威光の主天使(ドミニオン・オーソリティ)よりも強いということも理解した。

 

「ニグン、ここでは彼ら蒼褪めた乗り手(ペイルライダー)が守ってくれている」

 

「ニグン殿は彼らと同じ強さ、もしくは劣る……いえ、クロム様が転生させたのですから多分彼らの強さを優る可能性が高いですね」

 

そう説明してくれた。

 

「で、では三階に配置されている具現化した死の神(グリムリーパー・タナトス)と私だと……」

 

「当然のことだが、向こうの方が上だ」

 

「ええ、それは否定できませんね」

 

「そ、そうか……それ程までに凄まじい強さを持っているのか……ひ、一目見たいんだが……」

 

「……ちょっと待っててくださいね」

 

そう言ってレレイが天井をすり抜けて三階へと行った。

 

「まったく……ニグン、言っておくが、私とレレイはあまり強くはない。だが、この上の階にいる具現化した死の神(グリムリーパー・タナトス)を指揮する奴は私達の事をあまり好いていないんだ」

 

「つまり?」

 

「つまり……」

 

上からドォン!という激しい音がした。そして天井をすり抜けてレレイが現れた。

 

「…無理無理。死ぬって」

 

「やっぱりダメか」

 

「いや、いいって言ってたけど……一対一で戦うのなら上がって来いだそうだ」

 

「「……」」

 

「言っておくけど、私達いても何の役にも立たないからね?」

 

「うむ、その通りだな」

 

「……やめておく」

 

「それが賢明だと思います」

 

「それでは館を掃除するか」

 

こうしてニグンは死者の館の臨時管理人となったのだった……。

 

 

 

 

 




ちょっと番外編風にしてみました!
いやー、未だにクロムをどうするか迷ってて……あ、安心してください!この話を書いている間にどうするかは決めましたから!
よって次の話はちゃんと本編ですよー!!

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