錬鉄の魔術使いと魔法使い達   作:シエロティエラ

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一巻最終回です。


それではごゆるりと





20. エピローグ

 

Side マリー

 

あれから2、3日経過し、私は無事に退院した。その間、シロウとハーマイオニー、ロンはいつも見舞いに来てくれた。退院したあとは暫く好奇の視線に悩まされた。正直鬱陶しかった。たぶんシロウがすぐそばで鋭い視線を周りに向けてなかったら、私は皆に揉みくちゃにされて質問攻めにされていただろう。学期末までの数日は本当にストレスが溜まった。いつもはしないけど、シロウに膝枕を頼んで昼寝をするぐらいに。

 

 

いつもやってるじゃないかって?

違うよ?

いつもは答えは聞いてないから。

 

 

まぁそれはともかく、学年末試験は全て無事にパスし、今日は一年最後の日だ。四つの寮のトップの点数のところのエンブレムが、大広間の天井から吊るされて飾られるみたい。そして晩御飯も豪勢だとか。グリフィンドールは結局点数は加算が微々たるものでしかなく、今年もスリザリンか優勝らしい。その原因を作ったのは自分達だったから、罪悪感がある。先輩方からは気にしないように言われたけど、やはり申し訳ない気持ちはあった。

因みにマルフォイと愉快な仲間たちが、魔法の練習とかいって私に呪いをかけようとしたけど、シロウのペンダントで跳ね返されて自分にかかっていた。その分の減点と罰則はキッチリ受けていた。

 

スネイプ先生から。

 

けどそれでもトップを保つスリザリン。二位の私達グリフィンドールと何点差があるんだろう? まぁそれは今晩わかるか。

 

 

 

 

 

 

 

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「また一つ、年が過ぎた」

 

 

夜、晩餐会が始まる前にダンブルドア先生の話があった。一年の締めくくりをするための校長先生の話だ。

 

 

「今年は色々なことが起こったが、点数の発表をしよう。

一位、スリザリン、四百八十五点。

二位、グリフィンドール、三百二十五点。

三位、レイヴンクロー、三百二十点。

四位、ハッフルパフ、三百十点。

という結果になっておる」

 

 

点数のが発表された途端、スリザリンの席から歓声が上がった。他の寮の人たちは非常に面白くない顔をしている。やはりあの私達の減点が響いたのか。

 

 

「よしよし、よくやったスリザリン。よくやったスリザリン。しかしのぅ。つい最近の行いの加点をまだしておらんのでのぅ」

 

 

ダンブルドア先生の言葉に、スリザリンは少し落ち着きを取り戻した。けどマルフォイと愉快な仲間たちは、未だにニヤニヤと嫌な笑いを浮かべてこちらを見ていた。あの呪詛返し以来、更にも増して嫌みになった。いったいどこまで嫌みになるのだろう? あと前を向かないと。

 

 

「さて、加点を始める。まずはロナルド・ウィーズリー」

 

 

まずはロンの名前が呼ばれた。本人はポカンと口を開けている。

 

 

「彼はここ最近、見ることがなかった素晴らしいチェスゲームを見せてくれた。そこでわしは彼に四十点与えよう」

 

 

ダンブルドアがそう言った途端、グリフィンドール席から歓声が上がった。マルフォイは何が起こっているかわからないという顔をしていた。ハッフルパフとレイヴンクローの席の人たちからは緊張した空気が出ていた。

 

 

「続いてハーマイオニー・グレンジャー」

 

 

ダンブルドア先生の声が響き、大広間はまた静まり返った。

 

 

「成人した魔法使いでも、解き明かすこと少々骨が折れる難題を、見事な論理で解決に導いた。よって彼女に四十点与える」

 

 

ダンブルドア先生がそう言うと、またグリフィンドール席から歓声が上がった。スリザリンとグリフィンドール以外の寮からは、更に緊迫した雰囲気が漂っている。

 

 

「次にマリナ・ポッター」

 

 

あ、わたしだ。

 

 

「近年稀に見ない、その勇気と行動に敬意を表し、四十点与える」

 

 

グリフィンドール席からは爆発のような歓声が上がった。ハッフルパフとレイヴンクローの人たちの目は、爛々と輝いている。

 

 

「勇気にも色々ある」

 

 

ダンブルドア先生は言葉を続ける。

 

 

「数多の脅威に立ち向かう勇気は、素晴らしいもの。しかし仲間のことを思い、自らの身を省みずに仲間に立ち向かうには、更に勇気が必要じゃ。そこでわしは二十点授けたい。ネビル・ロングボトムに」

 

 

スリザリン以外の席から歓声が上がり、ネビルは皆に揉みくちゃにされていた。彼は今までに余り点数のを稼いでいなかった。薬草学のときにたまに加点するぐらいだ。それも五点前後の。それが今回は一気に二十点も加点された。彼の空回りぶりを知っているスリザリン以外の生徒のほとんどか彼を称えていた。けど私は思う。この輪にスリザリンも加わればいいのに、と。

 

 

「最後にシロウ・エミヤ」

 

 

あ、シロウの番だ。途端、大広間はしん、と静まり返った。まるで埃が一つでも落ちれば、その音が響くのではないのか、というほどに。

 

 

「熟練の魔法使いでも、トロールを相手にとることは難しい。それが一体でなく、三体いたら尚更。更にそのうちの二体が違法に改造されていれば」

 

 

ダンブルドア先生のその言葉で、大広間にどよめきが走った。というかダンブルドア先生。それ言っていいのですか? 結構ヤバイ内容の話なんじゃ?

 

 

「じゃが彼は被害が出ても自分以外に出ないようにし、これら三体を見事に鎮圧した。ハロウィンのトロール騒動のときと同じように。それは彼自身が今までにそのような、命の駆け引きが行われる世界にいたが故、命を奪い奪われることの意味を知っていたが故じゃろう」

 

 

ダンブルドア先生の話は続く。グリフィンドール生は殆どが、シロウがホグワーツに来るまで世界中を回っていたことを知っている。レイヴンクローもハッフルパフも、一年生は知っている。そして、命の駆け引きが日常的にあったことも聞いている。

 

 

「命というのは一度失われてしまえば、そこまでじゃ。二度も三度も存在しない。仲間の命、自分の命にその違いはない。彼は必ず生きて帰るという信念、仲間たちを必ず守るという覚悟のもと、トロールの相手をした。その覚悟と信念に敬意を捧げ、彼に五十点授ける」

 

 

一瞬大広間を静寂が包み込んだ。そして次の瞬間、大きな歓声と拍手が大広間を満たした。もしも大広間の外に人がいたら、花火に一斉着火したのかと勘違いするだろう。それほどまでに大きな歓声と拍手だった。グリフィンドール生は自分達の寮がトップに立ったことに。レイヴンクローとハッフルパフは、スリザリンがトップから滑り落ちたことに。それぞれ歓びの声をあげていた。スリザリン生は冷めた表情を浮かべ、マルフォイと愉快な仲間たちはもはや阿呆面としか言えない顔をしていた。

当のシロウはというと、何とも言えない表情を浮かべていた。その心情を言うとすれば、

 

 

「あのご老体、本当に食えないお人だ。こちらは言うつもりなかったのにアッサリと言いやがった」

 

 

といったところか。シロウの近くにいた双子のフレッドとジョージは、自作の騙し杖からクラッカーを何度も鳴らしていた。シロウの背面に座っていたレイヴンクローの先輩生徒の数人はシロウを称え、そしてハッフルパフの先輩とレイヴンクローの先輩、グリフィンドールの先輩が一人ずつ三人組を作り、ロン、ハーマイオニー、私とシロウを肩に乗せた。

 

 

「さて、わしの計算が間違っていなければ、飾りを変えねばならんのう」

 

 

ダンブルドア先生はそう言って杖を振ると、天井から吊るされていたスリザリンのエンブレムは、グリフィンドールのエンブレムに変わった。興奮冷めやらぬ中、宴会は始まり、夜はふけた。

 

 

 

時間はあっという間に経過し、私達は荷物を纏めてホグワーツ特急に乗るための駅にいた。私とシロウは勿論、ロンとハーマイオニーも同じコンパートメントに乗る予定だ。そこにハグリッドが近づいてきた。

 

 

「あ、ハグリッド」

 

「おう探したぞ、お前さん達」

 

「夏休み手紙送るね?」

 

「そいつぁ嬉しいこった。おおそうだ。マリーや、お前さんに渡すものがある」

 

「どうしたの?」

 

「ちょいと昔の馴染みに頼んでな、集めとったもんがついに完成したんだ。ほれ、お前さんへのプレゼントじゃ」

 

 

そう言ってハグリッドは、分厚い革張りの本のようなものをくれた。中を開けると、それは私の両親が写っている写真の数々だった。今年一年の物も入っている。

 

 

「お前さん一枚も持っておらんかったじゃろう? そんで……おおっと」

 

 

それ以上はいらなかった。私はありったけの感謝を込めてハグリッドの大きな体を抱き締めた。ハグリッドにもそれは伝わったようだ。とっても優しい手つきで私の頭を撫でていた。

 

 

「さあ、そろそろ出発だ。早く汽車にお乗り。また直ぐに会える」

 

 

ハグリッドはそう言って、私達を送り出した。コンパートメントについたあと、私とハーマイオニーとロンの三人は窓から顔を出した。シロウは座席に座ったまま窓から外を眺めている。大きな汽笛を鳴らして、ホグワーツ特急は動き出した。私達はハグリッドに手を振った。シロウは片手を少し顔の横に挙げて、ハグリッドに挨拶していた。ハグリッドは私達が見えなくなるまで、手を振り続けていた。

それから私達はコンパートメントの中で、チェスをしたり、この一年を振り返ったりして過ごした。そこで私は気になっていたことをシロウに聞くことにした。

 

 

「ねぇ、シロウ」

 

「ん?」

 

「あの三体のトロール、どうしたの?」

 

「あ、それ僕も聞きたい。僕気を失ってたし」

 

「普通のやつはノックアウトしていたから特に何もしていない。改造されていた二体は、部屋の奥まで誘導し、再び鎖で繋いだ」

 

「本当?」

 

「ああ」

 

「シロウの言っていることは本当よ。私も見たし」

 

「証人がいるなら本当のことみたいだね」

 

「オレはそんなに信用ないか?」

 

「いやだって、フレッドやジョージに対する制裁とかみてたら」

 

「確かにそうね」

 

「なんでさ……」

 

 

まぁそう思われても仕方ないかな? あとロンとハーマイオニーの二人は気がついてないけど、たぶんシロウは嘘をついてる。でもそれは知られては不味いって感じでつく嘘のようなものをではないと私は感じた。だから、私はいずれシロウが教えてくれるまでは、指摘しないことにした。

楽しい時間はあっという間に過ぎ、汽車はキングス・クロス駅に到着した。汽車から降り、駅員の誘導でマグル世界に戻ると、ロンのお母さんがいた。その隣には、あの末っ子の女の子もいた。

 

 

「あっママ! 帰ってきたわ! ほらあそこ!」

 

「ジニー、指差すのは失礼よ? 仮に顔見知りでもよ?」

 

 

ウィーズリー夫人は女の子をたしなめつつ、こちらに近づいてきた。

 

 

「おかえりなさい。忙しい一年だった?」

 

「いえ、楽しい一年でした。クリスマスプレゼントのセーター、ありがとうございました。とても暖かくて嬉しかったです」

 

「私もマリーも、あの日初めて会ったばかりなのに、本当にありがとうございました」

 

「どういたしまして。うちの子供達の友達なら家族も同然よ。ジニーも夫も、シロウ君とマリーからのプレゼント喜んでいたわ。私も嬉しかったわよ」

 

 

あれ? もしかしてシロウは、私とシロウからという名義でプレゼント送ってたの? なら来年は私がやろう。

 

 

「よかったら二人とも夏休みの最後の方、うちに泊まりにこない? 家族も改めて紹介するわ。夫も二人に会いたいといっていたし」

 

「迷惑でなければ、喜んで」

 

「私もマリー共々、宜しくお願いします」

 

「ええ、楽しみにしていてね?」

 

 

私達はウィーズリー夫人達とハーマイオニー一家にに挨拶を済ませたあと、駅の出口に向かった。外にはダドリーとペチュニア叔母さん、バーノン叔父さん、フィッグ叔母さんがいた。

 

 

「シロウ、マリーや。二人ともお帰り」

 

「「ただいま」」

 

「準備はいいか? ならさっさと帰るぞ」

 

 

バーノン叔父さんはさっさと車に向かってしまった。いつもプリベット通りの家に帰るのは憂鬱だった。でも叔母さんの思いやダドリー意外な真っ直ぐさを知ってからは、少しだけ帰るのが楽しみだった。それに隣にはシロウがいる。今年の夏休みは楽しいものになりそうだと感じた。

 

 

 

 

季節は夏、空は雲一つない快晴。

青い蒼い空は、吸い込まれそうなくらい広かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

To be continue...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side ダンブルドア

 

 

 

わしは英霊や守護者というものを、心の内で少しだけ侮っていたのかもしれん。

魔法省からホグワーツへと戻り、急いで鏡の間へと向かったとき、チェスの部屋を出て次の部屋へと向かう廊下で、血生臭い、強烈な匂いを嗅いだ。嫌な予感が頭を駆け抜け、わしは急いで次の部屋の扉をあけた。そこに広がっていた光景を見て絶句した。

まず目に入ったのが床に転がる、トロールの小さな頭じゃった。次にわしを襲ったのは、噎せ返るほどの血の匂い。そして最後に目に入ったのが、三体のトロールの死体の中心に立つ、血を被り、外套と鎧と白い髪を血で濡らしたエミヤシロウの姿じゃった。

トロールの死体は、首を跳ねられたものは仰向けの状態で。改造されていた二体のうち一体は、体を右半身と左半身に縦に割られた状態で。残りの一体は口から首の後ろへと剣を貫通させられ、壁に縫い付けられていた。共通しているのは、最低でもそれぞれに五本の剣が刺さっていたことじゃった。そして彼は息を上げず、平然としていた。恐らく一割も力を出していないじゃろう。

 

マリーを連れ出し、一日経過して彼女が目覚めて事後説明をしたのちに、もう一度エミヤシロウに問いを投げ掛けた。結果は以前と同じじゃった。

 

改めてわしは思う。彼が我々の敵に回らずにいて良かったと。

 

 

 

 

 

 

 




はい、ここまでです。

ようやく『賢者の石』が終わりました。
第一部、いかがだったでしょうか?

さて、次回はシロウの子供達、そして妻達の本作品での設定を書きます。
敢えてここで書きますが、私は特撮好きです。ですので、本作品ではちょいちょいそのネタが入ります。後程タグに加えて置きます。

さて、奥さんズが優秀であるのに加え、シロウは異端魔術の使い手。どんなハイブリッド(笑)な子供になるのでしょうか?


それではこの辺で






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