錬鉄の魔術使いと魔法使い達   作:シエロティエラ

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では予告通り、ダイアゴン横丁編から開始です。

それではどうぞ




1. 漏れ鍋、そしてダイアゴン横丁

Side マリー

 

 

 

この前、ホグワーツってところから手紙が来た途端、叔母さんの様子が変になった。妙にそわそわして落ち着きがなく、叔父さんもダドリーも怪訝そうな顔をしていた。

 

そして今日、更に驚くことがあった。

何と私2、3日ぶんの服を用意させ、週末にロンドンに行くといってきたのだ。これには叔父さんも唖然としていた。

そりゃそうだ。今までこんなこと一度もなかったから、私も唖然とした。

案の定ダドリーが自分も行くと駄々をこねたが、叔母さんはそれを許さなかった。恐らく初めて叱られたのだろう、ダドリーは呆然としていた。

 

私、叔母さんがダドリーを叱るところを初めて見た気がする。

 

 

約束の週末になり、私たちはロンドンにいた。どうやら待ち合わせをしているけど、まだ時間があるらしい。私の荷物を見た叔母さんは何を思ったのか、私に新しい服と靴を買ってくれた。

 

やっぱり叔母さん変だ。いつもはこんなことしないのに。今まではダドリーのお古を繕ったものしか貰えなかったのに。もしかして私は施設に捨てられるのだろうか?

 

そう考えていると、髭もじゃの大男が近づいてきた。ルビウス・ハグリッドって名前みたい。

叔母さんと話をしていたけど、突然叔母さんがハグリッドに頭を下げた。これにはハグリッドも困惑していた。

 

 

「……この子をお願いします。姉の忘れ形見を、ホグワーツまで無事に送り届けてください……」

 

 

……聞こえた。

蚊の羽音のように小さな、小さな声だったけど

確かに聞こえた

 

なんでだろう?目からたくさん水が出てきて止まらない。

でも不思議。少し軽くなった感じがする。

この感じ・・・・・・嫌じゃない。

 

叔母さんはまるで逃げるように、足早に立ち去っていった。

 

 

 

 

 

 

Side ハグリッド

 

 

驚いた。

 

あのダドリーっちゅう息子を見る限り、リリーとは大違いのコチコチマグルと思っていたんだが、まさか頭を下げるとは。

マリーは泣いているし、こりゃさっさと漏れ鍋に行くに限るな。もう一人の男の子も待たせとるし。

 

しかしマリーは年相応な感じ、まぁ少し純粋な感じがするが、だがあのシロウっちゅう少年。同い年のはずなのに、妙に達観してるっちゅうかなんちゅうか。

まぁダンブルドア先生が信頼なさっとるし、大丈夫だろう。

さぁ、そろそろ行こうか。

 

 

 

 

 

 

Side ???

 

 

 

何だアレは! この俺様が心底恐怖するなど!

 

あの小娘に呪詛返しされたときは保険があったから、まだ大丈夫だった。だがヤツは何だ!? あの白髪の極東の小僧は!

 

俺様は今ほとんど魂だけの存在だからわかる。

 

アレは、あの小僧はまずい!

あの白髪の小僧は確実に計り知れない何かをその内に持っている。

 

まるで一つの世界を背負っているような、そんな存在だ。

 

いや、それはない。人一人、ましてや子供一人が世界を背負うことができるはずもない。

 

だが、アレを見てるとこちらの推測が正しい感覚になってしまう。

 

彼奴には言い含めなければ。

 

アレに関わるとロクなことにならない。最小限に留めるべきだと。

 

敵対すれば最後、命がいくつあっても足りなくなると!

 

 

 

 

 

 

 

 

Side シロウ

 

 

ふむ。どうもあのターバンの中から邪な気配を感じるな。

だが殺意と同時に恐怖心も感じられる。推測する限り、あの男の体にはあの男自身の魂と別の魂が宿っているか。

 

もしや、アレがダンブルドア校長の言っていた例の……

何であれ、この場で仕掛けることはないだろうが、警戒するにこしたことはないだろうな。

 

む?ようやくハグリッドがきたか。マリーも一緒にいるな。目元が晴れているが、泣いたのか。だが少しすっきりとした顔になっている。なら心配することはないか。

 

しかしハグリッドよ。時間は守ってくれ。予定より30分遅れるとはどうなんだろうか。遠坂のうっかりは酷かったが、時間に関しては聖杯戦争以来決してうっかりをしなかったぞ……

 

 

 

 

 

Side マリー

 

 

漏れ鍋に入ると沢山の人に囲まれた。少し怖かったからハグリッドにしがみついて皆の顔を見ると、なかには見覚えのある人が何人かいた。

 

あ! シロウがいる!

シロウも魔法使いだったんだ!

(マリーは既に自分が魔法使いであるとハグリッドに教えられています)

 

でもシロウ、ずっとターバンの男の人を見つめてるけどどうしたんだろう?確かにおどおどしててちょっと不思議な感じのする人だったけど、気になるほどじゃなかったしな。

まぁいっか。

 

ハグリッドに連れられて、私とシロウは漏れ鍋の裏路地に入っていた。ハグリッドが何やらぶつぶつと呟きながらレンガの壁を傘で叩いているけど何してるんだろう?すると突然壁が動きだして目の前が開けた。

 

……すごい……!

 

開いた口が塞がらないとはこういうことを言うのだろうか?見たことのないお店が商店街よろしく、たくさん並んでいて目移りしてしまう。

シロウもビックリしているみたいで目を見開いていた。

 

とりあえず物色は後回しにしてグリンゴッツ銀行に行くことになった。何でもゴブリン達が経営している、世界中に支店のある魔法界唯一の銀行なんだって。もう建物からして立派だよ。

 

ただシロウが隣でずっと、

 

 

「・・・なんでこんなにも普通に幻想種がいるんだおかしいだろオレがいた世界にはいなかったのに何でこんなにいるんだよなんでさなんでさなんでさなんでさなんでさナンデサナンデサナンデサナンデサナンデサナンデサナンデサ・・・・・・」

 

 

ってぶつぶつ呟いていたけど、大丈夫かな? 人酔いでもして気持ち悪くなったのかな? あとオレのいた世界ってどういうことだろう?

 

まぁいっか。

 

トロッコに乗って、地下深くにある私の金庫に行ってとりあえずお金をひきだしたんだけど……お父さん、お母さん。お二人はどんな仕事なさってたんですか? 明らかに一般家庭が持ってる資産じゃない気がします。ちょっと私には多いです。

 

次にハグリッドの用事を終わらせて(あの小さな包みはなんだったんだろう?)地上に戻ると、士郎はマグルお金をカウンターで両替した。

やっぱりゴブリンたちはお金とかに関してはきっちりしてるんだね。交渉とか一切通じない雰囲気をまとってた。

 

お金も持ったから、あとは道具を買いそろえるだけだね。

あ、募金箱。聖マンゴー……なんだろう? とりあえず病院への寄付ってことはわかった。

うん、ガリオン金貨三枚入れていこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side シロウ

 

 

途中取り乱してしまったが、一通りオレとマリーの道具を買い揃えてあとは杖を買うだけとなった。ここでオレに一抹の不安がよぎった。

 

元の世界では、固有結界からこぼれた投影、強化、解析ぐらいしかまともに魔術を使うことができなかった。万華鏡でさえ匙を投げそうになるほど、他の分野に適性がなかった。

 

もし、この世界でもマトモに魔術を使えなかったらどうしよう。こちらの魔術はおいそれと使うことはできない。間違いなく異端扱いを受けるだろう。そうなれば、受けたマリー護衛依頼が完遂できなくなる。

 

そうこう考えているうちに、オリバンダー杖店に着いた。もういいか、鬼が出るか蛇が出るか。運命に任せよう。

 

 

店に入ると老人が、恐らくこの人がオリバンダー老なんだろう、嬉しそうな表情でマリーの杖を見繕い始めた。

何本も何本も試した結果、柊に不死鳥の尾羽根の杖に決まったようだ。だが驚いた。

何と例の闇の魔法使いと兄弟杖らしい。兄杖がマリーの両親を殺し、マリーの首に稲妻形の傷をつけたのか。なんて因果なんだろうな。

それからハグリッドと2、3言交わしたあと、オレの順番になった。

オレを見た瞬間、オリバンダー老は目をこれでもかと見開き、「もしかすると、まさか・・・・」と呟いて奥へと引っ込んだ。しばらくして杖の箱と比べ、大きめの箱を持ってきた。何故だか懐かしい感じがする。

 

開けるとそこにはアゾット剣が納められていた。

 

 

「これは、凛の……」

 

「これは私が五年ほど前、杖の材料を探す際にある男から預かっていました。」

 

オリバンダーは続ける。

 

 

「その男は万華鏡の様に輝く短剣を腰に携えていた。そして私を見つけるやいなやこちらに近づき、こういった。

『いずれお前の店に、白髪の東洋の少年が訪ねてくる。その時これを渡してくれ』と。

そういってこの短剣を、少々私が知るものと趣が異なりますが、アゾット剣でよいですかな? 私に預けた。

それはあなた以外は使えないよう術式が組み込まれていると。あなただったのですね、エミヤ様。彼の言っていた少年とは。」

 

 

万華鏡の老師、はっちゃけ爺さんとは思っていたが。まさかここまでするとはな。まったく、至れり尽くせりだ。

 

 

「それからこちらの手紙を。彼から預かっていたものです。あなたならその封を解き、中が読めるようになると。」

 

 

そういってオリバンダー老はマリーの杖の料金だけ受け取り、店の奥へと引っ込んでしまった。

 

 

 

 

 

 

 

幕間 手紙 遥か遠き世界より

 

 

 

 

━━ 士郎。これを読んでるってことは、無事大師父から受け取ったようね。

私なりにあなたを送った世界について調べたけど、私たちの世界とは魔法形態が違うことはもう把握してるでしょう。

あなたのことだから自分はここの魔術も使えないのか不安に思ってるでしょうけど、それは杞憂だから安心して。多少は苦労するでしょうけど、魔力さえあればその世界の魔術は使えるわ。

 

あと、そちらの世界でも英霊や守護者の概念があることが確認できたわ。けど恐らく古い文献ぐらいにしかのってないし、その存在を知る人も数える程度しかいないでしょう。

もしかしたら運悪くそれを悪用する人が出てくるかもしれない。その場合、あなたがまず最初に対処を任されると思うわ。そうならないよう祈っとく。

 

さて、あなたのことだからまた一人で突っ走ろうとするのでしょうね。

でも肝にめいじておきなさい。

あなた一人でできることなんてそう多くない。私や桜、イリヤでも一人でできることなんて少ないわ。

 

だからね、士郎。一人でもいい。二人でもいい。あなたが背中を預けることができる人を、もしくはあなたの安寧となる人を作りなさい。守る人がいるあなたは自分は勿論、他の誰にも決して負けはしない。

 

最後に、その世界で幸せになりなさい。私や桜、イリヤがいるからあなたは変に負い目を感じてるでしょう。私たち3人をかこってる時点で今更じゃない? 私の第二魔法が完璧になったら娘たちを連れていずれ遊びに行くけど、幸せになってなかったら捻切るわよ。

 

じゃあここら辺で。みんな元気にしてるわ。あなたも無茶しないように。

 

 

 

凛 ━━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






こんばんは、こんにちは、おはようございます、ホロウメモリアルです。


原作でダーズリー一家は、なかなかに酷い家族でしたので、せめて一人でも味方がいれば主人公の心が原作よりスレることはないだろう、と思いました。

で、その中から一番濃く血が繋がっているペチュニアを選出した次第です。やはり子供が一番救われる感情は「母の愛」ではないかと。


ではこの辺で



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