錬鉄の魔術使いと魔法使い達   作:シエロティエラ

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12. 空き教室の鏡 そして…………

Side マリー

 

 

その日の夜、私は透明マントが気になって寝れなかった。誰が送ったのか、何故、なんの目的で。考えても心当たりがなかった。まぁこの11年、魔法とはなんの関係もなく育ってきたから、当たり前と言えば当たり前だけど。

そういえば、ニコラス・フラメルや賢者の石についてまだ調べていなかった。でも図書館の普通の本棚には大した情報の書いてある本はないだろう。となると閲覧禁止の棚しかない。けどあそこは先生の許可がないと入れない。しかも許可を貰うには先生のサインが必要、入学したての一年生がもらえることはないだろう。となると、最終的に残る手段は隠れて入ることだけ…………ど……

 

隠れる? それならこのマントは使えるのではないだろうか? 正直差出人のわからないアイテムを使うことに抵抗があるけど、これほどぴったりなアイテムは残念ながら今は他にない。しかも現在時間は夜中ごろ。よほど夜遅く寝る先生じゃない限り、夜に見回りしているのは管理人のフィルチさんだけ。この広い城を一人で見回るとなると、同じ場所に来るのはそうとう時間がたってからのはず。ならば行動するのは早いほうがいい。

私は急いで着替えて (クリスマスプレゼントに貰ったセーターとワンピースね? ついでに寒いから白のストッキングも、あれ? 何だか私白ずくめ?) 、透明マントとカンテラを持って談話室に降りた。幸い一年生女子部屋には私しかいなかったから他の人を起こす心配もなかった。暖炉の前を横切って出入り口に向かおうとすると、

 

「…………やはり行くのだな」

「ッ!? 誰ッ!? …………シロウなの?」

 

シロウがパジャマじゃなくて普段着のユニ○ロでソファに座っていた。

 

「ああ。それで? 何しに行くのだ?」

「うん、これから図書館に行こうと。閲覧禁止の棚のところに」

「賢者の石についてか」

「うん、そう」

「だが大丈夫なのか? そのマントは確かに便利だが……」

「音は消せないってこと? 足音とか呼吸とか」

「ああ、その通りだ」

「その辺は気を付けるとしか言えないかな」

「そうか…………ならオレも着いていこう」

「ふぇ?」

「幸い比較的にオレは気配に敏感だ。ならば誰とまではわからんが、何かが近づいてくることぐらいならわかる」

「…………いいの?」

「ああ、オレも気になっていたしな」

「じゃあお願い」

 

そして私とシロウは図書館に向かった。マントは二人で被っても大丈夫な大きさだったからなんなく移動できた。途中で誰とも会うことはなく、私達は閲覧禁止の棚にたどり着くことができた。

マントを脱いで、ランタンをその上に重石代わりにおく。棚を見ると、流石は閲覧禁止と言えるような怪しい本が何冊も並んでいた。今晩は試しだからすぐに帰る予定でシロウと打ち合わせている。手頃な本をひとつ取り上げ、開いた。いや、開こうとした。なぜなら開いた瞬間シロウが本を閉じたからだ。理由はすぐにわかった。その本が雄叫びをあげているからだった。運良くすぐに閉じたため、雄叫びはあまり響いていないけど早く棚に戻すことが最善と思い、すぐに棚に戻した。

 

「誰だ!」

 

しまった、フィルチさんがきた! いったいどこからきたの!? シロウも驚いているし、急いでこの場を離れないと!

 

「逃げても無駄だぞ。見つけ出してやる」

 

急いで透明マントを被ったけど、ここでまたやらかしてしまった。ランタンの存在を忘れてしまい、床に落として割ってしまった。でも構っている暇はない。急いでシロウと私にマントをかけてその場から離れた。

フィルチさんの気配も遠ざかり、寮に戻ろうとシロウに目配せした。シロウもそれを了承したのか、小さく頷いて移動を始めた。と、

 

「な、何故あなたが、こ、ここここに」

 

あれはクィレル先生の声?

 

「知らないとは言わせませんぞ?」

 

あとはスネイプ先生?

 

「な、なんのことだか」

「しらばっくれるのも程々にですぞ? 我が輩を敵に回すとどうなるか、知らないわけではありますまい」

 

まるでスネイプ先生がクィレル先生を脅しているよう。でもあのクィディッチの試合のときの冷たい目を見たせいか、クィレル先生は今一つ信用出来ない。それよりも今は寮に帰るのが先決だ。私とシロウはその場から離れたけど、運悪く進行方向にミセス・ノリス、フィルチさんの飼い猫がいた。この猫、何の恨みがあるのか、いつも私を執拗に追いかけてくる。基本的に動物ならどんなものでも好きだけど、この猫だけは好きになれない。

とりあえず、見つかる前に移動しようと思ったけど、またまた運悪く後ろにフィルチさんが近づいてくる気配がする。八方塞がりかと思った途端、後ろから急に引っ張られて、一つの部屋に入った。

 

(マリー、静かにしていろよ? あの猫と管理人がいなくなるまでここにいる)

(わかった)

 

アイコンタクトで会話して、私達はじっとしていた。ようやく気配が離れていったので、一息ついて私達はマントを脱いだ。とても緊張していた状態がとけたのか、一気に汗が吹き出した。せっかくお風呂に入ったのに、残念。

落ち着いた後今自分たちがいる場所を確認した。どうやら使われていない教室みたい。机やら椅子やらが、積まれて壁際に集められている。でも妙だ。何て言うかこう…………

 

「長らく使われていない、というわけではないみたいだな。定期的に誰かが出入りしている形跡がある」

「そうだね、それにどんなに見積もっても一年たつかたってないかしか放置されていない」

「だな。埃のつもりかたがまだ新しい」

 

改めて部屋を見渡す。確かに誰かが定期的に出入りしている雰囲気がある。ふと部屋の隅っこ、窓側とは反対の壁際に大きな鏡が置いてあった。シロウも気になったみたいで二人で近づいていった。鏡をのぞきこむと…………ッ!?

 

…………おかしい。今はこの部屋に私とシロウ以外はいないはず。ゴーストの気配もない。でも確かに鏡には沢山の人たちが写っていた。もう一度のぞきこむ。今度は人々の顔を良く見る。そして気がついた。私の両隣に立っている男性と女性は私に似ていた。私と同じ緑の目と黒い髪をした男性。私と似ている長い髪と目鼻立ちの女性。

嗚呼、この人たちが…………

 

「私のお父さんとお母さんなんだね……

「マリー?」

 

シロウがこちらに問いかける。鏡に写る人たちもにこやかに頷いていた。

 

「…………なるほどな…………」

「シロウ?」

「マリー、鏡に刻まれている文を読んでみろ」

「鏡に刻まれている文? 『すつう、をみぞの、のろここ、のたなあ、くなはで、おか、のたなあ、はしたわ』? なにこれ?」

「逆から読んでみるといい。そうすれば意味も、この鏡に写っているものの正体もわかる」

「えっと、『私は、貴方の、顔、ではなく、貴方の、心の、望みを、写す』。ということは今私たちが見ているのは、私達が気づかないうちに、心の奥底で望んでるものってこと?」

「恐らくそうだろう。先程の言葉から推測するに、マリー。君は両親を見たのでは?」

「うん、そうだよ。…………そっか……私は気づかないうちに親に会いたいって願っていたんだね」

「そうだろうな。さて、それで点数はいかほどですか、ダンブルドア先生?」

「ふぇ?」

「…………よく気がついたのう」

「え? ふぇえええええええ!? こ、校長先生!?」

「気配がしましたから。透明になって気配を消しても、生きている以上察知できますよ」

「ぁぅぁぅぁぅう…………」

「なるほどのう。さて、シロウとマリー。君たちの推測だが、正解じゃ。その鏡はのう、人々の心の奥底の強い望みを写す」

「なるほど、やはりそうでしたか。どうりで…………」

 

……死んだはずの切嗣(じいさん)が凛や桜、イリヤやその子供たちと写っていたわけだ……

 

そうシロウは一人ごちるのを、ダンブルドア先生はどこか悲しそうに見つめていた。ようやく私も落ち着いてきた。どうやら怒られる雰囲気ではないみたい。

 

「この鏡はのう……」

 

ダンブルドア先生が話だす。

 

「見る人の望みを写すものだから、何人もの魔法使いが虜になってしまった。現実と向き合わなくなり、いつしか気が狂い始める。そんな鏡でもあったのじゃ」

「目の前に理想の自分が写っているゆえに、ですね」

「そうじゃのう」

「確かに、普通ならそうなりますよね」

「今夜ここで見たことは他言してはならんぞ? 明日にはこの鏡を別の場所に移す。鏡は探さないことじゃ。良いな、二人とも?」

「「わかりました」」

 

あ、ひとつだけ聞いても大丈夫だろうか?

 

「……あの、先生。一つお聞きしてもよろしいですか?」

「よかろう、一つだけじゃ。どうしたのじゃ、マリー?」

「私のあの透明マント。送り主に心当たりがないのですが、先生は何か存じてはおりませんか?」

「ああ、あのマントは君の父君がわしに預けていたのじゃ。じゃから君の入学を機に君に渡すことにした」

「そうだったんですか。お父さんが…………」

「あれは実に便利なマントじゃな。君の父君が夜な夜なキッチンに忍び込んでいた理由がわかったよ」

 

そうダンブルドア先生はクスクス笑いながら話していた。

…………お父さん、貴方学生時代何をしていたんですか? 意外と悪ガキだったんでしょうか? シロウなんて隣で呆れているし、私けっこう恥ずかしい…………

 

「さぁもう夜も遅い。早く寮に戻りなさい」

「「はい。おやすみなさい、ダンブルドア先生」」

 

 

 

 

 

 

 

 

私達は透明マントを被って、真っ直ぐ寮に帰った。途中誰にも会わなかったのは、恐らくダンブルドア先生が何かしたからだろう。何事もなく、談話室に戻ってきた。

 

「そういえばマリー」

 

シロウが話かけてくる。

 

「なに? どうしたのシロウ?」

「…………いや、やっぱいい」

「別に大丈夫だよ? さっきのことについて聞きたいんじゃないの?」

「…………君は、たとえ泡沫の幻想であったとしても。今回両親に会えて良かったか?」

「…………うん。大丈夫だよ。今シロウがいった通り、鏡でみたのは未来永劫叶わない夢。でもだからこそ、私は将来生まれてくるだろう私の子供に同じ寂しい思いはさせない。今晩お父さんとお母さんに会えたから、私はようやく胸を張って私の夢を追いかけられる。幸せな家族を持つっていう夢をね」

「…………そうか。わかった。すまないなマリー、デリカシーの無いことを聞いて」

「大丈夫だよ。それよりもシロウ」

 

今度は私の番だね。

 

「シロウが見たもの、凛や桜、イリヤって言ってたけど。その人たちって?」

「ああ。それはオレの大切な人たちで、オレが手放してしまった人たち。次はいつ会えるかわからない人たちだ」

「そうなんだ。ねぇシロウ」

「なんだ?」

「シロウはその人たちと離れ離れになって、悲しい?」

「…………悲しくないと言えば嘘になるな。だがそれでも前に進み続けると、彼女たちと、それから()()()と約束したからな」

「シロウ…………」

 

そう語るシロウの顔は、どこか悲しそうに、まるで泣きたいのを必死に我慢しているように見えた。まるで、あのハロウィンの日からよく見るようになった、夢に出てくる赤い外套を着けた白髪の男の人のような。

 

「…………そんな悲しそうな顔をするな、マリー。あいつらはいずれ会いに来ると約束し、オレが前を進み続けると信じてオレを送りだした。なら、オレがあいつらを信じないでどうする?」

「シロウ……」

「オレは大丈夫だ。オレが歩んできた道は、決して間違いなんかじゃない。そう信じて今も、そしてこれからも前を進むんだ」

「……うん」

「…………少し難しい話だったな。さぁもう寝よう。明日もまだ休暇中だか夜更かしはいかん」

「…………わかった。おやすみなさい、シロウ」

「ああ、おやすみ」

 

そうして私達はそれぞれの寝室に戻った。

シロウは大丈夫といっていた。シロウの大切な人たちがシロウを信じてくれるから、自分もその人たちを信じると。なら私がすべきこと、それは私もシロウを信じること。それで少しでもシロウの支えになるのなら…………

 

そう考えつつ私は微睡みに身を任せ、やがて眠った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夢をみた

 

そこは荒野

 

分厚い雲に覆われた黄昏の空

 

無数に浮かぶ大小様々な錆びた歯車

 

命の息吹か感じられない地面に突き立つ無限の剣群

 

悲しい世界の中心に立つのは、赤い外套を纏った白髪の青年

 

 

 

 

━━ I am the bone of my sword(体は剣で出来ている) ━━

 

詩が聞こえる

 

━━Steel is my body, and fire is my blood(血潮は鉄、心はガラス) ━━

 

この悲しい世界を

 

━━ I have created over the thousand blades(幾度の戦場を越えて不敗) ━━

 

あの青年の心を

 

━━ Unknown(唯の一度の) to death.(敗走はなく) Nor known(唯の一度も) to life(理解されない) ━━

 

悲しい心をそのまま表した詩

 

━━ Have withstood pain to create many weapons(彼の者は常に独り、剣の丘で勝利に酔う) ━━

 

ここがそうなのだろう、彼が独りでいる世界

 

━━ Yet those hands will never hold enything(故にその生涯に意味はなく) ━━

 

意味のない人生。そんなの悲しいを通り越して辛い

 

━━ So as I pray ''UNLIMITED BLADE WORKS ''(その体はきっと剣で出来ていた) ━━

 

 

 

 

そして私の目の前で赤い外套の青年は、体の至るところから剣を生やした

 

苦痛に歪み、それでも前を見据える彼

 

その横顔は、私の知る人によく似ていて…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、ここまでです。

少し駆け足になっちゃいました。

マリーさんですが、初め組分けの際に自らの想いを帽子に語っていました。しかしそれでもまだ十と少ししか生きてない子供。親を求める気持ちはあって当たり前と私は思っています。特にマリーさんは両親を知らぬ故に、本人が把握しきれてない部分でそう願っていた形にしました。


さて、次回からノルウェードラゴン、そして禁じられた森編です。

これからも本作品をよろしくお願いいたします。

次はこちらではなく、もう一つの方を更新します。


それではこの辺で





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