感想やリアルでの知り合い読者に指摘されましたが、改めてここで書きます。
シロウはハリポタの世界にいます。元の世界には帰ってません。
では更新です。
それではごゆるりと
Side マリー
マグゴナガル先生から朗報があった次の日、私とロンはロックハートの引率のもと、魔法史の教室へと向かっていた。
魔法史とは、その文字通り魔法界の歴史を学ぶ授業であり、唯一ゴーストが担当する授業だ。でも担当のビンズ先生は一本調子で講義をするので、殆どの生徒は寝てしまうか、窓の外を眺めるかしている。
それはいってしまえば、サボるには持ってこいの授業であることを示す。そして今の引率はロックハート。うまく丸め込めば、ロックハートをやり過ごすことも、授業に行かないことも出来る。
それにここ2ヶ月、まともにハーマイオニーの元に行ってない。ロンも私を気遣ってか、見舞いには行ってないらしい。
石化した人間の見舞いは意味がないって言われてるけど、それでも顔を見たくなるのは仕方がないと思う。
「……ロックハート先生」
「なんだい?」
「最近先生の顔が
「いや、何でもありませんよ? 全然、何でも……」
ロックハートは焦るように言葉を繋ぐ。でも少し様子がおかしい。
そういえば最近彼の授業も変だ。始まったばかりの頃は、変な寸劇をやらされたり(自身の著作の寸劇)、変なテストをさせられたりしたけど、クリスマス過ぎた辺りからしなくなった。
何故か授業は『忘却術』をメインにやり、課題は一切なし。なんというか、マトモなことをやることが多かった。まぁバレンタインのようなことはしていたけど。
「先生、無理は禁物です。部屋に戻って一息ついては?」
「……だがねぇ」
ロンの言葉にも渋る。珍しい、こんなに真面目なロックハートは初めてみる。
「もう次の教室まで近いので、僕ら二人で大丈夫です」
「……そうかい? わかった、ならお言葉に甘えさせてもらおうか」
ロックハートはそう言うと、足早に自分の事務室へと去っていった。
「ちょっと最近変だけど、まあいいか。それよりマリー。これから医務室に行くんだろう?」
「うん、よくわかったね」
「そりゃわかるさ。あの蜘蛛と会う前からだけど、医務室の前を通る度に目を向けてたもん」
私達は方向転換をして、医務室に足を向けた。が、暫く進むとマグゴナガル先生と鉢合わせた。先生は私達を見つけると、これ以上結べないだろうと思わせるほど、口を一文字に結んだ。
「あなたたち、ここで何をしてるのです!!」
「あ、えっと……様子を見に……」
「ハーマイオニーの」
しどろもどろになるロンに代わり、私が応対した。マグゴナガル先生は、私をマジマジと見つめた。
「あの日から私達は、一度も彼女の元に行けてません」
私はマグゴナガル先生にそう言った。暫く誰も動かず、誰も口を開かなかった。
「……そうでしょうとも」
マグゴナガル先生は静かに口を開いた。気のせいか、目の端に光るものが見える。
「そうでしょうとも。一番辛いのは、被害者の最も親しい人達に決まってます。ええ許可します、ポッター、ウィーズリー。ビンズ先生には私から伝えておきます。マダム・ポンフリーには、私から許可がでたと言いなさい」
予想外にもマグゴナガル先生から許可が出たので、私達は一度会釈してその場を後にした。後方からは、小さく鼻をかむ音がした。
医務室のマダム・ポンフリーも仕方がないという顔をし、ハーマイオニーのベッドへと通してくれた。ただ、石化した人には何を言ってもわからないとは言われたけど。
ベッドの横に立つと成る程、確かにマダム・ポンフリーの言ったとおり、ハーマイオニーは私達が来たかどうかもわかっていない。私はハネジローが持ってきた花を花瓶に生け、ベッド脇に置いた。ロンは枕元の椅子に座っている。
ハーマイオニーの右手は顔の前、左手は立った状態だろ垂らしてある位置で、硬く固まっていた。触っても生物特有の柔かさと温かさがない。
「今ほどあなたの力を貸してほしいと思ったことはないわ」
私はハーマイオニーの左手を握りながらそう言った。ロンも相づちを打つように、悲しそうな顔をしている。
ふと握る手に違和感があった。ハーマイオニーの左手は、何かを握りしめていた。どうやら丸められた紙らしい。
「……ロン」
「なんだい?」
「……ハーマイオニーが何かを握りしめてる」
「本当? ……取り出せるかい? 僕はマダム・ポンフリーから見えないように壁になるから」
ロンに言われ、私は丁寧に紙を取り出した。何かのページをハーマイオニーが破りとったらしい。小さな活字が並んでいる。流石にここで読むわけにはいかなかったから、医務室から出て少し離れた廊下で改めて読んだ。
「読める?」
「なんとか。これは……怪物の説明? ……蜘蛛が逃げる……雄鶏の鳴き声が命取り……猛毒を持つ牙……大蛇の怪物、バジリスク。大蛇だって?」
「まさか……これって」
「間違いない。ハーマイオニーは一足先に答えに行き着いてた。それにシロウは戦闘をしたから知ってるはず」
「バジリスクって確か、視線だけで人を殺すんじゃ? 何で誰も死んでないんだ?」
「それは……誰も直接は見てないんだ。ハーマイオニーは鏡、ミセス・ノリスと他二人のレイブンクロー生は床の水面、ジャスティンはニコラスさん越しに、コリンはカメラだ」
「シロウは? 戦闘をしたなら直接見たはずじゃあ……いや、シロウなら魔眼の効果を防ぐ、何らかのアイテムを持ってても不思議じゃないね」
「ええ、そうね。でも完全には防げなかったから、重傷を負うことになった。何で毒が効かなかったかは知らないけど」
成る程、この怪物なら辻褄があう。
確かハグリッドが、いつのまにか雄鶏が殆ど殺されたって、ハロウィン前後に言ってた。蜘蛛に関しても、アラゴグさんは自分達の天敵だと言っていた。でも……
「それならどうやって移動してたの? シロウの傷からして、少なくとも体の太さは人間の身長ぐらいよ?」
「うーん……あ、ここにハーマイオニーの筆跡が」
「え? ……パイプ? っ!! そうか、パイプか!! だから私は壁の中から、私だけ声が聞こえたんだ。私が蛇語を理解してるから」
「じゃあホグワーツのパイプは秘密の部屋に繋がってると考えられるわけだ!! でもどうやって探す?」
そう、問題は入り口がどこにあるかだ。蛇用の通路が有るなら、人用の入り口と通路があるはずだ。
「……っ!! ねぇロン。私一つ思い付いたんだけど」
「奇遇だね、僕もだ」
「「『嘆きのマートル』が何か知ってるんじゃない?」」
「やっぱ君もそう思ったか」
「ええ、彼女はトイレを住みかにしてるわ。配管については彼女が一番知ってると思う」
「それにもしマートルが死んだとき、それが五十年前らへんなら……」
「彼女がそのとき出た唯一の死者の可能性が高くなる」
みるみるうちに、パズルのピースが嵌まっていく。今まで断片的に判明していたものが、次々に繋がっていく。私達はこのあとマートルの所に行く計画を立てた。
『生徒は全員、寮に戻りなさい。教職員は至急、三階女子トイレへと続く廊下に集まってください』
突如校内アナウンスが響いた。マグゴナガル先生の切羽詰まった声が聞こえた。
「こんなときに、また事件かよ」
「現場に行きましょう。もしもの為に透明マントを持ってるから、それに入って話を聞こう。マートルのトイレのすぐ近くだし」
私達は現場まで走った。途中からマントを羽織り、現場が見えて且つ会話が聞こえる場所で立ち止まった。すぐに教職員は集まった。
「ご覧ください、スリザリンの継承者がまた伝言を残しました。生徒が一人、部屋に拐われたのです」
マグゴナガル先生が嘆く。指し示す壁には、いつかの夜のように、赤い血で文章が書かれていた。今回は潰れている箇所が少ない。
『彼女・白骨は、永遠に秘密の部屋に眠る━━う』
彼女……白骨……女生徒が拐われたの?
「誰なんですか? いったい誰が拐われたのですか?」
「……ジニー・ウィーズリーです」
ロンがヘナヘナと、力無く座り込んだ。かくいう私も、立つことがやっとだった。先生たちは、皆一様にショックを受けている。取り分けマグゴナガル先生が酷かった。スネイプ先生は、無表情を崩していなかったけど、内心ショックを受けているだろう。
「生徒を家に帰しましょう。ホグワーツはもう終わりです。ダンブルドアはいつもそう言っていた「あの~」? ギルデロイ?」
「すみません。ついウトウトとしてしまいまして、今到着しました。……してこれは?」
「適任者だ」
「は?」
「なんと適任者だ。生徒が一人、怪物に拐われた。それも秘密の部屋に、ここはあなたの出番ですぞ、ロックハート殿?」
「へ? 私?」
「名案です。ではギルデロイ、あなたにお願いします。拐われた生徒を連れ戻して来てください」
遅れてきたロックハートに、スネイプ先生とマグゴナガル先生の波状口撃が襲い、ロックハートはたじたじになってる。成る程、他の教職員も止めないあたり、厄介払いか。
「……わかりました。では部屋に戻って支度をします」
ロックハートはそう言うと、事務室へと去っていった。私はロンを立たせ、この場から離れた。
「……そんな……ジニーが」
「ロン、しっかり。まだジニーが死んだと決まったわけじゃない!!」
「……うん」
「ロックハートの所にいこう。そして私達が知ってることを話して、彼についていく」
「……わかった」
ロンは気を持ち直したらしく、立ち上がって歩き出した。私もロンについていった。後方からはマグゴナガル先生が叫ぶ声が聞こえたけど、気にせずに先を急いだ。
Side マグゴナガル
厄介払いも済みましたし、あとは生徒に伝えることをまとめなくては。ダンブルドアにもフクロウ便で通達をしなければならない。
「寮監はそれぞれの寮へ行き、生徒に荷物を纏めるように言いましょう。明日の汽車を手配します。それから……「失礼、少しよろしいだろうか」すみませんが、今大事な話……を……」
……私は夢でも見ているのだろうか?
ここ最近姿が確認されず、生きていること以外何も判明しなかった彼が、真っ赤な外套を軽鎧の上に羽織り、私達の目の前にいる。
彼の姿を確認した教師陣は、私も含めて口を半開きにしている。フィリウスに関しては、驚きすぎて腰を抜かしている。
「な……なな……」
「……な?」
「なんで貴方がここにいるのですか!? 今までどこにいたのですか!? 傷は!? 毒は!?」
「お、落ち着いてくださ……「落ち着いてられますか!?」ウォッ!? 鼓膜が!? 鼓膜が破れるイヤードラム!?」
とりあえず色々と問いただしたい。どこで何をしていたのか。体は大丈夫なのかと色々と。
「……っつつ……とりあえず今はこの伝言でしょう」
「……はっ、そうでした」
彼の一言で、場の空気が引き締まった。
「……ジニーが拐われたのですね?」
「……ええ、秘密の部屋に」
「我輩も警戒していたが、このようなことに」
「ミネルバ? どういうこと?」
「あとで説明するわ、ポピー。それで、あなたは?」
私は、疑惑の視線を向けてくる他の教師陣を一旦無視し、彼に話しかけた。今の彼は、既に戦闘態勢に入っている。それ故の外套と軽鎧だった。
「部屋の場所は検討が付いています。怪物はバジリスクです」
「「「な!?」」」
「「バジリスクだと(ですって)!?」」
「ええ、片目は私が潰しました。それに傷を負わせているので、奴も万全ではないでしょう」
「お前はこれから?」
「ええ、秘密の部屋に向かいます。あの二人も、話を聞いていたみたいですし」
まったくあの二人はすぐに首を突っ込む、何てぼやいている彼。その言葉が本当なら、ポッターとウィーズリーが、陰で話を聞いていたことになる。また彼らが行動するのか。
「教師を一人、付き添いに。私が行きましょう」
「いや、我輩が行こう」
「いえ、オレが行きます。バジリスクは傷を負っていますが、まだ生きています。仮にジニーを助け出せても、バジリスクがいれば全員が助かる可能性が低くなります」
「ならば尚更……!!」
「申し訳ありませんが、私も伊達に一度戦ったわけではありません。奴には魔法の類いは効きませんから、皆さんだと相性が悪い」
彼の言うことは正論だった。バジリスクは、魔法に対する耐久性が高い。例え教師が三人以上いても、無力化することは難しい。
「……申し訳ありません。お願いしてもよろしいですか?」
「承りました。スネイプ先生、スプラウト先生」
「「なんだ(なんですか)?」」
「石化した生徒たちを、お願いします。もうそろそろ薬が出来るのでしょう?」
「うむ。あと少しの過程で出来る。さすれば、生徒は甦生可能だ」
「そちらは私達に任せなさい」
「わかりました」
彼はそう言うと、ロックハートの事務室へと足を向けた。しかし、途中で足を止めた。
「ああ、忘れていた。スネイプ先生」
「む?」
「別に、怪物は倒してしまっても構わんのだろう?」
「!! ……ああ、遠慮はいらん。思うままにやれ」
「ククッ、了解した」
彼はそう言い残すと、今度こそ闇に消えていった。彼がいるなら、一先ずは安心だろう。伊達に英雄になったわけではない、ということでしょう。
さて、私は他の教師たちにどう説明しましょうか?
はい、今回はここまでです。
う~ん、少し展開が早いか、それとも丁度良いのか、私にはわかりません。
復活のS、万を辞して彼が降臨しました。バジリスクの運命やいかに?
さて、次回は秘密の部屋です。
それではこの辺で