錬鉄の魔術使いと魔法使い達   作:シエロティエラ

13 / 115
はい、今回はシロウの説明回です。



それではごゆるりと。





7. エミヤシロウとは

Side シロウ

 

 

今オレたちは校長室にいる。各寮と同じで合言葉を言う必要があった。その合言葉がなかなかふざけたものだったが。なぜ菓子の名前なんだ。しかも海苔煎餅だと? 開いた口が塞がらんかったわ。

 

まぁそれはさておき、そろそろ話を始めるか。トロールの血については、匂いを含めてダンブルドアが消してくれた。そしてマグゴナガルもスネイプも早く話せとばかりにこちらを見つめている。オレは口調をアーチャーのように変えて話はじめた。

 

 

「まず、質問に答えます。ものによっては同時に説明もします」

 

「ではまず私から」

 

 

マグゴナガルがいい、続けた。

 

 

「あの剣はなんですか? それにあの三人が持っていた黄金の盾は、そしてあなたの格好は?」

 

「わかりました、説明と一緒に話します。まず前提として話しますが、そもそも私はこの世界の人間ではありません」

 

「この世界の人間ではない? どういうことですか?」

 

「そのままの意味です。私は無限に連なる平行世界のうち、その一つに住む人間です。訳あって元の世界にいることができなくなり、この世界にいます」

 

「「なっ!? 平行世界!?」」

 

 

ダンブルドアは知っていたため特に反応はなかったが、スネイプとマグゴナガルは絶句していた。

それもそうだろう。いま彼らの目の前にいるのは確認さえされていない、もしもの世界の住人なのだから。

 

「話を続けますね。あのときトロールを仕留めた剣と、あの三人を守っていた盾は、私が投影で作ったものです。

私が使っているのは元々私の世界で魔術と呼ばれているもの。この世界の魔法とはそもそも基盤が違います。

この世界の魔法基盤は、当人にとって最も相性のいい触媒、不死鳥の尾羽根やユニコーンの毛ですね、を通して簡易的な概念として行使すると私は考えています。ガンドと似て非なるもの、と。

で、私の使う魔術とは体にある魔術回路と呼ばれる擬似神経を用いてそこから生成される魔力を直接、または間接的に使用して神秘を行使するものです。例えば古代ギリシャのコルキスの王女メディアの術とか」

 

 

ここで一度言葉を切るとダンブルドアを含め、三人とも信じられない目をしてオレを見ていた。

今の話が本当なら、オレは失われた古代魔術を今のところ唯一行使できる存在ということになる。

しばらくして、今度はスネイプが口を開いた。

 

 

「先程お前の言った投影。それはなんだ?」

 

「私がマトモに使える数少ない魔術の一つです。魔術には基本的に『地水火風空』の五大属性から成ります。ですが稀にこの五大属性では再現できない特異な属性を持つ魔術師も現れます。私もその一人です。私の属性は『剣』」

 

「成る程、変身術や妖精魔法で刃物の特徴をもつ結果は、あなたのその剣の属性が関係しているのかもしれませんね」

 

「そうです、話を戻します。投影とは自らのイメージを元にして物の基本骨子から構成材質、姿形を全て己の魔力で補い、贋作を作り出す魔術を指します」

 

「全てを魔力のみでだと? だがそうであれば長持ちはしないはずだ。魔力はいずれ気化し、強度もそれほど強くはならない。それに人の頭では、完璧なイメージを浮かべるのは難しい」

 

 

なかなか鋭いな、スネイプは。マグゴナガルもダンブルドアもそれに簡単に思い至ったようだ。

 

「ええ、その通りです。ですから本来は儀式などで一時的にレプリカが必要なときぐらいしか使われない、マイナーなものです。刃物を作っても紙一枚切れれば良い方でしょう」

 

「ではあの剣についてはどう説明する?」

 

「あれが私の異常性の一つです。

剣の要素を持つ武具、剣は勿論槍や戦斧、槌などは本物と何ら遜色の無い贋作が造れます。イメージに綻びがなければ、強度も本物のそれと同等。さらに言えば、再構成不能まで破壊されるか私が破棄しない限り、半永久的に存在し続けます」

 

 

ここでオレの異常性をようやく理解したのだろう。三人とも目を見開いている。だがこれで終わりではない。

 

「あの黄金の盾は宝具(ほうぐ)と呼ばれるもの。過去の英雄たちが持つ武具や逸話、伝説が力をもった究極の幻想。

例を挙げるとすれば、この地で有名なのは騎士王アーサーのエクスカリバーやクランの猛犬のゲイ・ボルグあたりがその類いはです。あの盾はカラド・ボルグの一撃を傷一つなく防いだ盾、オハンの贋作です」

 

「と言うとシロウ。君は魔力さえあれば剣の属性を持つもの、仮令(たとえ)それが宝具とやらであったとしても、いくらでも造れるのかのぅ?」

「ええ」

 

「何て出鱈目な……」

 

 

マグゴナガルがそう呟くのも仕方がないか。元の世界でもそのようなことはよく言われていた。そして封印指定を受け、愛する人たちと離れてしまうことになった。

 

 

「成る程のぅ。11年前にあの予言を聞いたときはいまいちよくわからなんだ。じゃが今の説明でようやく納得がいった」

 

「「ダンブルドア先生(校長)?」」

 

 

ダンブルドアの発言に、スネイプとマグゴナガルが疑問の声をあげたが、ダンブルドアはそれを無視して、一つの不思議な光を放つ盆を持ってきた。

憂いの篩と言うらしく、注ぎ込んだ記憶を保存、再確認することが可能となる魔法道具らしい。

 

ダンブルドアはそれを二回ほど杖で叩くと、大きな丸縁眼鏡をかけたトンボのような女性が、ホログラムのように浮かび上がった。

マグゴナガルが「シビル……」と呟いていたが、知り合いだろうか。するとホログラムの女性は、低くしゃがれた声で話しはじめた。

 

 

 

 

 

『彼方より厄災が来る。それは魔法界、非魔法界を選ぶことなく、振り撒かれるであろう。それを止め得るは、無限に連なる世界の調停者たる万華鏡が系譜、錬鉄剣製の英雄のみ。その英雄、無限の贋作を担いし者なり。その英雄、遥か彼方の世界にて、抑止の守護者となりし者と同じ魂をもつ。今より先、錬鉄の英雄が遥か彼方よりきたる』

 

 

 

 

 

おそらくダンブルドアの記憶だろう。

予言については前もって聞いてはいたが、まさかアーチャーと同じ魂を持つ別人であることもも言っていたとは。そしてここでも厄介事に巻き込まれるのだな。……………気が滅入る。

 

 

「よ……抑止の守護者と…………同じですって?……」

 

「こ……この男が…………錬鉄の英雄……だと?」

 

 

マグゴナガルとスネイプが、本気で恐怖した表情を浮かべてオレを見ていた。ここで今まで黙っていた組分け帽子が一言いった。

 

 

「この者は既に至っております。守護者ではなく、英霊に」

 

「「ッ!!」」

 

「……ゴーストたちが頭を垂れていたのはそういうことでしたか」

 

「……なんと…………」

 

「いろいろと言いたいこと、聞きたいことはあるでしょう。だが今回はここまでにさせていただきます。いずれ私自身のことは話します。今はまだそのときじゃない」

 

「それはいつ頃なんじゃ?」

 

「来るべきそのときに。今日のことについては、マリーたちの中からオレのやったことだけ記憶操作させてもらいます。今はまだ、あの子たちは知るべきではない」

 

「…………相わかった。好きにするとよい」

 

「それと今後についてですが、今まで通りの生徒と教師の関係でお願いします。特別扱いはあまり好きではありませんから」

 

「わかりました」

 

「我輩も了解した」

 

「最後に一つ聞かせてくれんかのぅ」

 

「なんでしょう?」

 

「君はわしらの敵になることはないんじゃな?」

 

「あなたたちが外道に堕ちない限り、私はあなたたちに刃を向けることはしません」

 

「それを聞いて安心した。いってよい」

 

「ではこれで失礼します」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところでミスター・エミヤ。先ほどクィレル先生に対してなかなかの暴言と口調でしたが?」

 

「え? ああ、あれは……」

 

「先ほどミスター・エミヤは生徒と教師の関係のままを望むとおっしゃいましたね? では今回の騒動についての判断です。

トロールを二体、迅速に対応したことにより、グリフィンドールに三十点差し上げます。しかしながら理由があったことは理解しましたが、あなたの教師に対する態度が悪かったことでグリフィンドールから十点減点します」

 

「なんと……」

 

「今回はこれで済ませます。が、次回以降は書き取りの罰則も課しますのでご理解を。寮に戻ってよろしい」

 

 

………………解せぬ。

 

 

 

 

 

 




はい、ここまでです。

最初投稿したときは、タメ口で説明させてましたが、流石に不味いと思って訂正を入れました。
そして前回クィレルに暴言吐いたことについての簡単なお説教も入れさせてもらいました。

予言の部分ですが、スネイプ一度聞いて内容を把握しているということにしています。ですので、平行世界の英雄が来ることは知っていました。流石にそれがシロウとは知らないですが。

次回はエミヤの回想録と少々のおまけを投稿する予定です。

ではまた


嗚呼、クィディッチ編にまだ行けない…………



▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。