錬鉄の魔術使いと魔法使い達   作:シエロティエラ

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「ランサーとキャスターは倒されたか」

「流石は坊主のガキだったぜ。お前さんも手合わせできたらよかったな」

「あのお嬢さんも、魔法を身に付けて強くなっていたわ。前は体術でやられちゃったけど、今回は魔術でもしてやられた」

「さて坊主の方はどうだ?」

「アサシンに斬られたな。ふん、少し喝を入れるとするか」

「どうやって?」

「なに、こちらからアレに働きかければいいのさ」





19. 結末

 

 

 

 アサシンの"燕返し"を回避したが、やはり間に合わずに剣戟を受けてしまった。胸を逆袈裟に、加えて首と腹を切られてしまい、血をたくさん流してしまった。成す術なく背中から倒れたオレにアサシンは追撃することなく、ただその色のない眼でこちらを見据えてくる。

 

 

(チィ……体が動かん……)

 

 

 無理に動こうとするが血を流しすぎて体が動かない。傷も塞がる気配がないし、意識が朦朧とする。目の前が霞がかり、もはや目の前のアサシンもぼやけて見えなくなり、オレの目の前は真っ暗になった。

 

 

『……けないな』

 

 

 なんだ。

 

 

『情けないと言ったのだ、この未熟者』

 

 

 聞こえた声に驚いて目を開けると、真っ暗な空間に、あの憎たらしい弓兵が腕を組んで立っていた。片眼を瞑って腕を組み、口元にニヒルな笑みを浮かべたままこちらを見ている。その顔に腹が立ってくる。

 

 

『あの娘は立ち上がったぞ? まぁ多少私が手助けしたが』

 

『うるさい。もう少ししたら傷も塞がるから、反撃開始だ』

 

『ほう?』

 

 

 オレの言葉に笑みを消し、その鷹の双眼でこちらを見据える。まるでオレを試すように見つめるそいつを、オレも同様にして睨み返す。しばらく睨みあっていると、奴の方から視線を逸らした。ついでにその時に大きくため息をついていた。

 

 

『……全く、私はここまで好戦的ではなかったはずだが』

 

『お前が気づいてないだけじゃないのか?』

 

『気付きたくもない。……まぁ傷が治るというのは嘘ではないらしいな』

 

『ん?』

 

 

 奴の向ける視線が気になり、オレは自らの後方を振り返り、その光景に目を奪われた。

 金色に輝くアヴァロンが宙に浮いており、力強く発光している。その更に後方には紅に輝く巨体を起こし、緑の双眼でこちらを見つめる竜がいた。ああそういえば、数か月前に奴の血を浴びていたな。まさかこんなことで役に立つとは思っていなかった。

 アヴァロンから溢れた光がオレに集まり、柔らかく包んでいく。その様子を見ながら奴は体を背け、暗闇の彼方へと歩いて行った。オレを包む光が眩しくなる。同時に視界も白み始める。成程、そろそろ目が覚めるのか。

 一度強く光がはじけた後、オレは目が覚めた。すぐに周囲の状況を確認する。どうやらヴォルデモートとマリーが一騎打ちをし、何らかのイレギュラーな事態が起きているようだ。黒化したアサシンもそちらに目を向けている。

 

 

(不意を突いたとして、攻撃の機会は一回がいいほうだろう。だとしたら最適な武器は『童子切安綱(これ)』だ)

 

 

 投げ出された右手に刀を投影し、一気に跳ね起きる。そのまま間髪入れずにアサシンに切りかかり、その体を袈裟に切り裂いた。アサシンは驚愕に顔を染めており、その自慢の物干し竿を振るうことを忘れているようだった。

 そのままオレは奴に向かって腕を伸ばし、左手に投影した"破戒すべき全ての符(ルール・ブレイカー)"を深く突き刺した。核となっているカードとの繋がりを断たれたアサシンは断末魔の叫びをあげて霧散していった。

 その声が聞こえたのだろう、ヴォルデモートの配下たちがこちらを見ると同時に、マリーが奴らの間を縫ってこちらに走ってきた。どうやら俺と合流してすぐに優勝杯で脱出するらしい。

 その意を汲んだオレは飛び出し、彼女を抱えたままトップスピードで優勝杯まで駆け抜けて掴んだ。そこでようやく配下たちは放心状態から戻り、こちらに魔法を放ってきた。が、遅い。既に転移は始まっており、奴らの魔法こちらに到達するころにはオレ達はホグワーツに戻ってきていた。

 

 

「……帰ってきたの?」

 

「そうみたいだな……ぐぅッ」

 

 

 どうやら塞がりかけてた傷が開いたようだ。致命的だった首と逆袈裟の傷は塞がっているが、腹の傷は回復していなかったらしい。また血が流れだし、俺のユニフォームを赤黒く染めだしている。手に持ったアサシンのカードがオレの体に入り込むと同時に、オレの視界は暗転した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「シロウ!!」

 

「士郎、しっかりしなさい!!」

 

「父さん!! 医務室に運ぶぞ!!」

 

 

 駆け寄ってきたエミヤ一家に連れられ、シロウは医務室に運ばれていった。でもその中に紅葉さんの姿がなかった。立ち上がって周りを見渡すと、あれほど完璧な巨大迷路を作っていた生垣は破壊され、地面には大小さまざまなクレーターが作られていた。観客席にはほとんど生徒はおらず、残っている生徒たちも先生方の付き添いで校舎に向かっていた。

 と、そこに私の肩に一つの手が置かれた。驚いて振り向くと、ムーディ先生が立っていた。

 

 

「ポッター。見たところ疲労がたまっているようだが、校舎に向かうぞ」

 

 

 そのまま私は先生に連れられ、先生のオフィスに招かれた。この時点で私は少し疑問に思った。校舎に向かって休むのなら、わざわざ先生のオフィスに向かう必要は何のではないか。それにエミヤ一家と一緒に行っても良かったのではないか。そのまま右腕のナイフで切られたところに包帯を巻かれ、椅子に座らされた。

 

 

「で、何があった? あの襲撃の途中から姿が見えなくなり、また突然出てきたが」

 

 

 義眼と目をこちらにむけて問うてくる先生。いつものような落ち着いた雰囲気ではなく、まるで何かに焦っていた風だ。

 先生の問いに私は先ほどあったことを思い出す。突然夢でみた墓場に連れていかれた途端、拘束された。そしてそのまま目の前に置いてある大鍋に、素体となるヴォルデモート本人、加えて彼の父親の骨、その場にいた下僕ペティグリューの左手、そして私の血を用いて完全に復活を果たしたのだ。その際私の血を取るために手首を切られたのだが、幸い脈は傷つかなかったみたいだった。

 

 

「復活したのか? ヴォルデモートが?」

 

「ええ……」

 

 

 私が肯定すると、先生は少し興奮した面持ちでこちらを凝視してきた。ますますおかしい。疑いたくはないが、まさか疑いたくはないが、誰かが先生に成りすましているのか? いや、だとしたらなんで一年も隠し通せるのだろう。ポリジュース薬は一時間しか持たない。それにあれの材料は普通じゃ手に入らないものばかり。盗むか仕入れるしか方法はないはず。もしものために鎌をかけてみるか。

 

 

「……先生、質問があります」

 

「ん? どうしたポッター?」

 

「先生は、どうしてそんなに嬉しそうなんですか?」

 

「ッ!?」

 

 

 私が問いかけた瞬間、ほんの一瞬だけど先生の眉毛が動き、その目に焦りの色が見えた。まさか本当に誰かのなりすましだったのだろうか。私は目の前の男に対する警戒を高めた。

 目の前の男は一度せき込むと、部屋の中をせわしなく歩き回り、棚の中や箱の中をあさり始める。しかし求めているものが見つからないらしく、段々とイライラした雰囲気を出し、舌を蛇のようにチロチロさせている。これは確定だ。この人はムーディ先生本人ではない。

 

 

「……時間がない。だがこの場で私が奴を始末して脱出すれば、あの方も褒めてくださるはずだ。ならば早速……」

 

 

 何やらぶつぶつ呟きながら懐をゴソゴソしだす男。その懐から杖の柄頭が見えた瞬間、オフィスの扉が勢いよく開け放たれ、飛び込んできたダンブルドア先生の杖先から発射された魔法が、目の前の男に直撃して吹き飛ばした。

 吹き飛ばされた男はそのまま壁に直撃し、そのまま伸びて気絶した。ダンブルドア先生からは老人とは思えないほどのエネルギーを感じられ、しかし士郎よりも落ち着いたものだった。シロウや剣吾君を荒れ狂う暴風だとすれば、ダンブルドアのそれは猛々しく燃え盛る焔の様。

 

 

「ポッター、怪我はないですか? 魔法を受けたりしませんでしたか?」

 

 

 一緒入ってきたマグゴナガル先生から、体のあちこちを触診されながら問われた。同様に入ってきたスネイプ先生はなにやら小瓶に入った薬を男に飲ませ、ダンブルドア先生と一緒になって尋問していた。横目で男がもとの姿に戻るさまや、本物のムーディが救出される様を見届けてから、私はマグゴナガル先生と医務室に向かった。流石に戦闘は終わり、生足を晒すのは恥ずかしかったため、先生のマントを羽織って移動した。

 医務室に入ると、二つのベッドに先客がいた。一つは勿論シロウで、上半身に包帯を巻いてベッドに寝ていた。そばにはイリヤさんとシィちゃんがおり、シィちゃんはシロウと一緒のベッドで寝ている。

 もう一つのベッドには紅葉さんが寝ており、その両足には包帯が巻かれていた。もしかしたら、パーキンソンを庇って負傷したのかもしれない。呪いではなく純粋な魔力弾による負傷だから、治療には時間のかかるかもしれない。

 

 

「とりあえずその腕の傷の治療をしましょう。そのあと十分に休息をとるように、あとはポピーの専門分野ね」

 

「全く、死者が出なくて本当に良かったわ。さぁポッター、こっちのベッドに」

 

 

 マダム・ポンフリーに案内されたベッドに向かうと、ハネジローがすでに待機していた。ハネジローの頭を数度撫で、渡された服に着替えて床に入る。目が覚めれば、ダンブルドア先生等から詳しい説明を求められるだろう。それまでに、少しでも回復しなければ。

 

 

 

 






はい、ここまでです。
少し世界観をば。
士郎たちが元いた世界は、ベースは「Fate/stay night」です。そこに登場人物名が異なる「ジョジョ」の一巡目の世界、「ごちうさ」の世界、「食戟のソーマ」の世界、「アイマス・デレマス」の世界、その他いくつかの魔術が絡まない世界が融合しています。
また「孤高の牡牛」に出てくるデレマス勢と剣吾が主人公外伝のデレマス勢は、並行世界の同一人物です。
本小説の原作である「ハリポタ」と剣吾がゲスト出演している「孤高の牡牛」、外伝で取り上げた「NARUTO」の世界は、それぞれ並行世界で全くの別世界となっております。魔術基盤云々の話は出来るだけあまり考えないでください。特に「NARUTO」の世界に関しては。

小説説明欄に外伝のURMを貼りました。興味のある方は私のペンネームを経由するか、URLを添付して検索してください。


それではまた。



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