錬鉄の魔術使いと魔法使い達   作:シエロティエラ

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はい、更新です。

マリーさんがザビ子にしか想像できないという方々が多かったので、もう外見がザビ子というように設定を変えました。


ではどうぞごゆるりと






15. 罰則のその後

 

Side マリー

 

 

あの罰則の日から数日、傷痕はまだ疼くように痛んでいた。それからときどき『闇の魔術に対する防衛術』の授業で、クィレル先生の目が冷たく光るように感じられる。表情と口調は今までと変わらないから、尚一層違和感を感じられる。

 

 

「最近なにも音沙汰がないけど、石は大丈夫なのかな?」

 

「少なくともダンブルドア先生がいる限りは、『例のあの人』もスネイプも手出しできないはずよ」

 

 

廊下を歩きながらぼやくロンに、ハーマイオニーはそう答える。ハーマイオニーの言葉を聞いて思ったけど、まだスネイプ先生を疑ってたんだ。少し視野が狭い気がする。

 

 

「ねぇ二人とも」

 

「「なに(なんだい)、マリー?」」

 

「ずっとスネイプ先生を疑ってるようだけど、クィレル先生も結構あやしいと思うな、私」

 

「あの先生はないぜ? いつもの様子を見てみろよ」

 

「ええ。あんなにビクビクしてる先生が石を盗むなんて」

 

「だってクィディッチの初戦のことだけど、クィレル先生もすごく冷たい目をして私の方を見てたんだよ? 瞬きせずに」

 

「あの先生だからあまりのことに固まっただけだって」

 

「クィレル先生がそんなことをする度胸があると思う? 私は思わないわ」

 

 

むう、結構頑固だな。一度信じたものはテコでも変えないのか。さて、どう説得して視野を広げさせようか。

そう思っているところにシロウが、

 

 

「見た目だけで物事を判断するのは、オレはお薦めしない。例えば、だ」

 

 

そう言ってシロウは近くの階段に足を一歩踏み出した。すると階段だったそこは瞬く間にスロープ状の通路に変化した。校内にいくつかある仕掛階段の一つだった。

 

 

「一見普通と変わらない階段もこんな感じだ。目に見えるもの全てが真実という訳ではないのだ。それはわかるだろう?」

 

「……うん」

 

「ええ……まぁ」

 

 

シロウの説明を聞いて一応は理解したみたいだけど、二人はまだ完全に納得したわけではないみたいだ。シロウはその二人の様子を見て一つ溜め息をつくと、二人の頭に軽く手を置いた。

 

 

「別に全てを疑え、と言っているわけではない。お前達もそれなりの理由があってスネイプを疑っているのだろうし、マリーも理由があってクィレルを疑っている。だがせめて、オレが今言ったことを頭の片隅にでもいいから置いてほしい」

 

 

そう言って軽く2、3度二人の頭に手を当て、二人から離れた。

………………むぅ………………シロウの撫で撫で。何でかわからないけど羨ましい。

 

 

「……シロウ。前々から思ってたけど、あなた本当に私達と同い年?」

 

「僕も思った。何か真面目な話をするときのパパと雰囲気がそっくりだよ」

 

 

それは私も思ってたけど…………シロウの撫で撫で、羨ましい。

 

 

「実は僕らよりも二十歳以上年上だったりとか?」

 

「病気で体の成長が遅いぶん、寿命が長いとか?」

 

「実は薬とかで体を若返らせてるとか?」

 

「何その全世界の女性を敵に回す薬? あったら私も欲しいわよ、三十年後ぐらいに」

 

「「それとマリー、顔が怖いよ?」」

 

 

…………ハッ Σ(゚Д゚〃) いけないいけない、私としたことが。

 

 

「さて……な。もしかしたら見た目以上の年齢かもしれんし、ただの生意気な餓鬼かも知れんぞ?」

 

 

シロウはニヤリと口の端を歪めながら悠然と大広間に歩いていき、私達はそのあとを追った。その後ろ姿が一瞬、ほんの一瞬だけ夢の中の青年に重なって見えた。けど気のせいだろうと思い、頭からその思考を一旦振り払った。

 

もう学年末テストが終わり、あとは結果を待つだけなので午後は特に予定はない。手応えはあったので、全て合格にはなっているだろう。そして今は春真っ只中なため、外はちょうどいい暖かさである。天気も晴れており昼寝に最適なコンディションだ。ここにシロウの膝枕があったら確実に安眠コースに入る。そんなことを考えながら、私は大広間で昼食を摂った。うん。野菜と卵のサンドウィッチ、うまうま。

 

さて昼食も終わり、私達は四人でぶらぶらと歩いていた。ニコラス・フラメルと賢者の石に関しては粗方調べてしまったため、特にやることもない。それにしても今日は暖かい。そういえばノーバートが生まれた日も、春先にしては暖かかった。確かハグリッドがポーカーの景品代わりに知らない相手から貰って……

 

 

「ああー!?」

 

「マリーどうしたのさ? 急に大声をあげて」

 

「なんて間抜け! 私ったら何で気がつかなかったの!?」

 

「マリー。一人合点してないで説明してくれる?」

 

「うん、ええと……」

 

 

それから私は説明を始めた。私とシロウがグリンゴッツに行ったその日に、強盗が入ったこと。狙われたのはハグリッドが持ち出したもの。そしてハグリッドには悪いけど、彼は結構ガードが緩いこと。そのことから、今回ノーバートの卵をくれた相手に、何かしゃべっている可能性があること。

 

 

「…………ハグリッドは前々からドラゴンが欲しいって言ってた。そこに都合よくドラゴンの卵を持ち歩いている人が出てくると思う? それにそもそもドラゴンの卵を持ち歩くのは禁止されているはずでしょう?」

 

「じゃあマリーはその相手が前々からハグリッドのことを知っていて、尚且つホグワーツ関係者が犯人って言いたいんだね?」

 

「うん。こんなこと偶然にしてはおかしいもん」

 

「ならこれからの予定は決まったな。幸い彼の小屋はここから近い」

 

 

シロウの言葉を聞いて、私達はハグリッドの小屋へ走り出した。運良くハグリッドはいた。小屋の前に腰かけて、縦笛を吹いていた。

 

 

「ハグリッド。聞きたいことがあるの」

 

「おお、お前達か。なんだ? 茶でも飲むか?」

 

「今日はお茶はいいや。また今度一緒に飲もう」

 

「ハグリッド。ノーバートの卵を貰ったときのことを覚えてる?」

 

「相手の外見とかしゃべった内容とか」

 

 

ロンとハーマイオニーが中心になって、ハグリッドに質問を被せる。私とシロウはその隣で黙って聞いている。

 

 

「外見っちゅうか顔はわからんかった。フードを深く被っていたからな、男っちゅうこと以外はわからなんだ。じゃが奴さん、フラッフィーに興味を示してたな」

 

「「フラッフィーに?」」

 

「そりゃそうだ。三頭犬なんて珍しいからな。それでな、俺は言ったんだよ。ドラゴンに比べたらフラッフィーなんて、手懐け方さえわかればお茶の子さいさいってな。音楽を聞かせりゃ直ぐに寝んねしちまう…………おおい四人とも。どこにいくんだぁ?」

 

 

私達はハグリッドの言葉を聞いた瞬間、城へ向かって走り出した。そして誰もいないだろう廊下にたどり着くと、立ち止まって息を整えた。シロウは平然としていたけど。

 

 

「まずいよ。ハグリッドが三頭犬の出し抜き方を教えちゃった」

 

「ダンブルドア先生に報告した方がいいかもしれないわ」

 

 

ハーマイオニーとロンがそう言い、歩き出そうとした。けどシロウは立ったままだった。

 

 

「シロウ? どうかしたの?」

 

「いや、大丈夫だよマリー。すまないが三人とも、少し気になることができた。夕食までオレは一人で行動する」

 

「ダンブルドア先生への報告は?」

 

「それは君らに任せる。オレが気になっているのも今回のことだからな。少し情報を整理するために一人になりたい」

 

 

ハーマイオニーとロンは渋っていたけど、シロウの顔は真剣そのものだった。だから私は夕食までに戻ってくるように約束させて、シロウに一人でいっていいように伝えた。

 

 

「マリー、ありがとう。二人も、また夕食のときに」

 

 

シロウはそう言い、走り去っていった。

 

 

「さあロン、ハーマイオニー。私達も早くいこう」

 

 

私達も歩き出したけど、肝心なことを思い出した。私達は誰も校長室の場所を知らない。とりあえず、色んな場所を探してみようと歩き回ってたら、マグゴナガル先生に見つかった。

 

 

「あなたたち、こんなところで何をしているのですか?」

 

「あ、マグゴナガル先生」

 

 

ちょうどいい。マグゴナガル先生なら校長室の場所を絶対に知っているはず。

 

 

「実は校長先生にお話がありまして」

 

「緊急なんです」

 

「直ぐに話さないといけないことなんです」

 

 

上から順に私、ロン、ハーマイオニーと先生に畳み掛ける。マグゴナガル先生も初めは面食らった表情を浮かべたけど、直ぐに普段の顔に戻した。

 

 

「あなたたちがどういった要件で校長先生に話があるかは知りませんが、いずれにせよ今日はできませんよ」

 

「そんな……」

 

「校長はつい先程、魔法省からの呼び出しで急遽ロンドンへ出発なさいました」

 

 

マグゴナガル先生はいつもの調子で私達と応対する。そこでロンが、

 

 

「でも先生。実は…………賢者の石についてのお話なんです」

 

 

そう言うと、流石にその答えは予想していなかったのか、マグゴナガル先生は手に持っている教材を地面に落とした。そしてそれを直ぐに拾わないことから、かなり驚いている。

 

 

「何故……その事をあなたたちが……」

 

「それは……秘密です」

 

「……あなたたちが何故石のことを知ったかは聞きません。ですが、今後この事に関わることはお薦めしません。というより今すぐ手を引き、忘れることを薦めます」

 

「……でもマグゴナガル先生」

 

「くどいですよ、ミスター・ウィーズリー。明日には校長もお帰りになられます。ですから今日はもうここら辺でおさめなさい」

 

 

マグゴナガル先生はそう言い、歩き去っていった。

 

ダンブルドア先生がいない。

ということは、今この城にいる犯人が石を持ち出すには絶好の機会だろう。だとすると、それを妨害するためには私達も夜中に寮を抜け出す必要がある。なら今度も三人で透明マントを被り、シロウには悪いけど単独でついてきてもらうしかない。今度見つかれば、罰則どころじゃすまなくなるため、慎重に動かないといけないだろう。私はそう考えてロンとハーマイオニーには直接、シロウには念話で私の考えを伝えた。

三人ともそれを了承して、皆が寝静まった頃に談話室に着替えて集合することに決まった。

 

 

 

行動するのは今夜。少しだけ胸騒ぎを覚えつつ、私達は時間が過ぎるのを今か今かと待ち続けた。

 

 

 

 

 

 

 




はい、今回はここまでです。

修正もようやくうまくいき、一つ胸のつっかえが取れました。アドバイスを下さった方々、本当にありがとうございました。



さて、次回はいよいよ仕掛けられた罠、二つの顔を持つ男編です。
一巻物語もクライマックスにさしかかってきました。
マリーさんとシロウさんはどう動くのでしょうか?


まぁ某赤い色をした電車に乗った鬼は、最初からクライマックスで行きそうですが


ではこの辺で

fateのほうも修正、書き換えを行いました。




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