錬鉄の魔術使いと魔法使い達   作:シエロティエラ

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更新お待たせしました。ちょいとばかしリアルのほうが忙しかったので、執筆することが出来ませんでした。
それではごゆるりと。





9. 聞屋との対面

 

 あの後オレは数曲マリーと踊ったのち、オレ達は単独行動することになった。マリーは軽く食事を済ませて踊らずに帰り、オレはそのままキッチンに逃げ込んで料理や皿の片づけを行い、その日は何も面倒ごとに出くわすことなく終了した。ただ夜更かしする生徒が多すぎて、オレが寮に戻れたのは日を跨いだ後だったが。

 今年は学校からフィッグさんのところに帰ることなく、冬いっぱいは次の課題のなぞ解きに挑むことになるだろう。だがその前の最後の休養のために、オレは一人でホグズミード村に赴いた。「三本の箒」のロスメルタさんに頼み込み、一日だけ店員として働かせてもらうことになった。やはり昨晩のような格式ばったものは、参加するとなると疲労がたまる。

 

 ついて早々バーに入り、グラスを拭いていく。キッチンではすでに朝食を食べに来る人たちへの準備も済ませてあり、あとは店主たるロスメルタさんが店を開けるのを待つだけ。

 

 

「ロスメルタさん、今日は無理を聞いてくれてありがとうございます」

 

「いいのよ気にしなくて。対抗戦もあるし、クリスマスだしで私一人だと限界があるもの」

 

「……それでもです」

 

「まぁシロウ君も色々疲れてるだろうし、ほどほどで大丈夫よ」

 

 

 彼女の厚意に甘えて、オレは基本バーカウンターの内側に立つことにした。ここなら余程のことがない限り、客に絡まれたりすることがない。それは二年前のここでの労働で確認済である。

 八時の開店と同時に、数人の客が店に入ってきた。全員この村の住人であり、二年前からの顔見知りである。カウンターにいるオレを見つけた途端、全員カウンター席に座った。。

 

 

「やぁシロウ。今日はここで働いてるのかい?」

 

「ええ。ちょっと息抜きにね」

 

「あんたも大変ねぇ。なんかあったらおばちゃんに言いな。いい食材渡すよ」

 

「気持ちだけで十分だ。ありがとう」

 

 

 このように村民は基本的におおらかで、オレが対抗戦の選手になっても特に騒いだりしなかった。寧ろオレの状況に同情し、何かと気遣う人のほうが多かった。まぁ比較的年の近い―この世界の設定上14歳のため―成人した若者は、男女問わずはしゃいだりしていたが。

 まぁそんな感じでまばらに訪れる客を捌きながら、自らの料理の可能性を模索していた。最近はとんと料理から離れ気味だったから、この機会に自分の技量確認と新しいレシピの開発に勤しんた。

 

 日も天を過ぎて八つ時少し前。昼食も店で済ませた俺は、ホグワーツから来た生徒たちの相手をしながら、相変わらず料理の研究をしていた。新レシピの試食は生徒や遊びに来た村民がしてくれるため、特に余らせたりと困ることはない。

 今は村に遊びに来たマリー一行の相手をしている。カウンター席に座るいつもの三人に加え、剣吾とジニーを加えた五人である。まぁメンバーがメンバーのため、これが生徒以外の村民の目を引く。加えてもうすぐ第二の課題のため、観光客も多い。自然と注目が集まるのも頷ける。

 

 

「そう言えば剣吾。お前昨日はどこにいたんだ?」

 

「「ゴボッ!?」」

 

「む? ジニーまで咽て(むせて)、どうした?」

 

 

 俺の問いかけにバタービールを咽るバカ息子(剣吾)義娘候補(ジニー)。息子はわかるが、彼女が咽る理由が……。ああ、なるほど。

 

 

「まぁ君たちは学生の身だ、剣吾は一応だが。校則に触れることはするなよ」

 

「シロウも一応ホグワーツの生徒だよ?」

 

「……まぁそれは置いといてだ。余り羽目を外すなよ?」

 

「「了解(わかりました)」」

 

 

 注意も程々に、オレは仕事に戻る。流石にいつまでもおしゃべりに興じるわけにもいくまい。返却されたグラスを洗って拭きながら、鍋やフライパンの調子を見る。現在作っているのはスープと弱火で加熱している肉料理。気を付けないとスープは煮立ち、肉は焦げてしまうため、逐一気を配って確認しなければならない。

 あとどれだけの時間熱するのかを確認して注文の料理を熟していると、店のほうが少し騒がしくなった。どうやら妙な客が来たみたいだが。

 気になって裏のキッチンから表に出ると、すぐに出たことを後悔した。バーカウンターの近くのテーブル席にどこぞで見た聞屋、たしかリータ・スキータと言ったか、がグチグチと何かしら文句を耐えれながらメニューを見ていた。

 

 

「注文された飲み物と料理です。ごゆっくりどうぞ」

 

「あら、どうも。ん? このみすぼらしい料理は何ざんす? 名前負けが凄まじいわね」

 

 

 開口一番に料理の文句を言いやがる聞屋の女。人が知れるというのはこのことだろう。今回料理に使用した食材は、オレが自費でわざわざ現物を見て解析して最高の食材を厳選したものだ。無論調味料も自費で購入したものである。名前負けだと? 食べてもないのに品の評価をきめるとは、これだからでっち上げ記事の著者は」

 

 

「あなた? 聞こえてるざんすよ?」

 

「む? おやこれは失礼。ついつい本音が出てしまったようだ。まぁ君のようにでっち上げしか書けない人間にとっては、人の本音ほど新鮮なものはないだろうがね」

 

「あなた、私に喧嘩を売ってるのかしら? それによく見たら、あなたホグワーツの代表ざんしょ? なんでこんなところに?」

 

 

 そういってバッグからすかさずメモ帳と羽ペンを取り出すスキータ。羽ペンは以前見たときと同じ、自動で書いていくクジャクの羽ペンだ。

 

 

「おや? 君は他人の、ましてや子供のプライベートまで暴こうというのかね? ここで労働してようと、君には関係ないはずだが」

 

「記事の読者は面白い話に飢えてるの」

 

「さて、その辺は君の書き方次第になるだろうよ。いずれにしても、今回書こうとしていることは無意味だと思うがね」

 

「おや、どうしてざんしょ?」

 

 

 心底不思議そうな表情を浮かべるスキータ。本当にわかっていないのか、それともわかっていてあえて聞いてくるのか。

 

 

「君が記事を書いたところで、その記事は公表されないからだ」

 

「ほう? たかが小僧一人が、大人に何かできるとでも? 私を脅すなら、君も相応の覚悟をしたほうがいいざんす」

 

 

 始終上から目線でオレを小馬鹿にするように話す目の前の女。だが彼女は気づいていない。今この店には人祓いの結界が張られ、俺と剣吾、そして目の前の彼女以外の人間はいないことを。ロスメルタさんはキッチンにいてもらってる。

 

 

「ならばこの情報を早く魔法省に送ったほうがいいかもな。とある女記者は違法に情報収集していると」

 

「っ!?」

 

「本来『動物もどき(アニメ―ガス)』は登録が必要なのに登録せず、加えて対象のプライベートや過去の傷なんてなんのその、対象がこれから先に負う心の傷を作るだけの記事を書いている。後者は兎も角、前者は今まで何故捕まらなかったか、甚だ疑問だな」

 

「……」

 

 

 女は苦虫を噛み潰したような顔をしている。カウンター席では息子がバタービールを飲みながら、結界の維持を続けている。まぁそろそろ話は終わるため、もう解除してもいいだろう。

 

 

「……それがどうしたざんず? 別に私のことではないから関係ないざんしょ?」

 

「ああ関係ないだろう。これから捕まって裁判、悪くて収容だからな」

 

「……」

 

 

 更に不機嫌な顔になるスキータ。ここらで止めとしておくか。余り話を長引かせるのも良くない。

 

 

「一つ言っておく。私を社会的に潰そうとするのは構わん。が、その時はそれ相応の覚悟を持つことだ。そして魔法による実力行使ならば……」

 

 

 オレはそこで言葉を切り、鞄の中の杖に伸ばした手に陰剣干将を突き付けた。途端にスキータの顔が不快から恐怖に変わる。

 

 

「その時は俺も実力を以て潰しにかかる。よく覚えておけ、私や私の関係者ででっち上げ記事をこれ以上書いたり、その他こちらが被害を受ける事案が起こった場合は、その時は私自ら制裁を加える。(この世界の)魔法よりも確実であり、証拠も残らない方法で」

 

 

 言葉をそう締めくくり、同時に結界を解除した。机の上の料理は冷めてしまっている。スキータは机の上に料金を置き、飲み物だけを飲んで足早に出て行った。

 少しやりすぎたか。まぁこれを機に、彼女が少しでもまともな記事を書くよう努力してくれることを願おう。さてこの冷めた料理は息子に食わせるか。成長期だからか、先ほどから物欲しそうな目でこちらを見ているしな。

 

 

 






はい、ここまでです。
あれ? シロウってここまで好戦的な性格だったっけ? 私自身書いていてわからなくなった次第です。
さて予告通り、次回から2,3話かけて第二の課題を描写していきます。果たして型月関連は出てくるのか。気長にお待ちください。
それと活動報告にてお知らせがあります。
それではまたいづれかの小説で。



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