錬鉄の魔術使いと魔法使い達   作:シエロティエラ

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更新です。

それではごゆるりと。






10. 蛇語とポリジュース薬

 

 

 

 

 

Side マリー

 

 

大広間は、スネイプ先生の荒い息遣いだけが響き、あとは風が入り込む音しかしなかった。

 

 

「スネイプ先生。大丈夫ですか?」

 

「……ああ、大丈夫だ。それにしても流石だな、エミヤ。防ぐことに手一杯だった」

 

「今回は魔力を込めましたので。ですが、流石に私もこうなるとは」

 

 

スネイプ先生とシロウが会話をしている。その声で、一人、また一人と現実に戻ってきた。と、大広間の外から、マグゴナガル先生が駆け込んできた。

 

 

「今のはいったいなんですか!? まるで地震のような……セブルス、何をしてるのですか?」

 

「少々力を使いすぎまして」

 

 

マグゴナガル先生はスネイプ先生の言葉に、まずシロウに目を向け、次にスネイプ先生、最後に広間を見渡し、再びスネイプ先生に視線を戻した。

 

 

「……まさか?」

 

「ええ。そのまさか、です」

 

「……わかりました。ミスター・エミヤ?」

 

「はい、何でしょう?」

 

「余りやり過ぎないよう、お願いしますね?」

 

「……すみませんでした」

 

「よろしい、さて」

 

 

マグゴナガル先生はシロウに注意をしたあと、大広間に杖を向け、ヒビの入った壁に天井、割れた窓を綺麗に修復し、大広間を後にした。あらら。シロウの規格外さって、先生方には知られてるんだね。まぁ去年のトロールのこともあるから、仕方がないと言えば、仕方がない。

 

 

「では今度は生徒同士でやってみようか。ああ、ポッターにウィーズリー。どうだね?」

 

 

ステージの上から二人が降りたあと、ロックハート先生によって生徒同士でやることになった。で、私とロンが指名されたけど、ロンの杖はさっきの余波で折れた。今は芯に使われてるユニコーンの毛で、辛うじて繋がっている状態。流石に使うのは不味いだろう。

 

 

「……ロン。すまない」

 

「あ、いやいいよ。これもお下がりだし」

 

「……新しい杖の代金は、オレに払わせてくれ」

 

「……お願いします」

 

 

漫才のようなやり取りが、隣で行われている間に、私の相手はマルフォイに決まった。私とマルフォイはステージの中央に立ち、互いに杖を構えた。因みにハーマイオニーは、スリザリンのミリセントって女の子とペアを組み直した。

 

 

「怖いか、ポッター?」

 

「いいえ? 結構ワクワクしてるわ。怖いのはあなたじゃないの?」

 

「まさか?」

 

「あら、残念ね」

 

 

互いに挑発し、それからそれぞれステージの端に立つ。私の頭の中には攻撃用、ただし全て武装解除以下の攻撃力しかない呪文を、思い浮かべる。

そういえばシロウにも言ってないけど、威力は大したことないけど『独自魔法(オリジナル・スペル)』を作ったんだよね。この際ここでお披露目しようか? 武装解除よりは弱いし。

因みに今回もロックハートのジャッジで決闘を始める。

 

 

「杖を構えて!! ……一……二 「『エヴァーテ・スタティム(宙を踊れ)』!!」なっ!?」

 

 

マルフォイがフライングで私に呪いを飛ばした。マトモに食らった私は宙を舞い、後方へと吹っ飛ばされた。スリザリン生たちは、皆一様にニヤニヤとした嫌な笑いを浮かべていた。呆れた、卑怯な手ばかり使って、貴族が聞いてあきれる。

私は立ち上がりマルフォイに杖を向けた。彼は驚いた顔をしてる。ただ吹っ飛ばしただけで、勝った気になってるの?

 

 

「『フリペンド・ブライン(乱れ射ち)』!!」

 

「二人とも武装解除だけです!!」

 

 

ロックハートの制止を聞かず、私はオリジナル・スペルを発動させる。杖先から卓球球程の大きさの光球が、マルフォイ目掛けて連続掃射される。

 

元々フリペンド自体は大した魔法ではない。何の呪力もない光球を撃ちだし、対象に当てる、本当にボールを当てるだけのような魔法である。が、飛ぶスピードはかなり速いため、威力などが最大になれば、陶器製の壺を壊すのは勿論、金属甲冑をバラバラに吹き飛ばすのはわけない。

 

今、私が出しているのは、飛行スピードは卓球マシンほどであり、連射スピードはマシンガン、球の大きさと固さはスーパーボールほどである。それが連続掃射されたらどうなるか。

 

 

「アバババババババババババババッ!!」

 

「マリー、落ち着いて!! 武器を奪うだけdアバババババババババババババッ!!」

 

 

と、こうなる。

十秒ほどで連射は終わった。なんか途中で誰か巻き込んだ気がしないでもないけど、無視することにした。

周りの皆は、目を見開いている。スネイプ先生は感心するような顔をしている。シロウも驚いているみたい。やったね!!

 

マルフォイは暫く床に座り込み、ゼェゼェ言っていた。けど、再度立ち上がり、私に杖を向けた。

 

 

「『サーペンソーティア(蛇よ出よ)』!!」

 

 

マルフォイの杖の先から、全長70cm程のコブラが出てきた。ステージに出された蛇は、そのまま動き出す。確かコブラは、強力な毒を持っていたはず。誰かに噛みついたら大事だ。

 

 

「二人とも動くな、我輩が追い払おう」

 

「いや、私にお任せあれ」

 

 

スネイプ先生が歩き出すけど、ロックハートがそれを制止し、蛇に杖を向けた。

 

 

「『ヴォラーテ・アセンデリ(蛇よ去れ)』!!」

 

 

ロックハートの杖先から閃光が飛び、蛇に直撃した。パァンッ!! というゴムの弾ける音と共に、蛇は宙に打ち上げられ、そのまま落下した。また失敗してる。蛇は怒ったようで、近くの生徒に、ターゲットをとった。いけないっ!!

 

 

━━ 手を出すな。去りなさい。

 

 

私は蛇に向けて声を発した。蛇は動きを止め、私に顔を向けた。

 

 

━━ 魔力に還りなさい。ここはあなたのいるべき場所ではない

 

 

蛇は渋るように床に頭を落とし、舌をちらつかせる。

 

 

━━ 還りなさい!!

 

 

今度は強く言った。蛇は諦めたのか、光を放ち、マルフォイの杖の中に吸い込まれていった。

もう大丈夫だ、そう思った私は、襲われそうになったハッフルパフの生徒、ジャスティンに顔を向けた。けど、彼は私を恐れるかのような目で見ていた。

周りを見渡すと、私と余り接点のない人たちは、寮の所属に関係なく、私に同じような目を向けている。私、何かした?

 

 

「えっと……皆どうしたの?」

 

 

本気でわからなかった私は、皆に問いかけた。でも誰一人答えない。突然私は後ろから引っ張られ、大広間の外へと連れていかれた。引っ張っていたのはロンだった。ハーマイオニーとシロウもいる。私達はそのまま暫く廊下を歩き、とある曲がり角で立ち止まった。

 

 

「君『パーセルマウス(蛇語使い)』だったの?」

 

「私がなんだって?」

 

「『パーセルマウス(蛇語使い)』。蛇と話ができる人よ」

 

 

ハーマイオニーが説明を入れる。でも今一ピンとこない。

 

 

「わかんないよ。仮にそうだとしても、今回が初めてだもん」

 

「今まで経験ないの?」

 

「うん」

 

 

そう。仮に蛇と話せたとしても、私は今まで蛇とコミュニケーションをとったことない。だから、もし私が蛇語を話したとしたら、今回が初めてだ。

 

 

「何で皆あんな顔をしてたの?」

 

「それは……サラザール・スリザリンが蛇語使いだったからよ」

 

「ただそれだけ?」

 

「今、秘密の部屋の騒動が起こってるでしょう? そして狙われてるのは、スリザリンの継承者の敵。ならあなたがそのつもりが無くても、皆あなたがスリザリンの継承者かもって思うわ」

 

「そうだよ。もしかしたら皆君をスリザリンの曾曾曾曾孫だと思うぜ?」

 

「そんな!?」

 

「彼の者は何百年も前の人間だ。確率的には、その血を牽いているということは、あり得なくはないのだよ、マリー」

 

「パム~……」

 

 

シロウは重々しく言葉を紡いだ。

 

 

 

 

 

 

その日から私は、校内の大多数の人たちから、疑いの視線に晒されることになった。普通に廊下を歩いているだけで、皆脇に逸れていく。中には自分は純血だから襲うな、と言ってくる人間もいた。正直ストレスが溜まった。いつも美味しいと感じる食事も、全くの無味に感じられた。

 

救いがあるととすれば、ウィーズリー一家やシロウ、ハーマイオニーは変わらず私に接しており、グリフィンドールの同級生や、何人かの他寮生も私を疑っていないということだ。

 

 

「下~に下に、スリザリンの継承者様のお通りだ~」

 

「者共、頭が高い!!」

 

 

フレッドとジョージがふざけて私の両隣に立ち、ふん反りかえって歩く。そこにパーシーが近づき、二人に注意をする。

 

 

「おい、どけよパーシー。マリー様は行かねばならぬ」

 

「そうだそうだ。牙を生やした手下と、剣の魔王と一緒にお茶をお飲みになるのだ」

 

「ふざけるな!! だいたい剣の魔王って「呼んだか?」あ、シロウ丁度よかった。二人にお仕置きを……って、なんだその格好は!?」

 

「「「「ブフゥッ!!」」」」

 

 

やって来たシロウを見た瞬間、周りにいた人たちも含めて吹き出した。いつものシロウからは想像できない、非常に奇抜な格好をしていたのだ。

 

上半身は裸、両腕両足にはゲートルのように黒い布を巻き付け、左右の腰に二本ずつ、背中に二本の合計六本の剣を身に付けている。

下半身は大きな紅い布を巻き付け、靴は履いていない。そして全身には奇妙な模様が描かれており、頭には腰布と同じ色の布を巻き付けている。

そして背中には何故かお地蔵様を背負っていた。ハネジローはシロウの肩に乗っている。

 

 

「し、シロウ。その格好はいったい……?」

 

「オレはシロウではない。剣の魔王だ」

 

「「ブヒャヒャヒャヒャッ!! m9(^▽^)」」

 

 

シロウの発言と出で立ちに、双子はゲラゲラとバカ笑いし、周囲の生徒たちもパーシーを除き、バカ笑いをした。

騒ぎを聞き付けたマグゴナガル先生が来たけど、その厳格そうな顔を歪め、視線を反らしていた。因みに双子は同じような格好をして、先生とパーシーから怒られていた。

 

こんな感じで、確かに味方もいた。もし彼らがいなかったら、私はどうなっていただろう。想像したくもない。

でも数日後。蛇に襲われそうになったジャスティンが、ゴーストのニコラスさんと共に、石化した状態で見つかり、更に疑心に晒されるはめになった。

 

月日は過ぎてクリスマスを経由し、被害者は更に二人増えた。その内の一人は、パーシーの彼女さんだったらしく、その日からパーシーは沈みこんだままだった。

 

 

そこに漸く、ポリジュース薬が完成した。今はまだ冬季休暇中。マルフォイは学校に残っていた。

今回、秘密の部屋について、何かしら知っていると思われるマルフォイから、情報を引き出すために、彼に近しい人たちに変装することになっている。その変装に、ポリジュース薬は絶対に欠かせないアイテムだ。

 

 

「結局誰が何を飲むの?」

 

「私はミリセント・ブルストロード。ローブに彼女の髪が付着していたわ」

 

「じゃああとはクラッブとゴイルか」

 

「すまんがオレは実行の日の夜、校長に呼び出されている。三人だけに任せる形になるが」

 

「じゃあ私がクラッブのを飲むね。ロンはゴイルで」

 

「わかった」

 

 

クラッブとゴイルの髪の毛はまだ採取していなかったので、今夜採ることにした。因みに二人とも学校に残っている。

私達は少し強めの眠り薬で三人を眠らせ、薬の効く一時間のみ、彼らと入れ替わることになった。ただ、そのまま薬を飲ませるわけにはいかないので、私達はマドレーヌにそれを仕込み、待ち伏せした。

 

大広間の外にマドレーヌを二つおき、魔法で空中浮遊させる。これはクラッブとゴイル用だ。ミリセントはハーマイオニーがどうにかするみたいで、そちらは任せた。

それにしてもシロウ、校長先生の呼び出しってなんだろう?

私が考え事をしていると、大広間から大量のマフィンを抱えたクラッブとゴイルが、実に幸せそうな顔をしながら出てきた。そして宙に浮くマドレーヌを見つけると、何の躊躇もなくそれを手に取り、かぶり付いた。そしてすぐに眠り薬が効き、その場に倒れた。

 

……うん。この子たち馬鹿なのかなぁ? 普通あんな怪しく浮いてるものに、躊躇なく手を出しはしないけど。

まぁ計画はうまくいったので、私達は髪の毛をそれぞれ一本採取し、三階女子トイレの個室に押し込めた。そしてハーマイオニーからコップに入ったドロリとした薬を受け取り、髪の毛を投入した。

 

薬は私のは褐色となり、ロンはカーキ色、ハーマイオニーは黄土色になった。

 

 

「いい? 効果は一時間だけ、忘れないでね? それじゃあ……」

 

 

私達は薬を一気に飲み干した。

……うん、不味い。もう一杯なんて決して言わない。ロンとハーマイオニーはそれぞれ個室に駆け込んだ。

 

体が内側から焼けるようだ。絶え間なく吐き気が私を襲う。中のものが出そうになったけど、私はそれを堪えた。

暫く気持ち悪いのが続くと、今度は私の表面が泡立ち始めた。泡は決して弾けることなく膨張と収縮を繰り返し、私の体を大きくしていった。そして数秒後、私の外見はクラッブとなった。

試しに声を発すると、声までもクラッブになっていた。

なんか複雑。私女の子なのに。

 

まぁ取り合えず成功だ。ロンもゴイルの姿になり、個室から出てきた。でもハーマイオニーはトラブルが起こったらしく、結局私とロンの二人だけで動くことになった。

 

結論から言うと、大した収穫はなかった。

新しくわかったのは、前回部屋が開かれたのは五十年前。そのときマグル出身の女生徒が一名死亡、たったそれだけだ。部屋に潜む怪物については、何一つ判明しなかった。

 

そしてハーマイオニーだけど、どうやら彼女が使ったのはミリセントの髪の毛じゃなく、猫の毛だったらしい。ハーマイオニーは顔は猫になり、毛がはえ、尻尾まで付いていた。

 

ポリジュース薬は、動物の毛を使用してはいけない、人間の一部のみである。けどハーマイオニーは猫だった。

そのせいで、一時間経過しても変化は解けることなく、寧ろ毛玉を吐いたりと酷かったので、私達は彼女を医務室に連れていった。マダム・ポンフリーには、魔法の失敗でこうなったと伝えてる。間違いではないし。

 

結局ポリジュース薬を使った今回の調査は、ほぼ無駄骨となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 








はい、ここまでです。

マルフォイとロックハートの呪文、「宙を踊れ」「蛇よ去れ」は、映画オリジナルの魔法です。
マリーの魔法は、ハリパタのゲームオリジナル魔法、「フリペンド、撃て」を元にした、本作品オリジナルです。

マリーの口調ですが、成長するにつれて、徐々に「~だわ」「~よ」「~かしら」という、一般的に女性口調と呼ばれるものにしていきます。
まだ12歳なので、偶にしか出ませんが。



さて、次回はリドルの日記です。


それでは今回はこの辺で




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