錬鉄の魔術使いと魔法使い達   作:シエロティエラ

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では予告通り、最新話です。

いつもに比べて長いです。


どうぞごゆるりと





14. 禁じられた森での出来事

 

Side マリー

 

「まったく何てことですか! 一晩に生徒がこんなにも抜け出すだなんて、これまで無かったことです!」

 

 

マグゴナガル先生は相当ご立腹のようだ。私も含め、自分の管轄寮から違反者が四人も出ているからだろう。けど隣に立つマルフォイのニヤニヤとした嫌な笑顔が無性に腹が立つ。

 

 

「グリフィンドール生がこんなことをして恥ずかしくないのですか! それとも自分たちは一年生だから多少は見逃されるとでも!? 罰則を与えます!! 更に一人につき五十点減て……」

 

「マグゴナガル先生、落ち着いてください」

 

「何ですかミスター・エミヤ! 私は今この子たちの…………ってミスター・エミヤ!?」

 

「まずは深呼吸をして、それからお茶をどうぞ」

 

「え、ええ…………フゥ…………ズズッ…………ありがとうございます」

 

「いえいえ」

 

 

いや、マグゴナガル先生フツーにお茶を飲んでるけど。シロウ、それどこから持ってきたの? さっきまで私達といたはずだよね、多分。

 

 

「……って違います! 何であなたまでここにいるんですか」

 

「それに関してはきちんと説明させていただきます。とりあえず移動しませんか? ここだと先生も含めてみんな凍えてしまいます。……私は大丈夫ですが……」

 

「……わかりました。では変身術の教室へ行きましょう。あそこが一番近いですから。ミスター・マルフォイ、あなたもです」

 

 

マルフォイは自分まで連れていかれるとは思っていなかったのか、マグゴナガル先生の言葉に驚いていた。けど先生の有無を言わせない空気に飲まれて大人しくついてきた。途中でスネイプ先生とすれ違い、マルフォイはいつも通り先生に助けを求めた。けど当のスネイプ先生は、マルフォイを一瞥してマグゴナガル先生に今回の処分を一任してそのまま去って行った。この場には不相応だけど、マルフォイの絶望した顔を見たとき 「ざまぁみろ」 と思った。

変身術の教室につくとマグゴナガル先生は教卓の椅子に座り、私達五人はその前に並んで立っていた。マルフォイは不満げだったけど、他の私達は違反をしたという自覚はあったため、特にこれといった反発はない。

シロウは再びお茶を差し出し、机の上にポットとソーサーを置いた。うん、本当にどこから持ってきたの?

 

 

「どうぞ、ハーブティーです。夜も遅いため、少し薄めに仕上げています」

 

 

しかもさっき作ったんだ!?

 

 

「ありがとうございます。……ズズッ……さて、今回のことを説明してください」

 

 

その言葉を皮切りに、マルフォイがその自慢の舌を回してしゃべり始めた。その中身はまぁまぁ、私達を悪者にして自分はいい子ぶりッ子しているような内容だった。よくもまぁ悪びれもせずにそんなこと言えるもんだ。親の顔が見てみたい。けど正直に言うとマルフォイの証言は、お世辞にも信用できるようなものじゃない。仮に私達が当事者じゃなかったとしても、その内容では信頼を得ることは難しいと思う。

 

 

「…………というわけです」

 

「わかりました。あなた達から何か言いたいことは?」

 

「では私から」

 

 

そう言って今度はシロウが反論を始めた。

いやいや出てくる出てくる。どこかに台本でもあるの?、と聞きたくなるほどにシロウの口から言葉が出てくる。しかも質の悪いことに、真実を織り混ぜて虚言を吐いているものだから、マルフォイの言い分よりも信憑性がある。更にそれに加えて、自分たちにも非があるように言っているため、尚の事信憑性を増している。

因みにマルフォイが何度か口を挟もうとしたけど、マグゴナガル先生とシロウの鋭い眼光で黙らされていた。

 

「…………というわけです。ですが如何なる理由があっても、許可なく夜間に寮を出たのは事実。罰則は受けます」

 

「わかりました。ではあなたたちの処分をいいます」

 

 

いよいよ処罰内容か。どうなるんだろう。

 

 

「あなた達五人は一人につき二十点ずつ減点です。それから罰則を受けてもらいます」

 

 

二十点か。最初の五十点と比べると随分と優しい処分になった。

これはシロウの証言に感謝すべきだね。本当ならもっと酷いことになっていたかもだから。グリフィンドールから八十点減点されて、スリザリンが寮対抗の点数競争でトップになる結果になったけど、頑張ればまだなんとかなる点数だ。巻き返すことはできる。ただ、その前に上級生たちに謝罪しないと。私達のせいでトップから落ちてしまったんだし。

 

 

「失礼ですが先生、今五人とおっしゃいました?」

 

「ええそうですが」

 

「まさかと思いますが、僕も含まれているので?」

 

「無論です。如何なる理由があっても、許可なく夜間に寮を出たのは事実。あなたも同罪です」

 

 

先生のその言葉にマルフォイは撃沈していた。

いやいや当然でしょう? 自分だけ助かるとでも思ってたの? まったくマルフォイは本当に甘ちゃんだね。

 

 

 

------

 

 

 

 

夜が明けて朝食に向かう前に、私達は先輩方に謝罪してまわった。監督生のパーシーにもお叱りを受けた。ただグリフィンドール生の先輩方も抜け出す正当な理由があったと伝えられてあり、パーシーにもそれは伝わっていたため、さほど白い目では見られることはなかった。ただパーシーからは、今度からはマグゴナガル先生か自分に連絡するようにと注意された。正論だったので、素直に返事をした。

 

それから2、3日なにも連絡が来ないで過ぎていった。周りでは特に変わったことは無かったけど、私には少し、いやかなり問題が起きていた。物心がついてからこのかた、緑色の閃光が光る夢を見たときしか痛むことの無かった左鎖骨の少し上の傷跡が、疼くように痛み始めていた。医務室に行ったけど、呪いによる傷跡だから薬ではどうしようもない、と医療担当のマダム・ポンフリーに言われた。

 

 

「一応痛み止めの薬はあるけど、多分効かない。どうしても我慢できなくて気分が悪くなったらいらっしゃい」

 

 

そういわれたので、今は我慢している。けど何故かクィレル先生の授業のときは、疼くようなものではなく、けっこう激しい刺すような痛みが走る。とりわけ後頭部を見たときが一番痛い。でも授業は受けないといけなかったから、仕方なく先生から一番離れている出入口近くに座っている。ロンとハーマイオニー、シロウにも相談してるけどいい答えは得られなかった。

 

そんなこんなで日にちが過ぎて、ついにマグゴナガル先生から罰則の通知がきた。何でも今日の夜、森のある方の出入口にフィルチさんがいるから、そこに集合するらしい。他の四人も同じ罰則を受けることになっているみたい。

そして夜、指定の場所に行くと確かにフィルチさんがいた。全員集まると、フィルチさんを先頭に歩き出した。

 

 

「今の罰則は甘すぎる」

 

「ほう? というと?」

 

 

フィルチさんがそう切り出し、何故かシロウが興味を示した。フィルチさんはシロウのその反応に気を良くしたのか、いつもに比べて少し饒舌になった。

 

 

「昔は書き取り何て甘いものはなかった。例えば悪いことをした生徒に鞭を打つなんて普通、親指に専用の手錠をかけて上から吊るしたりな。今でもわしの部屋に道具は残っている。もう一度使えるようにきれいに磨いてな」

 

「なるほど。きつい罰を与えて恐怖を刻み込み、二度とやらないように体に覚えさせるのですか」

 

「そうだ、わかっているな」

 

「いえいえ、俺の母国も4、50年ほど前まで似たようなものがありまして」

 

「ほう?」

 

「まだその頃はマグル世界で世界規模の戦争が起きていた時代。親はともかく、戦火から逃れるために一定年齢以下の子供は地方に疎開することになっていました」

 

 

あ、それって確か1945年に終わった第二次世界大戦の話だ。確か日本に核爆弾が二つ落とされたって学校で習った。ハーマイオニーはマグル出身だからか、何の話かわかったみたい。でもロンとマルフォイはちんぷんかんぷんみたいだ。

 

 

「ただ日本は小国。大地主や当時牛耳っていた政治家の内の汚い奴ら、軍の汚いお偉いさん以外は殆ど食料のない時代だ。それに聞いた話だと疎開先では酷い扱いを受けていたらしい」

 

「それで?」

 

「やはり抜け出す生徒も多かったようだ。しかし大半が連れ戻され、罰を受ける。そして罰則は連帯責任として、当事者以外も受けていたらしい。一番有名なのは、太い木の棒で何度も体を殴るというものだったそうだ」

 

「それって虐待じゃない!」

 

 

ハーマイオニーは怒った様子で歩きながらそう言った。けどフィルチさんとシロウはその言葉にかぶりをふった。

 

 

「小娘、それは今のお前達の常識だ。この国でも連帯責任はないが、棒で何度も打つのは少し前までやっていたことだ」

 

「当時はそれが常識だったのさ。時代が移り変わることによって、親たちからの反発が増えて今のようになったのだ。今でも少し探したら、体罰をやっている学校は出てくるだろう」

 

「それにしても小僧、お前なかなか話がわかりそうなやつだ」

 

「こちらもいろいろとありましたから」

 

 

なんかフィルチさんとシロウが仲良くなっている気がするけど気にしないでおこう。

 

しばらく歩くと私達はハグリッドの小屋の前に着いた。ハグリッドは何故か弩を持って私達を待っていた。もしかして私達、これからあの立ち入り禁止の「禁じられた森」に入るの?

 

 

「ほれ、着いた。さっさと行け」

 

 

フィルチさんはニヤニヤしながら城に戻って行った。その顔を見て私は確信した。これからこの森に入ることになると。

 

 

「全員おるか? ほんじゃいくぞ」

 

「ちょっと待って」

 

 

マルフォイがハグリッドを止める。心なしか、その顔はひきつっていた。

 

 

「まさかと思うけど、僕たち森に入るの?」

 

「そうだ、今回の罰則は俺と一緒に森に入る」

 

「嫌だよ、だって…………森には狼男がいるんだろ? それにとても危険だって聞いてる。父上の耳に入ったらなんて言われるか……」

 

「だったら最初から校則違反をしなけりゃええんだ。悪いことをしたら罰を受ける、当然のことだろう。それが嫌ならさっさと荷物を纏めてこの学校から出ていけ!!」

 

 

いつものハグリッドらしくないきつい言葉だった。気のせいか、空気がピリピリしている。だから私はハグリッドに思いきって聞いてみた。

 

 

「ねえハグリッド。ただ森に入るだけならこんなピリピリはしないよね。それを持ってるってことは、今回はけっこう危険な内容なの?」

 

「そうだ、入る前に伝えておく。最近森に生息するユニコーンが何者かに殺されて、血を吸われることが多発している。今日はその調査だ。二手に分かれて森の中に入る。何かあったら空に火花を打ち上げろ。そんで俺が行くまで隠れてじっとしてるんだ」

 

「二手に分かれるってことはどっちかにハグリッドがいるんだね? じゃあもう片方は?」

 

「ファングについてもらう」

 

 

そうして私達はマルフォイ、ハーマイオニー、ロンの組とハグリッド、シロウ、そして私の組に分かれて森に入った。森は暗く、外よりもいっそう肌寒さが感じられた。それに何だか不気味な感じがする。

 

 

「ハグリッド、一ついいか?」

 

「なんだ、シロウ?」

 

「ユニコーンを殺して何の得があるのだ?」

 

「俺にはわからん。じゃがユニコーンを殺すこと事態が罪深いものなんだ」

 

「そうなのか」

 

 

ユニコーンを殺すこと事態が罪深いこと。そういえば聞いた話だと、ユニコーンは純潔の女性の膝で昼寝をするらしい。それ以外では滅多に姿を見せることはほぼないそうだ。気性が意外に荒いとも聞くけど、純潔の女性を好むあたり一応純粋な生き物なのかな。

突然森の別の方角で赤色の火花がうち上がった。あれはハーマイオニー達の入ったほうだ! もしかして何かあったの!?

 

 

「二人ともここにいろ、俺が見てくる」

 

 

ハグリッドはそう言って弩を構えて火花の上がった方へ進んでいった。暫くすると、皆を連れて戻ってきた。良かった、無事だったみたい。でもハグリッドは何だかすごく怒ってる。まさかと思うけど…………

 

 

「信じられん、どういう育て方をされとるんだこの小僧は!」

 

 

ハグリッドはカンカンに怒ってる。話を聞くと、どうやらマルフォイが質の悪い悪戯をしたみたい。わざとロンとハーマイオニーから遅れるように歩き、後ろから忍び寄って驚かせたらしい。勿論二人はパニックに陥り、ハーマイオニーが上に火花を打ち上げたそうだ。悪戯をしたマルフォイ本人はというと、ちっとも反省している様子はない。

 

 

「すまんがメンバーを変える。シロウとマリーはその馬鹿と組んでくれ。あとの二人は俺とこい」

 

 

まぁこの組み合わせが妥当か。シロウならマルフォイになんかさせる前に取り押さえることができるだろう。

 

 

「すまんな二人とも。でもお前さん達ならあの馬鹿も妙なことはしないだろう」

 

「任せろハグリッド。この馬鹿は俺達が見張っておく」

 

「うん、何かあったらすぐに伝えるから」

 

 

そうひっそりと言葉を交わして、私達はまた分かれた。マルフォイは暫くすると私達に悪戯をしようとしたけど、行動する前にシロウがマルフォイにアゾット剣を向けていた。因みに刃のある方を。

 

 

「…………妙な真似はするな。したら最後、お前の首が体と永久に離ればなれになると思え」

 

 

流石にその脅しが効いたのか、マルフォイはすぐに大人しくなった。時々シロウの目がマルフォイを見ているのも理由の一つだろう。

暫く歩いていると少し拓けた場所に出た。今日は満月だったから、こういう拓けた場所はけっこう見えるものなんだ。ふとある一本の木の根本に目がいった。よく見ると何かがその身を横たえてる。

 

 

「シロウ、マルフォイ。あれ」

 

「あれは…………ユニコーンか? それに見たところ既に死んでいる」

 

「な、なな、何を言って……」

 

 

突如そこに一つの黒い大きな影が忍び寄ってきた。その影はユニコーンに覆い被さると、その首もとに頭に当たる部分をくっつけていた。よく耳を澄ますと、何かを啜る音がする。その影はユニコーンの血を飲んでいた。

 

 

「ぎゃあああああああああ!?!?」

 

 

マルフォイが叫び、ファングは吠えながら走って逃げてしまった。私は足が動かなかった。全身が怖さに震え、逃げるどころじゃなかった。影がこちらに顔を向ける。

そのとき、首が引きちぎられたのかと錯覚した。今まで体験したことのない激痛が首筋の傷跡を襲った。私はその場に膝をついた。自分が叫んでいるのか唸っているのかわからない。一つだけわかるのは、シロウが必死に私に声を掛け、私は影からできるだけ離れようともがきながら後退りしていることだった。

影が立ち上がり、こちらに近づく。一歩一歩こちらに来る度に痛みは激しくなる。そのとき、シロウが私と影の間に立った。その背中を見たとたん、私は意識を手放してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side シロウ

 

 

謎の影がこちらに顔を向けた途端、マリーが突然首もと、鎖骨あたりを抑えて叫び出した。声からしてとてつもない痛みを伴っていることがわかる。

 

 

「マリー、意識を手放すな! オレがわかるか! マリー!」

 

 

何度も声をかけたが、マリーは答えない。それどころか、必死に影から距離を取るように後退りしている。原因はあの影か。そう確信したオレはマリーと影の間に立った。するとマリーは叫び声をあげなくなり、静かになった。一瞬だけ目を向けると、どうやら気を失ったらしい。影は止まらずこちらに近づいてくる。

オレは左腰の鞘からアゾット剣を抜き、影に向けた。影はそれを見て動きを止めた。

 

 

「人語を解するなら警告だ。貴様が何者であろうと、マリナには近づかせん。それ以上こちらに近づくことは許さん。もしその場から一歩でも此方に近づく、またはなにかしらの攻撃動作をした暁には、貴様の命の保証はしない」

 

 

影は一瞬だけ躊躇する気配を見せたが、その懐から杖を取りだしまた近づいてきた。

 

 

「魔法使いか。警告はした。ならばその命、捨てるということでいいのだな」

 

 

オレは無銘の、だが魔力を掻き消す力をもつ剣を5本、空中に投影して待機させる。切っ先は全て影に向いている。それを見て奴も動きを止めた。まず一つを射出させる。影は杖から銀に光る魔力の盾を作り出したが剣はそれを砕き、影の足元に突き刺さった。

残りの4本も奴に向けて射出すると同時に、蹄の音が高速でこちらに近づき、影の前に躍り出た。影は剣を避け、蹄の主から逃げるように空を飛んでいった。

一先ずは安心か。オレはマリーに駆け寄り、体を抱き起こした。

 

 

「マリー、大丈夫か? マリー?」

 

「…………う……ん…………シロウ?」

 

「マリー、オレがわかるか?」

 

「……うん、シロウでしょ? わかるよ。確か私、変な黒い影がこっちに顔を向けた途端、急に傷痕が痛くなってそれで……」

 

「良かった、覚えてはいたか」

 

「ねぇ、あのあとどうなったの? あの影は?」

 

「あれは……」

 

「マリナ・ポッター。影はこの場から去った」

 

 

静かな透き通る低い声と共に、蹄の音をたてながらこちらに別の大きな影が近づいてきた。それは琥珀色をした体をもつ、ケンタウルスだった。

 

 

「……あなたは?」

 

「私はフィレンツェ、この森に住むケンタウルスの一人だ」

 

「ケンタウルス。ケイローンのいた時代から今まで生き残ってきた、と考えればいいか?」

 

「そうとってくれて構わない。マリナ・ポッター。そしてこの星の護り手となりし者よ。いま、この森は危険だ。一刻も早く出た方がいい」

 

「先程の影のことか?」

 

「それもある。いま、この森は不気味な闇が蔓延っている。純潔の象徴たるユニコーンが殺されていることがその証だ」

 

 

フィレンツェはそうオレたちに説明する。マリーは落ち着いたのか、オレの腕に捕まってはいるが、自力で立てるまで回復している。

 

 

「……あの影は、何でユニコーンの血を飲んでいたのですか?」

 

「ユニコーンの血は、死の淵にある者を行き長らえさせる力を持つ。だがそれは罪だ。純潔の象徴たるユニコーンを殺すだから。その血が口に触れた瞬間、その者は仮初めの生を与えられる。呪われながらの生、生きながらの死だ」

 

「そうなんですか…………でもいったい誰が……」

 

「今ホグワーツに守られているのは? それが持つ力は? それを求めているのは?」

 

「……ホグワーツで守っているのは賢者の石。それは不老不死にさせる命の水の源。確かヴォルデモートは死んだのではなく、消えた。もしヴォルデモートが肉体を失っても生きていたとすれば、オレたちが見たのは…………」

 

「その可能性もなきにしもあらず、です」

 

 

そこに別の声が聞こえ、別のケンタウルスが姿を現した。こちらは深い焦げ茶色をしている。

 

 

「お初にお目にかかる、この星の護り手となりし者よ。そしてマリナ・ポッター。私はベイン」

 

「「初めまして」」

 

「ベイン、どうされたのです? 私はともかく、貴方が人の子の前に姿を現すなど珍しい」

 

「星が、今宵は彼らに協力するようにと」

 

「そうですか」

 

 

ケンタウルスは昔から人よりも博識と聞く。彼のヘラクレスの師匠もケイローンというケンタウルスだったという話だ。今ベインの言った占星術も、遥か太古から行われてきたのだろう。

 

 

「とりあえずこの者たちを一刻も早く森の外へ。今はその方が安全です」

 

「そうですね。星の護り手よ、そしてポッター家の娘よ。私かフィレンツェ、どちらかの背に乗りなさい」

 

「いや、問題ない。道案内さえしてくれればオレがついていく。それとオレは星の護り手という名ではない。オレは衛宮士郎。好きなように呼んでいい」

 

「ではシロウと。ベインもそれで良いですか?」

 

「構いません。ポッター家の娘はどうしますか?」

 

「私は、シロウに抱えて貰います。ご厚意は嬉しいですが、流石に捕まっていられる自信がないので」

 

 

そうしてオレ達は森の中を駆け出した。マリーはオレが抱えながら森の外へ向かっている。先程の疑問とオレの推測。間違っていなければ、近いうちに何かが起こる気がする。

妙な胸騒ぎを覚えながらオレたちは森の外へ行き、ハグリッドたちと合流した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side ???

 

 

何なのだ、あの極東の小僧は!?

ご主人様があいつには気を付けろ、絶対に近づくなとおっしゃっていたが、私はそんなに危険とは考えていなかった。だがハロウィンのときといい、今回といい、やつはこちらが見たことも聞いたこともない魔法を使ってくる。熟練の魔法使いなら無言で魔法を行使することなどわけない。だがそれでも杖の存在は重要になる。

ところがあの小僧は杖も使わずに空中に剣を何本も出現させ、更にこちらに射出してきた。盾が容易く破られるほどの威力だった。しかし狙いが悪かったのか、こちらには一本も当たることはなかった。

 

 

━━ それは違うぞ

 

 

ご主人様?

 

 

━━ やつの剣は外れたのではない。やつはわざと剣を外れるように放ったのだ

 

 

ご主人様? それは真ですか?

 

 

━━ 間違いない。やつは端からこちらに当てるつもり等なかったのだ

 

 

随分と舐められたもn……

 

 

━━ いや、舐めてなどいないだろう。

 

 

というと?

 

 

━━ あの小僧にとって、俺様たち魔法使いを殺すことなど赤子の手を捻るようなものだろう。恐らく俺様は勿論ダンブルドアでさえも、やつが本気になればすぐにやられる

 

 

そんな……あの小僧がそんな力を

 

 

━━ お前とは違い、俺様は肉体を持たない。だからやつの異常性がわかってしまう。言うなれば、やつは古文書に出てくる英霊や守護者の類いと見ていい

 

 

そ……んな……

 

 

━━ 今回お前が生還できたのは、ある意味あのケンタウルスの邪魔のお掛けだ。奴に対抗するには同じ英霊か不老不死しかないだろう。一刻も早く賢者の石を手に入れ、命の水を飲まなければならない。

 

 

はい、ご主人様

 

 

 

 

 

 

 





はい、今回はここまでです。


マグゴナガル先生がお茶を飲むシーンですが、あくまで飲むタイミングを表現するためであり、実際に音を立てている訳ではありません。


さて次回ですが、まだ下書きが完成しておりません。
ですので、もう暫くお待ちください。なるべく早く投稿しますし、今月中に投稿します。
暖かく見守っていただければ幸いです。



ではこの辺で

本作品もfateも感想お待ちしております





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