錬鉄の魔術使いと魔法使い達   作:シエロティエラ

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ではでは更新です。

それではごゆるりと





9. 夜中の会話と決闘クラブ

 

 

Side マリー

 

 

「……ドビー?」

 

「マリー・ポッターはホグワーツに来てしまった」

 

 

私が寝ていたベッドの上に、ドビーは立っていた。そして悲しそうな表情をしていた。

 

 

「ドビー、一つ聞かせて」

 

「はい」

 

「あの暴走したブラッジャー、あれあなたの仕業?」

 

「……はい」

 

 

私の質問に、ドビーは顔を俯かせて返事をした。やっぱりそうか。だとすると、その理由は夏休みのときと同じ。それならば、

 

 

「じゃあ駅の入口を塞いだのも?」

 

「……はい」

 

「……ハァ。ドビー、あなた約束したよね? もう私に干渉しないって」

 

「……」

 

 

私の問い掛けにドビーは黙りこくる。でも私はドビーの顔を両手で挟み、こちらに向けさせた。そして私の目を見させた。

 

 

「夏休みに、私とシロウと約束したよね?」

 

「……はい」

 

「じゃあ何で? あなたにとって、私達との約束はそんなにすぐに破って良いものなの?」

 

「ッ!! 滅相もありません!! ですがドビーめはマリー・ポッターの安全のために……!!」

 

「入口を塞ぐのは兎も角、ブラッジャーは確実に私の頭を潰そうとしてたよね?」

 

「そ……それは……」

 

「私言ったよ? 人間はたかがゴムの球で命を落とすって。忘れたわけじゃないよね?」

 

「も、勿論ですとも!!」

 

 

ドビーは大きな耳をパタパタさせながら、頻りに頷いていた。良かった、忘れっぽいことの心配はないみたいだね。

 

 

「もう一度言うよ? ドビーの気持ちは嬉しいけど、私にとっては迷惑なの。だから今後は絶対こんなことしないで。私はドビーの御主人様じゃないから命令はできないけど、一個人として約束することは出来る?」

 

「はい、勿論です!!」

 

「序でに言っとくけど、もし今後やったらたぶん、シロウに殺されると思うよ? 脅しじゃなく、本当に」

 

「それは……確かに」

 

 

ドビーとはそのあと、一つ二つ会話をした。やはりと言うべきか、ドビーが私をホグワーツに戻したくなかったことに、今回の石化騒動が関係してるらしい。流石に詳しいことほ話せなかったみたいだけど。

ドビーは私に念入りに警告して帰っていった。それと廊下の方から、複数の人たちが来るのは同時だった。

私は急いでベッドに寝転がり、狸寝入りをした。

 

どうやらポンフリーさんとマグカゴナガル先生、そしてダンブルドア先生らしい。何かを運んできたようだ。

 

 

「生徒がまた襲われました。今回も石化しています」

 

「この子は確かグリフィンドールの……」

 

「ええ、コリン・クリービーです。近くに葡萄が一房落ちていたことから、寮を抜け出してポッターの見舞いに行こうとしたのでしょう」

 

 

コリンが石化? 医務室に来る途中で?

 

 

「カメラは? この子が構えているということは、中にネガがあるのでは?」

 

 

薄目を開けて見ると、ダンブルドア先生がコリンの手から、カメラを抜き取って裏蓋を開けた。ポンッ、シューと言う音を立てて、カメラからは火花と煙が立ち上った。

 

 

「……熔けてる」

 

「ダンブルドア先生、これはいったい……?」

 

「……それはの。秘密の部屋が開かれたということじゃ。再びのぅ」

 

 

ダンブルドア先生の重苦しい声が、妙に耳に残った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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それから数日過ぎ、私は無事に退院した。

シロウたちには、ダンブルドア先生の言っていたことを伝えてある。『再び』という言葉にロンとハーマイオニーは疑問を抱いたらしく、ならばハロウィンの日に何か知ってそうな雰囲気を出していた、マルフォイから直接聞き出そうということになった。

でもただでは聞き出せないので、マルフォイが信を置いている人物に成り代わることになった。

 

そこで使うのが『ポリジュース薬』という魔法薬だ。何でも薬に対象の身体の一部分を混ぜることにより、その対象に一時的に変身出来るらしい。魔法って便利だね。

まぁ方針が固まったところで、私達四人は三階の女子トイレ、『嘆きのマートル』と呼ばれるホグワーツ女子生徒のゴーストが取り憑くトイレで、ハーマイオニーを中心にして調合していた。

でもその薬が出来るまで一ヶ月。その間は何もできない。私達はその間も自分達なりに、秘密の部屋について調べていたけど、大して良い情報は得られなかった。

 

更に三日ほど経過したとき、大広間前の掲示板にチラシが張り出された。なんでも週末、明日の昼間に、『決闘クラブ』を開くらしい。担当の教師は、ロックハートにスネイプ先生。まぁスネイプ先生がいらっしゃるなら、滅多なことは起こらないだろう。そう考えた私は、いつもの四人で出ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side シロウ

 

 

さて、週末になったが、大広間の中は片付けられ、中央に細長いステージが設置されていた。恐らく、この上で実演が成されるのだろう。

ステージの上にロックハートが立つと、ファンの子達が一斉に前の方に陣取った。因みにオレは、部屋の壁の出っ張りに腰掛けてる。ハネジローはオレの直ぐ下に立つマリーの頭の上だ。そのマリーの両脇を、ロンとハーマイオニーが陣取っている。まぁ十分に見えるし、いいだろう。

 

 

「皆さん!! 私の声が聞こえますか? 私の姿が見えますか? ……よろしい」

 

 

ロックハートは声を張り上げて確認を取ると、マントを肩から外してステージ脇に立つ女生徒に渡した。女生徒はファンの一人らしく、とても幸せそうな顔をしている。

 

 

「最近物騒なことが、立て続けに起きていますのでね。そこで校長先生が、自衛の術を皆さんに学ばせるために、『決闘クラブ』を臨時で開くことにしました!!」

 

 

ロックハートは言葉を続ける。

 

 

「今回は、私ともう一人の教員が担当します。それではご紹介しましょう、もう一人の担当者、スネイプ先生です!!」

 

 

ロックハートが紹介すると、奴が立つ場所とは逆のステージ端から、スネイプはステージ上にあがってきた。いつものコウモリのようなマントは脱いでおり、右手には杖を持っている。成る程、予想はしていたが、彼は中々の手練れだな。

 

 

「それではまずは私と彼が、デモンストレーションを行います!! 大丈夫です、死んだりなんてしませんよ!!」

 

 

ロックハートは意気揚々とそう述べ、ステージ中央に立ち、スネイプと向き合った。

二人同時に杖を顔の前に構え、それをゆっくりと切り払うように、身体の斜め下の位置へと移動させ、そして深く礼をした。

成る程。決闘と言うだけはあり、騎士然とするのが自然か。

それから二人は互いに背を向け、それぞれステージの四分位点で互いに向けて、杖を構えた。ロックハートは気取ったような構え方だな。対するスネイプは王道な、弓を引くように顔の横に右手に持つ杖を構え、左手はロックハート向けて伸ばしている。

 

 

「三つ数えたら、決闘の始まりです。……一……二……三!!」

 

「『武装解除(エクスペリアームス)』!!」

 

 

ロックハートが三数えるのと同時に、スネイプの杖がひらめいた。杖先からは赤い閃光が飛び出し、ロックハートに直撃、そのままぶっ飛ばした。ロックハートはステージの上に大の字で寝ていたが、数秒後に起き上がった。

 

 

「え、ええー今のは武装解除呪文です。ご覧の通り、私は杖を奪われました。それにしてもスネイプ先生。生徒に合わせて武装解除から教えるとは、いやはや感服しました。まぁ私がその気になれば、返すことはできますが」

 

 

ロックハートはそう言いつつ、ステージに落ちた自分の杖を拾った。スネイプは無言を貫いている。それにしてもスネイプの杖捌き、中々に鋭いな。これは本気になれば、彼と並ぶ実力者はそうそういないだろう。

 

 

「さて、では二人一組を作ってください!! そして互いに杖を取り上げる練習です!! いいですか? 杖を取り上げるだけですよ?」

 

 

ロックハートがそう言うと、皆して二人一組を作りはじめた。マリーはマルフォイと組み、ロンはハーマイオニーと組んでいる。さて、オレは……ハブられた。……悲しくなんてないぞ?

 

 

「おや? ミスター・エミヤ? 相手がいないのですか?」

 

「……ええ、まぁ」

 

 

オレを見つけたロックハートが、話しかけてきた。そうだな、こいつに相手してもらうとしようか。

 

 

「なら私が相手をしてあげましょう!! さあさあこちらへ」

 

 

ロックハートはそう言って、オレをステージ上に連れて行った。すると広間にいた皆の視線が、オレとロックハートに向けられた。ファンの子達からは、「ロックハートにやられろ」という嫌悪の籠った視線を向けられ、あとは好奇心、ロックハートの冥福を祈る視線を向けられていた。

 

ふとスネイプと目があった。その瞬間、俺達はアイコンタクトで会話を行った。

 

 

『スネイプ、こいつやって良いか?』

 

『構わん、思いっきりやれ』

 

『加減がわからないから、様子見するわ』

 

『よかろう』

 

 

以上、使用時間0.5秒のアイコンタクト。さて、オレも準備するか。

ローブが邪魔だったから床に脱ぎ捨てたが、ハネジローがそれをマリーのもとへ持っていった。オレは腰の鞘からアゾット剣を引き抜き、逆手に持つ。ローブはマリーが畳んで手に持っている。

 

 

「ロックハート先生」

 

「何でしょう?」

 

「呪文は『エクスペリアームス』で良いんですよね?」

 

「ええ、それで大丈夫です。今回は試しなので、礼は要りませんよ?」

 

 

ロックハートはそう言って杖を構えたので、オレも剣を構えた。剣を握る右手を前に出し、左手を肘裏に添える。

 

 

「……一!!」

 

 

ロックハートの声が響く。ふとオレと近しい者たちが、オレの後ろを指差している。何があるのだ?

 

 

「……二!!」

 

 

更にロックハートのカウントは続く。広間にいた殆どの生徒が、オレの後ろを指差し、騒ぎ出す。だから何だと言うのだ。

 

 

「……三!!」

 

「『武装解除(エクスペリアームス)』!!」

 

 

オレがロックハートのカウントと共に、呪文を唱えた。するとアゾット剣の柄頭の宝石ではなく、オレの後方から二本の真っ赤な光の剣が飛び出した。

その二本の剣は、一本はロックハートの右手に直撃して杖を弾き、もう一本はロックハートの額に直撃した。ロックハートはそのまま『ウルトラC』の要領で後ろに飛び、そして壁に叩き付けられた。

 

 

……なんでさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side マリー

 

 

 

ロックハートが壁に叩き付けられた瞬間、大広間は静けさに支配された。というかそれ以前に、シロウの呪文って何なの? 閃光が剣の形だし、一回の呪文で二発出るし、そもそも杖先から出てないし。虚空から発射されるって。

 

とりあえず、ロックハートはすぐに起き上がった。どうやら打ち所が良く、気絶しなかったみたいだった。ロックハートはシロウの呪文について誉め、次に自分の相手をする人を探し始めた。シロウとは誰も組みたがらない。まぁわからないでもないけど。

 

 

「ならば、我輩が行こう」

 

「スネイプ先生?」

 

「どれ、ミスター・エミヤの実力が知りたくなった。エミヤ、相手をしてもらえるか?」

 

「はい、大丈夫です」

 

 

シロウはそう言うと、スネイプ先生と一緒にステージ上にあがった。先程のことから、みんな自分のことではなく、スネイプ先生とシロウに意識が向いてる。

何人かのスリザリン生徒が、シロウをボコボコにするよう野次を飛ばしていた。

 

でも気のせいかな?

さっきのスネイプ先生の言葉、スネイプ先生自身の力が、シロウにどこまで通用するか、試してみたいって思いが感じられた。気のせいだよね?

 

二人はステージの中央で礼をしたあと、互いに離れて杖を構えた。

 

 

「……一!!」

 

 

ロックハートがカウントを始める。そしてまたシロウの後ろの空間が、歪み始めた。今回は気がついた人が多い。

 

 

「……二!!」

 

 

更にカウントは続く。空間の歪みはやがて形作られ、一本の無色透明な槍になった。剣の次は槍なんだね。スネイプ先生は気がついているのだろう。集中するように、シロウを見つめる。

 

 

「……三!!」

 

「『武装解除(エクスペリアームス)』!!」「『多重防壁(プロテゴ・フラクタル)』!!」

 

 

シロウが武装解除呪文を唱えると、槍は真っ赤な光を放ち、スネイプ先生目掛けて射ち出された。そしてスネイプ先生の杖からは、七枚重ねの銀色の盾が投射された。

 

瞬きする間に、槍と盾はぶつかった。

途端、物凄い衝撃と風が巻き起こった。皆が後ろに少しズラされた。膨大な魔力のぶつかり合いで、私達の杖が共鳴を起こすように振動する。シロウの光の槍は、スネイプ先生の盾を貫こうと、ぶつかってる。

 

盾が一枚壊れた。スネイプ先生が少しノックバックを受けてる。

また一枚壊れた。更にノックバックを受けてる。

一気に三枚が壊れた。スネイプ先生は二、三歩後ずさる。

 

盾が一枚一枚破壊されるたびに、魔力の胎動が起こる。大広間の窓が、壁が、天井が振動し、音を立てている。

 

 

「な……なんなのよ、これは!!」

 

「あ……あああ……」

 

 

魔力の煽りを受けた生徒は、一人、また一人と酔っ払い、地面に座り込む。特にスネイプ先生の近くにいた人が、一番酷そうだ。

盾がまた一枚破壊され、最後の一枚になった。その一枚も、ヒビが入り始める。

 

 

「ッ!! ハァァァアアアアア!!!!」

 

 

スネイプ先生が力を込めた。盾と槍が拮抗する。そして槍と盾は、眩い光と暴風、轟音を立てて爆散した。生徒たちは差があれど、皆後方に吹っ飛ばされた。

 

近くにいたロンの杖は、今の衝撃で真っ二つに折れた。恐らく魔力の胎動に耐えきれなかったのだろう。

ただ、シロウ作の護符を持っていたメンバーは、ロンの杖を除いて、少し後ずさるだけで済んだ。大広間の窓は全て割れ、生徒たちはそのほとんどが、膨大な魔力の胎動で酔っていた。

そしてその発生源にいた二人は、シロウは杖を構えたまま立っており、スネイプ先生は片膝をついて、大きく肩で息をしていた。

 

 

 

 

 





はい、ここまでです。


スネイプの使った呪文ですが、その名の通り、盾の呪文の重ねがけです。
そしてシロウvsスネイプのシーンは、まんまアイアスvs投げボルグのシーンがベースです。

さて、次回は蛇語騒動とポリジュース薬。


では今回はこの辺で



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