今年最後の更新です。
それではごゆるりと
昼前に、モリーさんとパーシーが車できた。バーノン・ダーズリーは仕事でいないため、彼らの家には、ダドリーとペチュニアさん以外はおらず、下手に場がややこしくなることもなく、オレとマリーはウィーズリー家の車、フォード・アングリアに乗って『隠れ穴』へと向かった。既に昼食は食べていたため、パーシーの運転でモリーさんと喋りながら、目的地へと向かった。
それにしてもウィーズリー家、五兄妹以外にあと二人成人した子どもがいるとは。オレも子沢山だと思ってはいたが、それを越えるぞ?
まぁそれはともかく、オレ達は四時ごろにはウィーズリー家の家、『隠れ穴』に着いた。車から降車すると、ロンが駆け寄り、オレとマリーに手紙の返事がなかった理由を問い詰めてきた。それに関しては、ただ妨害を受けていたことのみを伝え、後程ハーマイオニーにも連絡をいれることになった。
荷物の整理をしているとすぐに夕食の時間となった。が、流石に人数が多いため、外に机を出して食べることになった。そこに家主のウィーズリーさんが帰ってきた。ふむ、挨拶をせねばな。
「やぁやぁただいま諸君!」
「「「「おかえりなさい」」」」
「いや~今日も疲れたよ。でもお客さんが来るからな、張り切って終わらせてきた!! で、君たちが?」
「お初にお目にかかります、シロウ・アインツベルン・エミヤです」
「初めまして、マリナ・ポッターです。マリーとお呼びください」
「これはこれは、初めまして。私はアーサー・ウィーズリーだ。この子達の父親だよ。ここにいる間はリラックスしていると良い。特にマリー、君も色々と大変だろうからね」
アーサーさんはそうにこやかに言い、着替えにいった。
成る程、ウィーズリー一家のこの暖かな空気。その大本はアーサーさんとモリーさんだったのだな。他人が世間でどう言われてようと、全てを受け入れる包容力。それはたしかに子供らにも受け継がれている。まさに暖かな家族のみほ……ッ!?
魔術の気配だと!? 馬鹿な……何故!?
隣に立つマリーも、その敏感な感性から何かが来ることを察知したらしい。隠れ穴からウィーズリー夫妻も駆け出してきた。夫妻は子供らを後ろに下がらせ、オレと同じく、庭のある一点を見つめていた。既に杖も準備している。
オレは懐に手を入れ、黒鍵を一本用意した。魔術の気配が大きくなる。オレは黒鍵を取り出し、いつでも投擲できるように構えた。マリーはウィーズリー兄妹のところまで下がらせている。
突然空間に球状の亀裂が入った。そして地面に大きな魔法陣が形成され、虹色の輝きを放ち始め……って、はい? これは万華鏡の世界移動の術式じゃ? 思わずオレは構えを解いてしまった。
オレが構えを解いたことにウィーズリー家とマリーが訝しんでいたが、それもすぐに表情を驚愕に変えた。オレも目が飛び出すかと思った。
「わーい!! ギュ~!!」
「ほらほらシィちゃん、走らないの。久しぶりねシロウ、元気だった?」
「……色々と聞きたいけど、何で父さん子供になっているんだ?」
魔法陣の光が消えた途端、幼子がオレの足にしがみついて頬を擦り付け、銀髪赤目の美女が少し大きめの荷物を持って幼子についてき、最後に中折れハットを被った少年が出てきたのだ。間違えようがない。
オレの妻であるイリヤと息子の剣吾、娘のシルフェリアだった。
「な、何故?」
「あら? 剣吾もそうだけど、てっきり万華鏡殿が話しているかと」
「何も聞いてないぞ?」
「カッカッカッ!! 成功だな!!」
家族の後ろには、高笑いしている貫禄のある老人の姿が。あのハッチャケ爺の仕業かあァァァァァアアアアッ!!
「……剣吾」
「……わかってる」
「「さぁ、お前の罪を数えろ!!」」
「今更数えられるか!!」
オレと剣吾は手に武器(刃もちゃんと付いている)を取り、高笑いを続けるクソ爺に突進していった。全てはあの爺に制裁を加えるため、オレ達は手加減無しで向かっていった。
━━ 数分後……
「万華鏡殿、てっきり彼らには話を通しているかと」
「なに、あやつらの驚く顔が見たくてな」
カンラカンラと笑うクソ爺のすぐ側で、オレと剣吾は地に倒れ伏していた。シルフェリア、シルフィはオレと剣吾の顔をつついたり、引っ張ったりと好き放題だ。
「ハァ……ハァ……あのクソ爺……「ぷにぷに」……いつか絶対に泣かす……」
「ハァ……フゥ……その時は……「ぐに~」……
「カッカッカッ!! 二万年早い!!」
「「クソッ!!」」
暫くしてオレ達も回復し、唖然としているウィーズリー家のみんなと、マリーに自己紹介することになった。オレ以外の皆が、一列に並ぶ。
「初めまして、イリヤスフィール・フォン・エミヤ・アインツベルンです」
「衛宮・アインツベルン・剣吾です」
「シィはシルフェリア・フォン・エミヤ・アインツベルンだよ!!」
「は、はあ」
「ど、どうも」
「「「ん? エミヤ?」」」
あ、そういえばオレはまだ12才という設定だった。まずい、これは非常にまずい。
「やっぱりシロウは説明してなかったのね」
「う……だ、だがなイリヤ。こんな成りのオレの話なんて、そうそう信用できないだろう?」
「まぁわからないでもないけど。万華鏡殿、話しても大丈夫ですか?」
「うむ、この者達なら大丈夫だろう」
「ですって、シロウ」
「だ、だがな……「パパー、抱っこー」……ハァ……」
「「「パ、パパ!?」」」
「おいで、シルフィ「わーい!! ウェヘヘヘ~」……食事前だから要点だけ話そう。そのあと、質問に答える」
それからオレは、実はもしもの世界の出身であること。とある事情で元の世界にいられなくなり、別の平行世界に渡ることになったこと。偶々この世界にきたが、その時体が六歳まで若返り、実年齢は三十路に入っていること。オレが普段使っている身体強化等は、全て元の世界の技術であること等々、話しても大丈夫だろう内容は、全て話した。
オレが話し終えて皆の顔を見ると、心の整理がついてないようだった。2、3分ほど経過して、マリー、ロン、ウィーズリー夫妻がまず復活した。
「……やっぱりシロウ、年上だったんだ」
「僕漸く納得いったよ」
「私たちとあまり変わらないのでは、アーサー?」
「そうだね、モリー。まさか息子の友人が……ダンブルドアはこの事を?」
「ええ、既に知っております」
「成る程……ダンブルドアが信頼なさっているなら、私たちから何も聞くことはないよ」
アーサーさんがそう言い、隣のモリーさんもにこやかに頷いた。やはりすばらしい程の包容力だな。と、復活したパーシーがこちらに近づいてきた。
「えっと、あの。シロウ……さん?」
「シロウで良い。君もその方が呼びやすいだろう。それに敬語もいらんよ」
「じゃあお言葉に甘えて、僕から質問が一つだけある」
「君はこの世界で何かしよう、ってわけで来たんじゃないんだね?」
その言葉に最初に反応したのは、イリヤだった。
「ちょっと。その言い方はないんじゃない?」
「仕方がないさ。ここではつい12年前まで、誰も安心できない世の中だったんだ。警戒するのもわからないでもない。だからイリヤ、その怒気を抑えてくれ」
オレはイリヤを宥めつつ、パーシーの方へと顔を向けた。当のパーシーはシルフィから突っかかられて困っているが。
「にぃに!! このお兄ちゃんパパを苛める!!」プンプンッ
「苛めてないから。少し難しい話をしているだけだよ」
「むぅ~」頬っぺた膨らませ
「大丈夫だよ、シルフィ。さて、君の質問だがパーシー。オレにそのつもりは毛頭ない」
「……そうか。わかった」
パーシーはオレの答えに納得したのか、それ以上は聞いてこなかった。と、フレッドとジョージの腹がなった。まだ夕食を食べていなかったな。
「それより今はメシ食おうぜ?」
「俺たち腹が減って」
「そうね、そうしましょう」
「ええ、わかりました。イリヤ達は?」
「シィとママは食べた!!」
「は?」グゥ~~~~
シルフィの言葉に剣吾が反応すると同時に、剣吾の腹が鳴った。成る程、どうやら剣吾が依頼をこなしている間に、イリヤ達は食べ終えたのだろう。……気持ちはわかるぞ、剣吾よ。
と、地面に膝をついている剣吾の元に赤毛の少女、ロンの妹のジニーが近寄っていった。気のせいか? 若干頬が赤いような気がせんでもないが。
「あの……」
「ウェ? えっと……どなたですか?」
「ジネブラ・ウィーズリーです。ジニーと呼んでください」
「あ、うん。よろしく」
「はい。よ、よろしくお願いたします。そ、それでですね。その……もしよければ、い、一緒に夕食食べませんか?」
「え? でもそれは……」
「ママ、大丈夫?」
「問題ないわ。てことであなたもどう?」
「しかし……」
剣吾は渋っていたが、結局モリーさんの言葉攻めに敗れ、夕食を共にすることになった。オレも息子も、女性には勝てないのだな。特に裏表のない、純粋な厚意には。何か悲しくなってきた。
イリヤ達も席につき、漸く夕食となった。万華鏡は既に帰っている。イリヤとシルフィには、お茶と茶請けを用意した、オレがな。
オレの隣には、イリヤとマリー、シルフィはイリヤの膝の上だ。向かいに座る剣吾の隣には、ロンとジニーが……って、やはり気のせいでないか。
「なぁイリヤ、あの子」
「ええ、間違いなくそうね」
「「剣吾、また一人落としたのか(のね)」」
「しかもこの世界における、あなたの友人の妹」
「確か一成の娘もだろう?」
「ま、父親の血を強く引いたんでしょう」
「うぐ……」
イリヤの口撃が地味に痛い。まぁこれに関しては、剣吾に任せるしかないな。オレからは下手に手は出せないし。
「シロウ、イリヤさんのお尻に敷かれてるね」
「アハハ!! そうね、マリーの言う通り!!」
「ぐっ、言わないでくれ、マリー」
まさかの挟み撃ち、オレのライフはもう残り少ない。剣吾、お前は同情する目でこちらを見るな。っと、ジニーが顔を赤くしながら剣吾に手拭きを渡した。オレとイリヤ、モリーさんは自然と顔を綻ばせた。アーサーさんとロン、パーシーは複雑そうな顔をし、フレッドとジョージはニヤニヤしている。
アーサーさん、家の息子がすみません。
「ん? どうしたんだ?」
「ふぇ!? な、何?」
「「あらあら、なにも?」」
「「「……」」」
「「ニヤニヤ」」
「!! ~~~~……」
双子のニヤニヤ笑いに止めを刺され、ジニーは撃沈し、食べ物を口に運び始めた。そこでパーシーが手を伸ばして剣吾の肩を掴んだ。気のせいか、少し力が入ってるような?
「……剣吾君」
「は、はい?」
「ジニーを泣かせたら許さないからな」
「ウェイ!?(;OwO) ダディイッデルンディス!?」
「いいな?」
「は、はい!!」
……パーシーよ、君はもしかしなくても、シスコンなのか? って嗚呼嗚呼、またシルフィに突っかかられてる。シルフィはどうもパーシーが気に入らないみたいだな。この子が他人を気に入らないとは、珍しい。
「そういえばイリヤさん達は、今夜どうするんですか?」
モリーさんがイリヤに質問をした。確かに、今晩どうするつもりだったんだ?
「近くの宿を探そうかと、無ければ野宿をします。あと敬語とさん付けはいりませんよ」
「ならあなたも敬語とさん付けはいらないわ。それにしても野宿?」
「わかったわ。ええシルフィは兎も角、私と剣吾は慣れてるから」
「ならうちに泊まっていかない?」
「え? でも一週間程いますよ?」
「大丈夫よ!! 部屋は何とかなるわ!! アーサー?」
「勿論ですとも。是非とも泊まってください」
イリヤも剣吾同様渋っていたが、ウィーズリー夫妻の波状口撃にやはり撃沈した。どうもオレ達家族は、百パーセント善意の口撃に弱いらしい。あれよあれよといううちに、部屋割りも決まってしまった。
剣吾とロン、フレッドとジョージが同じ部屋に入り、イリヤはマリーとジニーと同じ部屋。オレはパーシーとシルフィと同室になった。頼むイリヤ、どうかオレの幼少の頃の話を暴露しないでくれよ? 剣吾も、フレッドとジョージにオレのことを話さないでくれよ? あの双子に聞かれると、色々とネタにされてしまう。
そんなこんなで入浴も済ませ、俺達は床に入った。パーシーは自分のベッドに。オレは床にマットを敷いて寝転がり、シルフィはオレの上に乗っている。
「うにゅ……パパとおねんね……」
「流石に疲れたのだろう。けっこうはしゃいでいたからな」
「こうしてみると、シロウがお父さんと呼ばれても不思議じゃないね」
「少なくとも十四年は親をしていたのだ。であれば自然とな」
「……前に言った、見た目が全てではないって言葉。あれはシロウ自身が体現しているよね」
「言わないでくれ。オレもまさか体が六歳まで若返りするとは思わなかったのだ」
「ハハハ」
「くぅ~~~……」zzz
シルフィがオレの左腕に頭をのせ、寝息をたて始めた。
「寝たな。なら俺達も寝るとするか」
「そうだね。まだ色々と聞きたいけど」
「なに、時間はまだあるさ」
「……パパ……だいすき……」
「父親冥利に尽きるんじゃない?」
「まったくだ。おやすみ、パーシー」
「ああ、おやすみなさい。」
別の部屋で騒ぐフレッドとジョージ、剣吾とロンの声を聞きながら、オレ達は眠りについた。
はい、ここまでです。
今回は2015年、最後の投稿です。
次回は年明けに投稿させていただきます。
番外編にするか、本編にするかは決めていません。
因みにシルフィちゃん、マリーにはとてもなついており、マリーもシルフィを可愛がっています。
では今回はこの辺で。
皆さん、良い年末年始を