大学に行く前に半分まで執筆して、パソコンをスリープにしてから家を出て(スリープになっていることを確認して)、大学から帰ってきたら勝手にシャットダウンされている状況。
おかげで小説のデータも、課題レポートのデータも消える始末。この怒りをどこに向ければ。
それはそれとして、更新します。
差出人のわからない新品の箒。しかもそのスペックは現時点で速度、機動性、繊細さが最高である”ファイアボルト”。包みから転がり、床に落ちたそれを見て、箒にそんな詳しくないハーマイオニーでさえも目を丸くしていた。
「それ…本物?」
「うん。そうだと思う」
「でも誰から…?」
誰から送られてきたのか。それが非常に気になり、包装に使われていた紙を隅々まで調べた。でも手紙などはやはり同封されておらず、結局見つかったのは、大きな包装紙いっぱいに広がる変な印だけだった。
その印は三本の剣が三つ巴を描くように組み合わさり、そして中央にある一本の剣を囲んでいた。何よりも剣の形に目を引かれた。
一つは剣というより斧といったほうがしっくりくるもので、剣の腹の部分には雪があしらわれていた。
二本目の剣はまるで釘のような形をしており、その腹には花があしらわれていた。
そして最後の三本目の剣、それは他の二本とは意匠が異なり、刀身が塗りつぶされておらず、宝石を思わせるような亀裂が入ったものだった。まるでゼルレッチさんの短剣のように。
宝石に雪に花、いったいこれが指し示すものは……
ふと頭の隅に三人の人物が浮かんでくる。
一人は凛としてクールな雰囲気を纏った、赤が非常によく似合う女性。
もう一人は優美という言葉を体現したような女性であり、桜の花が非常に良く似合いそうである。
最後は聖女という表現が非常にしっくりくるものであり、雪のように混じり気のない純粋な白を身に持つ女性。
「…ねぇシロウ」
「何だ?」
唯一混乱する私たちに参加していなかったシロウのもとに行き、包装紙の印を見せる。
「この印、シロウに…エミヤ家に何か関係ある?」
「先に聞くが、そう思ったわけは?」
シロウに質問を返されたため、先ほど私が考えたことをそのまま伝えた。説明していくうちにシロウの表情は徐々に変わり、最終的には満足したような顔をしていた。
「成程な」
「それで、答えは正解なの」
「ああそうだ。それは遠坂、間桐、アインツベルンが自分の家紋とは別に、衛宮と合わせた四家共通の家紋として使っているものだ」
「というとこれは…」
「そうだ。その箒は俺たちエミヤ家からのプレゼントだ」
やはりというべきか、予想した通りだった。ただそうなると、少し後ろめたい気持ちがある。普通のプレゼントに加え、私は皆よりも一つ多くもらっている。さらに言えば、現時点では相当高価な箒である。
「いいのかなぁ。私だけ特別扱いみたいで嫌だな」
「心配しなくても、皆の分もちゃんと預かっている。箒と同等のものをな」
「え?」
シロウに指示された先を見ると、なるほど。確かにみんなアクセサリーとは別の物品を持っており、その全ての包装紙にエミヤの紋章が描かれていた。
ロンとハーマイオニー、パーシーとジニーには学校指定のローブを模した対魔法用ローブ。そしてフレッドとジョージには何か分厚い本を手渡していた。
「そういえばハーマイオニー。クルックシャンクスはどこ?」
膝でお昼寝するハネジローを撫でながら、ハーマイオニーに尋ねる。基本ハネジローと同じで自由行動させているらしいけど、入学してからと言うもの、ほとんど見かけたことがない。
「あの子は今狩りに行ってるはずよ」
「頼むからスキャバーズに近づけないでくれよ? 女生徒ならともかく、動物は雌雄関係なく男子寮に入れるんだから」
「その辺はちゃんと言い聞かせてるわ」
どうもハーマイオニーはちゃんと躾けてるらしい。まぁあの子は多分ハネジローと同等の知能は持ってるだろう。それに野生の感が加われば、まさに最強の猫といえる。
ふとシロウに視線を向けると、何やら虚空を見つめてボーッとしていた。でも彼から魔力が感じられるため、恐らく何か自分だけでやっているのだろう。
「シロウ、どうしたの?」
目の焦点が合ったところで、彼に話しかけた。
ちなみにロンとハーマイオニーは未だにクルックシャンクスとスキャバーズに関する話をしており、双子は書物を読んでは羊皮紙に何やら熱心に書き込んでいる。そしてジニーとパーシーはチェスに勤しんでいる。
「ん? ああ、少しな。知り合いと話していた」
「そう」
「ちょっと出てくる。夕餉時までには帰る」
「うん、いってらっしゃい」
シロウはものの数分で準備で終わらせ、寮を出て行った。シロウの恰好、学校のローブや私服じゃなく、黒の上下に真っ黒なロングコート、黒い手袋をはめ、首には真っ赤なロングマフラーを巻いていた。
何だろう、シロウの顔がどうも険しくなっていたような気がする。何も悪いことが起こっていなければいいけど。
◆
談話室で遊ぶ談笑するマリーたちを眺めていたとき、唐突に念話が入ってきた。加えて相手はハッチャケ爺さんことキシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグ。応じないわけにはいかない。
≪師匠、如何しました?≫
≪シロウ、問題が起こった≫
≪何かまずいことが≫
≪うむ、例のブラックという小僧を凛がそちらに送ったのだがな。どうも奴にトラブルが生じたらしい≫
≪トラブルというと?≫
嫌な予感がする。
≪うむ。こちらの愚か者の魔術師が一人、隠れて紛れていたらしく、気が付いた時には既に移動を終えていたらしい≫
≪で、ブラックが捕まったと。師匠達はむやみに手を出せないから、俺で処理してほしい、というわけですね?≫
≪そういうことだ。頼めるか?≫
≪無論≫
今回ばかりは仕方がない。凛特有の”うっかり”でもないし、ましてや今ブラックは杖を持っていない。
幸い奴がこの世界に来てから、奴に付けたマーキングでどこにいるかは判っている。あとはダンブルドアから許可が出ればいいが。
「シロウ、どうしたの?」
「ああ、少し知り合いと話していてな」
「そう」
「少し出てくる、夕餉時までには帰る」
「うん、いってらっしゃい」
着替えを手早く済ませ、真っすぐ校長室へと向かう。途中でスネイプに会ったため、合言葉を教えてもらった。
『牡丹餅』
「どうぞお通りください」
合言葉で像をどかし、部屋に入る。ダンブルドアは俺が来ることを察していたらしく、既にデスク前に座っていた。
「どうしたのじゃ? 今は休暇中じゃろう?」
「ブラックがこちらの事情に巻き込まれた。これからその処理に向かたいが、いいだろうか」
「止めても行くのじゃろう? 付近までわしが送ろう。帰りは君の使い魔で知らせてくれぬか?」
「了解した」
校長の許可も出たことだし、早速向かうとしよう。遠見の要領でダンブルドアにイメージを送る。大体を察したらしく、彼は杖を構え、こちらに近づく。
「わしの腕をつかんでくれ。”姿くらまし”をする」
「空間転移か。十年ほど前にも同じことをしたが、どうもあの感覚は好きになれん」
「慣れれば便利じゃぞ?」
そう言いつつ、ダンブルドアは杖をかかげてその場で一回転する。途端に俺を襲う、細いパイプを通るような圧迫感。そして視界に次々と映っては消えていく風景。そしてそれらが落ち着いたとき、俺とダンブルドアはロンドン郊外にいた。
「あれは…確か」
「ストーンヘンジじゃのう」
「ふむ…あそこから魔力の胎動を感じるな。龍脈は破格のものが通ってるし、即興の儀式をするには十分だ」
「ではシロウよ。またあとでな」
「ああ」
再び”パチンッ”という音を発しながら、ダンブルドアは姿くらましをした。
さて、行くか。
しばらく歩くとストーンヘッジから仄かな明かりが漏れているのが確認できたため、一つの岩の陰に隠れる。
「…私をどうするつもりだ」
「君が魔力を持っていることは確認済みだよ。あの憎たらしい遠坂が言っていたしね、君が魔法とやらを使えるって」
「こうして台座の上に縛り付けて、生贄にでもするつもりか?」
「御名答!! この世界では協会に怯えることもないからね、堂々と他人を巻き込んで私の実験ができるのさ!! これで私も根源に近づくことが出来る。ようやく私も本物の魔法使いになれる!!」
「訳のわからないことを」
「そのための前段階だ。降霊呪術の生贄として、君を使わせてもらうよ」
…なるほど。真っ当な魔術師だな、こいつは。それに、この声、聴いたことがある。
「光栄に思うといい!! 君はこの私、ビーフス・トロガノフ様の役に立てるのだからな!!」
思い出した。確か逃げ足だけが早い小物だった。一度高校を卒業したばかりの時に奴の捕獲を依頼されたが、まだ俺が未熟だったがために、あと一歩のところで逃がしてしまい、行方知れずだった。
まさかブラックに紛れ、ここまで来るとはな。
「さて、そろそろ時間だからはじめようか」
どうやら儀式を始めるらしく、トロガノフは香を焚き始めた。さて、俺も行動を始めよう。
岩陰からこっそりと出て、奴の死角へと移動する。寝かされているブラックは俺に気づいたが、特に反応しないところを見ると、俺のしようとしていることを理解しているらしい。
トロガノフは魔法陣を地面に刻んでいる。こういった陣は一部分でも欠損が出れば効力がなくなる。今奴はこちらを見ていない。
というわけで、だ。
「――投影、開始」
右手に現れるはコルキスの王女の人生を体現せし短剣。その名を”
俺はそれを魔法陣に突き立て、次にこの世界の魔法で見えないように術を施す。そして俺は再び岩陰に隠れ、遺跡を囲むように罠を張り終えたとき、奴の準備が終わった。
「これで良し。さて、早速始めよう!!」
相変わらずの大げさな身振りで発言し、台座へと歩み寄る。そして詠唱をはじめ、陣に魔力を流し込む。だが布石は打ってある。
流れた魔力は短剣に達した瞬間霧散し、効力を失った。
「む? なんだ?」
「貴様のやり方が不完全だったんだろう」
「うるさい!! 私が間違えることはない!!」
そして奴は台座の周りをくるくる歩き回り始めた。何やらぶつぶつ言っているが、恐らく答え合わせでもしているのだろう。
俺はもう一度岩陰から出ていき、奴に近づいた。そして
この銃の弾には切嗣と同じ、俺の起源を織り込んだ”起源弾”を使用している。俺の場合、目標に打ち込まれたら魔術回路に俺の魔力が流れ込み、最終的には内側から剣が何本も生えてくると言うもの。切嗣よりも非道なものだが、相手を確実に仕留めるには適しており、今まで何度か使ってきた。
っと、どうやら奴は儀式を再開させるらしい。再び台座のそばに立ち、詠唱を始めたため、俺は奴に照準を合わせた。
◆
不覚にも移動直後にとらえられ、情けなくも拘束されて生贄にされようとしている。隠れていたシロウが陣に小細工をしていたために問題はないが、いったいどうこの状況を打破するつもりなのか。
考え事をしていると、再びビーフ……ビーフカリー・ライス? が戻ってきて詠唱を始めた。しかしまた魔力が霧散し、儀式は失敗する。
「何でだ!? 私の理論は間違っていないはず、だが何故失敗する!!」
何故何故と繰り返す、自称完璧な魔術師。そしてその後ろから忍び寄るシロウ。その右手には、銃だと? あれもあちらの世界でいう魔術礼装なのだろうか。
「くそっくそっ!! 私は完璧なはずだ、間違いなd『それが外的要因からだったら?』なに? ッ!? お、お前は、まさか!?」
「久しぶりだな。まさか貴様が生きていて且こちらに来るとは」
シロウ、もしかしてこいつは知り合いなのか? そしてその頭に標準を合わせている銃、随分と大きいのは気のせいか?
「な、何故貴様がここに!? 殺されたという話ではなかったのか!?」
「答える義理はないな。二十年越しの任務、ここで果たさせてもらう」
「ちぃ!? 食らえ!!」
男は地面に何かボールのようなものを投げた。途端視界に広がる白。爆音がないことから、魔術による閃光だろう。私も真正面から見てしまったため、視界がつぶれて何も見えない。
「猪口才な、そんなものが効くとでも?」
シロウの声と共に聞こえる金属音。そして続いて聞こえた銃声と悲鳴、金属が擦れあう音と聞くのも嫌になる肉が裂ける音。視界が回復したため、音が聞こえたそちらに視線を向ける。
目に入ったのは煙を上げる銃口、無表情で正面を見つめるシロウ。そして全身を剣で串刺しにされた、人だったものだった。
ふえぇ…メインキャラたちの魔改造が進んでるよぅ…
はい、今回はオリジナル回でした。
オリジナルキャラであるビーフスさんですが、この話だけのかませ犬です。今後はアーチャーさんの警告に出た魔術師以外は出さないので、ご容赦ください。
正直に言います、ハリポタ三巻の内容忘れました。現在他の人の作品を読み、大体の内容を思い出している最中です。
さて、次回はスネイプ先生による防衛術授業と、原作から時期の遅れたブラック襲撃事件です。
それではこの辺で。