錬鉄の魔術使いと魔法使い達   作:シエロティエラ

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本当に久しぶりにこちらを更新します。
久しぶりだから一話でどう進めるか鈍ってます。
それではどうぞ。






8. 予期せぬ課題

 

 

 

 

「よろしいですか? 今年のクリスマスは生徒一同、ダンスパーティーに出席することになります。普通の生徒は基本参加、しかし事情で不可能な方は申請してください。代表選手は必ずパートナーを用意し、出席してください。わかりましたね、ミスター・エミヤ?」

 

 

 マグゴナガル先生の言葉により、変身術の教室内は沈黙に包まれた。また何故今年の教材のリストにドレスローブが書いてあったかようやく理解した。隣に座るシロウを見ると、顔に片手をあてて、大きくため息をついていた。

 

 

 

「……先生。私は出なければいけないのですか?」

 

「勿論です。これは由緒ある伝統的な行事ですので」

 

「……ウェイターは」

 

「十分にいますのでご安心を」

 

「……退路なし。捕虜の人権はあるか?」

 

 

 この時のシロウのげんなりとした感じは、私が覚えている限り一度も見たことがない。そんなにこのパーティーが嫌なのだろうか? 私は気になって大広間での昼食中にシロウに聞いてみた。

 

 

「ねえ、なんでシロウはそんなにダンスが嫌なの?」

 

「む? ああそのことか」

 

 

 暫く顎に手を当てていたシロウは、やがてポツリポツリと語り始めた。

 なんでもイリヤさんたちと結婚する前は、ゼルレッチさんに連れられていろんな世界に行ったらしい。その中では貴族といった身分が当たり前に存在する世界に行くことも珍しくなく、そこでパーティーに参加も何度もしていたらしい。

 でも基本的にシロウはダンスするわけでなく、ウェイターやコックとして参加していたらしい。でもいくつかの世界では貴族の令嬢のパートナーを務めたとか。そしてその度に何かを察知したかの如くイリヤさんたちが来てひと騒動あったとか。

 

 記憶に残る限り一番ひどかったのは、この世界と同じように魔法使いがいる世界だったそうだ。そこは魔法至上主義の世界であり、魔法使いが牛耳っていた。シロウはその世界の魔法学校に偶然が重なって召喚されたそうだけど、召喚主の桃色の髪の少女にこき使われていたらしい。そしていざ自分の実力の一端を見せると、皆が、特に女性陣が掌を返して擦り寄り、それによって桃髪の主人の爆発魔法が火を噴くという悪循環の繰り返しだったそうな。

 それ以来シロウはこのような催しがあっても基本的に裏方に専念しようと色々画策していたらしい。それでも今回はどう足掻いても逃げ道がないらしく、校長先生に掛け合っても否の一言だったらしい。そんなに嫌だったんだね。

 

 

「はぁ……仕方が無い。早々にパートナーを決めるとしよう。ということで……」

 

 

 シロウはそういうと私の方を向いた。ついでに椅子から降りて地面に片膝つき、片手を胸あてている。

 

 

「お嬢様。よろしければ宴の当日、私めと踊ってくださらないだろうか?」

 

「……」

 

 

 えーっと返事の前に一言突っ込ませてください。シロウ、最早あなたの言動は上流階級のそれではなく、ただの執事か騎士です。

 

 

「あー、この場合はどういえばいいのかな。えーっと、I'd loved to.(よろこんで)

 

 

 私がそう言うと、シロウは安心したように小さく微笑み、椅子に座り直して昼食を再開した。余りにも洗練されたその動きに私は勿論学友たちは皆固まり、他の大広間にいた生徒も呆然としていた。ああ本当に心臓に悪い。

 

 

 

 

 そんなことがあったのが約二週間前の十二月初頭。ロンはハーマイオニーを誘うことが出来ずに若干不機嫌になり、他の生徒たちも良くも悪くも気分に変動をきたしており、皆授業に集中できていなかった。かくいう私も緊張して思うように授業に身が入らなかった。

 まぁそんな精神状態で迎えたクリスマスのパーティー当日。私とシロウ、その他の代表選手ペアは大広間扉外に待機していた。ちょっと驚いたのが、ハーマイオニーのペアがダームストラング校の代表選手であるクラムだったこと。それとたぶん彼女は、魔法薬かなにかで髪を伸ばしてる。

 

 私はというといつも結んでいる髪は背中に流し、リボンは手首に付けている。肝心のドレスはわざわざイリヤさん達が作ってくれたもので、他の生徒たちほどフリフリしたりもっさりしていない。デザインはいたってシンプルなもので、布地は純白、肩に引っ掛けるように金の帯のようなものがしつらえており、あとは腹部で軽く縛るように金の紐が結ばれているだけ。色と言えばそれだけである。

 更に付け加えるのならば、どうやらこのドレスは魔術的要素が組み込まれているみたいであり、何かの護りみたいなものが働いている。その証拠と言えるかわからないけど、先ほど何度か特徴的な模様のカナブンが私に留まろうとしていたが、その度に弾かれていた。

 で、肝心のシロウの服装だけど。

 

 

「……ねぇシロウ。それ以外なかったの?」

 

「すまないが元々俺は参加する気は無かったものでな。急遽しつらえて違和感がないものは、この燕尾服しかなかったのだ」

 

 

 そう、シロウが来ているのは燕尾服。もうお酒のグラスが乗っているお盆を肩のあたりに持って、フロア中を練り歩けばあら不思議、完璧なウェイターか執事(バトラー)の出来上がりである。いや、マグル界では問題なさそうだけど、魔法界だったらちょっと目立つよな。

 そんなことを考えていると、目の前の扉が開いた。さて、シロウの隣に立っても恥ずかしくないよう振る舞おうか。

 

 

 







はい、今回はここまでです。
いやはや、確かめてみたら約二ヶ月これを放ってました。申し訳ございません。
ようやく一つの小説が完結したことにより、若干気が抜けていたことが否めません。まぁリアルも相応に忙しかったのですが。
マリーのドレスですが、デザインはアイリスフィールが着ていたものと同じものを想像してくだされば。
さて、次回一話を挟んだのち、第二の試練に早速入ろうと思います。
それではまた次回、いずれかの小説で。



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