何とか時間が取れたので更新します。
今回はいつもと比べ、短めにしております。近いうちにまた更新すると思います。
それではどうぞごゆるりと。
新学期が始まって最初の授業、それはハグリッドの魔法生物飼育学だった。何故か新年度が始まったときにいなかったハグリッドが戻り、授業が再開された。正直O.W.L試験が近い今だと、このように数ヶ月授業が遅れることも致命的になりかねない。それに今年は例年と違い、アンブリッジの査察が入る。ハグリッドの授業は正直、危険生物を取り扱うことが多い。一昨年のヒッポグリフ然り、去年の、恐らく魔法生物を勝手に掛け合わせた「尻尾爆発スクリュート」然り。
正直私の予想だと、ハグリッドはアンブリッジの基準では停職乃至免職は確実だろう。それに彼はアンブリッジが嫌悪する半人間、巨人と人間の混血である。何がそこまで嫌悪させるかは知らないけど、それもハグリッドを排除する理由の一つになるだろう。そんなこと考えながらハグリッドに案内され、森の中のある場所に向かった。雪の少し積もるそこは、禁じられた森の中とは思えないほど開け、柔らかな日光が差し込んでいた。
「みんな揃っちょるか? んじゃこっちに寄れや。さて、この中でこの広場の中央におるもんが見えるのはおるか?」
ハグリッドの声に大多数の生徒が首をかしげる。それはそうだろう、見えていない人にはそこはただの広い空間にしか見えない。でも私とネビル、そして名前の知らないスリザリンの子が手を挙げた。
ハグリッドの指し示す場所、そこには黒いガリガリにやせ細った馬のようなものがいた。ただしあくまで
「うむ、マリーとネビルは分かるぞ。そっちの子は話さんでええ、見えるのはそれなりの理由があるんだ。」
見えるようになる、理由がある?
「今目の前にいるのはセストラルっちゅう魔法生物だ。」
ハグリッドが生き物の名前を言う。すると何人かの生徒は何かに気付いたような顔をした。隣にいたハーマイオニーも例外ではない。
「このセストラルはな、死を見た者だけが視認できる生き物だ。詳しい条件は知られてはおらんが、それが死であると認識出来るものを見るか経験することが最低条件であると考えられとる。」
「こいつらは危険生物に指定されておるが、本当はそうじゃない。こいつらはこちらから危害を加えない限り襲ったりせん。それに乗り手と認められれば、乗り手が望む場所まで高速、且つ安定した乗り心地で送り届けてくれる。セストラルが不吉や危険と言われるのは、見える条件と好物が生肉であること、そして血の匂いに敏感だからだ」
珍しく大真面目にセストラルについて説明する。まぁ一昨年や去年のようなことがあったから、多少なりとも思うことがあったのだろう。アンブリッジでも粗探しして文句つけるレベルの授業ではある。下手に失敗したりしない限り、授業の進め方に文句を付けられることはないだろう。
……普通ならば。
ハグリッドにとっては最悪なことに、審査しているのはアンブリッジ。授業が終わった後シロウ直伝の追跡術でアンブリッジを後を付けたところ、アンブリッジが香水のようなもので、ハグリッドの家の玄関にバツを付けるのが見えた。この様子だと、彼が免職になるのも時間の問題だろう。
「ハグリッド、いる?」
「ん? おう、マリーか!! それにロンとハーマイオニーもおるな、丁度いい」
丁度いいとな。何やら彼も私たちに用があったらしい。でもハグリッドの顔を見る限り、どうやら表立って言える様な内容じゃないらしい。ならば何処にあるかわからない耳を心配するなら、早く行動を起こしたほうがいいだろう。
「ハグリッドも話があるみたいだし、早く人気のないところに行こう。幸い私たち次の授業はないから、移動しながら話そうよ」
「ここにシロウの
「本当、シロウの世界の術式は細かいわよね。私たちの魔法でやろうとすれば、幾つ詠唱を重ねないといけないのかしら」
「本当じゃな、まぁそれは置いといてだ」
森の中を歩きながら、私たちはハグリッドの話を聞いた。どうやら夏季休暇から今まで、ダンブルドア先生の任務で巨人の許に赴いていたらしい。ヴォルデモートたちが仲間に引き込む前に反乱側に置こうとしたらしいけど、実際は手遅れだったらしい。以前から良くしていた巨人の首領は下剋上によって死亡、今のトップはヴォルデモートよりのものらしい。
じゃあさっさと戻ってくればという話だが、そうもいかなかったみたい。その巨人の一団の中に、ハグリッドの異父弟がいたそうだ。ただその弟、純粋な巨人ではあるのだけど、通常よりも小柄らしく、一団のなかでいじめられていたらしい。巨人の社会で非力は悪なようで、実の母親も弟に構わず、別の夫との間に
そんな状況を黙ってみていられるほど、ハグリッドは冷徹な人間ではなかった。弟を何とか説得して一団から連れ出し、この禁じられた森に保護しているそうだ。そんなことを話しながら歩いていると、授業の時とはまた別の開けた場所に出た。そこには全長5メートルほどの大きな人型が横たわり、鼾をかきながら寝ていた。
「ハグリッド……もしかして」
「ああそうだ。こいつが俺の弟、グロウプだ」
ハグリッドが名前を言った瞬間、巨大な人型はゆっくりとした動きで身を起こし、こちらに顔を向けた。
「ん? シロウ、何をしているのじゃ?」
「ああ、ダンブルドア。久しぶりに、と言っても二十年以上時間が経っているが、これを嗜もうとね。ここ、天文台が一番いい場所だからな」
「ほう、葉巻か。しかし二十年以上前とな?」
「息子、第一子がイリヤの腹に宿った際に辞めたからな。元々あまり吸わないが、この場なら多少な。一本いるか?」
「ほう、バニラフレーバーかの。では一つ」
「……奴が感づき始めている。あんたを追い出した後、免職した教員を学外に追い出すだろう」
「心配いらん。既にシビルの手配は済み、ハグリッドの潜伏先も森に用意しとる。ここの森では、ケンタウルス以外に彼以上に森に詳しいのはおるまいて」
「なら、一先ずはいいか。それと、近々あいつらが何かやるかもしれん」
「よいよい、今年はそういったものが必要じゃからな」