錬鉄の魔術使いと魔法使い達   作:シエロティエラ

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はい、更新です。

もう少しで二巻内容が終わるので、そうしたら今度はfateの更新に入ります。


それではごゆるりと






17. 帰還

Side シロウ

 

 

十分ほどすると不死鳥が舞い戻り、岩陰からロンとジニーも出てきた。というか二人とも、出歯亀決め込んでいたの知っているからな。ジニーはともかく、ロンはあとでシメる。

それから、部屋にいたときから気がついていたが、針金の小さな鳥がいるな。おおかた、フレッドとジョージが、使い魔で捜索、ついでにずっと見ていたのだろう。

最悪寮のみんなも見ているかもしれん。ウィーズリー三兄弟以外の寮の面子は、記憶操作したほうがいいだろう。

 

 

「不死鳥、三人を頼む。オレは一人で登れる」

 

 

オレはそう言うと立ち上がり、不死鳥に三人を掴まらせ、そのまま上にあく穴を登っていった。中々に大きな空洞だったので詰まることもなく、全員すんなりと出ることが出来た。針金の小鳥もすぐ近くにいる。

 

 

「疲れているかもしれないが、報告に行く必要があるだろう。不死鳥よ、案内を頼めるか?」

 

 

オレの言葉に不死鳥は一声歌った。了承したのだろう。オレは小鳥の方にも顔を向けた。

 

 

「こいつを介して聞こえているだろう。フレッドとジョージ、パーシーの三人は、マグゴナガルの元に行け。それからもしこいつを介して見たものを記録しているのなら、それも一緒に持ってこい」

 

 

オレはそれだけを言うと、三人を伴って不死鳥についていった。小鳥も城の方へ向かったから、あの三人も来るだろう。オレたちは無言で不死鳥の後を追い、そしてマグゴナガルの部屋の前に着いた。

オレはノックをして、ドアを開いた。

 

オレたち四人が泥まみれ、ヘドロまみれの状態(余談だが、オレはそれに両腕の火傷と血まみれが加わる)で部屋に入ると、始めは沈黙が支配した。

 

 

「「ジニー!!」」

 

 

暖炉の前で俯いていたウィーズリー夫妻はジニーに駆け寄り、二人して末娘を抱き締めた。あとから三兄弟も続く。

部屋の奥には、ダンブルドアとマグゴナガルが並び立ち、こちらを見ていた。マグゴナガルには一応報告をしていたが、やはり不安だったらしい。ダンブルドアの隣で深呼吸を繰り返している。オレはダンブルドアの元へと近づいた。

 

 

「戻ってこれたのだな」

 

「理事たちに戻ってくれと言われてのう」

 

「身勝手だな」

 

「ホッホッホッ、まぁそう言ってやるな」

 

 

オレとダンブルドアが話していると、後ろからモリーさんに、ロンとマリーごと抱き締められた。

 

 

「あなたたちがこの子を助けてくれた!! いったいどうやって?」

 

「私達全員が、それを知りたいと思っています」

 

 

マグゴナガルがボソリと呟く。

マリーはデスクの上に、古い帽子と血にまみれた剣、リドルの日記を置いた。というか、その剣の血の半分は、オレの血なんだよな、あとで拭き取っておこう。

マリーとロンとオレは、全てを語った。流石にオレのいない二ヶ月に関してはわからないので、その部分は二人に任せた。流石に大蜘蛛に会いに行ったのには驚いたが、よく二人とも無事に帰ってこれたな。オレだと蜘蛛を全滅させかねん。

 

 

「成る程、よくわかりました。それで、ミスター・エミヤは? いなくなった二ヶ月、どこで何をしていたのですか?」

 

「む? 言わないといけませんか?」

 

「当たり前です」

 

 

流石に見逃してくれないか。

オレは居住まいを正し、みんなに向き直った。序でに言うとマリーよ、少し顔が怖いぞ。

 

 

「その二ヶ月は、養生と魔法具の制作をしていました」

 

「魔法具? それに養生? どこでですか?」

 

「何処かは言いませんが、ホグワーツのとある場所から続く抜け道の先、ボロボロの屋敷にいました。まぁボロボロが過ぎたので、一部改修しましたが。血清を待つ余裕が無かったので、自分なりの治療を行いました。傷口からの毒物の除去から始まり、それまでにけっこう出血するので包帯を変えたりと。あ、これ毒から作った血清です」

 

「どうも。あとでポピーに渡しておきます。しかし成る程、それで新品の包帯を持っていったのですか。では食事は?」

 

「近くのパブで。アルバイトをしながら魔法具に必要なものを揃えたりしてました。完成品は、ロンとマリーが身に付けています」

 

 

オレがそう言うや否や、マリーとロンはそれを差し出す。マグゴナガルとダンブルドアは、暫くそれを見つめていたが、その顔を驚愕に染めた。

 

 

「のぅシロウよ。これは彼らが身に付けているものと」

 

「ええ、それ一つでは大して力はありませんが、彼からが元々身に付けているのと合わせることで、バジリスクの魔眼をもある程度防げます」

 

「おお、何と……。成る程のぅ、これ程のものなら、時間がかかるのは仕方あるまい」

 

「わかりました。では次にですが、いったい全体どうやって、全員生きて戻ってこれたのですか?」

 

「それに関しては……フレッド、ジョージ。あるか?」

 

「「もちろん」」

 

「え? 二人とも?」

 

「見た方が早いでしょう?」

 

 

フレッドとジョージは持ってきた水晶玉を、部屋の真ん中に置き、それに杖を向けた。

プロジェクターのように壁に映像が映し出され、原理は知らんが音も出ていた。というか二人とも、バジリスクとぶち当たる少し前から見ていたのか。なら何故報告しなかった。

ちゃっかりヒュドラとの戦いも見ていたのか。これはもう、こいつらが使い魔を悪用せぬよう、きつく言っておかねばなるまい。

 

 

「……バジリスク以外にもいたのですか。しかもヒュドラ」

 

「流石に予想外でしたので。正直、倒せたのは僥倖(ぎょうこう)でしょう」

 

「そうですね」

 

 

これに関しては、ダンブルドアもマグゴナガルもホッとしている。ウィーズリー一家は、四兄弟を除いて全員口を半開きにしている。一応夏休みに力の一端を見せていたとはいえ、流石にこれは驚くのも仕方がないか。

 

まぁそれは置いておこう。問題はジニーだ。

残念ながら、日記が破壊された今、ジニーが操られていたと証拠付けるものはない。その話が信じられなかった場合、彼女は最低でも退学になるだろう。果たしてどうすべきか。

 

 

「わしが気になるのは」

 

 

ダンブルドアが口を開く。

 

 

「ヴォルデモート卿が、どうやってその子に魔法をかけたかじゃの。わしの個人的な情報によれば、あやつは今アルバニアにいるらしいが」

 

「その日記です」

 

 

ダンブルドアの疑問にマリーが答えた。

 

 

「ヴォルデモートはここの生徒だったとき、この日記を書きました」

 

「成る程のぅ……ふむ、見事じゃな」

 

 

ダンブルドアは日記を取り上げ、しげしげと眺めた。

 

 

「じゃ、じゃあ。年度初めにシロウ君の言った魂憑とはまさか……」

 

「これ、でしたね。申し訳ありません。任せろと言っておきながら、このような事態に」

 

「いえ、それでもあなたは娘を助けてくれた。ありがとう」

 

「……リドルの洗脳を阻害したのは、剣吾の護符です。お礼は今度、息子に言ってください」

 

 

アーサーさんとモリーさんは頷くと、ジニーに向き直った。ジニーは未だ涙を流し続けている。

 

 

「……ジニー。パパはお前に何も教えなかったと言うのかい? いつも言い聞かせていただろう? フレッドとジョージが作ったもの以外で、『脳みそがどこにあるかわからないのに、自分で考えることができるもの』を信用してはいけないって。どうしてパパとママに言わなかったんだい?」

 

「わ、私知らなかった」

 

 

ジニーはしゃくりあげながら言う。

 

 

「ママの用意した本の中にそれがあって、てっきりママが買ってくれたと思って、つ、使ってた。でもクリスマスあたりから怖くなって、シロウさんに預けようと。でもシロウさんも襲われて行方がわからなくなって……私どうしたらいいかわからなくて、そのまま……」

 

「ミス・ウィーズリーはすぐに医務室に行きなさい」

 

 

ダンブルドアが話を中断させ、出口までツカツカと歩み寄り、ドアを開いた。

 

 

「苛酷な経験じゃったろう。罰はなし。安静にして熱いココアでも飲むとよい。わしゃいつもそれで元気が出る。もっと年上で賢い魔法使いでさえ、あやつにたぶらかされてきたのじゃ」

 

 

ジニーは家族に連れられ、医務室に向かった。ロンはハグリッドを返してもらうための手紙を、ダンブルドアから依頼されたから、家族とは別にフクロウ小屋へと向かった。現在部屋には、オレとマリー、マグゴナガルとダンブルドアしかいない。

 

 

「のう、ミネルバ。今回のことは、盛大に祝う価値があるものと思うのじゃが、どうかのう?」

 

「わかりました、キッチンにそのことを知らせに行きます」

 

「うむ、頼んだ」

 

「ポッターとエミヤ、この場にいませんが、ウィーズリーの処置は先生にお任せしてよろしいですね?」

 

「もちろん」

 

 

ダンブルドアがそう答えると、マグゴナガルは部屋から出ていった。それにしても「処置」か。まぁ確かに、オレたちは数百の規則を粉々に破ったからな。だがマリーよ、オレにしがみつかんでも良かろう。

 

 

「心配せんでも、君たちはそれに見合う結果を導きだした。罰はないよ、君たちには『ホグワーツ特別功労賞』が授与される。それにそうじゃな……一人につき百五十点ずつ、グリフィンドールに与えよう」

 

 

いや、オレはそのなんたら賞はいらんのだが。まぁ罰は無いようだし、一先ず安心か。

 

 

「さて、マリー。まず君に礼を言おう。『秘密の部屋』の中で、君はわしに真の信頼を示してくれたと思う。でなければ、フォークスは君のところに呼び寄せられなかった」

 

 

成る程、不死鳥フォークスがあの場にいたのは、そういう理由か。それとさっきから気になっていたんだが、フォークスよ、何故オレの頭をつつく?

 

 

「……先生、一ついいですか?」

 

「なんじゃ?」

 

「何故、私は蛇語を話せるのでしょうか?」

 

「……わしの推測にすぎんが、それは十一年前、ヴォルデモートが君を殺し損ねたときに、自らの力の一部を移してしまったのじゃろう。本人が意図せずしてのう」

 

「ヴォルデモートの……力の一部?」

 

 

成る程、そう考えれば辻褄が合うな。

マリーはスリザリンの直系の血族ではない。にも拘らず、スリザリンの専売特許たる蛇語を理解し、話すことができる。

ヴォルデモートはスリザリンの直系の子孫、ならば奴が蛇語を話せるのは自然なことだ。その力の一部が移ったのなら、あるいは……

 

 

「それじゃあ、私はスリザリンの適性がある、ということですね」

 

「あくまであるだけじゃよ。大事なのは、どんな力を持っているかではない。今までどのように選択し、生きてきたかということじゃ」

 

 

成る程な。確かに自分が何者かを示すには、有する能力ではなく、生き様見せることが大切だ。だがダンブルドアよ、オレをちら見しながら言うな。反応に困る。

 

 

「もし君がグリフィンドールの者であるという証が欲しいのなら、この剣をよく見るといい」

 

 

ダンブルドアはそう言うと、マグゴナガルの机の上の剣を取った。その剣の腹には、『ゴドリック・グリフィンドール』と刻まれていた。

 

 

「真のグリフィンドール生だけが、思いもかけぬこの剣を帽子から取り出せるのじゃ」

 

 

ダンブルドアの言葉に、マリーは安堵の表情を浮かべた。

と、そこで部屋の扉が勢いよく開かれた。結構乱暴に開かれたため、扉は壁に跳ね返った。そしてルシウス・マルフォイが、小さな生き物を連れて入ってきた。

 

 

(……成る程。こいつがお前の主人だったのだな、ドビーよ)

 

 

その小さな生き物はドビーだった。彼はオレとマリーに気づくと、頻りに日記とルシウスの間で視線を動かした。

ふむ、こいつが全ての元凶か。マリーも気づいたみたいだ。

まったく、息子のドラコ・マルフォイといい、こいつといい。蛙の子は蛙だな、この親にしてあの子あり、か。

 

話はついたらしく、ルシウスは入るときと同じように荒々しく出ていった。マリーはダンブルドアの許可を得て日記をつかみ、ルシウス・マルフォイを追いかけていった。まぁ奴もこんなところで問題は起こさないだろう。

 

 

「……さてシロウよ。君は何をしておるのじゃ?」

 

「気づいていたなら止めさせろ。つつかれすぎて禿げる」

 

「いや、面白いからもう少しこのm「おいジジイ……」フォークス、その辺での」

 

 

まったく、大事な話をするというのに。

 

 

「部屋にヒュドラがいた理由、なにか思い付くか?」

 

「ふむ、後年に誰かが紛れ込ませたか。はたまたスリザリン本人がバジリスクと共に入れていたか」

 

「出来れば後者でありたいものだ。だがそれでも、ヒュドラが今の世にいることが理解できんな。あれは大英雄に退治されたはずだが」

 

「恐らく、純粋なヒュドラではないのじゃろう。改造して人工的に造られた、と見るほうが筋道が通る」

 

「昨年のトロールといい、今回のヒュドラといい。マッドサイエンティストしかいないのか?」

 

「さてのぅ……」

 

 

ダンブルドアは紅茶を一口飲むと、改めてオレに向き直った。

 

 

「それで、ギルデロイはどうなったのじゃ?」

 

「態々聞かなくても、あなたなら開心術で見れるんじゃないか?」

 

「君自身がわし以上の閉心術をしておいてよく言うわい。もしや先程の仕返しかのう?」

 

「さて、どうだろうな。まぁ、それは置いておこう。奴のことだが、再び魔法使いとしてやっていけるかは、正直私にもわからん」

 

「というと?」

 

「まず奴の杖だが、秘密の部屋で紛失した。加えて奴の右半身は、内臓を除いて全て潰れている。寧ろ内臓が無事だったことが奇跡だ」

 

「そうか」

 

「あとは奴の精神次第だ。もし奴が死を望むなら、そのときはオレが介錯しよう」

 

「……わかった」

 

「来年の防衛術はどうする?」

 

「そうじゃのう……君が教えてみるかの?」

 

「あんたは阿呆か?」

 

「ホッホッホッ、年寄りの軽い冗談じゃ」

 

 

最後は軽口たたきあったが、これはこれで話は終わりという合図でもある。オレはそのままマグゴナガルの部屋を後にした。

暫く歩くと、ドビーとマリー、そして少し離れたところで倒れるルシウスがいた。おおかた、マリーに危害を加えようとし、ドビーに吹き飛ばされたか。

通常ではこのような事態はあり得ないが、ドビーは片手に靴下を握りしめている。そしてマリーの靴下が片方ない。加えてドビーの足元には、破壊されたリドルの日記。

マリーがルシウスをはめて、ドビーを自由にしたか。

 

 

「ルシウスさん、何をしているのですか?」

 

「ああ。ミスター・エミヤか」

 

「こんなところで寝ていては、風邪をひきますよ?」

 

「……余計なお世話です」

 

 

ルシウスはそう吐き捨てるように言うと、足早に去っていった。

 

 

「……流石は妖精族、か」

 

「勿体なき御言葉です、エミヤ様。ところで一つお聞きしても?」

 

「ん?」

 

「あなた様の体に溶け込んでいるもの、それはもしや」

 

「想像の通りだよ。あいつに返そうとしたが、逆に持っていろと言われてな。それ以来このままだ。他言無用で頼むぞ? フリットウィックはまだ気がついていないしな」

 

「何と、我らの間でも有名なあの方にお会いしたのですか。わかりました、決して他言しません」

 

 

ドビーは蝙蝠のような耳をパタパタさせながら、頻りに頷いていた。普通にオレの頼みを聞いているが、そういえばドビーはもう自由だったな。

 

 

「ドビーはこれからどうするの?」

 

「次の主が見つかるまで、世界を見て回ろうかと思っております」

 

「そうなの。良い出会いがあるといいね」

 

「はい!! ……さようなら。偉大な魔法使い、マリナ・ポッター。さようなら。彼の者の遺志を継ぎし英雄、シロウ・エミヤ。またいつか」

 

 

ドビーは指をパチリと鳴らし、消えていった。

 

 

 

 

 

 

 




はい、ここまでです。

次回は二巻最終回。
その後、また番外編を書こうと思います。
番外編も終われば、前書きの通りに、fateを更新していきます。



それでは今回はこの辺で




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