といっても二コマだけですが。
ではごゆるりと。
Side マリー
次の日から授業だったから朝食をとったあとに、シロウと変身術の教室に向かったんだけど……。道に迷った。初日から遅刻。加えて授業を担当するのが寮監督のマグゴナガル先生。初日から遅れたとなれば、ものすごく怒られることなんて目に見えている。誰か先輩を探すかどうか考えていたら隣にいたシロウが、
「ふむ、時間がないな。……
そう小さな声で呟き、壁に手を当てて目を閉じた。シロウの手先から何か流れを感じたからよくみると、淡い緑色の線がシロウの手を中心にして、電気回路のように広がっていた。魔法世界に関わってからそんなに時間は経ってないけど、いまシロウがやっていることが、普通ではないことがわかる。みんな当たり前のように魔法を使っているけど、今のシロウは結構きつそうな顔をしている。
しばらくすると少し荒い息をしながら、シロウは壁から手を離した。
「はぁ、はぁ……フゥ、大体わかった。しかし少し遠いな……」
シロウ曰く、ここから何フロアか上の少し遠いところに目的の教室があるみたい。普通に歩けば、確実に遅刻コースまっしぐらだそう。やっちゃったなぁ。初日から遅刻とか運が無さすぎるよ。はぁ、この先私は無事学校生活送れるのだろうか。なんて一人嘆いているとシロウがこちらに近づきつつ、
「なに、普通に行けばだ。普通にな」
と言いながら私を横抱きに………って、ええええ!? 何で私シロウに抱っこされてるの!? しかもこれってお姫様抱っこってのじゃ……
「口を閉じてろ。舌を噛むぞ。怖かったら目を瞑っていい」
え?ふわわわわわあああああああ!?!?
その日、叫ぶ女子生徒とそれを横抱きにして、廊下と吹き抜けの壁を高速で走り抜ける男子生徒が早朝に確認されたという。
Side ロン
いま僕は変身術の教室にいるんだけど、シロウとマリーがまだ来ていないことに気付いた。もう少しで授業が始まるのに大丈夫かなぁ。
「ねぇシェーマス。マリーもシロウも朝食の席にいたよね?」
「確かにいた。マリーは僕の隣にいたし、確かディーンの隣にシロウがいたでしょ?」
「うん、いた。道に迷ったのかな?」
「シロウはともかく、マリーはありそう」
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あれ?
「何か聞こえなかった、ディーン?」
「えっなにが?」
「僕は何も、ネビルは?」
「僕はかすかに叫んでる声が」
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「あ、聞こえた」
「今のマリーの声じゃない?」
「あと何かを蹴る音が」
とそこへマグゴナガル先生がこちらに近づいてきた。
「何を話しているんですか? ところで二人ほど足りない気が……」
ふわわわわわあああああああ!?!?
ガッ!! ズザザザッ!!
「……あふぅ~……」
「ふぅ、ギリギリ間に合ったか。マリー、着いたぞ」
「シ……シロウ……今度やるときは先に言って…………」
「それについてはすまない。時間が惜しかったものでな。次からはそうしよう。幸い間に合ったみたいだしな。む? みんなどうした? そんな狐に摘ままれたような顔をして」
残る二人の同級生は片方が抱き抱えられ、もう片方が恐ろしい速さで駆け込むという形で登場した。そしてシロウは、僕たちが呆然としている理由が心底わからない、という顔をしていた。
拝啓隠れ穴にいるお父さま、お母さま、妹のジニー。僕の友達はとんでもない身体能力の持ち主みたいです。
気をとりなおして、先生は授業を始めた。
「変身術は魔法の中でも屈指の複雑さと危険を併せ持つ分野です。不真面目な態度で受ける人は、容赦なくこの教室から出ていってもらいます。」
そう前置きして先生は机を豚に変え、また元に戻した。それを見た僕を含めたみんなは早く試してみたくてウズウズしていたけど、あの前置きをするだけあって、さんざん複雑なノートをとったあとに、マッチ棒を針に変える練習をした。みんな全然できなかったけど、ハーマイオニーだけいいとこまでいっていた。マグゴナガル先生は、彼女のマッチ棒がいかに光沢を放ち、尖っているかを誉め、グリフィンドールに五点加点した。
とここでまたしてもシロウがやらかした。
まずシロウが取り出した杖は、僕らのような木製ではなく、金属製の短剣状のものだった。そこから既にみんなの目を引いていた。
あれ?柄に宝石。短剣状の杖。確か昔呼んだ本に同じ感じの物が出てきたような気がする。何だっけ?
「それはアゾット剣ですね、ミスター・エミヤ? 過去の錬金術師たちが使用していた」
「ええ、知り合いがオリバンダー老に預けていたみたいで」
そう言ってシロウは杖を優しい目で見ていた。そうだ、アゾット剣っていうんだった。魔法族なら一度は聞いたことのある魔法道具だよ。でも実物を見るのは初めて。シロウはアゾット剣を使うのかぁ。今じゃあ珍しいどころか相当レアな人だろうな。
マグゴナガル先生がシロウに変化させてみるよう言うと、シロウは実践して見せた。ここまでは良かった。けど次の瞬間、マッチ棒は細身の投げナイフのようなものに変化した。針じゃなく、ナイフに。そして先生が戻そうとしても戻らない。仕方なくもう一度マッチ棒をシロウに渡してやらせると、今度は小さな矢に変化した。しかもこれまた元に戻せない。先生はこの事について触れないようにし、授業を再開した。気になったのは、ハーマイオニーがまるで親の敵でも見るような目でシロウを見ていたことだった。
Side マリー
次にあった魔法薬の授業は地下牢であったけど、スリザリンと合同授業だった。別にスリザリンは嫌いではないんだけど、ほとんどの人が自分の家を鼻にかけているみたいで、偉そうに振る舞っていた。マルフォイが、組分けの前にあったことを所々自分に都合の良いように寮監に言ったらしく、その寮監のスネイプ先生が授業の担当だったので、シロウはいろいろ言われていた。が、これを論破。ついでにマルフォイに説教をしていた。マルフォイの様子を見る限り、怖がっていても刃向かっていただけまだダドリー達のほうがマシな気がした。
その時のやり取りがこんな感じ。
「そういえば組分けが行われる前とはいえ、東洋からのお客様が生徒を脅したときく」
「それには少々誤りがあります。故に訂正させていただく」
「ほう?」
「私はただ壁を叩いただけ。力加減を誤って壁を破壊しかけたことは反省している。だが、私は脅した訳ではありません。加えて勝手に怯えたのはそこの彼です。それに……」
そう言ってシロウは今度はマルフォイに目を向け、
「お前は自分でどうにかしようと考えはしないのか? それとも今まで自分の失態は親が全て何とかしてくれたのか? 日本にはこのような言葉がある。『いつまでも、あると思うな、親と金』。今のうちに自分で考え、行動するよう心がけねば、いずれ痛い目を見るぞ?」
そして今度は部屋全体を見渡し、
「今の話はこいつだけに限ったことではない。皆にも、無論オレにも言えることだ。オレは五年前まで世界を転々としていた。その過程でテロや犯罪に巻き込まれたのも、一度や二度では収まらん。オレの例は極端なものだが、回りに味方がいない状況では、一人で何とかするしかなかった。他人のことを頼るなとは言わない。だが、考えることを放棄するな」
うん、色々と聞きたいことは多々あるけど正論だったね。スネイプ先生も何か思うことがあったのか、あのあと何も言わずに授業を始めたし。マルフォイはとても憎々しげにシロウを見つめてた。
けど魔法薬の授業、なかなか面白かった。今度スネイプ先生のところに行って色々と教えてもらおう。
でも何でスリザリン以外の生徒はスネイプ先生を嫌うんだろう?結構いい先生だと思うのになぁ。
というわけで、授業編でした。
こんばんは、こんにちは、おはようございます、ホロウメモリアルです。
組分けまでの話にちょいちょい訂正と補足を加え、最新話を書きました。
士郎の変身術ですが、生き物に変えるのはともかく、非生物に変化させる場合には、士郎が持つ剣属性が影響するようにしました。
また、物語中に出すのは当分先ですが、呪詛の閃光の形状も剣か矢の形にするつもりです。
3巻以降に出る守護霊も非生物にするつもりです。
あと魔術行使についてですが、シロウは事情を知る人たちの前や信頼してる人の前では、あまり隠さずに使うようにしています。
といっても、強化や解析ぐらいで、投影は余程のことがない限り、早朝の自己鍛練以外では使わないように気をつけています。
次回は近いうちに、飛行訓練騒動について書きます
では今回はこのへんで。
感想待ってます(^ ^)ノシ