錬鉄の魔術使いと魔法使い達   作:シエロティエラ

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最近「仮面ライダーBLACK RX」のカッコ良さに魅せられてます。
序でにマッハも中々


それは兎も角、更新です。


それではごゆるりと






11. リドルの日記、そして新たな被害者は……

 

 

ハーマイオニーも無事退院し、私達の日常は少しだけ戻った。

未だ秘密の部屋の化け物に、皆は怯えているけど、それでもいつものメンバーがいるのといないのとでは、だいぶ差がでる。

 

あ、でも一つだけ変なことがあった。

マートルのいる三階の女子トイレに、黒革表紙の本が一冊、マートルの逆流させた水に浸かっていたのを拾った。その本は拾い上げたとき、推測結構な時間水中にあったにも関わらず、乾いた状態だった。

シロウには、怪しいものには手を出すなって言われてるけど、今回私は独断で自己調査することにした。

 

その日の夜、皆が寝静まった頃に机に向かい、本を開いた。中には何一つ書かれてはおらず、どのページもまっさらだった。裏表紙には金文字で「トム・マールヴォロ・リドル」って書かれている。ということは日記帳か。

試しにインクを一滴、適当に開いたページに落とした。すると、インクはみるみる内に吸い込まれ、またページはまっさらな状態になった。ページを捲ったりしたけど、裏写りしたり染みになった様子はない。

今度は余分なインクを落とし、自己紹介文を書いてみた。

 

 

『私は、マリナ・リリィ・ポッターです。』

 

 

すると私の文字は間もなく吸い込まれ、代わりに私のではない文が浮かび上がってきた。

 

 

『初めまして、マリナ・ポッター。僕はトム・リドルです。』

 

 

何と返事が返ってきた。でも少しだけ掠れていた。首もとのネックレスが淡く光る。ということは危険物なのだろう。

そう言えば、ホグワーツで素晴らしい働きをした生徒に贈られる、ホグワーツ特別功労賞なるものがある。そこには、このトム・リドルの名前も刻まれていた。年は確か五十年前。偶然かはわからないけど、秘密の部屋の開かれた年と同じだ。

私は一抹の望みを掛けて、更に文を書き込んだ。

 

 

『あなたは秘密の部屋について、何かご存知ですか?』

 

『はい』

 

 

返ってきたのは肯定。

ならばとそれについて教えてくれるか書き込んだ。しかし返答は否だった。

せっかくの手掛かりが無駄になったと落胆していると、ページに更に文が浮かび上がってきた。

 

 

『見せることならできます。』

 

 

そして日記のページは勝手に捲られ、真ん中ほどで止まった。そして本の()()が、眩い輝きを放ち始めた。私はその中に吸い込まれ、気がつけば周りが白黒の世界にいた。

どうやらここはホグワーツらしい。目の前の階段を見上げると、一人の青年がいた。運ばれてきた担架をじっと見つめている。白い布が被せられたそれからは、右腕がだらりと力無く垂れていた。

担架に乗せられていたのは、誰かの遺体だった。しかも女性のものだ。いきなり嫌なものを見せられたけど、私は我慢して青年に近づいた。

 

 

「すみません、あなたがトム・リドルですか?」

 

 

しかし青年はこちらを見ない。それどころか、私の声が聞こえているかも怪しい。

そこでふと気が付いた。この世界で色を持っているのは私だけ、あとは全て白黒だ。それに日記は私に見せると言った。であるなら、ここは誰かの記憶の中、私は見ることはできても、干渉することはできない。

そう判断した私は、大人しくことの成り行きを見ることにした。

 

 

「リドルかね? こちらに来なさい」

 

 

ふと階上から声が響いた。それは随分と若々しいが、聞いたことがある声だった。そちらへと顔を向けると、そこには今より少しだけシワの少ないダンブルドアがいた。

ダンブルドアに呼ばれた青年、リドルは彼の元へと行き、二言三言話すと立ち去った。私はそのままリドルの後を追うことにした。

 

彼は暫く城内を歩き回ると、ある一つの扉の前で立ち止まり、そして杖を抜いた。扉へと耳を寄せ、中の音を聞いている。私も聞き耳を立ててみた。

 

 

「おいで。お前さんを城内(ここ)から出さなきゃなんねぇ。アラゴグ、こっちに」

 

 

……今の声、それにしゃべり方。まさか。

そのときトムは、その扉を勢いよく開いた。中の人物は、同時に何かの鍵を掛けていた。

 

 

「ハグリッド」

 

「トム!!」

 

 

やっぱりハグリッドか。トムはハグリッドに杖を向けていた。

 

 

「トム、おめぇ……」

 

「ハグリッド、噂は本当だ。女生徒が一人、何者かに殺された」

 

「コイツじゃねえ!! コイツは何もしてねえ!!」

 

「だが真っ先に疑いがかかるのは君だよ。さぁ、そこをどいて」

 

「嫌だ」

 

「どくんだ、ハグリッド!!」

 

「嫌だ!!」

 

「『システム・アペーリオ(強制開封)』!!」

 

 

リドルが杖を振ると、杖先から閃光が飛んで、ハグリッドの背後にあった箱に直撃し、蓋を破壊した。すると箱の中からは、タランチュラが可愛く思えるほどの大きな蜘蛛が、ものすごい素早さで出てきた。蜘蛛はそのまま部屋の外に走り出した。

 

 

「『アラーニャ・エグズメイ(蜘蛛よ去れ)』!!」

 

 

リドルの杖から再び閃光が飛ぶが、蜘蛛は辛うじてそれを避け、そのまま何処かへと去っていった。

ハグリッドは追いかけようとしたけど、再びリドルに杖を向けられ、動きを止めた。そしてリドルはハグリッドを今回の犯人と断定し、そのままつき出すことを告げた。

 

そこまでだった。

 

視界は再び眩い輝きに埋め尽くされ、気がつけば私はもとの時代、自分の座っていた椅子にまた座っていた。日記は閉じられている。

 

確信した。この日記はそうとうな危険物だ。

私は急いで日記を布にくるみ、私用の使っていない、ベッド脇の小棚の奥に仕舞いこんだ。これは使うたびに飲み込まれる。私の本能がそう告げていた。明日、今見たことも含めて、シロウとロン、ハーマイオニーに報告しよう。私はそう考え、遅い眠りについた。

 

 

 

 

明くる日、新学期初日の授業が終わったあと、私は三人に昨晩のことを話した。

シロウは始め、顔をしかめていたけど、話が進むと何やら考え込み始めた。

 

 

「……一ついいか?」

 

「なに?」

 

「箱から出てきたのは、確かに蜘蛛なのだな?」

 

「うん。それにハグリッドがその蜘蛛に関係あるみたい」

 

「蜘蛛に? 秘密の部屋じゃなくて?」

 

「うん、だって秘密の部屋の『ひ』の字も掠らなかったし」

 

「まぁ、そうだけどさ……」

 

 

四人して黙って考え込んだ。暫くすると、ロンは名案が浮かんだとでも言うように、ぱっと顔を上げた。

 

 

「ならいっそのこと聞いてみようぜ? お茶を装ってさ。やぁハグリッド、教えてくれる? 最近毛むくじゃらのおかしなやつを見なかった? ってね「毛むくじゃらだと? 俺のことか?」ウェイッ!?」

 

 

ロンは後ろにいたハグリッドに気づかなかったらしい。突然声をかけられて、まるで剣吾君のような反応をした。

まぁ取り合えず私とロンとハーマイオニーは即座に否定し、シロウは少し間を空けて首を横に振った。

 

 

「……一人怪しい奴はおるが、まぁええ。お前さん達も、余り遅くまで外にいるなよ? 最近は物騒だからな」

 

 

ハグリッドはそう言うと、『肉食ナメクジ強力駆除剤。マンドレイク用』と書かれた容器を片手に、温室の方向に去っていった。

 

 

「……マリー。日記は今何処に?」

 

「ふぇ? あ、うん。今は小棚の奥にある。ヤバイものだと思ったから布にくるんで」

 

「わかった。すまないが、それをオレに渡してはくれないか?」

 

「いいよ? シロウならある程度対処がわかるかもしれないし」

 

 

私達はそのまま寮に向かった。

すると前の方から、同級生のパーバティが走ってきた。そして私達の前で、息を切らしながら立ち止まった。

暫く荒い息を繰り返すと、鬼気迫る形相で私とハーマイオニーに顔を向けた。

 

 

「二人とも!! 部屋が荒らされてる!!」

 

 

私達四人はその言葉を聞くと、すぐに走り出した。流石にパーバティは疲れているので、シロウが抱えていたけど。そして男子二人は談話室に待たせ、私達女子は急いで部屋に入った。

中は散々たる状況だった。

あらゆるものがひっくり返され、壊され、荒らされていた。私の小棚も例外ではない。嫌な予感がしたので、まず最初に小棚に向かった。

 

 

「……これ、犯人はグリフィンドール生しかいないわ。それも女生徒だけよ」

 

「でも何のために?」

 

 

ハーマイオニーとパーバティは話している。私はその間に小棚の中を丁寧に調べていた。そして発見した。

 

 

「何か……重要なものを探していた。それ以外考えれない」

 

「そして見つけた。リドルの日記が盗まれている」

 

「そんな……!!」

 

「? 誰の日記?」

 

 

そう、トム・リドルの日記が盗まれていた。誰かは知らないけど、恐らくその日記に魅せられた人が、この事態を作り出したのだろう。

私は談話室に降りていき、二人にことの次第を説明した。ロンはショックを受けた顔をした。シロウは再び何か考え込む表情をうかべ、そして袖から出した金属製の小鳥に何事か話し、そのまま談話室から出ていった。

そのときのシロウは、何か切羽詰まった表情をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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更に日数は過ぎ、今日は今年何度目かのクィディッチのゲームデイだ。今日の勝敗は、今年のクィディッチ優勝がかかる、非常に重要な試合だ。

私は控え室から他の選手と一緒に、ピッチへと向かう通路を歩いていた。ロンは試合前にシロウからハチミツレモンを持たされ、選手に振る舞っていたので一緒にいる。因みに言うと、シロウとハーマイオニーは調べものがあるとかで、あとから観客席に向かうそうだ。

と、通路の向こうからマグゴナガル先生が走ってきた。とても慌てた、そしてショックを隠せない顔をしている。

 

 

「この試合は中止です」

 

「そんなッ!?」

 

 

マグゴナガル先生の言葉に、ウッドは非難めいた声をあげた。仕方がない。優勝がかかる試合なのだ。私も先生の発言に驚きを隠せない。

 

 

「緊急事態です。皆さんは着替えずに寮に戻って。ポッターとウィーズリー三兄弟は私と共に」

 

 

マグゴナガル先生はそう告げると、そのまま私達を伴って歩き出した。ジョーダンさんのアナウンスで、観客席の生徒達も寮に戻るよう告げられる。

 

最初私達五人は何処に向かっているかわからなかったけど、暫く歩くと医務室に向かっているのがわかった。

なんだろう、とても嫌な予感がする。

 

医務室につくと、ある二つのベッドに案内された。マダム・ポンフリーがさその二つの間に立ち、沈痛な顔をしている。……まさか。

 

 

「ショックを受けると思いますが……」

 

 

マグゴナガル先生はそう言うと、まず片方のベッドのカーテンを開けた。

そこに横たわっていたのは……

 

 

「「ハーマイオニーッ!?」」

 

「「石化してる!?」」

 

 

ハーマイオニーだった。

今までの被害者と同じく、石化していた。

 

 

「……彼女は図書館の近くで発見されました。脇にはこれが……」

 

 

マグゴナガル先生は小机の上の、小さな手鏡を手に取った。

 

 

「……何か心当たりはありますか?」

 

 

先生が聞いていたけど、私達は首を横に振った。全く何の心当たりがなかった。マグゴナガル先生は、そのまま隣のベッドに移動した。

一つはハーマイオニーだった。ならもう一つはまさか……

私は予想が違うことを願った。でもそれは、更に上をいく状態で裏切られた。

 

 

「……嘘だろ……」

 

「ありえねぇ」

 

「誰がやったんだ……」

 

「ああ……そんな……シロウ!?」

 

 

カーテンが捲られた先には、苦しそうな表情を浮かべ、頭以外全身を包帯で巻かれた状態で眠ってるシロウだった。石化はしていない、でも包帯には血が滲んでいる。

 

 

「彼はグレンジャーから少し離れたところで。付近では戦闘の形跡がありました。そして襲撃者の物と思われる血痕も」

 

 

シロウは……犯人と戦ったのだろうか……

 

 

「彼は発見されたとき、まだ意識がありました。犯人を聞き出す前に眠りにつきましたが、襲撃者の保有する毒を、サンプルとして私達に……敵はとてつもなく大きな怪物です。彼はその怪物に、大きな顎で一噛みされたようです」

 

 

マグゴナガル先生は重々しく言葉を紡ぐ。

そこにダンブルドア先生が、医務室にやってきた。そして私達の元へと近づいてきた。

 

 

「毒の効力がわかった」

 

「それは何なのですか?」

 

「うむ。あの毒は、本来ならば五分とかからぬ内に、対象を死なせるものじゃ。加えて質の悪いことに、傷も塞がらん」

 

「そんなッ!? じゃあシロウは!!」

 

「ポッター、落ち着いて。まだ話は終わってないですから」

 

 

思わず声を上げたら、マグゴナガル先生に諌められた。

 

 

「本来ならば、じゃ。だがシロウは何でか抗力を持ってるようでの。襲撃から推定30分は経過しておるが、未だ死んではおらん。それに少しずつじゃが、出血量も少なくなっておる。ポピー、薬を塗ったのかのう?」

 

「いえ、私はただ包帯を巻いただけです。恐らくこれは彼自身の治癒力でしょう」

 

 

どうやら話を聞く限り、シロウは死なないらしい。今はスネイプ先生が、急いで血清を作っているらしい。

一先ず安心し、でも悲壮感を隠せないまま、私達はグリフィンドール寮に向かった。

寮に着くと、マグゴナガル先生が手に持った巻き紙を開き、内容を声に出して読み始めた。

 

 

「生徒は本日より、6時以降は食事を除き、寮の外に出ないこと。日中間の教室移動は、教師が必ず一人付きます。クラブ活動、クィディッチも無期限禁止です。それから一人での行動は、決してしないように。例外は認められません」

 

 

先生は再び紙を巻くと先ほどの厳しい表情を崩し、悲しさを隠そうともしない顔をした。

 

 

「残念ながら現在ホグワーツを閉校する、という話も出ています。私達も、今後このようなことが続けば、そうせざるを得ません」

 

「あの……ハーマイオニーとシロウがいませんけど……」

 

 

同級生のパーバティが、マグゴナガル先生に問いかけた。その質問に周りのみんなも、そういえばと二人の姿を探した。

 

 

「……ミス・グレンジャーは今回の被害者の一人となりました」

 

「「「……え?」」」

 

「そんな……」

 

 

寮のみんなはショックを受けた声や、顔を浮かべる。

 

 

「……ミスター・エミヤは……今回の襲撃者と戦闘を行い、意識不明の重体です」

 

「なんだって!?」

 

「嘘だろ……」

 

「あのエミヤが?」

 

 

シロウの重体宣告に、グリフィンドール生はどよめきだした。決闘クラブの顛末を見た人たちは、シロウが規格外人物と認識し、ダンブルドアの次に無敵の存在では? と各々推測を立てていた。

そんな彼が重体となるほどの犯人。絶望は並々ではない。

 

と、そこにマダム・ポンフリーが慌ただしく転がり込んできた。何やら緊急事態のよう。もしかしてシロウになにか?

 

 

「み、ミネルバ!! ミスター・エミヤは!?」

 

「お、落ち着きなさいポピー。エミヤに何かあったのですか?」

 

「……ミスター・エミヤが……消えました」

 

「「「「……はい!?」」」」

 

「何ですって!?」

 

「もぬけの殻です!! ベッドには血の付いた包帯だけが残されており、新品の包帯三巻と共にいなくなったのです!! まだ動ける体でないのに……いったい何処へ……」

 

 

ダンブルドア先生だけでなく、様々な先生が捜索したけど、一切の手掛かりが無かったらしい。

私は気がつかないうちに、床に座り込んでいた。視界が歪み、暖かいものが目から流れ落ちる。

 

 

その日、エミヤシロウは行方不明となった。

 

 

 

 

 

 

 







はい、今回はここまでです。

シロウですが、不意をつかれて重傷を負うことになりました。
これより暫くは、シロウは戦線離脱です。

日記ですが、原作ではハリーが、少々飲まれかけていましたね。
マリーは生来の慎重さ、シロウの護符、持ち前の勘で日記を危険物にカテゴリしました。


さて、次回はアラゴグ編です。
バレンタインネタは入れるかは、わかりません。
少々駆け足ぎみですが、御容赦ください。


それではこの辺で




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