まさかの連騰でした。自分でも驚いています。
それではみなさんごゆるりと。
くだんの週末がやってきた。今は叔父さんがマージ叔母さんを迎えに行っている。外の天気は私の心情を表すかのような土砂降り。
私マリーはペチュニア叔母さんと夕食の下拵えをしていた。ダドリーは新しく庭に作った超小型ジムで自主トレをして、あ、帰ってきた。
「ダドリー、叔母さんが来る前にお風呂に入ってきたら?」
「そうするよ。夕ご飯は?」
「今夜ははダドちゃんの好きなラムチョップよ。だから早くいってらっしゃい」
叔母さんに促され、ダドリーは着替えを持って風呂場に向い、私は夕食の準備を再開した。
一時間ほど経過した後、外で車が停車する音がした。ああ、来てしまったか。ついでに犬の吠える声も聞こえる。私は無意識にペチュニア叔母さんの袖をつまんだ。叔母さんは一つ私の肩に手を置くと、私を伴って玄関まで出迎えに行った。そして玄関にたどり着くか否かというとき、扉が勢いよく開かれた。開かれてしまった。
「ダドリーはどこかぇ?」
マージ叔母さんが吠える。
「私の可愛い甥っ子ちゃんはどこだい!?」
マージ叔母さんはスーツケースを放り投げながら、私はそのスーツケースに吹っ飛ばされ、リビングのダドリーの元へと突進していった。ダドリーにたどり着いた叔母さんはその頬にキスをし、
「ペチュニア!!」
今度は叔母さんに突進し、その骨ばった頬にまた深々とキスした。あ、ダドリーの右手に10ポンド札が二枚握られてる(投稿時、1ポンド=161,7円)。マージ叔母さんの後から犬を連れたバーノン叔父さんが入ってきた。
「マージ、ブランデーはどうかね? 犬の食べ物はどうするかね?」
「この子は私と同じものを食べるさ。好きだからねぇ」
マージ叔母さんはクスクスと笑いながら叔父さんに振り返り、そしてそこで初めて私を見た。
「おんや?」
叔母さんは先ほどとは打って変わった、不快さを露わにした声を上げた。
「お前まだここにいたのかい!!」
「…はい、お世話になっております」
「何だいその答えは!! あたしだったらこんな礼儀知らず、すぐにでも孤児院送りだね」
あなたに言われたくないわ。一から礼儀作法を学んだほうがいいわよ?
そう思った私は間違ってないはず。
それからの数日は酷かった。
バーノン叔父さんとペチュニア叔母さん、ダドリーは私をマージ叔母さんから遠ざけようとしてくれたけど、マージ叔母さんは私を側に置きたがった。そして何かといちゃもんを付け、私の怒りを煽った。でも私はそれには乗らない。乗ったら最後、叔母さんの思う壺だ。
だから私は必死に耐えた。
ペチュニア叔母さんの見ていないところで、何度も犬を嗾けられ、靴下やストッキングの下には包帯を巻いている。化膿しないように消毒液を染み込ませ、包帯も定期的に交換し、ついに最後の四日目になった。
◆
その日はペチュニア叔母さんに頼まれ、玄関外の花の手入れをしていた。叔母さんはガーデニングを趣味にしていて、多種多様の花を育てている。何故か中には薬草の類も混じっているけど。でも前々からこれをやっていたためか、ホグワーツの薬草学でも特に苦労したことはなかった。慣れって大事だよね。
でも平和な時間は長く続かなかった。荒い鼻息と低いうなり声が背後から聞こえた。恐る恐る振り返ると、そこには大きなブルドッグが佇んでいた。まさかと思って家の窓を見ると、それはそれは嫌な笑みを浮かべたマージ叔母さんが見えた。
突然右足
「まったく、この犬の飼い主はどんな神経をしているのかしら? 」
でもその時は予想以上に早くきた。聞き覚えのある、気品のある声が前方から響いた。閉じていた眼を開けると、そこには一年ぶりに会うシロウの奥さん、イリヤスフィール・フォン・E・アインツベルンが立っていた。
「え? あ、あの…イリヤ…さん?」
「久しぶりね、マリー。迎えに来たわよ」
迎えに来た? 彼女はそう言ったのか?
「でもちょっと待ってね。この犬の飼い主をとっちめないと」
イリヤさんはいつの間にか私から離されていたブルドッグを抱え、これまた私の気づかぬうちに私の足を治療し、まっすぐ玄関へと向かった。私を伴ったイリヤさんは躊躇することなく玄関の扉を開けた。戸の音を聞いたペチュニア叔母さんがこちらにくる。
「マリー? 花壇の作業……は…」
「初めまして」
「へ? ど、どちらさまでしょうか?」
「イリヤスフィール・フォン・
「え、あ。ど、どうも」
いつの間に叔母さんの後ろにいた叔父さんやダドリーも、イリヤさんの高貴さに気圧されていた。でも事前にシロウからいろいろ聞いていたのだろう。すぐにイリヤさん持ち前の人当たりの良さで打ち解けた。ちゃっかり犬の飼い主まで聞いて。
「何だい、なんの騒ぎだい」
あとからのそのそとこちらへ来るマージ叔母さん。イリヤさんにまったく気づいていない。あ、イリヤさんのこめかみに青筋が出た。正直怖い。
「あら、ごきげんよう。どなたかしら?」
「あん? 誰だいあんた。そんな常識の欠片もない格好して、親の顔が見てみたいよ」
いや、薄桃の膝丈スカートに白のブーツ、黒のレギンスにヴァイオレットの服を着ているイリヤさん。メチャクチャ綺麗で私も一瞬見とれたのに。
常識の欠片もないのはマージ叔母さんの方だよ。
「ペチュニアさん、彼女は?」
「バーノンの妹のマージです」
「あらそう。兄とは違って礼儀がなってないわね」
あちゃー早速毒を吐きました。ついでにマージさんを無視する形で。
「ちょっと誰だいあんた!! 礼儀がなってないんじゃないかい!?」
「ペチュニアさん、今日はマリーを迎えに来ました。突然の訪問ですけど大丈夫でしょうか?」
「え、ええ大丈夫です。マリー、準備してらっしゃい。ダドリーは手伝ってあげて」
叔母さんに言われ、私とダドリーは荷物の用意をしにいった。叔父さんは物置にしまっていた道具を出しに行った。
数分後にはすべての準備が整い、玄関に向かうと異様な光景が広がっていた。
イリヤさんの銀に輝く長い髪が、シュルルルという効果音が合うほど奇妙な動きをしている。真っ赤な双眼が見つめる先には顔を真っ青にさせ、壁に背を付けて床にへたり込み、ガタガタ震えているマージ叔母さん。犬もそのすぐ側でへたり込んでいる。
「あら? 準備は終わった?」
「はい…あの~、何をしてるんですか?」
「え? ただのお話しだけど?」
嘘だっ!! ただのお話ならこうはならない!!
絶対にO☆HA☆NA☆SHI☆彡 のほうに決まってる。アクマ(シロウ談)が降臨したに決まってる!!
「じゃあ行きましょうか? 忘れ物はない?」
「あ、はい。じゃあまた一年後に」
「いってら~」
唯一ダドリーの返事だけを聞き、私はイリヤさんとプリベット通りの家を後にした。そのとき微かに後ろから、ペチュニア叔母さんとバーノン叔父さんが、マージ叔母さんに呼び掛けているのが聞こえた。
はい、ここまでです。
まさか連投できるとは自分でも思っていませんでした。
次回はどっちを更新するかわかりませんが、早めに更新しますね。
イリヤの服装・外見に関しましては、Zeroのアイリをイメージしていただければ大丈夫です。
それではまた次回。