錬鉄の魔術使いと魔法使い達   作:シエロティエラ

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最近急に冷えましたね。風邪をひかないようにしないと。
では更新です。


それではごゆるりと。




15. バジリスクと日記、新手

 

Side シロウ

 

ロンとロックハートはマリーの元に向かわせている。一応ロックハートに、簡易的な遮断結界を張るアイテムを渡しているから、瓦礫等の心配は要らないだろう。

 

今、オレの目の前には、一人の半透明な青年がいる。背丈はオレと変わらないか、いや、オレが12歳にしては高すぎるだけか(現在165cm)。

成る程、話は聞こえていたが、こいつが……

 

 

「トム・リドル。過去のヴォルデモートか」

 

「そう。そしてこの人が」

 

「スリザリンの継承者。まぁ大層な肩書きだな。……ふっ」

 

「ッ!? 何が可笑しい!!」

 

「いや失礼。先程の口上と君の見てくれを比べるとね。いやはや、名前負けしているとは、まさにこういうことか。クククッ……それに随分と生にしがみつくと思ってな。いや、それはオレと変わらないか?」

 

「貴様……先程から言わせておけば!! 何者だ!!」

 

 

ふむ、オレが何者か、か。そうだなぁ、ここは剣吾の口上を真似してみるとしよう。

 

 

「通りすがりの魔術師兼魔法使い見習いだ、覚えなくていい。それと、だ。お前は邪魔だ!!」

 

 

バジリスクが姿を現したので、全身を強化して鎌首をもたげた蛇の頭を、ボレーキックの要領で蹴り飛ばした。

轟音をたてながら、蛇は壁に激突した。が、まだ意識はあるらしい。それに蹴った感触、あれは以前より少しばかり硬くなっているな。

 

 

「成る程。脱皮をして成長することによる治癒の促進、加えて体の強度も増したか。だが、潰れた左目は治せなかったようだな」

 

「ッ!! そうか……貴様がバジリスクの目を潰したか。だが無駄だ!! まだ右目がある!!」

 

「いや、今しがた潰されたぞ?」

 

「なにっ!?」

 

 

バジリスクは吹っ飛んだ先でのたうち回っていた。オレが以前潰し損ねた右目は、不死鳥によって潰されていた。

 

 

「クソッ、あの鳥め!! 『鳥と小僧に構うな!! 小娘共を殺せ!! 匂いで嗅ぎ出すんだ!!』」

 

「何を命じたかは知らんが蛇よ、お前の相手はオレだ。お前たち、伏せろ!!」

 

「「うん(わかった)!!」」

 

 

オレの指示でマリー達は伏せたことにより、蛇の尾は彼女らの上を通過した。オレは再び奴を蹴り飛ばし、今度は両の手に持った剣で切りつけた。

が、折れたのはオレの二本の剣だった。

 

 

「ッ!! 予想より硬い」

 

「クハハッ!! バカめ、バジリスクは二ヶ月前より更に強力になっている!! その強さと硬さは二倍以上さ!!」

 

 

リドルの声に答えるように、バジリスクは突進してきた。前よりも素早い。オレは横に回避したが、奴もすぐに方向転換してこちらに向かってきた。

 

 

「……巨体のわりによく動く。--投影開始(トレース・オン)

 

 

今度は弓を投影し、矢の速射を行った。が、こちらも一、二本浅く刺さっただけで、あとは全て弾かれた。宝具を使えばすぐに終わるが、ここの岩盤が崩れ落ちる可能性がある。

 

 

「シロウ!! これを!!」

 

 

マリーが叫び、ロンが何か銀に輝くものを投げてきた。それは柄に大きなルビーの嵌まった、銀の片手直剣だった。オレはそれを受け取り、反射的に解析を行った。

 

 

--解析開始

 

--憑依経験、共感終了。

 

--基本骨子、解明。

 

--構成材質、解明。

 

--全工程完了。

 

 

……成る程。

ゴブリン製の金属、そして切った対象の力を吸い、更に強力になるのか。だか神秘性が低いな、概念武装といったところか。だが、だ。これは上手く使えば、中々に強力な武器になる。

 

 

「ク、クククッ」

 

「小僧、何が可笑しい?」

 

 

突然笑いだしたオレに、リドルと蛇は首を傾げる。マリー達も不思議そうな顔をしている。不死鳥は、オレの傍らで依然滞空している。

 

 

「いやなに、この剣は素晴らしい一品だと思ってな。さてトム・リドルよ、一つだけ忠告だ」

 

「なんだ?」

 

「慢心が過ぎれば、必ず手痛いしっぺ返しを貰うぞ? 何せ彼の人類で初めて、世界を統べた英雄王ギルガメッシュでさえ、そうだったのだからな!!」

 

 

オレはリドルにそう言い放ち、剣を自らの肩に刺した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side マリー

 

 

 

「シロウ!? なにし……!!」

 

 

突然シロウは自分に剣を刺した。自殺するつもりなの!?

私はシロウな駆け寄ろうとして、でも足を止めた。

何故ならシロウは、依然として不敵な表情と目をしていたからだ。そして何でだかはわからないけど、シロウの持つ剣は、先程よりも更に輝きを増しているようだった。

剣からは不思議な力を感じた。まるでシロウから力を吸いとっているかのよう。

 

 

「小僧、何をしている」

 

「自分に剣を刺しているだけだが? 見ればわかるだろう? 貴様の目は飾り物かね?」

 

 

先程からはぐらかすような応答ばかりするシロウ。さっきから思ってたけど、態と挑発してない? あ~あ、バジリスクとリドルが怒った。

暫くすると、シロウは剣を引き抜いた。肩の傷は、みるみるうちに塞がった。

 

 

「さて、反撃開始といこうか」

 

 

シロウはそう言うと、再び飛び出した。

私とロンは、シロウの人外的な身体能力を見慣れてるけど、確かロックハートは初めて見るんだっけ? 口をアホみたいにポカーンと開けて唖然としてる。

 

シロウは突進してきたバジリスクを避け、その体を切りつけた。すると今度はバジリスクの体に、長い切り傷が刻まれた。

 

 

「馬鹿なッ!? 何なのだその剣は!?」

 

「お前に教える必要はなかろう?」

 

 

シロウはリドルを挑発しつつ、バジリスクに攻撃を重ねる。あれほど硬かったバジリスクの体は傷だらけになり、体のあちらこちらから血が流れている。

ふと私の足元に目を向けると、牙のような物が落ちていた。そういえばさっき、シロウがバジリスクの顔を切りつけたとき、何かがこちらに飛んできてた。もしかしたらこれなのかも。

 

……ん? これ使えるんじゃない? これならリドルの日記を破壊できるかもしれない。

 

 

「そんな……ありえんッ!?」

 

 

リドルの悲鳴のような声が聞こえ、私の意識は現実に戻された。彼の睨み付ける先に視線を向けると、流石の私も茫然とした。

視線を向けた先には、剣を振り下ろしきった体勢のシロウと、体の半分まで脳天から切り割られたバジリスクだった。

ドゥッ!! という轟音をたて、バジリスクの亡骸は床に倒れた。

 

 

「……バジリスクは倒された。だがもうすぐ僕は復活する!! 更に言えば、バジリスクが倒されれば、僕でさえ制御できない怪物が待っているんだ!!」

 

「……辞世の句は詠み終えたか?」

 

「辞世の句だと? 何のことだ?」

 

「さぁ?」

 

 

リドルが皮算用をしている間に、私とロンは示しあわせた。

私は日記をジニーの手から引き抜き、地面に押さえる。ロンは牙を構え、高く振り上げた。

 

 

「ッ!? よせ、止めろォ!?」

 

 

リドルは気がつき、こちらに走りよってきた。でもロックハートの張った(アイテムはシロウ製)結界に阻まれ、吹っ飛ばされた。

私達はリドルが再び立ち上がる前に、日記に牙を突き立てた。

 

途端に響き渡る叫び声。まるで血のように日記から溢れる黒のインク。リドルが断末魔の声をあげるなか、ロンは一度牙を引き抜いた。そして再度、今度は更に力を込めて牙を刺した。

リドルは耳をつんざくような声をあげ、最後は爆散して消滅した。同時にジニーも目覚めた。リドルの日記は、中に潜む亡霊ごと破壊された。

 

 

「こ……ここは……」

 

「ジニー!! 良かったぁ……」

 

 

ロンは起きたジニーを、力強く抱き締めた。ロックハートもホッとした表情を浮かべている。かくいう私も、安心して腰が抜けそうだった。

しかしジニーは状況を把握したらしく、顔を青ざめさせた。

 

 

「あ、ああ……そうだ、私……」

 

「ジニー、大丈夫だよ。リドルはいなくなった。バジリスクもシロウが倒した、見てごらん!!」

 

 

ロンが私の手元と部屋の奥を指し示すけど、ジニーはしゃくり上げて見向きもしなかった。

 

 

「わ、私……何てことを……「ジニー」……ヒック、シロウさん?」

 

 

バジリスクと自身の血が付着した剣を片手に、シロウは歩み寄ってきた。そして剣は私に渡してきた。

 

 

「え? 何で私に?」

 

「君かロンのどちらかが出したのだろう? なら君らが持っていてくれ。刃には触るなよ。さてジニー」

 

「ヒック……はい?」

 

「ここで寝ていては、風邪をひくぞ?」

 

「……」

 

「こんな居心地の悪い場所で話し込むことはないだろう。出るぞ」

 

「……はい」

 

 

流石は未来のお義父さん、義娘の扱いをわかってらっしゃる。

シロウに促され、ロンに支えられながら、ジニーは立ち上がり、歩き出した。私達も、その後に続いて出口に向かった。不死鳥は私達の上を、ゆったりと飛んでいる。

 

ところが数歩も歩かないうちに、地面が激しく揺れ、後方から大きな音がした。視線を向けると、老人の顔に大きな亀裂が入っていた。

そういえばさっきリドルが、バジリスクを倒せば次の化け物が来ると言っていた。それを彼は制御出来ないとも。亀裂の奥で、複数の光る目が見えた。

 

 

「……マリー」

 

「シロウ?」

 

「急いで出口に向かえ。決して振り返るな」

 

「まさかシロウ」

 

「君は囮になるのか?」

 

「悪いがこの中で、奴の足止めをして生き残る可能性があるのは、オレだけだ」

 

「ダメだよシロウ!? そしたら今度こそシロウは……」

 

「そうだよ!! 一旦退いて態勢を立て直して……」

 

「シロウさん……」

 

 

私だけじゃない。ロンもジニーも、ロックハートでさえも、シロウが残ることに反対している。

でもシロウは溜め息を一つつくと正面に向き直り、白と黒の双剣を構えた。本気なのか、先程までおろしていた前髪も、後ろに逆立ってオールバックになっている。

 

 

「「シロウ!?」」

 

「今、こいつを野放しにすれば、死者負傷者は数えきれないほど出る。そうなる前に、叩いておかねばならん」

 

「でも……」

 

「いいから走れ!! 話は後だ、今は聞く耳持たん!!」

 

 

シロウがそう言うのと同時に、ついに老人の顔は崩れ落ちた。

 

崩れた瓦礫の向こう、大空洞から姿を現したのは、頭が九つある怪物だった。全身は青緑色の鱗で覆われている。九つの頭は全て等しい大きさで、十八の黄色い眼球は、全てこちらを睨み付けていた。

 

昔本で読んだことがある。大陸に伝わる神話、ある男が神から受けた試練の一つで退治した怪物。名前は……

 

 

「……馬鹿なッ!? 何故、ヒュドラがいるのだ!? あれはテュポーンとエキドナの子供で、大英雄ヘラクレスに退治されたはずだぞ!?」

 

 

 

 

 

 

 






はい、今回はここまでです。

さぁ炸裂しました、シロウによるアーチャー流挑発術。
見事にリドルは手玉にとられてましたね。

先にヒュドラがいる理由を書いときます。
この作品では、サラザール・スリザリンが生前、バジリスクと共に改造して人工的に造り出したヒュドラを、バジリスクの死亡を条件に目覚めさせるようにしていた、というわけです。

やり過ぎたかな?

さて、次回はオリジナルチャプターです。

それではこの辺で




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