錬鉄の魔術使いと魔法使い達   作:シエロティエラ

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感想やリアルでの知り合い読者に指摘されましたが、改めてここで書きます。
シロウはハリポタの世界にいます。元の世界には帰ってません。


では更新です。

それではごゆるりと





13. 嵌まるピース、誘拐された生徒

 

Side マリー

 

 

マグゴナガル先生から朗報があった次の日、私とロンはロックハートの引率のもと、魔法史の教室へと向かっていた。

 

魔法史とは、その文字通り魔法界の歴史を学ぶ授業であり、唯一ゴーストが担当する授業だ。でも担当のビンズ先生は一本調子で講義をするので、殆どの生徒は寝てしまうか、窓の外を眺めるかしている。

それはいってしまえば、サボるには持ってこいの授業であることを示す。そして今の引率はロックハート。うまく丸め込めば、ロックハートをやり過ごすことも、授業に行かないことも出来る。

 

それにここ2ヶ月、まともにハーマイオニーの元に行ってない。ロンも私を気遣ってか、見舞いには行ってないらしい。

石化した人間の見舞いは意味がないって言われてるけど、それでも顔を見たくなるのは仕方がないと思う。

 

 

「……ロックハート先生」

 

「なんだい?」

 

「最近先生の顔が(やつ)れてる見たいですが……」

 

「いや、何でもありませんよ? 全然、何でも……」

 

 

ロックハートは焦るように言葉を繋ぐ。でも少し様子がおかしい。

そういえば最近彼の授業も変だ。始まったばかりの頃は、変な寸劇をやらされたり(自身の著作の寸劇)、変なテストをさせられたりしたけど、クリスマス過ぎた辺りからしなくなった。

何故か授業は『忘却術』をメインにやり、課題は一切なし。なんというか、マトモなことをやることが多かった。まぁバレンタインのようなことはしていたけど。

 

 

「先生、無理は禁物です。部屋に戻って一息ついては?」

 

「……だがねぇ」

 

 

ロンの言葉にも渋る。珍しい、こんなに真面目なロックハートは初めてみる。

 

 

「もう次の教室まで近いので、僕ら二人で大丈夫です」

 

「……そうかい? わかった、ならお言葉に甘えさせてもらおうか」

 

 

ロックハートはそう言うと、足早に自分の事務室へと去っていった。

 

 

「ちょっと最近変だけど、まあいいか。それよりマリー。これから医務室に行くんだろう?」

 

「うん、よくわかったね」

 

「そりゃわかるさ。あの蜘蛛と会う前からだけど、医務室の前を通る度に目を向けてたもん」

 

 

私達は方向転換をして、医務室に足を向けた。が、暫く進むとマグゴナガル先生と鉢合わせた。先生は私達を見つけると、これ以上結べないだろうと思わせるほど、口を一文字に結んだ。

 

 

「あなたたち、ここで何をしてるのです!!」

 

「あ、えっと……様子を見に……」

 

「ハーマイオニーの」

 

 

しどろもどろになるロンに代わり、私が応対した。マグゴナガル先生は、私をマジマジと見つめた。

 

 

「あの日から私達は、一度も彼女の元に行けてません」

 

 

私はマグゴナガル先生にそう言った。暫く誰も動かず、誰も口を開かなかった。

 

 

「……そうでしょうとも」

 

 

マグゴナガル先生は静かに口を開いた。気のせいか、目の端に光るものが見える。

 

 

「そうでしょうとも。一番辛いのは、被害者の最も親しい人達に決まってます。ええ許可します、ポッター、ウィーズリー。ビンズ先生には私から伝えておきます。マダム・ポンフリーには、私から許可がでたと言いなさい」

 

 

予想外にもマグゴナガル先生から許可が出たので、私達は一度会釈してその場を後にした。後方からは、小さく鼻をかむ音がした。

医務室のマダム・ポンフリーも仕方がないという顔をし、ハーマイオニーのベッドへと通してくれた。ただ、石化した人には何を言ってもわからないとは言われたけど。

 

ベッドの横に立つと成る程、確かにマダム・ポンフリーの言ったとおり、ハーマイオニーは私達が来たかどうかもわかっていない。私はハネジローが持ってきた花を花瓶に生け、ベッド脇に置いた。ロンは枕元の椅子に座っている。

ハーマイオニーの右手は顔の前、左手は立った状態だろ垂らしてある位置で、硬く固まっていた。触っても生物特有の柔かさと温かさがない。

 

 

「今ほどあなたの力を貸してほしいと思ったことはないわ」

 

 

私はハーマイオニーの左手を握りながらそう言った。ロンも相づちを打つように、悲しそうな顔をしている。

 

ふと握る手に違和感があった。ハーマイオニーの左手は、何かを握りしめていた。どうやら丸められた紙らしい。

 

 

「……ロン」

 

「なんだい?」

 

「……ハーマイオニーが何かを握りしめてる」

 

「本当? ……取り出せるかい? 僕はマダム・ポンフリーから見えないように壁になるから」

 

 

ロンに言われ、私は丁寧に紙を取り出した。何かのページをハーマイオニーが破りとったらしい。小さな活字が並んでいる。流石にここで読むわけにはいかなかったから、医務室から出て少し離れた廊下で改めて読んだ。

 

 

「読める?」

 

「なんとか。これは……怪物の説明? ……蜘蛛が逃げる……雄鶏の鳴き声が命取り……猛毒を持つ牙……大蛇の怪物、バジリスク。大蛇だって?」

 

「まさか……これって」

 

「間違いない。ハーマイオニーは一足先に答えに行き着いてた。それにシロウは戦闘をしたから知ってるはず」

 

「バジリスクって確か、視線だけで人を殺すんじゃ? 何で誰も死んでないんだ?」

 

「それは……誰も直接は見てないんだ。ハーマイオニーは鏡、ミセス・ノリスと他二人のレイブンクロー生は床の水面、ジャスティンはニコラスさん越しに、コリンはカメラだ」

 

「シロウは? 戦闘をしたなら直接見たはずじゃあ……いや、シロウなら魔眼の効果を防ぐ、何らかのアイテムを持ってても不思議じゃないね」

 

「ええ、そうね。でも完全には防げなかったから、重傷を負うことになった。何で毒が効かなかったかは知らないけど」

 

 

成る程、この怪物なら辻褄があう。

確かハグリッドが、いつのまにか雄鶏が殆ど殺されたって、ハロウィン前後に言ってた。蜘蛛に関しても、アラゴグさんは自分達の天敵だと言っていた。でも……

 

 

「それならどうやって移動してたの? シロウの傷からして、少なくとも体の太さは人間の身長ぐらいよ?」

 

「うーん……あ、ここにハーマイオニーの筆跡が」

 

「え? ……パイプ? っ!! そうか、パイプか!! だから私は壁の中から、私だけ声が聞こえたんだ。私が蛇語を理解してるから」

 

「じゃあホグワーツのパイプは秘密の部屋に繋がってると考えられるわけだ!! でもどうやって探す?」

 

 

そう、問題は入り口がどこにあるかだ。蛇用の通路が有るなら、人用の入り口と通路があるはずだ。

 

 

「……っ!! ねぇロン。私一つ思い付いたんだけど」

 

「奇遇だね、僕もだ」

 

「「『嘆きのマートル』が何か知ってるんじゃない?」」

 

「やっぱ君もそう思ったか」

 

「ええ、彼女はトイレを住みかにしてるわ。配管については彼女が一番知ってると思う」

 

「それにもしマートルが死んだとき、それが五十年前らへんなら……」

 

「彼女がそのとき出た唯一の死者の可能性が高くなる」

 

 

みるみるうちに、パズルのピースが嵌まっていく。今まで断片的に判明していたものが、次々に繋がっていく。私達はこのあとマートルの所に行く計画を立てた。

 

 

『生徒は全員、寮に戻りなさい。教職員は至急、三階女子トイレへと続く廊下に集まってください』

 

 

突如校内アナウンスが響いた。マグゴナガル先生の切羽詰まった声が聞こえた。

 

 

「こんなときに、また事件かよ」

 

「現場に行きましょう。もしもの為に透明マントを持ってるから、それに入って話を聞こう。マートルのトイレのすぐ近くだし」

 

 

私達は現場まで走った。途中からマントを羽織り、現場が見えて且つ会話が聞こえる場所で立ち止まった。すぐに教職員は集まった。

 

 

「ご覧ください、スリザリンの継承者がまた伝言を残しました。生徒が一人、部屋に拐われたのです」

 

 

マグゴナガル先生が嘆く。指し示す壁には、いつかの夜のように、赤い血で文章が書かれていた。今回は潰れている箇所が少ない。

 

 

『彼女・白骨は、永遠に秘密の部屋に眠る━━う』

 

 

彼女……白骨……女生徒が拐われたの?

 

 

「誰なんですか? いったい誰が拐われたのですか?」

 

「……ジニー・ウィーズリーです」

 

 

ロンがヘナヘナと、力無く座り込んだ。かくいう私も、立つことがやっとだった。先生たちは、皆一様にショックを受けている。取り分けマグゴナガル先生が酷かった。スネイプ先生は、無表情を崩していなかったけど、内心ショックを受けているだろう。

 

 

「生徒を家に帰しましょう。ホグワーツはもう終わりです。ダンブルドアはいつもそう言っていた「あの~」? ギルデロイ?」

 

「すみません。ついウトウトとしてしまいまして、今到着しました。……してこれは?」

 

「適任者だ」

 

「は?」

 

「なんと適任者だ。生徒が一人、怪物に拐われた。それも秘密の部屋に、ここはあなたの出番ですぞ、ロックハート殿?」

 

「へ? 私?」

 

「名案です。ではギルデロイ、あなたにお願いします。拐われた生徒を連れ戻して来てください」

 

 

遅れてきたロックハートに、スネイプ先生とマグゴナガル先生の波状口撃が襲い、ロックハートはたじたじになってる。成る程、他の教職員も止めないあたり、厄介払いか。

 

 

「……わかりました。では部屋に戻って支度をします」

 

 

ロックハートはそう言うと、事務室へと去っていった。私はロンを立たせ、この場から離れた。

 

 

「……そんな……ジニーが」

 

「ロン、しっかり。まだジニーが死んだと決まったわけじゃない!!」

 

「……うん」

 

「ロックハートの所にいこう。そして私達が知ってることを話して、彼についていく」

 

「……わかった」

 

 

ロンは気を持ち直したらしく、立ち上がって歩き出した。私もロンについていった。後方からはマグゴナガル先生が叫ぶ声が聞こえたけど、気にせずに先を急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side マグゴナガル

 

 

厄介払いも済みましたし、あとは生徒に伝えることをまとめなくては。ダンブルドアにもフクロウ便で通達をしなければならない。

 

 

「寮監はそれぞれの寮へ行き、生徒に荷物を纏めるように言いましょう。明日の汽車を手配します。それから……「失礼、少しよろしいだろうか」すみませんが、今大事な話……を……」

 

 

……私は夢でも見ているのだろうか?

ここ最近姿が確認されず、生きていること以外何も判明しなかった彼が、真っ赤な外套を軽鎧の上に羽織り、私達の目の前にいる。

彼の姿を確認した教師陣は、私も含めて口を半開きにしている。フィリウスに関しては、驚きすぎて腰を抜かしている。

 

 

「な……なな……」

 

「……な?」

 

「なんで貴方がここにいるのですか!? 今までどこにいたのですか!? 傷は!? 毒は!?」

 

「お、落ち着いてくださ……「落ち着いてられますか!?」ウォッ!? 鼓膜が!? 鼓膜が破れるイヤードラム!?」

 

 

とりあえず色々と問いただしたい。どこで何をしていたのか。体は大丈夫なのかと色々と。

 

 

「……っつつ……とりあえず今はこの伝言でしょう」

 

「……はっ、そうでした」

 

 

彼の一言で、場の空気が引き締まった。

 

 

「……ジニーが拐われたのですね?」

 

「……ええ、秘密の部屋に」

 

「我輩も警戒していたが、このようなことに」

 

「ミネルバ? どういうこと?」

 

「あとで説明するわ、ポピー。それで、あなたは?」

 

 

私は、疑惑の視線を向けてくる他の教師陣を一旦無視し、彼に話しかけた。今の彼は、既に戦闘態勢に入っている。それ故の外套と軽鎧だった。

 

 

「部屋の場所は検討が付いています。怪物はバジリスクです」

 

「「「な!?」」」

 

「「バジリスクだと(ですって)!?」」

 

「ええ、片目は私が潰しました。それに傷を負わせているので、奴も万全ではないでしょう」

 

「お前はこれから?」

 

「ええ、秘密の部屋に向かいます。あの二人も、話を聞いていたみたいですし」

 

 

まったくあの二人はすぐに首を突っ込む、何てぼやいている彼。その言葉が本当なら、ポッターとウィーズリーが、陰で話を聞いていたことになる。また彼らが行動するのか。

 

 

「教師を一人、付き添いに。私が行きましょう」

 

「いや、我輩が行こう」

 

「いえ、オレが行きます。バジリスクは傷を負っていますが、まだ生きています。仮にジニーを助け出せても、バジリスクがいれば全員が助かる可能性が低くなります」

 

「ならば尚更……!!」

 

「申し訳ありませんが、私も伊達に一度戦ったわけではありません。奴には魔法の類いは効きませんから、皆さんだと相性が悪い」

 

 

彼の言うことは正論だった。バジリスクは、魔法に対する耐久性が高い。例え教師が三人以上いても、無力化することは難しい。

 

 

「……申し訳ありません。お願いしてもよろしいですか?」

 

「承りました。スネイプ先生、スプラウト先生」

 

「「なんだ(なんですか)?」」

 

「石化した生徒たちを、お願いします。もうそろそろ薬が出来るのでしょう?」

 

「うむ。あと少しの過程で出来る。さすれば、生徒は甦生可能だ」

 

「そちらは私達に任せなさい」

 

「わかりました」

 

 

彼はそう言うと、ロックハートの事務室へと足を向けた。しかし、途中で足を止めた。

 

 

「ああ、忘れていた。スネイプ先生」

 

「む?」

 

「別に、怪物は倒してしまっても構わんのだろう?」

 

「!! ……ああ、遠慮はいらん。思うままにやれ」

 

「ククッ、了解した」

 

 

彼はそう言い残すと、今度こそ闇に消えていった。彼がいるなら、一先ずは安心だろう。伊達に英雄になったわけではない、ということでしょう。

さて、私は他の教師たちにどう説明しましょうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 





はい、今回はここまでです。


う~ん、少し展開が早いか、それとも丁度良いのか、私にはわかりません。

復活のS、万を辞して彼が降臨しました。バジリスクの運命やいかに?

さて、次回は秘密の部屋です。


それではこの辺で

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