オーバーロード ~死を司る者~   作:かみか宮

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10.復讐

「なるほど……私達がいない間にそんなことがあったんですね。わかりました。その二人をすぐに八つ裂きにして参ります」

 

「いいから、それは俺がやるからさ。シュルツとクレマンティーヌは冒険者を「アタシクロム様がやらないなら冒険者なんてやんないよ?」「私もですね」……まあ、いっか。今はどうやってあの糞野郎を八つ裂きにするか考えないとな」

 

シュルツとクレマンティーヌが森から戻ってから、二人がいない間に起きたことについて説明した。今のクロムはかなりイライラしている。その元凶は先程の神官と冒険組合長だった。

 

「真正面からの特攻はいかがでしょうか?」

 

「アンタさ……クロム様の配下って言う割には頭悪いよね」

 

「何ですって?」

 

「こういうのは人気のないところにおびき寄せるのよ。そしてそこでじっくりといたぶるのよ。アタシって拷問大好きなのよね~。拷問ならアタシにお任せあれ」

 

「いやいや、悲鳴でバレるでしょ?それなら一番適任なのは俺だな。というわけで、決定な?さーて、ジャック達から貰ったウィルを売るとするか」

 

こうしてクロム達は夜になるまでウィル・オ・ウィスプが入ったランタンを帝国までの道中で売り続けたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして深夜、クロムは行動を開始していた。帝国の中には透明化の能力が備わっている鎌を装備したことですんなりと入れた。そして目的の人物を探し出す。どうやらどちらも別の場所にいるみたいだった。

 

「さてと……生まれてきたことを後悔させてやろうじゃねーか」

 

今のクロムは人間の身体ではなく、アンデッドの身体だ。つまり、今のクロムは全力を出せるということだ。クロムは笑いながら目標のいる場所へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……やっぱり一仕事した後の酒は格別だな」

 

神官は宿で酒を飲んでいた。男の楽しみの一つは、仕事をした日の夜、寝る前に酒を飲むことだ。酒を飲むことでその日の疲れを癒しているのだ。彼はほとんどが単独行動だったが、今日は偶然冒険者組合の組合長と仕事した。

組合長も治癒系の魔法を使えるので、神殿の方から頼まれたと言っていた。男は自分一人で十分だと思っていたが、その手際の良さには驚かされた。そんなこともあって組合長と仲良くなった。一緒に飲まないか?と誘ったのだが、仕事があるからダメだと断られてしまった。

 

「それにしてもあの男……ふふっ、ざまあなかったな」

 

帝国まで道中で遭遇したあの男。プレートは銀だったが、法を犯すのはよくない。冒険者の資格をその場で剥奪されたのには笑いをこらえるのが大変だった。

 

「はははっ、今頃ひもじい思い出もしているのかな?それもこれも自分が悪いんだがな」

 

そう言って酒を口の中に含む。酒を口の中に含んだと同時に、部屋の扉が独りでに開いた。

 

「え?」

 

扉の向こう側には誰も立っておらず、室内なので風で開く訳もない。ではどうして扉が開いたのか?男は身の危険を感じた。すぐさまベットの上に置いてある杖を取ろうとしたが、

 

「残念、キミの探し物はそこにはありませ~ん」

 

「なっ!?」

 

ベッドの上に置いてあった筈の杖はそこには無く、声のした方向を見るとマスクを付けた男が杖を持っていた。

 

「貴様……一体何者だ!?」

 

「あー、別に気にしなくていいよ。ただの死神だからさ」

 

「死神……だと?」

 

「そ、死神。初めて見た?」

 

「貴様……何をふざけて「ふざけてないが?」ッ!?」

 

男は身体が震えていることに気づいた。寒くて震えているのではない、恐怖を体感した結果身体が震えてしまったのだ。それと同時にかなしばりにかかったかのように動けなくなった。

 

「ははっ、さっきまでの威勢はどうしたんだ?」

 

「な、なんの話だ」

 

「さっきこの部屋で言ってたでしょ?ある冒険者について」

 

「き、貴様には関係ないだろ!!」

 

「ところがどっこい。関係あるんだよな。だってその冒険者……俺だもん」

 

「は?」

 

男は目の前に立つマスクを付けた男の体格を見るが、道中で見かけた冒険者とは身長は似ているものの、体つきは全く違う。

 

「あ、言っておくが、あれは仮の姿だからな?こっちが本当の俺」

 

「つ、つまり貴様は魔法詠唱者(マジック・キャスター)なのか!?」

 

「違う違う。だから死神だって。まあ、そんなことどうでもいいか。今から死ぬ奴に話して意味ないし」

 

「ま、待ってくれ」

 

「ヤダ♪」

 

男の視界が変わる。今まで真っ直ぐに目の前の男を見つめていた筈なのに、次第に斜めになっていき、最終的には逆さになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日はこれ位にしておくか」

 

バハルス帝国の冒険者組合、組合長であるギリアム・カーターは残っていた書類の整理をしていた。今日は珍しく指名の依頼が来て驚いたが、いつも通り順調だったと思う。それにしても帝国に戻る時の道中遭遇した冒険者チーム、『オーバーキル』。ギリアム自身は彼らには見どころがあると思っていたのだが、チームのリーダーが禁止事項を行ってしまった。その為、冒険者としての資格を剥奪という結果になってしまったわけだが、惜しいことをしたと思っている。

 

「私一人ならまだ見逃せたが……他の目撃者がいるあの状況ではどうすることもできなかったな。彼らには本当に申し訳ないことをしたな」

 

ギリアムは人を助けることに誇りを持っている。しかし、禁止事項を破る訳にもいかない。彼も金銭を貰わないで治癒することは禁止事項なのは知っている筈なのにまったく気にせず治癒をしていた。

 

「組合長とは本当に大変だな。……ん?」

 

何処かで扉が開く音がした。今この場にはギリアム以外は誰もいないはずだ。受付嬢は数時間前に帰っている。誰か忘れ物でもしたのか?とも思ったが、足音がこちらに近づいてきているのが分かった。ギリアムは警戒する。今の時間帯に冒険者組合を訪れる者はいない。つまり、侵入者。何が目的かは分からないが、用心するに越したことはない。ギリアムは杖を構える。

足音はギリアムのいる部屋の前で止まった。いつでも攻撃は出来る。かかってこいと言わんばかりに侵入者を待つ。部屋の扉が少し開いた瞬間、ギリアムは魔法を唱えた。

 

「《電撃(ライトニング)》!!」

 

貫通性のある魔法で先制攻撃をする。《電撃(ライトニング)》は扉を貫通している。つまり、扉の向こう側にいる侵入者にも当たっている筈だ。

 

「そこの者、抵抗は無駄だ」

 

「……いやー、いきなり攻撃魔法とはビックリしたわー」

 

「今のうちに降伏すれば治療もしてやろう」

 

「治療?いやいや……アレ位の魔法で俺の身体に傷がつくとでも思った?残念でした!!」

 

扉の向こう側にいる侵入者が扉を蹴り飛ばした。扉はギリアム目掛けて飛んできたが、すかさず魔法で扉を破壊した。

 

「へぇー。なかなか反応がいいね。逸材だ。まっ、うちの部下には及ばないがな」

 

「ほぅ、それはさぞ優秀なのだろうな……ッ!アンデッド……だと?」

 

「ご名答。俺はアンデッドであり、冒険者でもあるのさ」

 

「馬鹿な……どうやって冒険者に……いや、どうやってこの帝国内部へ侵入したんだ?」

 

「簡単な事、真正面から堂々とさ」

 

「冗談を言うな。門の前には衛兵が立っているんだぞ?アンデッドを容易く通すわけがない」

 

「まあ、真正面からと言ってもちょっとした裏技使ってるからなー。って、そんな話はどうでもいいんだよ。これ、アンタにプレゼントしに来たのさ」

 

「プレゼント……だと?何の接点もないのにか?」

 

「接点が無い?おいおい冗談キツイな。今日会ったって言うのにもう忘れてるし…まっ、気にしてないけどな」

 

(今日会っただと?)

 

ギリアムは必死に思い出すが、今日はアンデッドどころかモンスターにすら遭遇していない。

 

「受け取りな」

 

アンデッドが何か入った箱をこちらへと投げてきた。ギリアムはちゃんとキャッチした。ギリアムはアンデッドを見ると、向こうはどうぞと言わんばかりにプレゼントを開けるのを待っていた。ギリアムはアンデッドに警戒しながらもプレゼントを開ける。箱の中に入っていたのは………今日一緒に依頼をこなした神官の頭だった。

 

「うわあぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

ギリアムは神官の首を放り投げる。首は地面に落ち、コロコロと転がり、アンデッドの足元まで転がって行った。

 

「ひでぇな……首だけだけど一緒に仕事した仲間の首を投げるなんてかわいそうだなコイツ」

 

「き、貴様は一体誰なんだ!!」

 

怯えつつも尋ねる。アンデッドはニヤリと笑ったのかまでは分からないが、先程よりも機嫌がいい。

 

「よくぞ聞いてくれた。ある時はアンデッド……そしてまたある時は冒険者……その正体は!今この帝国で話題になっている冒険者チーム『オーバーキル』のチームリーダーのクロームさんだ!!」

 

「なっ!!」

 

「驚いた?驚いたよな!まっ、実際本来の姿はこっちなんだけどな」

 

「じゃ、じゃあここに来たのは私を殺す為か!」

 

「まあ、最初はそのつもりだったよ?でもさー、殺してばっかじゃメリットなんてないよね?俺はメリットがある方が好きなんだよ。そこでだ、アンタを殺さない代わりに……俺達の手駒になってもらおうと思ってね」

 

「そ、それは……ガハッ!!」

 

ギリアムが喋るよりも先にアンデッドの手がギリアムの腹に突き刺さる。そして開いた穴から体の中に何かが入ってきたのが分かる。

 

「ぐッ!……《治癒(ヒール)》!」

 

開いた穴を治癒し、

 

「今何をした!」

 

とアンデッドに問う。アンデッドは楽しそうに答えた。

 

「今お前の中に特殊な蟲を入れたのさ」

 

「蟲だと?」

 

「ああ、寄生虫の一種でな。特定の言葉を設定して対象に寄生させ、対象が設定した言葉を喋った瞬間、内部から肉を食い散らかして誕生するのさ」

 

「なッ!」

 

「ちなみに設定した言葉……教えて欲しい?教えないけどな!まあ、ヒントは出しておくぜ。ヒントは……今日に関すること、俺に関する事だ。おっと、コレは正解を言っちゃったパターンか。失敗したなー」

 

ギリアムはガチガチと歯を鳴らしていた。それにギリアムの方からアンモニア臭も漂ってきた。

 

「それじゃあな、ギリアム組合長。くれぐれも今日の事をうっかり話さないようにな。話した瞬間……どうなるかは言わないが、まあ注意しておけよー」

 

そう言ってアンデッドは去って行った。

一人残されたギリアムは涙を流していた。どうして自分がこんな目にあったのか、どうして自分だけがこんな目に合わなければならないのか。ギリアムはその日、内部から食い破られるのではないかという恐怖で眠ることが出来なかった……。

 




という訳で、神官死亡、組合長奴隷化、完了です。
さて、次のお話ではクロムさんは冒険者に戻っているのか……気になるでしょ?
もしかすると明日も投稿するかもですよ!!

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