錬鉄の魔術使いと魔法使い達   作:シエロティエラ

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更新です。

それではごゆるりと。






2. 出会いと列車の旅、組分け

 

 

Side マリー

 

 

それから私たちは漏れ鍋に2泊した。店主のトムさんはとても親切で、私に魔法世界について色々と教えてくれた。

部屋も子供ってことを配慮したのか、シロウと同室だった。一度少し気になってシロウの寝顔を覗いてみたんだけと、うん。ちょっと可愛いと思ったのは内緒。

それに一回だけ添い寝を頼んでOKもらったから一緒に寝たんだけど、安心して寝れた。とってもぽかぽかして落ち着いたなぁ。

 

っと、ハグリッドが呼んでる。今日はいよいよホグワーツに行く日。とってもワクワクしてくる!

 

 

 

 

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「ほれマリー、そしてシロウ。9と3/4番線の切符だ。遅れるんじゃねぇぞ?入学初日から遅刻なんて嫌だろう」

 

 

そういって私たちに切符を渡してきた。9と3/4番線か。

あれ?9と3/4番線?

 

 

「ハグリッド、この切符おかしくない?9と3/4番線なん……て……」

 

 

顔をあげると、そこにはシロウしかいなかった。いつの間にかハグリッドはいなくなっていた。

 

 

「まぁ立っていても仕方がない。取り敢えず動こう。なに、オレたち以外にも新入生はいる。時間もある。オレたち側の人達がいるかもしれん」

 

「そうだね。取り敢えずシロウの言う通り、移動しよっか。ちょうどあそこにそれらしき家族がいるみたいだし」

 

 

私が指差す先に、綺麗な赤毛の家族がカートを押していた。梟も一羽連れている。

 

 

「毎年毎年ここはマグルが多いわね。いらっしゃい、9と3/4番線はこっちよ」

 

 

ビンゴ。

 

 

「どうやら当たりだな。マリーの勘もなかなか侮れん」

 

 

えへへ。シロウに誉められた。

少し観察していよう。どうやってプラットホームに行くんだろう?

 

 

「パーシー先に行って。続いてフレッドとジョージよ」

 

 

最初のお兄さんが柱に向かっていったけど、瞬きした途端姿が消えていた。

 

え? なに? どういうこと?

今度はよく見ようと、ふざけていた双子を注視した。

けどまたいつの間にか消えていた。シロウも驚いている。こうなったらあの女の人に聞くしかない。

 

すみませーん。

 

 

「あら、お嬢ちゃんたちも新入生?うちのロンもそうなのよ」

 

 

そういって女の人は傍らの男の子を示す。

 

 

「あ、はい。よろしくお願いします。えっと……その……」

 

 

やっぱり緊張する。シロウがこっちを見ているけど、ダメ!一人でやらないと。いつまでもシロウにおんぶだっこはいけない。

 

 

「プラットホームへの行き方が知りたいのですけど、どうすればいいのですか?」

 

 

言えた。ちゃんと言えた。少し自信が着いた。女の人は優しく微笑むと丁寧に教えてくれた。この人、いい人だなぁ。

 

 

「っとこんな感じね。後ろの男の子も大丈夫?」

 

「ええ、大丈夫です。ありがとうございます」

 

「よかった。ところであなた、顔を見る限り東洋人だと思うんだけれど、その髪の毛と肌は元々?それとも何かの病気?」

 

 

シロウの髪と肌か。

 

 

「いえ、病気ではありません。髪は元々赤銅色で肌は普通だったんですが、少々無茶を重ねてしまいまして。結果髪は色が抜け落ち、肌は麻黒い色に変化したんです。体はなんともありませんよ」

 

 

彼は苦笑しながら言った。

 

 

「あ、ごめんなさい。軽々と聞いていいことではなかったわ」

 

「いえ、気にしないでください。私から見れば、皆さんの赤毛は綺麗で少しうらやましいです」

 

あ、それは私も思った。みんな綺麗な色だよね。

 

 

「まぁ、ありがとう! 嬉しいわ。あ、そろそろプラットホームにいかないと。手順は覚えてるわね?」

 

「「はい、大丈夫です。いってきます」」

 

 

そういって私たちは柱を通り抜けた。抜けた先には、真っ赤な汽車が私たちを待っていた。

 

 

 

 

 

Side シロウ

 

 

 

汽車内は幸いコンパートメントが一つ空いていた。マリーと共に乗り込み、窓辺に座ると外からガラスを叩かれた。見ると、先ほどの女性がいた。

 

 

「さっきぶりね。私たちの髪を誉めてくれてありがとう、他の子達も聞いて喜んでいたわ」

 

 

そういいつつ、オレたちにサンドイッチを差し出した。

 

 

「フレッドとジョージに渡そうとしたんだけど、断られちゃって。あなたたちは見る限りお昼持っていないようだし、よかったらどうぞ」

 

 

せっかくのご厚意だ、いただこう。その時、コンパートメントの扉が開き、先ほどロンと呼ばれていた少年が入ってきた。

 

 

「ここ入ってもいい? 他はどこもいっぱいで」

 

 

断る理由がない。

 

 

「あら、ロン。ちょうどよかったわ。はい、これはあなたの」

 

 

そういってさらにサンドイッチを一つ差し出した。ロンは渋りながらもそれを受け取った。

すると女性の隣にいた少女、恐らく末っ子だろう、が突然泣き出した。どうやら自分も行きたいとグズっているらしい。女性もロンもあたふたと動揺している。

……はぁ。

 

 

「ほら、これで顔を拭くといい。泣き顔で見送られても、君のお兄さんたちは困惑するだろう」

 

 

そういって少女の頭に手をおく。少女は、はっとした顔でこちらを見る。

 

 

「何も今生の別れという訳ではない。それも君を見る限り、来年君もこの列車に乗るのだろう? この一年はその準備期間だ。次にお兄さんたちに会うときに、あっと驚かせるようになるためのな」

 

 

できるだけ優しく、諭すように言葉を紡ぐ。そしてマリーがそれに続いた。

 

「そうそう。それに笑顔で見送られるほうが、私たちも嬉しいんだよ。その笑顔が私たちを元気付けてくれるんだ。一年を何事もなく過ごして、また帰ってくるために。次もまた、帰ってくるために」

 

 

少女は俯いていたが、目を擦ると今日見た中で一番の笑顔を見せてくれた。女性も同様に優しく微笑んでいた。

 

ついに汽車は動きだし、ホグワーツへ出発した。

 

 

 

 

Side シロウ

 

 

 

取り敢えず自己紹介と相成った。

 

 

「僕、ロン・ウィーズリー。ロンって呼んで」

 

「私はマリー。マリナ・ポッター」

 

 

マリーの紹介を聞いた途端、ロンが驚愕していた。そりゃそうだろうな。世間ではマリーは「生き残った女の子」だからな。

 

む?何故オレを見ている?

……ああそうか。

 

 

「オレは衛宮士郎。姓がエミヤ、名がシロウだ。呼びやすいほうでよんでいい」

 

「じゃあシロウって呼ぶね。シロウは東洋出身だったんだ」

 

「ああ、君のお母さんには話したが、色々と無茶をしてな。こうなったのだ」

 

 

まぁ全て話しているわけではないが、嘘ではない。

 

 

「私はシロウの髪は好きだよ? 綺麗な白色をしてて」

 

「それはマリー。君が昔から見てきたからだろう。初めて見る人にとっては奇妙にうつるものさ」

 

 

時間も時間だったから昼食を食べることになり、ウィーズリー夫人からもらったサンドイッチを三人で食べた。ふむ。冷えてパサついてはいるが、子を思う母の情が感じられる。ロンは良い母親を持ったな。

 

 

「これ美味しいね、シロウ。ロン。私これ好き!」

 

 

元々感受性が人より高いマリーのことだ。恐らくサンドイッチになにかしら感じ入るものがあったのだろう。ロンはその言葉に驚いていたが、母親の料理を誉められたためか、若干顔を赤らめていた。

 

しばらくしてマリーがオレの膝を枕にして寝息をたて始めたので(ロンがコンパートメントに入ってきたときに既にマリーはオレの隣に席を移動している)、自然と会話は筆談となった。

 

 

『マリーっていつもこんな感じなの?』

 

『ああ、昔から。といってもオレがこの子と関わり始めたのは4年ほど前なんだが』

 

『なんだか無邪気というか、無垢というか。素直な子だね』

 

『純粋なんだろうな。少し愛情に飢えているきらいがあるが、それが無意識に働いてこういう言動をしているのだろう』

 

『シロウと話してて思ったんだけど、本当にシロウって同い年? まるで年上と話す感じがするんだけど』

 

『さて、もしかしたら年上かもしれんし、生意気な小僧なだけかもしれんぞ? まぁ、世界中を転々としていたからな。それ相応に心が早く育ってしまったのだろうよ』

 

『ふーん。そうなんだ』

 

 

途中車内販売が来たが、販売員の女性もマリーを一目みて状況を察し、筆談で応対してくれた。あまり菓子類は食べない方だが、この世界の菓子類はなかなか面白い。今度カボチャケーキを作ってみるか。

 

 

 

やがてホグワーツ駅に着くとオレたち新入生はハグリッドに連れられ、ボートに乗り込んで目的地へ向かうことになった。

因みにオレ以外のメンバーはマリー、ロン、そしてディーンという少年だった。しばらく船に揺られていると、ついに学校が見えてきた。見えてきたんだが…………デカイな。

いや、元の世界の時計塔も大概だとは思っていたんだが、それを超えるぞアレは。もはや城ではないか。

…………掃除が大変そうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side マリー

 

 

 

 

建物に入ると、厳格そうな女の人が待っていた。マグゴナガルって名前の先生らしい。この人が副校長なんだ。いかにも先生って感じだな。

そしていかにも魔女ですって格好をしている、トンガリ帽子とか長いエメラルド色のローブとか。先生は準備があるらしく、少し連絡をしたあと、広間にいっちゃった。

 

すると一人のブロンドの生徒が声を発した。

 

 

「マリナ・ポッターがいるって話は本当だったんだな」

 

ブロンドの子がそう言うと、みんながざわつき始めた。

なんか嫌だな、この感じ。

私別に有名になりたくてなった訳じゃないのに。

ブロンドの子が続ける。

 

「僕はマルフォイ。ドラコ・マルフォイ。良かったら僕が君にいい友達の作り方を教えてあげるよ」

 

私の気も知らないでペラペラしゃべってる。この偉そうなしゃべり方からして相当自分の家柄や自分に自信があるみたいだけど。

 

「少なくとも、そこの赤毛でのっぽでみすぼらしい……ペラペラ」

 

 

あ、流石にカチンときた。会って間もない人に上から目線でしゃべられた挙げ句、私の友達をばかにするなんて。いい加減うっとうしくなってきた。どうやって黙らせようか。

 

 

そう考えていると、突然大きな音がした。

そちらを見ると、シロウが壁を拳、裏拳って言うのかな?、で叩いていた。いや、本人は叩いているつもりらしい。

 

だって叩いたところを中心に壁が陥没してヒビが蜘蛛の巣のように広がって欠片がパラパラと落ちてるんだもん。

本人は何事もなかったように手をヒラヒラさせて埃を払ってる。そしてニヒルな笑みを浮かべて、

 

 

「いや、失礼。小五月蝿い羽虫がいたものでね。潰そうとしたんだがついつい力を入れすぎてしまったようだ。いやはやこの壁、存外脆いと思わないかね? うん?」

 

 

と言った。

でもね、シロウ。普通は子供は勿論、大人でも無傷で壁を割ることはできないよ?

ほら、みんなが怯えちゃったじゃん。ブロンドの子、マルフォイだっけ、なんて今にも漏らしそうなほど怖がってガタガタ震えてちゃってるし。ロンでさえ怖がっちゃってる。

 

私?

ダドリー関係で慣れてるから大丈夫。シロウが説教をするときに浮かべる笑顔は今のようなニヒルなものじゃないし。

怒られたダドリー曰く、

 

 

「魔王が見えた。あの笑顔の後ろに恐ろしい紅い魔王が見えた!」

 

 

ってレベルらしい。そのとき珍しく私に助けを求めてきてたなぁ。自業自得だから無視したけど。

とそこへマグゴナガル先生が戻ってきた。

 

 

「何事ですか?大きな音……が……」

 

 

ほら先生も固まっちゃった。

 

 

「いえ、五月蝿い羽虫がいたもので潰そうとしたのですが。ついつい力を入れすぎてしまいまして。後で修復しておきます。自分が蒔いた種ですし」

 

 

あ、自分で修理するんだね。

そういえば前の学校でもストーブとか空調とか時計とかを直していたっけ? そのせいで学校の教師を含めたみんなから東洋のブラウニーって呼ばれてた。

ああ、ここでもシロウがブラウニーって呼ばれる日が来るの、そう遠くない気がしてきたよ。

 

 

まあ色々とあったけど、ようやく大広間に私たちは入った。天井を見上げると、満天が広がっていた。

 

「魔法でそう見せているのよ。『ホグワーツの歴史』って本に書いてあったわ」

 

 

なるほど、そうだったんだ。綺麗な天井だなぁ。

 

 

「これから名前を呼ばれた人から順に前の椅子に座り、この組分け帽子を被ってもらいます。帽子が寮の名前を発表するので、言われた新入生は指定された寮の席に座ってください。では始めます」

 

 

そして組分けが始まった。

博識の女の子、ハーマイオニーって名前らしい、はグリフィンドール。マルフォイはスリザリン、ロンはグリフィンドールという具合に次々と決まっていった。

 

 

 

「マリナ・ポッター!」

 

 

あ、私の番だ。大広間がざわついている。やっぱりこの感じは好きになれないな。むしろ嫌だな。

帽子を被ると、頭に声が聞こえた。

 

 

[ほうほう、なかなか面白い子だ。内に大きな力を秘めている。が、同時に揺るがない心も持ち合わせているな。さて、どうしようか]

 

 

大きな力? 特別な力は要らないかなぁ。だって当たり前が一番幸せなことじゃん。私はそれでいいと思う。

 

 

[殊勝な心掛けだな。だが力を持つということは、本人の意思と関係なく、さまざまなことに巻き込まれることになる。お前さんのご両親も同じだ。彼らの意思と関係なく、君一人を残してしまうことになってしまった]

 

 

そうだね。

 

 

[いやにあっさりとしているな]

 

 

帽子さんはわかるでしょう? 確かに悲しいよ? 寂しいよ? 胸をかきむしって大声で泣き叫びたいよ?

でもね?

 

 

[ん?]

 

 

遺して逝く人たちが一番願っているのはね、遺してしまう人の幸福なんじゃないかなって。

この11年間、いろんなことがあったけど、シロウを見てたり、昔読んだ本やシロウの話してくれたお話を思い返すと自然とそう思えてくるんだ。

 

 

[……親は敵討ちよりも幸せを願うと。力だけが全てでないと、君自身を形作るのではないと言うのだね?]

 

 

うん。たとえ力がなくても大丈夫。私は私の信じた道を歩いて幸せになる。

その過程でどんなに辛いことがあっても、絶対に意味があるから。自分が歩いてきた道は決して間違いじゃないって信じれるから。

 

 

[……わかった。よろしい! 君の寮は……]

 

「グリフィンドール!!!」

 

 

言われた寮の席に向かうと、ロンをはじめとしてたくさんの人が拍手と一緒に出迎えてくれた。

先生たちの机を見ると、ダンブルドア校長がとても温かい、見る人を安心させる微笑みを浮かべていた。コウモリのような真っ黒の服を着た人も、無表情だったけど優しい目をしていた。

 

 

「シロウ・エミヤ!!!」

 

 

シロウの名前が呼ばれた途端、大広間が静かになった。たぶん初めての東洋人だからだろうか。

周りを見渡すと驚いたことに、たくさんのゴーストたちが静まり返ってシロウを凝視していた。

その目から尊敬というか、恐れというか……いろんな感情がないまぜになっているのがわかった。どうしたんだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side シロウ

 

 

 

 

名前を呼ばれたので椅子に座り、帽子を被る。すると頭の中に直接声が響いてきた。

 

 

[さて、君の寮……は…………]

 

 

む?どうした?何か不都合でもあったか?

 

 

[これは、そんな……君は……いや貴方はまさか…………]

 

 

ッ!! まさか。

 

 

[貴方はまさか、抑止の守護者なんですか?]

 

 

そういうことか。それなら幽霊たちがあのような目をするのも頷ける。あれはいってみれば亡霊。魂の残り香みたいなものが未練などによって具現化したようなもの。流石に気付くか。

さて帽子の質問だが、答えは当たりであり、外れでもある。

 

 

[しかし、それではこれほどの…………ッ!? まさか!?]

 

 

察しの通りだ。私はそもそもこの世界の人間ではない。

元いた世界でやったことが偶然「世界」に偉業とされ、死後に英霊としてどの世界にいても座に招かれることが決まっている。

今は並行世界の別私が、世界と契約して守護者となった私が座で代理人を務めている。

 

 

[……なんとおそれ多い……]

 

 

後がつかえている。今は寮の選考を優先してくれ。

 

 

[この事は校長に報告しても?]

 

 

ああ、頼む。そちらの方が話が早くすむ。

後日互いの時間が重なるときに校長と副校長。そうだな、あのコウモリのような教師も交えて話す。あの男は一見怪しい雰囲気を纏っているが、信用できる。

 

 

[……わかりました。では貴方の寮を伝えます。といっても最初から決まってました。貴方の信じるもの、信じたもの、その生き様。文句なしの…………]

 

 

 

「グリフィンドール!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side マグゴナガル

 

 

私は今日という日を生涯忘れないでしょう。

彼の組分けのとき、この城にいる全てのゴーストたちが、大なり小なり畏怖と敬意を込めた目を彼に、シロウ・エミヤに向けていた。そして寮が発表された途端一斉に整列し、頭を垂れていた。

驚くなんてものではない。

今でこそ日本はよくお辞儀をすると伝わってはいますが、それでも私たちには浸透していない。

ましてや古き時代を生きたゴーストたちは、そのほとんどが頭を垂れることが特別な意味を持つ時代の人たちだ。

 

これには生徒たちは勿論、教師たちも呆然としていた。彼が歩く様は、彼が生きてきた道を表すかのようなものでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幕間 ゴーストたちの会話 (食事のあと、皆が寝静まった時間)

 

 

「見ましたか?」

「ええ、見ました。男爵殿は?」

「しかと見た。まさか……」

「ええ」

 

「「「「彼の者のような存在を拝謁することになろうとは。」」」」

 

「彼が噂の……」

 

「間違いないでしょう」

 

「その行いが『世界』に偉業として認められ」

 

「座と呼ばれる次元に招かれし存在」

 

「英霊と呼ばれる者たちの一人」

 

「または世界と契約して守護者となったか」

 

「いずれにせよ、彼は既に至っている」

 

「我輩たちがが頭を下げたとき、嫌そうな顔をしていたが……」

 

「きっと彼は見返りがほしくて、英雄になろうとして至ったのではないのでしょう」

 

「いつでも世のため、人のために動いていたのだろう」

 

「そして彼はそれを誇ることはない」

 

「ところでヘレナ殿。先ほどから黙っているが、どうした?」

 

「…………荒野を」

 

「「「荒野?」」」

 

「あの少年を見たとき、一瞬。ほんの一瞬だけ、私は荒野にいました。分厚い雲に覆われた、黄昏時の世界に」

 

「「「…………」」」

 

「空には無数の歯車が浮かんでいた。荒れ果て、命の息吹きが何一つ感じられない荒野には、数えるのも馬鹿馬鹿しいほどの無限の剣が乱立していた。火の粉の舞うその世界の中心に……彼に似た青年が…………無数の剣に貫かれたまま大地に立ち、前を見据えて…………」

 

「「「ッ!!」」」

 

「……いったい彼は何を見てきたのだろうか」

 

「……わかりません。ただものすごく、その背中が悲しかった。まるで泣き叫びたいのを、必死に耐えているような。そんな……」

 

「……せめてこの城にいる時だけでも、心を休ませていて欲しいものだな」

「ええ、そうですね」

 

 

 

 

 




はい、ここまでです。

こんばんは、こんにちは、おはようございます、ホロウメモリアです。


さて、一応これに投稿する前に紙に下書きするんですが、書いているうちは結構筆がのるんですよね。(笑) そしてたまに余計なこと書いちゃって後で省いちゃたりするんですよ(汗)


そして二日でお気に入り数が60超え、ありがとうございます。
本当に感謝感謝です。


ではではここらへんで





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