錬鉄の魔術使いと魔法使い達   作:シエロティエラ

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今回からクリスマス編が始まります。

それではごゆるりと







11. 学期末最後の日とクリスマスプレゼント

 

時は師走半ば、外の眺めは一面の銀世界。

故川端康成氏の名作の序文にある言葉がある。

 

『国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。』

 

流石に学舎にはトンネルはないが、夜が明けた窓からの眺めは、正に雪国に迷いこんだよう。

 

皆がクリスマスを待ち望み、休暇が来ることを楽しみにしていた。

だが、授業はしっかりと受けなければならない。廊下は冷え込み、生徒達は足早に駆け抜けていく。教室も似たようなものだが、それでも人がいるだけ幾分かマシであった。だがそうもいかない部屋もある。魔法薬の授業の教室である地下牢がその例である。

クリスマス休暇が明日に迫った学期最後の授業は、魔法薬であった。加えてスリザリンとの合同授業。グリフィンドールの生徒はげんなりとした様子で授業を受けていた。

 

「かわいそうに、クリスマスなのに帰ってくるなと言われている哀れな生徒がいるとはね」

 

マルフォイが嫌みったらしくマリー達を見ながら言う。他のスリザリン生徒もニヤニヤと嫌な笑いを浮かべながら、マリー達を盗み見ている。だが、当のマリー達はというと、

 

「先生、ヤマアラシのトゲが足りないので、予備の材料を少し頂いていいですか?」

「どれだけ足りんのだ?」

「5本一束ほど」

「ふむ、それならそこの棚の上にある。そこの椅子を使っていい」

「ありがとうございます」

 

大して気にもしていなかった。というかそもそも聞こえていないようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side マリー

 

 

ああ本当に寒い。最後の授業が火を使う授業でよかった。魔法薬の中でも火を使わないものもあるから、今日がそんな薬ならどうしようかと思った。材料はスネイプ先生が快く譲ってくださったし、あとは指示通に煮込んで撹拌して完成だ。

なんかスリザリンの子達がニヤニヤしながらこちらを見てたけど何だろう? それにマルフォイがなんか言ってたけど、どうでもいいや。

さて、トゲを刻んですりおろして、粉末を大鍋に入れて混ぜる。おお、言われた通りの色になった。成功だね。いやー杖を振るのも魔法使いっぽいけど、私はこっちの方が楽しいな。なんか料理みたいでワクワクする。いずれは自分で色々と調合してみたいって思う。

あれ? なんか騒がしい…………あらら。マルフォイが余所見してて失敗しちゃったか。自業自得だね。スリザリンに甘い、と言われてるスネイプ先生も流石に擁護できない、基本部分の失敗だし。大体火を使うのだから注意しないと。

まぁそんなこんなで、私の魔法薬の完成度でグリフィンドールに十点貰って最後の授業が終わった。

 

地下牢を出ようとすると、大きな樅の木が足を生やして動いていた。うん、間違い。ハグリッドが樅の木を背負って歩いていた。

 

 

「やぁ、ハグリッド。手伝おうか?」

 

「おお、ロンか。いや、ええ。俺一人で大丈夫」

 

「すみませんけど、そこ退いてくれませんかね」

 

 

そこにマルフォイが来た。あのクィディッチの試合以来、マルフォイは更に嫌みったらしくなった。私にちゃんとした家族がいないと嘲り、さらには他の人も嘲る始末。どういう育ち方したんだろう? あれは従兄弟のダドリーよりも酷い。ダドリーも他人をいじめたりしていたけど、家族までは貶めたりしなかった。あとで理由を聞いたことがあったけど、

 

 

「僕が気に入らないのはそいつ本人だけであって、そいつの家族じゃない。だからそいつの家族については何も言わない」

 

 

って言ってた。うん、そこら辺はきっちり線引きしていたんだね。

 

 

「ウィーズリー、小遣い稼ぎかい? 卒業したら森番として雇ってもらったらどうだい? そしたら少しはそのみすぼらしい身形もマシになるだろうよ」

 

「黙れ、マルフォイ。それ以上言ってみろ。許さないぞ」

 

「何だい? 僕は親切にいってあげてるのに。君たち家族にとっては森番の小屋も宮殿みたいなものだろう?」

 

 

ロンがマルフォイに掴みかかり、今にも殴ろうとしたそのとき、

 

 

「ウィーズリー、何をしている?」

 

 

スネイプ先生が来た。うん、これは好都合。

 

 

「すみません、スネイプ先生。喧嘩は禁止されているのはわかってるんですが、それでも見過ごせないことをマルフォイが言ったので」

 

「何を言ったのだ?」

 

「マルフォイがロンとその家族を侮辱したんです。だから私も止めませんでした」

 

「そうか、わかった。喧嘩両成敗だ、グリフィンドールとスリザリンから共に五点減点。双方とも、もういってよろしい」

 

 

スネイプ先生はそう言って去っていった。うん、やっぱ話せばちゃんとわかってくれる先生だよ。なんかロンが 「僕らと扱いが違うような」 って言ってたけどそれは違うと思う。みんながスネイプ先生を毛嫌いするから不当な扱いを受けるんじゃないかなぁ? 因みにマルフォイは、自分の行動を減点対象にされたことにショックを受けているみたいで突っ立ってた。

 

 

「ほれ、元気を出せ。一緒においで。大広間がすごいぞ」

 

 

私達はハグリッドと一緒に大広間にいった。すると正面には大きなクリスマスツリーがあり、フィリットウィック先生とマグゴナガル先生が飾り付けをしていた。叔父叔母の家でもクリスマスツリーはあったけど、あれとは比べ物にならないほど豪華で大きいツリーだった。

 

 

「お前さん達、休みまであと何日だ?」

 

「明日から休みだよ?」

 

「あ、そういえば…………マリー、ロン、シロウ。図書館に行きましょう」

 

「そうだね」

 

「ん? 明日から休みなのに勉強するのか?」

 

「違うの、ちょっと調べものをね」

 

「ニコラス・フラメルについて僕たちは調べてるんだ」

 

 

あ、嫌な予感。また二人ともシロウと私をつれていく空気だ。

うん、ここはシロウと戦略的撤退を…………っていない!? どこに…………ってシロウ何をしてるの? そのモップはどこから取り出したの? そして何か床を掃除し始めたし、本当にブラウニーだね。

 

 

「小僧、何をしている」

 

「ああ、フィルチさん。こんにちは。いえね、この泥んこを見ると何かこう、ウズウズしてきまして。気がついたらこうしてモップを握っていて…………」

 

「…………なに?」

 

「ああいや、日本の学生はですね、自分の学舎は自分で掃除をするように教育されているんですよ。ですからこう、なんと言うんですかね? ツイツイ癖というかなんと言うか」

 

 

へえそうなんだ。そういえば私達当たり前のように土足で歩いているけど、掃除する人がいなかったらこの城は酷いことになっているだろうね。それじゃあ私も……

 

「小娘、お前まで何を」

 

「こんにちは、フィルチさん。シロウの今の話に私も思うことがありまして。ですからお手伝いしようかと」

 

「いらん、さっさと失せろ」

 

「え? でも…………」

 

「早く失せろ」

 

「…………わかりました」

 

 

拒否されちゃった。まぁいいか。次から自分でやればいいし。

 

そういえばペチュニア叔母さんから手紙が来ていたっけ?

なんでも今年のクリスマスにマージ叔母さん、バーノン叔父さんの妹が来るみたいだから、帰って来ない方がいいって書いてあった。マージ叔母さん、ブルドッグのブリーダーをしてるんだけど、いつも私に必ず一匹けしかけてきた。足を何度も噛まれて病院に行ったこともある。

以来ペチュニア叔母さんが、マージ叔母さんが来るたびに、フィッグさんの家に私を預けていた。うん、正直助かった。もともとこのクリスマスは帰るつもりはなくて、ホグワーツに残るつもりだったけど、帰らなくていい理由が増えて安心している。

あと手紙の最後に、怪我と病気に気を付けるよう書かれていたのを読んだときは、不覚にも泣きそうになった。うん、私叔母さんに嫌われてなかったと改めて実感出来たときだった。

 

 

 

 

━━ ………………ゃあハグリッド、またね。ロン、行きましょう」

 

「またね、ハグリッド」

 

 

そう言ってロンとハーマイオニーは、私とシロウを引きずって図書館に向かった。どうでもいいけど、お願いだから問答無用で連れてかないで。せめて一言言ってね二人とも。

そう思いつつ、私はハグリッドに手を振った。

 

 

 

 

 

 

 

Side シロウ

 

 

 

まったく、若い子達はエネルギーが有り余っているのか?

調べものをするのは良いが、しらみ潰しなのはどうかと思うぞ? それにまだスネイプのことを疑っているみたいだしな。

 

あのあと個人的に聞いたが、スネイプは箒にかけられた呪いの解呪に努めていたらしい。とするとやはり怪しいのはクィレルといったとこか。確信は持てないが、スネイプが白であることは間違いな…………おい、お前たちが調べているのはニコラス・フラメルだろう? なんでハーマイオニーは近代のことが書かれている書物を漁っている? あれは14世紀の錬金術師だぞ? そもそも魔法使いではないのだが。

そしてロンもだ。何故に現代の著名な魔法使いの本で調べてるんだ? ああもう、見ていてじれったい。

 

 

「ねぇねぇ二人とも」

 

「「なに?」」

 

「ニコラス・フラメルって錬金術師じゃなかった? ほら賢者の石を作ったことで有名な。確かマグルの世界でも彼についての本も出てた記憶があるし」

 

 

………………マリー、君はなんと言うか、すごいな。二人が必死に探している情報をあっさりと言うとは、しかも魔法界で知ったのではなく、マグルの本に書いてあったとなって、ロンなんて唖然としているぞ?

 

 

「ねえマリー。どうして今まで教えてくれなかったの?」

 

「だって二人とも私達の話を聞かなかったでしょう? 問答無用で私達をつれまわしていたし」

 

「「う…………」」

 

「それに教えてくれるもなにも、思い出したのはついさっきだし」

 

「「…………ごめんなさい」」

 

 

まああの二人は少し視野が狭い気がしないでもないな。まぁ若いゆえ、突っ走ってしまうのも仕方のないこと。むしろマリーが少し成熟しすぎている気がしないでもないが。まぁいい。

 

 

「じゃあ私は明日から実家に戻るけど、三人ともお願いしていい?」

 

「「「うん(ああ)」」」

 

「私も自分なりに調べておくから」

 

 

話は纏まったな。

 

 

「ならそろそろ大広間に行こう。時間もいい頃だ。晩餐に向かおうか」

 

「賛成」

 

 

こうして夜が更けていき、冬季休暇が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side マリー

 

 

あれから数日が過ぎ、クリスマスになった。着替えて談話室に行くと、プレゼントが置いてあった。ロンとシロウも既にいる。ただシロウの服装を見るに、この寒いなか外で鍛練をしてきたらしい。ノースリーブの黒いシャツと黒いジャージのズボンを着ている。そしてソファーの傍らに、日本の木刀を二本立て掛けていた。元気だねぇ。

 

 

「おはようシロウ、ロン。メリークリスマス」

 

「おはようマリー、メリークリスマス」

 

「ああマリー、おはよう。メリークリスマス」

 

 

私は二人に挨拶したあと、シロウのもとに向かった。

 

 

「ねぇ、あのプレゼントの山ってなに?」

 

「ああ、あれはオレ達三人へのプレゼントだよ。君が起きるのを待っていたんだ」

 

「あ、そうなんだ。二人ともありがとう」

 

「いいよ気にしないで、それよりプレゼント開けちゃおう」

 

「「うん(ああ)」」

 

 

そうして私達はプレゼントをあけはじめた。

先ず私が開けた包みはハグリッドからだった。木彫りの縦笛で、息を吹き込むと、まるで梟の鳴き声のような綺麗な音色が響いた。

次に手に取ったのは、ダーズリー一家からだった。

 

 

『お前の言付けを受け取った。クリスマスプレゼントを同封する』

 

 

そう書かれていた手紙の裏には、五十ペンス硬貨がテープで貼り付けられていた。

 

 

「いつもありがとうございます」

 

「なにそれ? マグルのお金? 変な形!」

 

「これあげる」

 

 

ロンが物凄く喜んでいたのがおもしろかった。

さて、次の包みは。あれ? これもダーズリー一家から? なんで二つもあるのだろう? 送り主をみると、納得がいった。

 

ペチュニア叔母さんとダドリーから別に送られていた。中身はダドリーからが何故か喧嘩の勝ち方の手引き書。ペチュニア叔母さんからは、真新しい白の裾長、長袖のワンピースだった。今まであの家族から貰ったもので、一番嬉しいものだった。因みに今着てるのは、ホグワーツに来る前に叔母さんが買ってくれた桜色のワンピース。

 

更にプレゼントを開ける。すると今度はロンが物凄く驚いていた。

 

 

「シロウとマリーが今持っているプレゼント、送り主知ってる」

 

「へ?」

 

「ほう?」

 

「それ、僕のママからだよ。でも、あーあ。まさかウィーズリー家特製セーターを君たちに送るなんて。しかも僕のより気合い入ってるし」

 

 

包みを開けると、真新しいセーターが入っていた。私のは白い下地に桜色で獅子のエンブレムが胸についている。シロウのは…………赤? 紅? の袖に、残りは真っ黒なセーターだった。それを見てシロウは懐かしそうな顔をしていた。

 

 

「ああそうだ、マリー。ロン。君たちにこれを」

 

 

そう言って私とロンに、シロウが包みを渡してきた。なかを開けると、ロンには獅子を象ったブローチのようなもの。その目の部分に小さな赤い宝石がはめられていた。私にはネックレスが入っていた。

 

 

「ロンのそれは、マントを止めることができる。裏には太陽のルーンを彫らせてもらった」

 

「え? シロウが作ったの!?」

 

「ああ、少し地下牢を借りてな。これでも彫金には少し自信はある」

 

「ねぇシロウ。君ってできないことあるの?」

 

「何を言う? できないことなど山ほどあるぞ?」

 

「あまり信じれないなあ。ところでマリーのネックレスにぶら下がっているの、あれはなに?」

 

 

そう、それは気になっていた。見た感じ剣であるのはわかるけど、まるで鉈のような形をしていたからだ。それにその装飾がけっこう凝ったもので、恐らく鍔にあたる部分に赤い宝石がはめられていた。

 

 

「ああ、それは中華剣の一つでな。伝説の鍛治師夫婦が鍛えた名剣をもとにして作った夫婦剣の片割れだ。もうひとつ箱に入っているだろう?」

 

 

箱を改めて見ると、確かにもうひとつ入っていた。こちらには黄色い宝石がはめられていた。

 

 

「その夫婦剣はな。どんなに離れていても互いに引き合うという性質を持っていたそうだ。いつかマリーが心に決めた人が出来たときに、その残りの片割れを渡すといい」

 

「わかった。ありがとう、シロウ」

 

「僕も、ありがとう」

 

「どういたしまして」

 

 

因みにハーマイオニーには、ロンのと鏡写しの獅子のブローチを送ったらしい。本当にシロウは器用だよね。

そして私は最後のプレゼントに手を伸ばした。何だろう、すごく軽い。開けてみると、キラキラしたマントのようなものが出てきた。

それを見てロンが目を見開いた。

 

 

「僕それ知ってる! それ透明マントだよ!」

 

「「透明マント?」」

 

「きっとそうだよ! マリー、羽織ってみて!」

 

 

ロンに言われてマントを羽織る。けど何が違うのかわからないから鏡の前に移動した。…………驚いた。首からしたがない。本当に透明になってる。

 

 

「手紙が落ちたぞ」

 

 

シロウに言われて手紙を拾い上げると、こう書いていた。

 

 

『君のお父さんから預かっていた。君に返すときが来たようだ。上手に使いなさい』

 

 

送り主の名前も書かれていない。いったい誰からだろうか。

今年のクリスマスは、今まで生きてきたなかで最高のものだったと同時に、いくつか謎を残したものになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえばシロウ。僕さっきから気になっていたけど」

 

「ん? どうした?」

 

「その大きな宝石みたいなの何? とても綺麗だけど」

 

「ああ、これは知り合いのハッチャケじいさんからもらったものだ。これを使えば特定の相手と交信できる魔法アイテムさ。謂わば水晶玉のようなものだ」

 

「ふーん。じゃあその手紙の写真は? 何かシロウに似ている子供が何人か映ってるような…………」

 

「世話になった人たちの写真だ。今何をしているかは知らん」

 

「本当に?」

 

「…………さて、朝食を食べに行くとしようか。いくら休暇中とはいえ、不健康に暮らすのはいかん」

 

「あっ。ちょっと待ってよシロウ! シロウってば!」

 

 

 

 

 

 

 






はい、ここまでです。

今回は少し長めに執筆しました。
シロウがもらった大きな宝石。あれは万華鏡が作ったもので、あれを使うと、ゼルレッチ、若しくは凛と交信だけできる第二魔法礼装です。


次回はみぞの鏡、マリーさんはどんな反応を示すのでしょうか。



それではまた





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