ようやく……ようやく更新することできました!!
非常に長かった。一月かけてようやく一話書き上げることができました。
それではどうぞ、今回はシリアスな死に出来たかなぁ……
地面は緑のペンキに彩られたように若草が生え、空は阻むものがない真っ青な色。だというのに、陽光は柔らかく、昼寝をするにはぴったりな環境が城の庭には出来上がっていた。現に何人かの生徒は木に背を預けつつ、うつらうつらと舟をこいでいる。しかし私たち五年生はそれらの光景を羨ましく見つめるしかできない。その理由はただ一つ、そうO.W.L試験がついに始まったのだ。
試験までの二週間、先生方―オババ除く―は課題を一切出さず、これまでの総復習に当てる時間の使い方をした。そのおかげか、普段から勉強している私たちは見落としていた部分を徹底的に詰め込むことができ、実技以外はほぼ万全の体制と言っても差し支えない状況で試験に臨んだ。本当ならその間も「閉心術」の訓練はしたかっただけれど、先生も忙しいし、私もそれどころじゃなくて疎かになっていた。試験が終わり次第すぐにでも再開する予定である。
まぁそれは置いといて、勿論試験までの時間に何かなかったかと言われればそれは間違いだと言える。生徒たちの間では、集中力を増すだの、精神統一に有効だの、そんな妖しい物品の横行が相次いだ。勿論私はそんな妙なものに手を出したくなかったから、外から傍観しつつ自分のことに専念した。
一度脳活性に有効という話のドラゴンの爪が話に上がったけど、シロウによって全て没収され、売っていた生徒もお説教を受けていた。
「シロウ!! なんで没収するのさ?」
「ドーピングしたくなるのは理解できるが、馬鹿なことは止すんだな」
「ドラゴンの爪は効くよ!! 僕たちはそれが欲しかったんだ!!」
やいのやいのと買おうとした生徒は抗議の声を挙げたけど、シロウは鼻を一つ鳴らしてそれらの声を一蹴した。
「解析したら全て偽物だった。それに没収したものは全て焼却処分してある。これに懲りたらドーピングなどせず、自力でどうにかしたまえ。栄養ドリンク程度なら私が作ってやる」
シロウのその言葉とで生徒たちは意気消沈、散り散りに自分の部屋に戻り、勉強に勤しむことになった。まぁシロウもちゃんとフォローしてたし、件の生徒もみんなの前でシロウのお仕置きを受けてたから大事にならなかった。というかシロウのドリンクのおかげか、みんなドーピングするよりも集中力が増していた。何か特別なものを使っているかと思ったけど、成分は単なる漢方素材。プラシーボ効果は怖いと思った。
まぁそんなこんなで試験当日、いつものようにシロウ監修の美味しい朝食に舌鼓を打っていると、大広間の入り口に見慣れない人たちが来た。それを見た瞬間、傍らに座っていたハーマイオニーが持っていた教科書を取り落とし、口をパクパクさせていた。余談だけど、落した教科書は大層分厚く、私の手の甲に角から落ちたため、とても痛かったと言っておく。
「どうしましょう、あの人達かしら? 試験官かしら?」
どうやらハーマイオニーは気づいていないらしい。まぁ気持ちはわからなくはないけど。私たちは気配を潜めて入口の集団に近寄った、その際シロウ直伝の気配遮断を怠らない。これを使ったときのオババからの未発見率は百パーセントを維持している。まぁこれに関してはオババが無能というのが正しいところかな。ウィーズリー夫妻は普通に気がつくし。
入口に近寄ると、オババと集団の一人の女性が何やら話し合っているのが窺えた。話している人はとても高齢であることが窺え、相応に耳が遠いのか、大きな声で話をしている。
「それにしても、最近ダンブルドアからの便りがない!!」
老婆が苛々を隠さずにそう声をあげる。
「どこにいるか見当はついていないのかね?」
「分かりません。しかし魔法省がもう間もなく突き止めるでしょう」
「さて、どうかね」
オババの発言に対し、老婆は自分の顎を撫でながらまた大声をあげた。
「あの子が見つかりたくないのなら、まず見つけることは無理さね!! 私にはわかる、あれほどの杖つかいは、それまで見たことのないものだった。彼の『
驚いた。
この老婆、いや魔女はダンブルドア先生よりもさらに高齢らしい。そして杖の動きも見られるということは、それほどに厳しい評価基準と考えていいだろう。
と、その老婆の視線がこちらに向いた気がした。いや、老婆だけではない、何人かの老いた魔女や魔法使いが、オババに悟られないぐらい自然な動きで、私たちのほうを見た。何人かは少し笑みを浮かべている。
……Oh バレテーラ。
「それに、今年は一年越しに、中々に面白い生徒がいるという話じゃ。一昨年の双子のウィーズリーも、試験に不真面目じゃったが、アレはアレで面白かったがの」
「風の噂では、今年はあのアゾット剣を使う生徒がいるのだとか。是非とも試験を受け持ちたいものじゃ」
「ええ……まぁ……」
アゾット剣や双子の件が出てきた時、オババの顔が引き攣ったのは見逃さなかった。まぁこの二つのことはオババにはトラウマ事案だろう。
「職員室にご案内いたします。長旅でしたから、お茶などいかがかと」
オババはそう言って一団を案内し、階段を上っていった。結局オババは最後まで気づかなかったけど、熟練の魔法使いの恐ろしさを知った。魔法を使わない、呼吸による気配遮断なのに、正確に私たちの位置を把握してるのだもの。最後去る時なんて私たちだけのわかるように折った紙を落していった。それに書いてあった文章で危うく叫びそうになり、我慢したことを褒めてほしい。
『試験は期待しとるよ、若い魔法使いさんたち。
P.S 次は魔法も一緒に使うと、もっと上手く隠れられる。精進するといい。』
◆
時間割の指定通りに大広間に再び戻ってくると、スネイプ先生の記憶で見たように中が改装されていた。指示された場所で待っていると、試験官だろう魔法使いの合図で机上の紙を表に返した。まずは呪文学、出だしは浮遊呪文に関する問題で、呪文と杖の振り方についての記述。そういえばこの時シロウは変身術も意図せずかけていたな。
その後の問題も難なく記述を終え、合図を以って試験は終わった。この調子なら筆記は大丈夫だろう。そう考えながら昼食を摂り、実技に臨む。実技試験も左程難しいわけでもなく、大きなミスもないまま試験は終わった。シロウは私の隣で実技をやっていたけど、やはりというべきか、どうやっても色は鈍色に変化していた。変化が色だけになっているのが救いだろうなぁ。
その日の試験が終わっても、私たちは次の日の準備をしていた。課目は昼と朝に『防衛術』ち『薬草学』の筆記試験があり、午後はその実技。そして夜に『天文学』の実技試験と、中々に詰め込まれたプログラムだ。休憩できるとすれば、食事時間と『天文学』の試験前だけだろう。
そんなこと考えていたらろくに眠れず、食事中もハネジローをモフりながら、ひたすらウトウトとしていた。そんな中迎えた実技試験。正直『薬草学』が最初で良かったと思っている。ちょっと植物の毒針が掠ったことによって、一気に眠気を覚ますことで来た。毒は勿論、奥歯に仕込んでいた解毒薬で効果をなくし、「牙付きゼラニウム」という植物も難なく対処できた。その時試験官が頷いていたので、恐らく合格点に入っているだろう。
そして『防衛術』の実技。オババも一緒に監督していたけど、まさか実技を禁止していたのに生徒たちが使えるとは思っていなかっただろう。次々と魔法を成功させる私たちに、顔を歪ませながら苦々し気な視線を送っていた。
「おー、ブラボー!!」
「いやはや、実に素晴らしかった!! ミス・ポッター試験はこれで終わりじゃ。だが……」
何やら言葉を濁すと、教授は私に近寄ってきた。
「儂の友人のティベリウス・オグデンが言っていたのじゃが、君は完璧な守護霊呪文を使えるとか。特別点は……どうかのう?」
教授の言葉に首肯で応じ、ちらりとオババを見る。脳裏にはオババがこれまでの所業に見合った罰を受けるさまを想像する。詳細な罰は思い浮かばないけど、彼女の蒼白な顔とその前に立つ黒く大きな影を思い浮かべ、杖を構える。
「『
呪文を唱えるとともに、杖先から輝く人型が飛び出し、広間の真ん中でその六枚の翼を広げた。
広間の人全員が私の守護霊に注目する。守護霊は皆の視線を気にせずに、口を開けて歌いだした。歌声と共に広がる波動は広間を軽く超え、窓から見える遠方まで広がっていく。歌い終わり、天使はゆっくりと私の許により、膝をついて手を出した。私もそれに合わせ彼女の手を握ると、天使は一つ微笑んで霞となって消えた。
暫く広間を静寂が包んでいると、トフティ教授がそのゴツゴツとした手で拍手を始めた。
「素晴らしい!! よろしい、ポッター。行ってよし!!」
教授の一声で私は退出した。広間を出る際オババのそばを通ったけど、彼女は憎々し気に私を睨みつけていた。しかし私はそれを無視し、今度こそ家を出た。さて、夜まで時間がたっぷりあるし、ハネジローと一緒にハグリッドの小屋に行こう。バックビークにも久しぶりに会いたいし。
因みにいうと、シロウは『薬草学』を難なくこなし、『防衛術』は私同様特別点で守護霊呪文をやったらしい。ただシロウの守護霊は不完全だし、何より形状が浮遊する沢山の剣と言うものなので、私とは別の意味で広間が沈黙したらしい。本人が肩を落としながらぼやいていた。
はい、ここまでです。
いや、本当に長かった。そしてここで区切るということは、察しの良い方なら次回どうなるかわかるでしょう。しかしネタバレは厳禁ですよ、禁足事項です。
それでは次回、いずれかの小説でお会いしましょう。