錬鉄の魔術使いと魔法使い達   作:シエロティエラ

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今回少し長いかもです。
それではごゆるりと。




9. その後とプレゼント

 

 

 決闘騒動の後、気絶させられた魔法使いたちは起こされた後、ガマガエル女を除いて全員が負けを認めた。道具を使ったのは明白だったけど、シロウ本人も認めていた、魔法が一切効かないことに加えて普通じゃない身体能力。降参の意を示すには十分だった。

 理由は至極簡単、仮令魔法を防いだ外套を使っていなくても、瞬き一つの間に六人を昏倒させ、息一つ上がらぬ身体能力の前では、杖を構える時間すら隙になってしまうためである。杖さえ構えられないのなら、流石のダンブルドアも敵わないだろうと。

 

 しかしここでガマガエル女、アンブリッジとかいう大臣のお気に入りが異を唱えた。シロウのやっていることはインチキであり、実力ではないと。麻痺の呪文は聞かなかったが、”許されざる呪文”や閃光が飛ばない魔法なら効果があるはずだと(のたま)った。

 

 

「しかし、ドローレス。一度負けたところでいちゃもんを付けては…」

 

「私が証明いたします!! 『縛れ(インカーセラス)』!!」

 

「ッ!? ドローレス!?」

 

「卑怯な!!」

 

 

 突如アンブリッジの杖先から放たれた一本のロープは、意思を持っているかのようにシロウに巻き付いて強く縛り上げた。しばらくシロウはモゾモゾ動いていたけど、そのまま雪の中に仰向けに倒れこんだ。

 たぶんあれは態と背中から倒れた。顔が全然焦ってなかったし。

 でもそれに気づいていない皆は、それぞれ反応を示して……訂正。スネイプ先生とマグゴナガル先生は気づいてる。でもマグゴナガル先生はアンブリッジの所業に怒りを示していた。マグゴナガル先生だけじゃない、教師陣はみな一様に怒りの意を露わにしていた。

 

 

「フフフフ。いくらお前でも、この状況では何もできないでしょう?」

 

「……」

 

 

「ェヘン、ェヘン」と変な咳払いをした後に、気持ちの悪いほどの甘ったるい猫撫で声で語るアンブリッジ。どうやら自分の優位だと隠していたらしく口元には虫唾の走る笑みを浮かべている。それを無表情(かつ)無言で見つめるシロウ。

 

 

「覚悟なさい。極東の子猿風情が大臣の顔に泥を塗ったことを、たっぷりと後悔させてあげる」

 

「……」

 

「何ですかその生意気な目は。『苦しめ(クルーシオ)』!!」

 

「グッ!!」

 

「ドローレス!! 流石にそれはいかん!!」

 

 

 アンブリッジが呪文を使ったとたん、周りが大騒ぎしだした。

 どうやら使ってはいけない魔法を使ったらしく、周りはアンブリッジを止めようと動く準備をする。けどやはり権力の犬だからか、大臣の命令がないと動けないらしい。そして肝心のファッジはオロオロして何の役にも立たない。

 

 

「ハァハァ。どうかしら、”磔の呪文”の味は?」

 

「……」

 

「フフフ。痛すぎて言葉も出ないようね」

 

 

 満足そうな笑みを浮かべたアンブリッジは、ファッジのほうへと体ごと顔を向けた。それにしても磔って、拷問をしたことと同じでしょう。

 

 

「どうです大臣。私の仮説は正しかったですよ!!」

 

 

 心底うれしそうな声を発するアンブリッジ。恐らくその目は、彼女の意識は全てファッジに向けられていた。だから気が付かない、彼女の後ろでゆらりと立ち上がるシロウに。

 

 

「やはりこの子猿のさっきやったことはインチキです!! その証拠が……」

 

「こうしてピンピンしている俺か?」

 

「へっ?」

 

 

 間抜けな声を出したアンブリッジが振り返った先には、いつの間にか着替えたのか、以前見た真っ黒なボロマントと黒い軽鎧を身に付けたシロウがいた。髪は先ほどまでとは違い、全て掻き揚げられていた。

 

 

「え、あ…な、なんで…」

 

「まさか、さっきの磔の呪文とやらは危険な魔法、とでもいうつもりか?」

 

「そんな……確かに磔の呪文を…」

 

「あの程度の拷問で満足しているようだが、俺には効かない」

 

『ッ!?』

 

 

 シロウの発言に皆言葉をなくす。

 恐らく磔の呪文というのは、発明されても決して使ってはいけない、その名の通り”許されざる呪文”なのだろう。拷問という言葉通り、痛みを伴う呪いを魔法で行う。それが効かないというシロウは、彼らにとってど映っているのだろう?

 

 

「もう貴様には用はない。せめてもの慈悲だ、眠れ」

 

「なnッ!? グゥ…」

 

 

 瞬きの間に、アンブリッジのドテッ腹に突き刺さるシロウの拳。そして力なく地に伏すアンブリッジ。殺されなかっただけマシ、ということかな。

 

 

「さて大臣。この女のことだが、そちらに任せよう。公正な判断をお願いする」

 

 

 そう言い放ったシロウは服装を制服に戻し、その場から去っていった。私もその後の嫌な空気に耐えられず、早々に抜け道に戻っていった。

 

 

 

 

 

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 そんなことがあったのが一か月前。結局シロウはお咎めなしで、あの日は何食わぬ顔で帰ってきた。でも本来違法な魔法を使った女もお咎めなしだったようで、シロウはともかく、マグゴナガル先生は若干不機嫌だった。

 そのまま大きな出来事もなく、私はクィディッチの試合を学校の箒で出場しながら学業をこなし、ついに三度目のクリスマスを迎えることになった。

 

 休暇中だったけどいつも通り、朝の七時に起床してタオルと水を用意し、厚着をして外に出る。そのまま外の広間にでると、やはりシロウが鍛錬をしていた。朝も早く、また学校周囲に吸魂鬼が配置されているため、ここ二年よりもさらに生徒数が少ない。そのためか、シロウはいつもの木刀ではなく、白黒の双剣で鍛錬をしていた。

 三十分ぐらい一心に剣を振っていたか、最後に一度大きく左右に切り払うと、シロウは一つ息を吐いた。

 

 

「お疲れさま、シロウ。はい」

 

「む? ああ、ありがとう」

 

 

 タオルと水筒を受け取ったシロウは、全身から蒸気を発しながら汗を拭いていく。ふと彼の足元に目を向けると、彼の周りだけ雪が解けていた。

 

 

「今日も結構やってたみたいね」

 

「ん? ああ、今日は二時間やっているな」

 

「そう。たぶんお風呂場空いていると思うし、ご飯の前に入ってきたら?」

 

「そうしよう」

 

 

 タオルと空の水筒を受け取り、寮に戻って食堂に行く準備をする。タオルは洗濯に出し、水筒は自分で洗う。丁度全部作業が終わったころに、シロウとウィーズリー5兄妹、ハーマイオニーも準備を済ませてきたので、総勢八人という結構な人数で食堂へと向かった。

 毎年同様閑散とした食堂には、教師も含めて三十人程しかおらず、机の上の御馳走も量が少なめだった。でも相変わらず御馳走はとても美味しく、魔法のクラッカーのプレゼントも魔法界ならではの面白いものが多数あった。何故か”騙し杖”が混じっていたけど。

 で、朝食も済ませて寮に戻ると、早速みんなはプレゼントの開封に専念し始めた。私は自室に戻り、みんな用のプレゼントを用意する。今年は学校のキッチンを借り、クッキーとケーキを作ってきた。ダーズリー家とウィーズリー家、そしてエミヤ家には保存のきくお菓子を作った。

 階下に降りると、シロウ以外のみんなはプレゼントを開封し終え、皆お揃いのウィーズリー家特性セーターを着用していた。

 

 

「ごめんね、遅くなって。はい、メリークリスマス」

 

「問題ないさ、メリークリスマス」

 

 

 クリスマスの挨拶を済ませ、プレゼントを渡してから私も開封に移る。最初はシロウからで、中には流麗な剣を象った簪? ヘアピン? で、早速髪を結って付けてみた。そのヘアピンからは微かにシロウの魔力が感じられ、とても暖かい感覚に包まれた。

 次に目についたのは、何やら長くて大きな包み。大きさは私と同じぐらいで、触った感触が箒のようだった。包みをはがし、開封すると、そこには一本の箒があった。柄の部分には、”Fire Bolt(炎の雷)”と金文字で刻印されていた。

 

 現時点で最速最高と言われている箒、”ファイアボルト”が誰かから送られてきた。

 

 

 

 





はい、ここまでです。
次回はデレマスを更新しますが、活動記録にてアンケートを獲ろうと思います。
ではこの辺で。

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