錬鉄の魔術使いと魔法使い達   作:シエロティエラ

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今年最後の更新です。

それではごゆるりと






2. 隠れ穴と突然の来訪者

 

 

昼前に、モリーさんとパーシーが車できた。バーノン・ダーズリーは仕事でいないため、彼らの家には、ダドリーとペチュニアさん以外はおらず、下手に場がややこしくなることもなく、オレとマリーはウィーズリー家の車、フォード・アングリアに乗って『隠れ穴』へと向かった。既に昼食は食べていたため、パーシーの運転でモリーさんと喋りながら、目的地へと向かった。

それにしてもウィーズリー家、五兄妹以外にあと二人成人した子どもがいるとは。オレも子沢山だと思ってはいたが、それを越えるぞ?

 

まぁそれはともかく、オレ達は四時ごろにはウィーズリー家の家、『隠れ穴』に着いた。車から降車すると、ロンが駆け寄り、オレとマリーに手紙の返事がなかった理由を問い詰めてきた。それに関しては、ただ妨害を受けていたことのみを伝え、後程ハーマイオニーにも連絡をいれることになった。

 

荷物の整理をしているとすぐに夕食の時間となった。が、流石に人数が多いため、外に机を出して食べることになった。そこに家主のウィーズリーさんが帰ってきた。ふむ、挨拶をせねばな。

 

 

「やぁやぁただいま諸君!」

 

「「「「おかえりなさい」」」」

 

「いや~今日も疲れたよ。でもお客さんが来るからな、張り切って終わらせてきた!! で、君たちが?」

 

「お初にお目にかかります、シロウ・アインツベルン・エミヤです」

 

「初めまして、マリナ・ポッターです。マリーとお呼びください」

 

「これはこれは、初めまして。私はアーサー・ウィーズリーだ。この子達の父親だよ。ここにいる間はリラックスしていると良い。特にマリー、君も色々と大変だろうからね」

 

 

アーサーさんはそうにこやかに言い、着替えにいった。

成る程、ウィーズリー一家のこの暖かな空気。その大本はアーサーさんとモリーさんだったのだな。他人が世間でどう言われてようと、全てを受け入れる包容力。それはたしかに子供らにも受け継がれている。まさに暖かな家族のみほ……ッ!?

 

魔術の気配だと!? 馬鹿な……何故!?

 

隣に立つマリーも、その敏感な感性から何かが来ることを察知したらしい。隠れ穴からウィーズリー夫妻も駆け出してきた。夫妻は子供らを後ろに下がらせ、オレと同じく、庭のある一点を見つめていた。既に杖も準備している。

オレは懐に手を入れ、黒鍵を一本用意した。魔術の気配が大きくなる。オレは黒鍵を取り出し、いつでも投擲できるように構えた。マリーはウィーズリー兄妹のところまで下がらせている。

 

突然空間に球状の亀裂が入った。そして地面に大きな魔法陣が形成され、虹色の輝きを放ち始め……って、はい? これは万華鏡の世界移動の術式じゃ? 思わずオレは構えを解いてしまった。

 

オレが構えを解いたことにウィーズリー家とマリーが訝しんでいたが、それもすぐに表情を驚愕に変えた。オレも目が飛び出すかと思った。

 

 

「わーい!! ギュ~!!」

 

「ほらほらシィちゃん、走らないの。久しぶりねシロウ、元気だった?」

 

「……色々と聞きたいけど、何で父さん子供になっているんだ?」

 

 

魔法陣の光が消えた途端、幼子がオレの足にしがみついて頬を擦り付け、銀髪赤目の美女が少し大きめの荷物を持って幼子についてき、最後に中折れハットを被った少年が出てきたのだ。間違えようがない。

 

オレの妻であるイリヤと息子の剣吾、娘のシルフェリアだった。

 

 

「な、何故?」

 

「あら? 剣吾もそうだけど、てっきり万華鏡殿が話しているかと」

 

「何も聞いてないぞ?」

 

「カッカッカッ!! 成功だな!!」

 

 

家族の後ろには、高笑いしている貫禄のある老人の姿が。あのハッチャケ爺の仕業かあァァァァァアアアアッ!!

 

 

「……剣吾」

 

「……わかってる」

 

「「さぁ、お前の罪を数えろ!!」」

 

「今更数えられるか!!」

 

 

オレと剣吾は手に武器(刃もちゃんと付いている)を取り、高笑いを続けるクソ爺に突進していった。全てはあの爺に制裁を加えるため、オレ達は手加減無しで向かっていった。

 

 

 

 

━━ 数分後……

 

 

 

「万華鏡殿、てっきり彼らには話を通しているかと」

 

「なに、あやつらの驚く顔が見たくてな」

 

 

カンラカンラと笑うクソ爺のすぐ側で、オレと剣吾は地に倒れ伏していた。シルフェリア、シルフィはオレと剣吾の顔をつついたり、引っ張ったりと好き放題だ。

 

 

「ハァ……ハァ……あのクソ爺……「ぷにぷに」……いつか絶対に泣かす……」

 

「ハァ……フゥ……その時は……「ぐに~」……ほへおよんへふれ(俺も呼んでくれ)、父さん」

 

「カッカッカッ!! 二万年早い!!」

 

「「クソッ!!」」

 

 

暫くしてオレ達も回復し、唖然としているウィーズリー家のみんなと、マリーに自己紹介することになった。オレ以外の皆が、一列に並ぶ。

 

 

「初めまして、イリヤスフィール・フォン・エミヤ・アインツベルンです」

 

「衛宮・アインツベルン・剣吾です」

 

「シィはシルフェリア・フォン・エミヤ・アインツベルンだよ!!」

 

「は、はあ」

 

「ど、どうも」

 

「「「ん? エミヤ?」」」

 

 

あ、そういえばオレはまだ12才という設定だった。まずい、これは非常にまずい。

 

 

「やっぱりシロウは説明してなかったのね」

 

「う……だ、だがなイリヤ。こんな成りのオレの話なんて、そうそう信用できないだろう?」

 

「まぁわからないでもないけど。万華鏡殿、話しても大丈夫ですか?」

 

「うむ、この者達なら大丈夫だろう」

 

「ですって、シロウ」

 

「だ、だがな……「パパー、抱っこー」……ハァ……」

 

「「「パ、パパ!?」」」

 

「おいで、シルフィ「わーい!! ウェヘヘヘ~」……食事前だから要点だけ話そう。そのあと、質問に答える」

 

 

それからオレは、実はもしもの世界の出身であること。とある事情で元の世界にいられなくなり、別の平行世界に渡ることになったこと。偶々この世界にきたが、その時体が六歳まで若返り、実年齢は三十路に入っていること。オレが普段使っている身体強化等は、全て元の世界の技術であること等々、話しても大丈夫だろう内容は、全て話した。

オレが話し終えて皆の顔を見ると、心の整理がついてないようだった。2、3分ほど経過して、マリー、ロン、ウィーズリー夫妻がまず復活した。

 

 

「……やっぱりシロウ、年上だったんだ」

 

「僕漸く納得いったよ」

 

「私たちとあまり変わらないのでは、アーサー?」

 

「そうだね、モリー。まさか息子の友人が……ダンブルドアはこの事を?」

 

「ええ、既に知っております」

 

「成る程……ダンブルドアが信頼なさっているなら、私たちから何も聞くことはないよ」

 

 

アーサーさんがそう言い、隣のモリーさんもにこやかに頷いた。やはりすばらしい程の包容力だな。と、復活したパーシーがこちらに近づいてきた。

 

 

「えっと、あの。シロウ……さん?」

 

「シロウで良い。君もその方が呼びやすいだろう。それに敬語もいらんよ」

 

「じゃあお言葉に甘えて、僕から質問が一つだけある」

 

「君はこの世界で何かしよう、ってわけで来たんじゃないんだね?」

 

 

その言葉に最初に反応したのは、イリヤだった。

 

 

「ちょっと。その言い方はないんじゃない?」

 

「仕方がないさ。ここではつい12年前まで、誰も安心できない世の中だったんだ。警戒するのもわからないでもない。だからイリヤ、その怒気を抑えてくれ」

 

 

オレはイリヤを宥めつつ、パーシーの方へと顔を向けた。当のパーシーはシルフィから突っかかられて困っているが。

 

 

「にぃに!! このお兄ちゃんパパを苛める!!」プンプンッ

 

「苛めてないから。少し難しい話をしているだけだよ」

 

「むぅ~」頬っぺた膨らませ

 

「大丈夫だよ、シルフィ。さて、君の質問だがパーシー。オレにそのつもりは毛頭ない」

 

「……そうか。わかった」

 

 

パーシーはオレの答えに納得したのか、それ以上は聞いてこなかった。と、フレッドとジョージの腹がなった。まだ夕食を食べていなかったな。

 

 

「それより今はメシ食おうぜ?」

 

「俺たち腹が減って」

 

「そうね、そうしましょう」

 

「ええ、わかりました。イリヤ達は?」

 

「シィとママは食べた!!」

 

「は?」グゥ~~~~

 

 

シルフィの言葉に剣吾が反応すると同時に、剣吾の腹が鳴った。成る程、どうやら剣吾が依頼をこなしている間に、イリヤ達は食べ終えたのだろう。……気持ちはわかるぞ、剣吾よ。

と、地面に膝をついている剣吾の元に赤毛の少女、ロンの妹のジニーが近寄っていった。気のせいか? 若干頬が赤いような気がせんでもないが。

 

 

「あの……」

 

「ウェ? えっと……どなたですか?」

 

「ジネブラ・ウィーズリーです。ジニーと呼んでください」

 

「あ、うん。よろしく」

 

「はい。よ、よろしくお願いたします。そ、それでですね。その……もしよければ、い、一緒に夕食食べませんか?」

 

「え? でもそれは……」

 

「ママ、大丈夫?」

 

「問題ないわ。てことであなたもどう?」

 

「しかし……」

 

 

剣吾は渋っていたが、結局モリーさんの言葉攻めに敗れ、夕食を共にすることになった。オレも息子も、女性には勝てないのだな。特に裏表のない、純粋な厚意には。何か悲しくなってきた。

イリヤ達も席につき、漸く夕食となった。万華鏡は既に帰っている。イリヤとシルフィには、お茶と茶請けを用意した、オレがな。

オレの隣には、イリヤとマリー、シルフィはイリヤの膝の上だ。向かいに座る剣吾の隣には、ロンとジニーが……って、やはり気のせいでないか。

 

 

「なぁイリヤ、あの子」

 

「ええ、間違いなくそうね」

 

「「剣吾、また一人落としたのか(のね)」」

 

「しかもこの世界における、あなたの友人の妹」

 

「確か一成の娘もだろう?」

 

「ま、父親の血を強く引いたんでしょう」

 

「うぐ……」

 

 

イリヤの口撃が地味に痛い。まぁこれに関しては、剣吾に任せるしかないな。オレからは下手に手は出せないし。

 

 

「シロウ、イリヤさんのお尻に敷かれてるね」

 

「アハハ!! そうね、マリーの言う通り!!」

 

「ぐっ、言わないでくれ、マリー」

 

 

まさかの挟み撃ち、オレのライフはもう残り少ない。剣吾、お前は同情する目でこちらを見るな。っと、ジニーが顔を赤くしながら剣吾に手拭きを渡した。オレとイリヤ、モリーさんは自然と顔を綻ばせた。アーサーさんとロン、パーシーは複雑そうな顔をし、フレッドとジョージはニヤニヤしている。

アーサーさん、家の息子がすみません。

 

 

「ん? どうしたんだ?」

 

「ふぇ!? な、何?」

 

「「あらあら、なにも?」」

 

「「「……」」」

 

「「ニヤニヤ」」

 

「!! ~~~~……」

 

 

双子のニヤニヤ笑いに止めを刺され、ジニーは撃沈し、食べ物を口に運び始めた。そこでパーシーが手を伸ばして剣吾の肩を掴んだ。気のせいか、少し力が入ってるような?

 

 

「……剣吾君」

 

「は、はい?」

 

「ジニーを泣かせたら許さないからな」

 

「ウェイ!?(;OwO) ダディイッデルンディス!?」

 

「いいな?」

 

「は、はい!!」

 

 

……パーシーよ、君はもしかしなくても、シスコンなのか? って嗚呼嗚呼、またシルフィに突っかかられてる。シルフィはどうもパーシーが気に入らないみたいだな。この子が他人を気に入らないとは、珍しい。

 

 

「そういえばイリヤさん達は、今夜どうするんですか?」

 

 

モリーさんがイリヤに質問をした。確かに、今晩どうするつもりだったんだ?

 

 

「近くの宿を探そうかと、無ければ野宿をします。あと敬語とさん付けはいりませんよ」

 

「ならあなたも敬語とさん付けはいらないわ。それにしても野宿?」

 

「わかったわ。ええシルフィは兎も角、私と剣吾は慣れてるから」

 

「ならうちに泊まっていかない?」

 

「え? でも一週間程いますよ?」

 

「大丈夫よ!! 部屋は何とかなるわ!! アーサー?」

 

「勿論ですとも。是非とも泊まってください」

 

 

イリヤも剣吾同様渋っていたが、ウィーズリー夫妻の波状口撃にやはり撃沈した。どうもオレ達家族は、百パーセント善意の口撃に弱いらしい。あれよあれよといううちに、部屋割りも決まってしまった。

剣吾とロン、フレッドとジョージが同じ部屋に入り、イリヤはマリーとジニーと同じ部屋。オレはパーシーとシルフィと同室になった。頼むイリヤ、どうかオレの幼少の頃の話を暴露しないでくれよ? 剣吾も、フレッドとジョージにオレのことを話さないでくれよ? あの双子に聞かれると、色々とネタにされてしまう。

 

そんなこんなで入浴も済ませ、俺達は床に入った。パーシーは自分のベッドに。オレは床にマットを敷いて寝転がり、シルフィはオレの上に乗っている。

 

 

「うにゅ……パパとおねんね……」

 

「流石に疲れたのだろう。けっこうはしゃいでいたからな」

 

「こうしてみると、シロウがお父さんと呼ばれても不思議じゃないね」

 

「少なくとも十四年は親をしていたのだ。であれば自然とな」

 

「……前に言った、見た目が全てではないって言葉。あれはシロウ自身が体現しているよね」

 

「言わないでくれ。オレもまさか体が六歳まで若返りするとは思わなかったのだ」

 

「ハハハ」

 

「くぅ~~~……」zzz

 

 

シルフィがオレの左腕に頭をのせ、寝息をたて始めた。

 

 

「寝たな。なら俺達も寝るとするか」

 

「そうだね。まだ色々と聞きたいけど」

 

「なに、時間はまだあるさ」

 

「……パパ……だいすき……」

 

「父親冥利に尽きるんじゃない?」

 

「まったくだ。おやすみ、パーシー」

 

「ああ、おやすみなさい。」

 

 

別の部屋で騒ぐフレッドとジョージ、剣吾とロンの声を聞きながら、オレ達は眠りについた。

 

 

 

 

 

 





はい、ここまでです。


今回は2015年、最後の投稿です。
次回は年明けに投稿させていただきます。
番外編にするか、本編にするかは決めていません。

因みにシルフィちゃん、マリーにはとてもなついており、マリーもシルフィを可愛がっています。


では今回はこの辺で。

皆さん、良い年末年始を





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