リアスになって   作:浅紙弥

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お久しぶりです。

この小説、タブレット投稿なんですが、執筆途中にタブレットが、フリーズしました。

この時、私の頭の中の構想が、フォーマットされかけました。

パソコンいりますね。





堕天使の捜索

「ああもう、いったいドコにいるッスか!?」

 

 堕天使ミッテルトは、半ば叫びながら駒王町の空を飛び回る。

 自分の仲間たちも、皆血眼になって一人の少女を捜していた。

 自慢の肩まで流れる金髪や、黒を基調にしたゴスロリ服がバサバサと激しく風に煽られたままの姿でいることから、相当焦っているのが見てとれる。認識阻害の魔法を掛けていから、人目を気にしなくて済む。

 背中で羽ばたく鴉羽色の翼は、風の流れを強引に引き千切りながら、沈みつつある陽の光を浴び、暗く輝いている。

 

 今日中に届くはずだったアーシア・アルジェント(荷物)が夕方になっても教会に現れない。

 偉大な堕天使たる自分たちが、出世に使う道具として、この駒王町にある棄てられた駒王教会で到着を待っていたというのに、一向に現れない。折角、ヨーロッパにいる下等生物たる人間たち、教会から追放されたはぐれ聖職者を使って、アーシアをこの駒王教会に赴任するよう根回ししたというのにである。

 ミッテルトも写真でしか見たことがないが、人間にしてはそこそこ美しい女だったように思う。全体的に柔和な雰囲気を醸し出し、見る者の心を癒すような笑顔。質素な教会暮らしが長い割には、年相応に育った瑞々しく、仄かに(おんな)の匂わせる肢体。ほんの少しだけ慎ましやかな自分の身体と比べてしまい、舌打ちしてしまいたくなる。

 列車のダイヤの遅れではない、列車事故やその類いの報告は無かった。一応今朝、空港に着いたと報告があったらしい。

 道に迷っている、あるいはアーシアに劣情を懐いた人間によって拐われているのか。

 だが、考える間も惜しいと言わんばかりに、ミッテルトは、夕暮れに染まる空を疾走した。

 

 

 聖女アーシア・アルジェント、もともとはイタリアの片田舎にある教会でシスターとして勤めていた少女だ。

 彼女は、毎日の畑仕事などで出る怪我人の世話をしていた。

 心優しい彼女の看病は献身的で、温かみに溢れていたと言う。

 その姿勢は、その土地の人々に受け入れられ、彼女のいる教会には、いつも人で溢れていたと言う。

 “怪我をした方々が早く元気になりますように”

 “彼らを抱きしめて、その苦しみや悲しみを癒やしてあげたい”

 アーシア・アルジェントが抱き続ける祈りであった。

 その祈りが、ある日突然叶ったのだ、なんの前置きもなしに。

 手をかざし、祈るだけで相手の傷を癒す奇跡を彼女は身に付けたのである。

 “聖母の微笑み(トワイライト・ヒーリング)”と呼ばれる神器を発現させたのだ。

 彼女が、聖女として有名になるのに然程時間はかからなかった。

 他者の傷を癒す、これ程判りやすい神の奇跡はそうないだろう。

 “アーシア・アルジェントの力は、純粋な信仰に神が与えた奇跡である”

 教会から正式に発表され、聖女と認定された彼女は、求められるまま、多くの信者を癒す日々を送ることになる。

 

 

 さて、レイナーレやミッテルト、堕天使にとって重要なのはここからである。

 アーシアが、ある日、深手の傷を負って死にかけていた悪魔を、神器の力で、“聖母の微笑み”で、癒やしたのである。

 神の、人類の敵であると教えてきた教会にとっての裏切り行為だ。だが、レイナーレたち堕天使にとって、そんなことはどうでもよかった。

 神の敵を癒す、神が人間に与えた力。

 しかも、その力を神に仕える者が保有している事実。

 皮肉が聞いていて、神も残酷な真似をする、と笑えたものだが、それよりもだ。

 人間も悪魔も癒やせるその神器なら、神に仕えていた自分たち堕天使を癒やす事ができるはずだ。

 この力を手に入れれば、堕天使勢力内での地位の向上は確実である。

 なにせ、治療能力を有する神器自体が希少な上に、今までの物と違い、自分たち堕天使の治癒もできる神器など、これまで存在しなかったのだ。

 幸い、魔女として教会を追放されたアーシアには、後ろ楯がない。

 ならばこちら側に引き込んで、あとは適当な所で神器を抜き取ってしまおう。

 神器を抜き取られた人間は死んでしまうが、上位種族たる自分たちの生け贄になれるのだから、光栄に思うがいい・・・・・・。

 

 

 ミッテルトたちの作戦は、巧く事を運んでいた。

 この駒王町には、数年前に放棄された教会がある。

 アーシアをここに呼び寄せ、教会で人知れず神器奪取の儀式を行う手筈だった。

 だが、肝心のアーシア本人が来ていないのだ。

 堕天使たちの怒りと焦りも無理もない。

 

 

 

 ミッテルトが、その光景を見つけたのは、全くの偶然だった。

「うぇ・・・ちょっ・・・・・・ナンすか、あれ!なんなんスか!?」

 とある武家屋敷の上空を飛んでいると、眼下に庭先で、巨大な十字架に張り付けにされているアーシア・アルジェントの姿を発見したのだ。

 自分たちが準備していたよりも遥かに、複雑化された魔方陣がそこかしこに描かれており、アーシアを中心に、様々な紋様が浮かび上がっている。

 

 自らの尾を食らう蛇。太陽と月、それらを呑み込もうとする獅子。三つ目の天狗。双頭の蛇。黄金の獣。女神と彼女を守る刹那。価値なしの魔刃。暴食の魔群。天使。魔鏡。

 魔方陣の意味も解らないのに、それを見た途端、幻覚が見えた。

 それら全てが、自分の魂を侵しているかのようだ。

「なんか、ヤな感じッスね。早くアーシアを連れ出して、教会に戻らなきゃならないんスけど・・・」

 

 直ぐにでも乗り込んで、アーシアを拐ったであろう家の住人たちを皆殺しにしてやりたかった。

 ミッテルトが、その凶行に走らなかったのは、アーシアの周りに魔方陣を刻みこむ少女の姿を視認してしまったからだ。

 見た目は、まるで普通の少女だ。胸元から下腹部にかけて、大きく開かれた黒のゴスロリ服。まるで服として機能していない。ただの露出狂の類いに見えるが。

 それは、絶対的な力の、存在する生命としての格の差を感じさせた。

 あの少女は敵に出来ない・・・いや、敵にすらなれない、と。

 

「あー、無理ッスね。ウチらが束になっても余裕で、瞬殺されるッスね」 

 有り難い事に彼女はこちらの存在に気付いても、無視してくれている。

「今のうちに逃げるッスね。レイナーレ様にも報告しなきゃいけないし・・・・・・こりゃ、計画の練り直しがいるッスね」

 ここは一時退却だ。

 ミッテルトが、この場所から離れようと決めた、その時だった。

 背後から声を掛けられたのは・・・。

 

「ごきげんよう、堕ちた天使さん?」

 背筋が凍った。

 からかうような声音、しかしこの声には、温度がなかった。

「あっ・・・・・・いや・・・」

 ゆっくりと振り返る。

 

 そこには、腰まで伸びる紅い髪をたなびかせ、全身を紅い魔力で覆った少女がいた。自分たち堕天使とは違う、蝙蝠の、悪魔の羽を生やしている。

 この時、ミッテルトの脳裏に浮かんだのは、赤色の鬣を持つライオンに食いつくされる自分の姿だった。

 認識阻害の魔法は、人間以外には効きにくい。とはいえ、これ程容易く自分の背後に現れることが出切るのか。

 ミッテルトは、考えるが答は簡単だったのだ。

 外出していたミッテルトの視ていた家の主が、帰還しただけなのだから。

 そして、不躾にも家の中を覗いていた者に対して、彼女の取る行動は一つ。

「いろいろ聞いておきたかったけど・・・・・・まあいい。堕ちた神の狗よ、任務ごくろう、そして、さようなら」

 紅い悪魔は、虚空から現れた槍を手に取り、ミッテルトの薄い腹を貫いた。

 不思議と出血は少ないが、槍にさされた傷口から自分の命が消えていくのを感じる。

「がっは、はっ、れ、レイナーレ・・・ね、えざま」 

 

その日、駒王町から堕天使が一人消えた。




 自分の頭の中で、色んな話、設定が混ざりあって訳がわからなくなってきました。
どうしよう。

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