錬鉄の魔術使いと魔法使い達   作:シエロティエラ

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ではでは更新です。

ハネジローの人気は凄いですね。一家に一ハネジロー(爆)

それではごゆるりと





8. 狂ったブラッジャー

 

 

Side シロウ

 

 

あの猫。

石化こそしていたが、どうにも違和感がある。ライダーの石化魔眼とは違う、本来の効力が弱体化されたような感覚だ。であれば、本来の効力ならば、確実に命を奪う類いのモノ。魔眼かどうかはわからん。

それに壁の中から感じられた不気味な気配に、マリーのみが聞き取れた声。ドビーが警告したのはまさかこの事か?

判断するには情報が足りん。もう少し時間を置くとしよう。せめて死者がでないようには注意せねば。

 

まぁ今の時間はその心配はないだろうが。

なんせ今は今年初めてのクィディッチの試合中だ。スリザリン対グリフィンドール。全校生徒が観客席に座って試合を観戦している。とりあえず、今は問題ないだろう。今は、な。

 

 

『またまたゴール!! スリザリンの得点です!! 九〇対三〇でスリザリンがリード!!』

 

 

やはり箒のスペック違いが大きいか。いくら才能があろうとも、箒のスペックが劣っていれば、厳しい戦いになる。加えてマルフォイは兎も角、スリザリンのチェイサー陣営は、グリフィンドールと負けず劣らず力がある。であれば、こうなるのも偶然ではなかろう。グリフィンドールが勝つためには、早くにスニッチを捕まえるしか有るまい。

 

 

「マリーはいったい何をしちょるんだ?」

 

「パム~」

 

 

ハグリッドの声が聞こえ、俺はマリーに視線を向けた。マリーは全速力で飛行しているが、スニッチを見つけた訳ではないらしい。理由はすぐに判明した。彼女の後ろからブラッジャーが一つ、執拗に追いかけている。見る限り、マリー以外は一切狙っていないようだ。

 

 

「誰かが細工したにちげぇねぇ」

 

「僕が止める」

 

「ダメ!! マリーに当たったらどうするの?」

 

「じゃあただ見てるだけって言うのかい?」

 

 

ハグリッドとロン、ハーマイオニーが隣で騒いでいる。ハネジローは俺の頭の上に乗り、じっとマリーを見ている。それにしてもマリーだけを狙う、か。まさかまたあの下僕妖精の仕業か? だとしたら奴め、まだ諦めていなかったか。

 

 

「そうだ!! シロウ、君なら落とせないかい?」

 

「あんなに複雑に動かれては()()()な。それに観客席(ここ)では狭くて弓も構えられん」

 

「そう……ん? 今あなた弓って言った?」

 

「気のせいだ」

 

 

はぁ。最近凛のうっかりが感染ったのではないか? 本気で心配になってきた。まぁそれは兎も角、今は見ていることしかできないだろう。試合が終わったときが射落とすチャンスか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side マリー

 

 

なんで?

試合が始まって暫くするとブラッジャーが一つ、しつこく私を狙ってくる。フレッドとジョージが代わる代わるブラッジャーを弾き飛ばすけど、全く効果がない。しかもそのせいか、もう片方のブラッジャーに手が回らず、グリフィンドール選手が何度も妨害された。そこでキャプテンのウッドがタイムアウトを取った。

 

 

「何をしている。ブラッジャーに妨害されてアリシアがゴールできな……ウォッ!?」

 

 

まさかのタイムアウト中のブラッジャーによる襲撃。これ不味いんじゃ? とりあえず私は一人でどうにかする旨を伝え、フィールドに戻った。

やっぱり。

フィールドに戻ったら、みんなじゃなく私目掛けてブラッジャーは襲ってきた。私はそれを必要最小限の動きで避ける。他のメンバーも渋々了解したみたいで、フィールドに戻った。

 

さて、と。

私はスニッチを探しながら、ブラッジャーを避けていた。ん~今一集中できないな。たぶん端から見れば、私は曲芸をやっているように映るだろう。スリザリンの観客席からは指差して笑う生徒たちが見えるし。

そこにマルフォイがやって来た。

 

 

「何してるんだい? バレエの練習かな、ポッター?」

 

 

口許に嫌~なニヤニヤ笑いを浮かべて、マルフォイは私を挑発してくる……ん? マルフォイの耳元、あれはスニッチ!! まさかマルフォイ、私を挑発することに気をとられて気がついてない? ならば好都合!!

 

私は再び襲ってきたブラッジャーを避け、マルフォイ向けて突進した。

マルフォイは私の急な行動に驚き、脇に避けた。序でに私を襲ってきたブラッジャーに巻き込まれそうになっていた。でも私はそれを気にすることなく、逃げるスニッチを追いかけた。マルフォイも気がついたらしく、私を追ってきた。それに着いてくる形でブラッジャーも迫ってくる。

 

私とマルフォイ、ブラッジャーはスニッチを追いかける過程で、カー・チェイスならぬモップ・チェイスを繰り広げた。ところでカー・チェイスやバイク・チェイスってカッコいいよね。でも残念ながら私たちの跨がっているのは箒だ。モップだ、モッピーなのだ。正直少しダサイと思う。まぁロマンがあるけど。

 

それは兎も角、暫く私とマルフォイでデットヒートを繰り広げていると、マルフォイがどっかに飛んでいった。どうやら箒に付いている(あぶみ)の様なものが何処かに引っ掛かったらしく、地面でのびていた。

邪魔者もブラッジャーだけになったので、一気に私は加速した。手を伸ばせばスニッチに届く範囲まで追い付いた。このとき私はブラッジャーのことを刹那忘れ、右手を伸ばした。

 

一瞬のことだった。

伸ばした右腕は、後ろに付いていたはずのブラッジャーのあり得ない加速によって打ち抜かれた。骨の拉げる(ひしゃげる)嫌な音がして、私は激痛に襲われた。腕が千切れたと錯覚した。でも同時に、まだ左腕があるという思考もあった。

今は地面から高さ五十センチ程の位置。箒から落馬しても擦り傷で済むだろう。なら考えるまでもない。私は左腕を伸ばし、今度こそスニッチを掴んだ。けどやはりと言うべきか、私はバランスを崩して、箒から落馬した。

 

 

『マリーがスニッチを掴んだ!! 試合終了です!! 九〇対一八〇でグリフィンドールの逆転勝利だ!! よく頑張ったぞ、マリー!!』

 

 

ジョーダンさんの実況がフィールドに響いた。ああ、やっと終わった。早く医務室に行きたい。フィールドにいたチームメンバーと、観客席にいたグリフィンドール生が、私の元に走ってきた。気のせいか、シロウの姿は見えなかったけど。

 

でも一瞬その動きを止めた。

何故なら試合終了にも関わらず、先程のブラッジャーがまだ私を襲ってきた。しかも今度は頭を狙ってきている。冗談じゃない。こんなところで死ぬなんてとんでもない。

私はこれから無様と思われようと気にせず、地面を横に転がってブラッジャーを避けた。フレッドが最初に駆け付け、手に持つ棍棒で弾いたけど、また戻ってきた。

 

そのときだった。

ふとグリフィンドールの観客席に、人影が見えた。大きな黒い弓を構えている。そしてその人影が一瞬銀色の光を放った。

次の瞬間、再び襲ってきたブラッジャーは、銀に光る流れ星に打ち抜かれた。そしてそのまま地面に縫いとめられた。

縫いとめた物の正体は、極々普通のロングソード。ということは、射落としたのはシロウなのか。こんな出鱈目な狙撃力を持つのは、シロウ以外に私は知らない。

 

ブラッジャーは暫くもがいていたけど、すぐに眩い光と轟音、そして突風に包まれた。私たちはみんな、それが鎮まるまで各々を庇った。光と風が収まり、ブラッジャーが縫い止められていた場所を見ると、半径三メートル程のクレーターがあった。

再び人影の方に顔を向けたけど、誰もいなかった。でもなぜかあれはシロウだという確信があった。何はともあれ、一先ず一件落着だ。早く医務室に行きたい。

 

 

「マリー、大丈夫?」

 

「うん、腕が折れてるだけ。他は何ともない。早く医務室に行こう。それとコリン」

 

「え、なに?」パシャ

 

「珍しいのはわかるし、悪気がないのはわかるけど、今は写真はやめてね? それ、結構不愉快な気分にさせるから」

 

「あ、その、ごめんなさい」スッ

 

「よろしい」

 

 

ハーマイオニーが心配げに問いかけてくる。他の皆も心配そうだ。だから私はできるだけ安心させるため、微笑みを浮かべた。序でにコリン君に行動を抑えて貰いながら。ここで素直に謝罪が出来るから、根は本当に良い子なんだろうね。

 

 

「安心したまえ、私が治してあげよう」

 

「え?」

 

「あ、先生!! ダメ!!」

 

 

ハーマイオニーとは逆方向、折れた右腕の方から声が聞こえ、誰かが止める声も聞こえた。私も突然のことで反応が遅れ、気がつけばロックハートが私の右腕に杖を向け、何かやりきった表情を浮かべている状態だった。

突然右腕に襲う違和感。嫌な予感がして、動かそうとした。でも右腕は上がるは愚か、指先さえもピクリとしなかった。気のせいか、ペシャリと潰れているようにも見える。

 

 

「ああ……ええと……まぁ偶にはこういうことも、ええと、ありますね、はい」

 

 

ロックハートは誤魔化すようにそう言い、私の右腕を持ち上げた。腕はビョンビョンと好き勝手に動く。ロックハートは、もう折れてはないでしょう、なんてほざいている。

私の右腕は、文字通り『骨抜き』にされていた。それをやった当の本人は、ヘラヘラした物凄く不快な笑いを振り撒いている。私の中の何かが、プツンと音を立てて切れた。真っ黒いモノが、身体の奥底から沸々と沸き上がってくる。

そのドス黒いモノが首まで来たとき、目の前のロックハートが突然消えた。そして次に地鳴りと地響きがした。みんなして発信源に顔を向け、そして絶句した。

 

ホグワーツの制服ではなく、いつか見た黒い軽鎧に黒い外套を纏ったシロウが、ロックハートの胸ぐらを掴んで地面に押さえ付けていた。その光景を見て、私は黒いモノが一気に引っ込んだ。

地面はロックハートを真ん中にして、半径二メートル程の陥没地を形成していた。クレーターではなく、陥没地だ。

 

 

「ひ、ヒィッ!?」

 

「懺悔の言葉は済んだか?」

 

「ヒァァア、あぁあアアアァァああ……!?!?」

 

「……消えろ。いつもいつも貴様は余計なことを……」

 

 

シロウはそう言って自由な右拳を振り上げた。ロックハートは絶望した表情を浮かべ、声すらもでないほど恐怖していた。

 

 

「エミヤ!! そこまでだ!!」

 

 

スネイプ先生の声が響き渡るのと、シロウが拳を降り下ろすのは同時だった。そしてシロウの拳は突き刺さった、ロックハートの顔のすぐ横の地面に。

陥没した地面は、ひび割れながら再び隆起した。

一連の出来事を見ていた殆どの人が、顔を青くして震えていた。ロックハートは白目を剥いて気絶している。夏休みの試合を見ていたメンバーは、比較的平気な顔をしていたけど。

 

 

「抑えろ。お前が犯罪者になることを皆は、あの子は望んではおらん」

 

 

スネイプ先生の言葉に、シロウは無言で拳を引き抜いた。そして深い溜め息を一つついた。立ち上がったシロウは、スネイプ先生に向き直り、そして皆に顔を向けた。若干数名が少し後ずさった。

 

 

「すまない。我知らず感情的になってしまった」

 

 

シロウはそう言うと、頭を深々と下げた。周りの人たちは、また別の意味で唖然としていた。一連の行為と今の言動のギャップが激しかったからだろう。まぁわからなくもないけど。シロウは頭をあげると、またスネイプ先生に向き直った。

 

 

「やってしまったことの責任は取ります。如何様にも」

 

「ふむ、ならば教師に対する暴行並びにフィールドの破壊行為。よってグリフィンドールから二十点減点、そして罰則はこのフィールドを週末に一人で元に戻すことだ。無論魔法は禁止だ」

 

「わかりました。謹んでお受けします」

 

 

シロウはスネイプ先生から罰則を言い渡され、また深く頭を下げた。

みんな罰則の内容にショックを受けてるね。何て理不尽な罰則なのだろう、って。でもシロウのことを少しでも知ってる人たちは、何て優しい罰則なのだろう、と思った。

 

だって夏休み、剣吾君との試合で荒れたウィーズリー家の庭を、剣吾君と二人がかりとは言え、たった三十分で元に修復したのだ。今回の損害は、それに比べたらまだマシな方。下手すれば十五分程度で終わるかも。

そして私は、スネイプ先生とシロウの小声でのやり取りを聴き逃さなかった。

 

 

「狂ったブラッジャーを鎮めたことに、グリフィンドール十点加点だ」

 

「すみません」

 

 

シロウは頭をあげると、私に近づいてきた。シロウに近しい人たち以外、ジニーとコリン以外の一年生とロックハートのファン以外だね、は私たちから距離をとった。

 

 

「マリー、立てるか?」

 

「正直言うと気力がない」

 

「そうか」

 

「運んでもらっていい?」

 

「了解した」

 

 

シロウは私を抱えあげると(勿論お姫様抱っこ)、ロンに私の箒を、ハーマイオニーに私の着替えを持ってきて貰うよう頼み、医務室へと私を連れていった。ロックハートはファンの子達に医務室に運ばれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「骨折を治すのならば簡単ですが、骨を元に生やすとなると……」

 

「先生、治るんですよね?」

 

「ええ、勿論。結構痛みますけどね」

 

 

医療担当のマダム・ポンフリーさんは、入院準備を整えながら、私に薬を差し出した。シロウもマダム・ポンフリーの隣で準備を手伝っている。流石はホグワーツのブラウニー。

薬は無色透明なんだけど、シュワシュワと泡をたてている。うん、これ絶対飲んだら喉が辛い(からい)奴だよ。でも飲まないと治らないので、私は我慢してそれを飲み干した。案の定喉が焼けるように辛かった。

 

 

「今日は医務室(ここ)に泊まってもらいます。良いですね?」

 

「はい」

 

「よろしい」

 

「パムパムー、マリー、心配」

 

「わかってますよ、あなたもここにいて良いです」

 

「パーム、アリガトウ」

 

 

マダム・ポンフリーは基本的に皆に対して素っ気ない。

でも恐らく、生徒の安全健康を一番考えているのは、確実にこの人だろう。だから私はマダム・ポンフリーの言いつけに、素直に従った。

それからマダム・ポンフリーは見舞いに来た人(何故かシロウを除く)を寮に返し、

 

 

「ここは騒ぐ場所じゃありません、さぁ帰って!!」

 

 

さらに運ばれてきた患者を診察し、

 

 

「ミスター・マルフォイ、あなたは唸らなくていいです。もう大丈夫。仮病は止めて早く寮に戻りなさい」

 

 

ロックハートが目覚めると、ファンの子達共々医務室から追い返し、そして自分のオフィスに戻った。因みに私の着替えは、ハーマイオニーとアンジェリーナさんが手伝ってくれた。

薬の刺激に試合の疲労で、私は夕食代わりのシロウ作の軽食を摂ったあと、すぐに睡眠に入った。

 

夜遅く。

ふと妙な感覚が体を襲い、私は目が覚めた。今回はシロウはいないみたい。右腕は薬が効いているのか、鈍痛がした。ハネジローは私の隣で眠ってる。

まぁ兎も角、ハロウィンの夜と同じ感覚がしたので、私は上体を起こして耳を澄ました。

 

 

━━……引き裂いてやる……殺してやる……

 

 

ッ!! またあの声だ。そして壁の中を何かが進むような音。不気味な感じ、逃げる蜘蛛たち。全てハロウィンの夜と同じだ。声は壁を通り、天井に移動している。

 

 

━━……殺す……殺す……殺す……殺す!!

 

「どーも!!」

 

 

声を追って、視線をそのまま前に向けると、そこにはあの屋敷下僕妖精のドビーが、私の寝ていたベッドの上に立っていた。

 

 

 

 

 

 





はい、ここまでです。
また中途半端ですみません。

シロウですが、精神が体に引きずられているせいで、頭でわかっていても衝動的に動いてしまう、と言うことにしています。
その例が、クィディッチフィールドでの一連ですね。

そしてマダム・ポンフリー。原作ハリー・ポッターを知ってる人はわかると思いますが、わからない方々は、プリヤのセラが一番近いと思いますので、彼女を思い浮かべて頂ければ。


さて、次回はドビーの説明と決闘クラブです。少々長くなります。


では今回はこの辺で


う~ん、私としては酷い目にあわせたあと、ロックハートを改心させたいな~なんちゃって




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