錬鉄の魔術使いと魔法使い達   作:シエロティエラ

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はい、番外編です。
付け加えて少し設定も書きます。


それではごゆるりと





Extra story Ⅱ +プチ設定

 

その一:剣吾の仕事

時系列:二年目終了後の夏休み

 

 

Side 剣吾

 

 

ボロボロのビル群、瓦礫の積み重なる道、見渡す限りの死体の山。その向こうには、ゾンビのような人々が、唸り声をあげながらゆっくりと歩いてくる。

ここは死都。後天的に吸血鬼となった死徒によって、食屍鬼(グール)が多量に生み出された町。目の前の死体は、俺が倒したグールの山だ。

現在俺はエルメロイさんの依頼で、死都の制圧をしていた。……一人で。

 

 

「流石に一人はキツいだろ!! ったく相棒はまだか!?」

 

 

愚痴を溢しながらも、襲いかかるグールを次々にほふっていく。死体には火が有効ではあるんだが如何せん、こいつらを処分したあとには元凶の死徒を倒さねばならない。なので余計な魔力は使えないのだ。

 

この死徒、主を殺して成り上がったばかりの屑である。ついでに言えば、その主は俺と少し親交があった死徒だ。ある意味これは弔い合戦と言えなくもない。

 

それにしても、なんで今回に限って『教会』の面子は出払っているのだ? 普通これはあいつらの仕事だろう? まぁ結構な大金が入るからいいんだが、俺じゃない普通の魔術師、ああ母さんたちは除いてな、だったら五分で死ぬぞ?

 

そうこう考えながら戦闘を続け、既に一時間が経過している。グールがいなくなる気配はない。本当に何人いるんだよ? しかもいつのまにか囲まれてるし。

先程からおかしいと思ってたんだが、まさかこいつら倒した個体も復活してないか? そんなことがあり得るかは知らんが、もしそうだとしたら、本当に相棒がいないと不味い。

 

まぁとりあえずは前の集団を片付けるか。

そう考えて走り出したとき、目の前の集団は全て誰かに撃ち抜かれた。

 

 

「……ったく遅いぞ」

 

「すまない。使い魔を出してはいたんだが」

 

「その使い魔より早く到着していたら世話ないと思うが?」

 

「む、確かに」

 

 

そんな軽口を叩きつつ、ハンドガンの銃弾を装填する男。先の銃撃で、グールは動きを止めている。

身長よりも長い、真っ赤な外套を身に纏い、同色のバンダナを頭に巻いている。外套の下には真っ黒なライダースーツの様なものを着ており、所々をベルトで締めている。

こいつの名前はヴィルヘルム、愛称はヴィル。俺の仕事仲間であり、俺と同じ魔術使いでドイツ出身。今はルヴィアさんの所に、妹共々間借りしているらしいが。

 

 

「そういや携帯に連絡すれば態々使い魔を……ちょい待ち、お前持ってる?」

 

「……」

 

 

無言で外套を広げるヴィル。その裏にはポケットはなく、ライダースーツにもポケットは見当たらない。

 

 

「……信じられない」

 

「……」

 

 

若干悲しそうな目で、ヴィルは外套をハラリと落とす。こいつまだ持ってなかったのか? 妹さんのライラや、ルヴィアさんとこのシェリアにあれほど言われていたのに?

 

 

「……まぁいいか。この話は後にしよう」

 

「ああ、さっさと鎮圧しよう。こちらの準備は出来ている」

 

「了解。んじゃまぁ、行きますかねぇ!!」

 

 

俺は槍を、ヴィルは銃を構え、次々にグールをほふっていく。今回は槍に火を纏わせているため、切つけると同時に対象を燃やしている。復活の心配はないだろう。ヴィルの方も、銃から火炎弾を連射しているので、問題はない。

三十分ほどで、全てのグールが駆逐された。そして通りの向こうから一人の男が歩いてきた。

 

 

「いや~素晴らしい!! 実に素晴らしいよ君達!!」

 

 

男は拍手をしながら歩いてくる。真っ白なスーツは汚れひとつなく、その目は俺の赤とは違う、血のような真っ赤な色。僅かに口から鋭い犬歯が覗く。

 

 

「……剣吾、こいつがそうか」

 

「ああ。今回の元凶の死徒だよ」

 

「死徒なんて下品な言い方はやめてほしいな。私は芸術家(アーティスト)だよ」

 

「……芸術家とは、聞いて呆れる」

 

「なんでだい? どこからどう見ても私は芸術家だよ。特に今回は力作だ、素晴らしい芸術だっただろう?」

 

「……狂ってる」

 

「ああ、早く終わらせよう」

 

 

こいつは精神からぶっ壊れている。いや、こいつ自身は自分を芸術家と本気で思っているのだろう。それを否定する権利は誰にもない。

だが、こいつをこのまま野放しにしていると、いくつもの命が消え去ることになる。そんなこと、俺は許容できない。

 

 

「ん~? 私を倒す? この至高の芸術家である私を? アハハハハハ!! 無理無理、何百年経っても無理だよ!!」

 

「さて、どうだかな。ヴィル、準備はいいか?」

 

「ああ、シンクロ率は既に最低ラインを突破している。あとは起動詠唱だけだ」

 

「よし。それじゃ行こうか、相棒」

 

「ああ」

 

 

俺はヴィルの後ろに立ち、その背中に両手を当てる。そして互いにその場所に魔力を集める。これは俺とヴィルの二人が揃って始めて出来る魔術。恐らく世界中を探しても、同じことを出来る魔術師や魔法使いはいないだろう。

まさに俺とヴィルだけのオリジナルだ。

 

 

「「憑依結合(ユナイト)!!」」

 

 

新緑色の竜巻が俺達を包み込み、立ち上る。そして竜巻が晴れたときには、既に俺の体はない。その代わり、ヴィルの方に若干の変化がある。

真っ黒な長髪は右半分が銀色になり、バンダナも外套も銀色になっている。ライダースーツは左は黒のままだが、右半分は新緑色になっている。そしてヴィルの首もとからは、槍の形をしたペンダントがぶら下がっている。

 

これは俺の『憑依』の魔術を鍛えた結果、偶然にも修得したオリジナル。もし万華鏡と母さんたちの庇護がなければ、確実に封印指定ものの魔術である。

この状態のとき、ベースはヴィルの体になるので、基本的にヴィルの主導、ヴィルの魔術を中心に使う。だがこれに加えて、俺は憑依したまま俺の力を使える。

要するに、ヴィルが苦手な投影も難なく使用が可能であるし、俺の属性や編み出した技も使用可能である。おいそこ、チート言うな。

 

因みに言うと、このときでも俺は会話可能。ヴィルのペンダントを介して会話している。無論俺の声は、ヴィル以外にも聞こえている。

 

 

「フフフッ、見てくれが変わった所で意味はないさ!!」

 

『んだと!?』

 

「落ち着け。はっきり言うが、こいつは一人では何もできない人種のやつだ。一々言葉に振り回されては疲れるぞ」

 

『っとと悪い。それじゃあ』

 

「『さぁ、お前の罪を数えろ』」

 

「私に罪はないさ!! 君達も私の芸術の材料にしてあげるよ!!」

 

 

そして俺たちの拳が交わった。

 

 

 

--十分後

 

 

 

「お前の言った通り、口だけのやつだったな」

 

「ああ、こうもあっさり終わるとは。厄介なのはグールだけだった」

 

 

目の前には塵の山があった。この塵はさっきまで死徒だったもの、火を纏わせたドロップキックをぶち当てたら、雄叫びをあげながら爆散した。

序でに言えば、ヴィルは生まれつき破魔の力を持っているため、こういった吸血鬼などと相性がいい。

その力が加わった火の蹴りなので、まぁ復活はしないだろう。

 

 

「で、仕事はこれで終わりか?」

 

「ああ、あとはエルメロイに報告するだけだ。私が使い魔で……」

 

「いや、いい。俺が報告するからお前は帰っていいぞ?」

 

 

こいつの使い魔だったら、絶対に俺たちの方が早く到着する。なら俺が連絡したほうが早い。エルメロイさんの携帯番号は知っているしな。

 

 

「結果は連絡する。報酬はきっちり半分こだからな」

 

「……了解した」

 

 

俺たちはそのまま別れ、俺は時計塔に、ヴィルはフィンランドのエーデルフェルト邸に帰った。

 

 

 

 

--後日、フィンランドのエーデルフェルト邸

 

 

 

「……ライラ、シェリア」

 

「ん? どしたの、お兄ちゃん?」

 

「どうしましたの?」

 

「電話屋はどこだ」

 

 

その日のエーデルフェルト邸からは、二人ぶんの少女の歓声が聞こえたという。そしてその次の日の少年は、非常にゲンナリとした表情を浮かべていたとか。

 

 

 

 

--そのときの日本、冬木の衛宮邸

 

 

「ただいま~。あれ? 母さんたちは?」

 

「にぃにおかえり~。ママたちはお出かけだよ」

 

「お兄さん、お仕事お疲れ様です。お母さんたちは、二週間ほどお父さんの所に行ってくるそうです。何でもお父さんの仕事の少し手助けをしに行くとか」

 

「ああ、成る程ね。マリーさんの護衛か」

 

「お兄様、確かこの前シルフィと一緒に行ったんでしょ? どんな世界だったの?」

 

「じゃあ飯の準備をしながら話すか」

 

 

いつも通りの平和な日常がひろがっていた。

 

 

「あ、今夜綾音姉さんがくるそうですよ? あと葵姉さんも。確かお仕事の一週間、どこに行っていたか話を聞きにくると」

 

「げぇ!? 柳洞と蒔寺が!?」

 

 

……ひろがっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その二:クリスマスの一時

時系列:二年目クリスマス

 

 

Side マリー

 

 

最近色々と物騒だけど、ついにクリスマスがやってきた。

 

今年はシロウに頼み、クッキーの作り方を教えてもらい、隠れ穴に送った。去年はシロウが、私達二人からという名聞でウィーズリー家にプレゼントしていたため、今年は私がすると言ったのだ。

というわけで、モリーさんには手作りクッキーを、アーサーさんには簡単なマグルの機械を送った。

幸いペチュニア叔母さんの手伝いをしていたからか、特に失敗することなくクッキーは出来上がった。

 

アーサーさんは相当なマグルオタクで、マグル製品を集めては分解組立をやっているらしい。序でにちょこっと改造したり。

今回送った機械は、その納屋の中にはなかったものだから、きっと喜んでくれるはずだ。

 

 

クリスマスの朝、着替えて談話室に向かうと、既にロンとシロウは起きていた。そして去年と同じように、床にプレゼントの山が置かれていた。

去年と少し違うのは、今年はハーマイオニーやジニーがいることかな? そして相変わらずシロウは鍛練をしていたらしく、腰かけるソファには二本の木剣が立て掛けられていた。

 

 

「みんなおはよう、そしてメリークリスマス」

 

「ああ、おはよう」

 

「「「おはよう、マリー」」」

 

 

私達は挨拶を済ませ、プレゼントを開いた。

まずウィーズリー家からは、真新しいセーターだった。今年は赤の下地に、黄色でライオンの大きな刺繍が施されている。サイズもピッタリで、とても暖かかった。

ダーズリー一家からは今年は一つだけで、中には叔母さんの作ったお菓子が入っていた。ダドリーからは手紙が入っており、学校のボクシングクラブでうまくいっていることが書かれていた。

 

 

「お、今年はちゃんと俺達だな」

 

「お袋も今年は間違えなかったぜ」

 

「「お前()がグレッドでお前()がフォージだ!!」」

 

「またかよ!?」

 

 

双子のボケにロンがつっこみ、ハーマイオニーとジニーはクスクス笑っていた。シロウは相変わらず部屋の隅でブツブツ言っていたけど。

 

そういえばシロウは今年、セーターをもらっていなかったな。その代わり、なんか革製のショルダーホルスターの様なものを、ウィーズリー夫妻から貰っていた。形状と大きさから見るに、アゾット剣用の鞘なのだろう。シロウ早速身に付けており、どうやら気に入ったみたいだ。

 

その後私達はチェスをしたり、外で雪合戦をしたりと、休みの一日を満喫した。その日だけは、秘密の部屋の恐怖を忘れることができ、楽しい一日を過ごせた。

 

余談だけど、夕食の席に何故か八ツ橋が置いてあり、シロウが机にヘッドバンキングをしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

設定

 

 

◎ ヴィルヘルム・リヴァイアス

 

魔術使い。年齢は14歳。外見イメージは、金の具足と手甲を着けていないヴィンセント・ヴァレンタイン。

 

両親は死亡。妹が一人いる。

6歳のときにとある魔術師に誘拐され、それから六年の間実験浸けにされていた。他にもサンプルにされた子供はいたが、生き残ったのはヴィルヘルムのみ。

12歳のときに、ルヴィアと剣吾、両親により救出されるが、このとき両親は魔術師に殺される。

 

元々はイレギュラーの『影』の属性のみを有していた。だが実験によって後天的に『火』『雷』『氷』を入手する。また実験の影響で金髪は黒に、碧眼は赤に変色、身体能力も人外レベルとなった。

 

また、体のリミッターを解除することにより、バサクレスと同程度の大きさの鬼に変化する。身体能力も爆発的に上がるが、体にかかる負担が大きいため、滅多に使わない。外見イメージは、CCFF7のイフリート。

起動詠唱は『枷解除、変化(トランスレート)

 

使用武器は主に銃。現在愛用しているのは銃身が三つある『トライハウンド』。それぞれ9発、計27発の銃弾を発射可能。

 

性格は冷静沈着だが、時折天然ボケが入り、加えて不器用である。デリカシーの有無はお察しください。

普段着はスーツを模した服装で、ジャケットの代わりにベストを着用、無論ネクタイもしっかりと締める。髪は戦闘時以外は後ろで括っている。

 

 

 

○ 憑依結合『ユナイト』

 

剣吾とヴィルヘルムの、二人が揃って始めて出来る魔術。剣吾が自分の肉体ごとヴィルヘルムと一時融合し、爆発的な力を得る。

剣吾単体で使用する切り札の『極致(エクストリーム)』、ヴィルヘルム単体で使用するリミッター解除の『枷解除、変化(トランスレート)』とは違い、体への負担は殆どない。

 

格闘センスなどはヴィルヘルムに依存するが、剣吾の能力も切り札と固有結界を除いて使えるようになる。おいそこ、チート言うな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◎ ライラ・リヴァイアス

 

フリーランスの魔術師。12歳。リヴァイアス家現当主だが、さして『根源』には興味ない。今は亡き両親も、『根源』には興味がなかった。

それなりに続く家系であり、魔術刻印も継承している。が、凛やルヴィアなどとは違い、変な薬を飲んだりする必要はない。

 

4歳の頃に兄が拐われる、加えて両親は10歳のときに殺されるという経緯から、魔術師特有の命を軽んじる行為には嫌悪を隠さない、魔術師らしからぬ魔術師。

 

衛宮一家とも親交があり、特に紅葉とは仲がいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◎ シェリア・エーデルフェルト

 

ルヴィアゼリッダ・エーデルフェルトの娘。14歳。母同様、『五大元素(アベレージワン)』を持つ。ルヴィアとは違って落ち着きはあるが、それでも年相応な面もある。

華憐同様、三人目第二魔法の使い手候補者。

 

ルヴィアと凛とは異なり、衛宮四兄妹とは仲がいい。

ヴィルヘルムは下ぼk……もとい所有物。自分好みの男にするために、日々少しずつ計画を進めている。彼の妹であるライラは既に買収済で、『シェリア義姉様』と呼ばれている。

外見は標準より身長が低いが、女性としての魅力を併せ持つトランジスタグラマー。髪型はショートヘアで茶髪。虹彩の色は青。

キャラ外見モデルはDCFF7のシェルク・ルーイ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◎ 柳洞綾音

 

柳洞一成と美綴綾子の一人娘。14歳。

幼少の頃から衛宮一家、冬木御三家と交流があり、衛宮四兄妹とは幼馴染み。特に剣吾に対してはあまり表に出さないが、首ったけ状態、フラグ建築済。蒔寺とは色々な意味でライバル。

 

父のように堅苦しい雰囲気を持つが、恋愛観などは母を受け継ぎ、少女趣味全開。また武芸に秀でており、現在は弓道をたしなんでいる。

面倒見か良く、姉御肌気質なため、後輩からは男女問わず慕われている。外見イメージは、髪が黒くなった美綴綾子。

 

又聞きになるが、ジニーの存在を知っている。

『冬木の巴御前』と呼ばれている。

 

 

注) 原作fateにおいて、美綴綾子は柳洞一成の天敵立ち位置にいるが、本作ではくっつけました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◎ 蒔寺葵

 

蒔寺楓の娘。14歳。

父は婿入りなため、姓は蒔寺を使っている。母親同様、和服が非常に似合う。

幼少の頃から衛宮一家、冬木御三家と交流があり、衛宮四兄妹とは幼馴染み。剣吾のフラグは建築済。柳洞綾音とは色々な意味でライバル。

 

性格外見は母親似だが髪はボブカット、性格は大人しめである。また母親が中距離走者であったのに対し、葵はスプリンター。『冬木のチーター』と呼ばれている。

 

又聞きになるが、ジニーの存在を知っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、以上です。

オリキャラ達ですが、あまり本編とは絡ませません。こんな感じで番外編にちょいちょい出てくる程度です。

さて、次はfateの方を進めますが、こちらのバレンタインネタも投稿します。ただバレンタイン当日か、一足早く投稿するかはわかりません。


それでは今回はこの辺で。



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