「みんな、久しぶりだな」
「「お父様!!(パパ!!)」」
「あらあら二人とも、やっぱ甘えたいざかりね」
「おおっとっと。二人とも、いくつになったんだ?」
「「8歳!!(4歳!!)」」
「そうか、もう二年経ったのだな」
「ふふふ。正確には二年と半年ですよ、お父さん」
「そうか。というと剣吾と紅葉は…」
「ああ、この前17になった」
「そして私は15です。高校一年になりました」
「俺は高校三年だな」
「そうか。時間が過ぎるのは早いな」
「でも、若いころのお父さんを見るのは新鮮ですね」
「そうねぇ。その外見は丁度紅葉が生まれた頃にそっくりだもの」
「というかそのままです」
「まぁ積もる話もあるが、場所を移ろう。葵君も綾音君も、そして初めて会うな、浄ノ助君もよく来た。この世界を楽しんでいくといい」
0. プロローグ
最近同じような夢ばかり見る。
どこかの村の外れにそびえ立つ大きな屋敷、その窓から眺めた先の小屋に、その屋敷の管理をしている一人の老人が見える。こちらが点けている明かりに気づいたようで、懐中電灯を片手に小屋から出てきた。
ソファに力なく座る『自分』の目の前に一人の鼠面の男が寄ってきた。
「ワームテール、俺様をもう少し火に近づけろ」
『自分』の口から発せられるしゃがれた声。ワームテールと呼ばれた小柄な男はソファーを動かし、暖炉に近づけた。
そこで周りに霞がかかり、周りの人間が何を言っているかがわからなくなった。ただ小柄の男が、何やら『自分』に諫められているのは分かった。しばらくすると霞が晴れ、再び声が聞こえた。
「もう一人の忠実なるしもべに伝えろ。ホグワーツでのことは逐一報告するようにと。ん? ナギニか?」
蛇が『自分』の近くに寄り、シューシューと音を出した。応えるように『自分』もシューシューと音を出す。
「ワームテール、ナギニが面白い情報を持ってきた」
「さ、さようでございますか、御主人様」
「ああ。ナギニによれば、この部屋の扉のそばに老いたマグルが立ち聞きをしているらしい」
それを聞くや否や、小柄な男は扉をすぐに開いた。すると蛇の言う通り、先ほど懐中電灯を持った老人が立っていた。それを察知し、『自分』はクツクツと喉の奥で静かに笑い声をあげた。
「どけ、ワームテール。客人をお迎えせねばな」
『自分』がそういうと小柄な男はどき、老人の姿が見えた。老人は『自分』の姿を見て、悲鳴を上げる。そしてその悲鳴に被せるように『自分』は言葉を発し、手に持つ杖から緑の閃光を飛ばした。
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目が覚めた。
体からは絞れるほどの汗をかき、激しく息をつく。少し落ち着いてから上半身を起こすと、ランプを片手に私を心配そうに見つめる二人の人物がいた。親友のロンとハーマイオニーである。
「マリー、大丈夫?」
「随分とうなされてたけど」
ランプを小机に置き、ハーマイオニーは熱を測りながら、ロンはタオルを私に渡しながら訊ねてくる。それに対し私は首肯で返し、コップの水を飲み干した。
落ち着いたところで、ベッドから体を下す。部屋には私たち三人と、未だスヤスヤとお休み中のジニーがいた。でも扉の外からは数人の気配がした。恐らく、私が魘されているのを聞き、心配してくれたのだろう。
ズキズキと鈍く痛む首の傷跡を軽くもみ、大きく伸びをした。
「まぁ丁度いい時間に起きたし、私も準備するよ。大したことじゃなさそうだし。ほらジニー、起きる時間よ?」
ジニーを起こし、みんなで階下の食卓に着く。「隠れ穴」は一昨年、アインツベルン家が訪れた際に改築され、ウィーズリー夫妻の希望に近い広さに変わった。なので、前回は外に出ないとできなかった十人以上の食事も、室内でできるようになっている。
「食事が終わったら、各自荷物を確認するんだ。ビルとチャーリーは大丈夫か?」
「いつでも出れるよ。いや楽しみだよ、みんなの言うエミヤ一家に会えるんだから」
「チャーリーもか、実は僕もだ」
「「二人とも驚くこと間違いなしだぜ」」
楽しそうな会話をする五人。確かシロウ一行とは今日合流する予定だ。クィディッチ・ワールドカップの試合会場に直接向かうらしく、私たちもこれから会場に向かう。だが空間転移魔法を使うのではなく、魔法アイテムを使って会場に転移するらしい。「
食事を終わらせ、各々荷物をまとめてキーのある場所に向かう。なんでもキーは所謂マグルの「ガラクタ」らしい。マグルの目から隠すための措置だそうだ。だから見つけるのも一苦労らしい。
キーの置いてある林の中を探していると、奥のほうから声が聞こえた。
「アーサー、ここだ!! 息子や、見つけたぞ!!」
声の聞こえた方向に向かうと、血色の良い髭を生やした男と見覚えのある青年がいた。
「エイモス!! みんな、この方はエイモス・ディゴリーさんだ。息子さんのセドリックは知ってるね?」
ウィーズリーさんの紹介でそれぞれ挨拶する面々。ただ私の番になったとき、エイモスさんが過剰に反応したのは少し嫌だった。セドリックは私の落下の理由をしっかり伝えていたらしいが、そこは息子が一番という親ならではの心で頭からすっぽり抜けているようだった。
「ところで、キーはその二つのボロブーツですか?」
「ああ、その通り。指一本でも触れていれば大丈夫だ」
エイモスさんに言われ、二手に分かれてキーに触れる。するとへその裏を引っ張られるような感覚に襲われた。二つのブーツを中心に空気が歪み、生じた渦に吸い込まれるようにして猛スピードで移動した。そしてしばらく移動したあと、私たちは地面に投げ出された。
「なんともまぁ、派手な登場の仕方だな」
「道具で空間転移だなんて、やっぱこちらとは違うのね」
「でもそれがいいんじゃないんですか?」
「それもそうね。みんな大丈夫?」
懐かしい声が聞こえた。顔を上げると、長身の男性とその三人の妻の姿があった。シロウとイリヤさん、リンさんにサクラさんだ。
「これはこれは、お久しぶりです。また会えて嬉しいです。ほらみんな、挨拶だ」
アーサーさんの紹介でエミヤ夫妻への挨拶を済ませる。その際エイモスさんとセドリックは、エミヤ夫妻の無意識の気迫に若干気圧されていた。ただ、やはり二人ともシロウとイリヤさんたちが夫婦とは気づけなかったみたいだけど。
「改めて、こんにちはシロウ。元気だった?」
「ああ、問題ない。君は……嫌な夢でも見たか?」
「ッ!?」
流石シロウ、誤魔化せなかったか。
「ちょっとね。あとで話すわ」
「わかった」
話をする際、イリヤさんたちも同席することになった。シロウに加えて奥さんの三人がいてくれるなら、何かしら収穫を得ることが出来るだろう。
「なぁなぁシロウ」
「剣吾はいるのか?」
そこにフレッドとジョージが近寄ってきた。どうやら剣吾くんを探しているようだ。因みにディゴリー親子は既にこの場を離れている。私たちもそうだけど、事前に予約していた場所にテントを張るらしい。
「ん? ああ、今こっちに…」
「おっ、いたいた」
「ああ来たか。他の子もいるな?」
「おう、ちゃんといる」
噂をすればなんとやら、剣吾君も合流してきた。ただ初めて会う子も4人ほどいる。
「ほれ、みんな自己紹介しろ。シィも、会ったことない人がいるだろう?」
剣吾君に促され、リンさんとサクラさんにそっくりな子が、シィちゃんが、そして年上のお姉さん二人と大きな男の人が前に出た。
「初めまして、間桐紅葉です。母・間桐桜と父・衛宮士郎の娘、衛宮四
優美さを兼ねて、自然にお辞儀をする紅葉さん。
「初めまして、私は遠坂華憐。母・遠坂凛と父・衛宮士郎の娘、衛宮四兄姉妹の次女です。以後、お見知りおきを」
優雅に片手を胸に当て一礼する華憐ちゃん、流石はリンさんの子供。
「シルフェリア・フォン・E・アインツベルン!! シィって呼んでね!! 一番下だよ」
そして元気よく片手を挙げて挨拶するシィちゃん。可愛らしい彼女の様子に、一同破顔する。後方にいたちょっとゴツい男の人でさえ、口元にちょっとした穏やかな笑みを浮かべている。
「柳洞綾音、剣吾の同級生で幼馴染だよ」
「同じく同級生で幼馴染の蒔寺葵だ!! よろしくな」
お姉さん二人が挨拶する。二人とも美人だなぁ、リンさんとはまた違う強さと、シィちゃんとは違う活発さを感じる。
「…白銀浄ノ助、
「「「「え"ッ!?」」」」
最後の浄ノ助さんの紹介に、私たち面々は口を阿呆のように開けた。シロウに迫る身長に、シロウ以上の筋骨隆々な体。そして何というか、シロウやイリヤさんたち、剣吾くんのように命の駆け引きをしていたような気配がする。とても日本の高校生には見えない。
「まぁ積もる話もあるだろうし、試合までテントで休んでおこう。俺たちの場所はウィーズリーさんたちの隣だ。案内しよう」
シロウの先導で私たちはテントの場所に行くことになった。道中女子陣は女子陣で、男子陣は男子陣で友好を深め、テントに着くまでに仲良くなった。
それにしても剣吾君、ジニーに加えてアオイさんとアヤネさんにまでフラグを立ててたなんて。これじゃあ親子そろって一夫多妻になっちゃうかも。
はい、ここまでです。
四巻以降は原作で上下巻あるので、細かく描写すべき部分とそうでない部分を分けようと思います。ですので、今回はプロローグでしたが、ちょっと駆け足に行きました。
さて、ハリポタの世界にきた衛宮一家+α、今後どうなるのでしょうかね。
因みに浄ノ助、この世界の承太郎の位置にいる少年は波紋を使え、剣吾も彼に波紋を教わったので使えます。
では今回はこの辺で。感想お待ちしております。