ゴルゴナの大冒険   作:ビール中毒プリン体ン

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ダイの大冒険の世界はドラクエ1~3のモンスターが地上世界。
4以降は魔界のモンスターなので、
ダークドリアードとかりゅうせんしとかが出たって多分大丈夫なのです。多分。


魔界樹の誕生と冥竜王の挨拶

「それが例の期限までに、おまえが用意した成果か?」

 

玉座に腰掛けながら、大魔王は冥王から差し出された植物の苗木を眺めている。

差し出す冥王の横には、

古代ムー文字が刺繍された装束で身を包んだキアーラが片膝を突いていた。

 

「はっ………世界樹のエキスと魔界深部から採取した魔晶石……

 その2つと魔界のモンスター・ダークドリアードを融合させ、

 それに進化の秘宝の力を照射したものでございます……」

 

どす黒い葉には所々パープルの筋が入っていて、

まだ小さな幹にはダークドリアードの面影があり、蛍光色に近い不気味な緑。

そして苗木全体からはどこか禍々しいものが感じられる。

 

「これぞ……我らが研究の成果……。

 苗木の葉は、まだ小さいながらも

 世界樹の葉と極めて酷似した成分であり、充分に代用として堪えられるもの。

 我らの魔界に咲く新たなる世界樹でございます………」

 

ゴルゴナの左右2本の腕、六本の爪によって苗木が抱えられていた。

その苗木を見る大魔王の瞳は満足気である。

 

「ふむ……余の予想よりも遥かに早いな。

 だが、その苗木からは確かに強力なものを感じる……。

 ゴルゴナよ……苗木はどれ程で使い物になるのだ?」

 

「100年もあれば、十分な量の葉がとれるほどに成長するでしょう。

 ぐぶぶぶ………その時こそ、不老不死のゴーレムの量産が可能です」

 

ゴルゴナの言を聞くと、

バーンは双眸を閉じ口角をやや上げてるとククク、と笑い出す。

 

「実に素晴らしい………。

 おまえが語った世界樹が、

 我が魔界の不毛の大地に芽吹く時が僅か100年後にやってくるとはな。

 ふっ、はっはっはっはっ………………魔界に芽吹く大樹、か。

 魔界樹と呼んだほうが相応しかろうな…………良い気分だ」

 

バーンは豊かな髭を撫でながら、しばし沈思して

 

「………おまえと、その女…キアーラに、何か褒美をやらねばなるまい。

 望みのものをとらせよう。 言ってみるがいい」

 

悪童染みた笑みを浮かべる。

魔界の神とまで言われる大魔王が”望みのものを”と言っているのだから、

まさしく何でも願いが叶うと思って差し支えないだろう。

 

「ぐぶぶぶぶ………我が望みは唯一つ。

 バーン様とともに永遠に全世界を支配すること………。

 天界を滅ぼしたその時に褒美を賜りたく…………グブブブブブ」

 

そのゴルゴナの言葉を受け取って、

大魔王は鼻先であしらうように素気ない素振りだが、

バーンの眼に篭められた感情は冷淡なものではない。

聞く人によってはゴルゴナの発言は、

迂遠なヨイショをしゴマをする太鼓持ち……と思われなくもないが、

バーンと2人の大幹部は知っている。

冥王ゴルゴナは、

心底から”全世界の永久支配”を望んでいる欲深き大蜘蛛だ…ということを。

そして彼は、その望みを叶えるためには大魔王バーンに尽くすのが一番効率が良い、

ということに気付けるだけの知恵もある、ということすらバーンは理解している。

完全なる利害の一致。

そして決して埋まらぬ実力差がある。

だからこそ冥王ゴルゴナは絶対に自分を裏切らぬと、大魔王は知っていた。

 

「くく……それもよかろう。

 では、キアーラよ………。

 人の身でありながら良くゴルゴナを補佐した……褒めてつかわそう。

 何なりと願いを叶えてやろう………申してみよ」

 

「はい………。 では遠慮無く。

 私の望みは永遠の若さ………永遠の美しさ。

 幸いなことに、美貌は生まれ持ったものがありますので

 バーン様は永遠の若さをくださるだけで結構です。

 ゴルゴナ様のエキスも魔界樹も、どちらも勝手に使うわけにはいかなくて困ってましたの。

 あと、オマケに2歳ぐらい若返らせて下さると嬉しいですわ。

 研究してる間にそれぐらい老けてしまったので」

 

この場で唯一の人間であり女であるキアーラ。

ズバズバと欲望全開で嘆願する。

余りにも物怖じしないその態度に、大魔王の左右に立つ2人も一瞬呆ける。

 

「………君、スゴイね。 何ともストレートに言うんだなァ…。

 さすがはゴルゴナくんのパートナーだ………。

 ムー人って皆こんななのかい?」

 

キルバーンが呆れる。

ミストバーンも、沈黙を保ちながらもどことなくキルと似た空気であった。

 

「………いや、こやつはかつて太陽王ラ・ムーに糾弾されている最中にも、

 一人平然と笑顔を保っていた筋金入り………無礼はご容赦願いたい………」

 

黒衣の冥王も、やや嘆息している。

神を冒涜する研究に全く悪びれず邁進し、

しかも現人神となった異魔神とも相対したこともあるキアーラ。

彼女は神…あるいはそれに類するものに”慣れていた”といえる。

 

「フッ………よいよい。

 瑣末なことよ………永遠の若さ、か。 良き願いだ。

 人程度を不老にするのならば容易い」

 

バーンがそう言った瞬間、

大魔王の額の眼………鬼眼から一条の閃光が放たれキアーラの胸を貫く。

瞬間的に体を貫いた熱と衝撃に、キアーラは短く呻きながら体制を崩し突っ伏した。

しかしすぐに立ち直ると、

 

「………あぁ……なんだか力が満ちるような……気がします。

 今ので若返って、しかも不老ですか?

 ゴルゴナ様どうです? 私若返ってますか?」

 

己の顔をぺたぺた触り確認に移行する。

ゴルゴナは、

 

「わからぬ。 2、3年如きどうでもよかろう………誰が見ても差など気付かん」

 

改めてため息を付いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔界樹の苗木を、バーン領内の比較的豊かな土壌に植えてから約10年。

豊か…とはいっても所詮は魔界。

目くそ鼻くそのレベルで、地上の豊かさに比べれば”不毛の大地”の領域を出ない。

魔界樹に万が一が起きぬように、キアーラによる月一回の視察と、

バーンが招集した魔界樹守備軍まで常設されるという念の入れようである。

だが、大魔王のその入れ込みっぷりに、

ついつい食指が動いてしまうものがこの魔界にはまだ一人…いや一匹いる。

魔界最強の巨竜にて最後の知恵ある竜・冥竜王ヴェルザー。

協定を結び、その証としてキルバーンも派遣して友好を示している彼だが、

突然に麾下のモンスター部隊をけしかけてきた。

『大魔王バーンが不老不死の大樹を育てようとしている』という情報を

どこからか掴んだ冥竜王は(間違いなくキルバーンが出処であろう)

それが本当かどうかを調べたかった。

そして隙あらば奪いたかった。

りゅうせんしとドラゴニットの混成軍団。 その数およそ400。

ヴェルザーの勢力から考えれば全く本気ではない。

つまり、調べたいとか奪いとか以前に、ただ”茶々を入れたい”のであった。

言ってみれば魔界流の挨拶である。

「魔界樹ってのを育てているんだって? どれ、ちょっと見せてくれないか」程度の挨拶。

バーンとしてみても慣れたものだ。 こんなことを何百年とヴェルザーと繰り返してきた。

 

「この程度の小競り合いで協定は揺るがん……。

 …………しかし、余の魔界樹に手を出してきたことは許せん。

 ヴェルザーめには少々お灸を据えてやる必要があるな……」

 

慣れているが、今回は少々お冠。

 

(かと言って……ミストを出すほどでもない。

 当然キルバーンは使えん………)

 

との判断から自然、冥王にお鉢が回ってきた。

 

「魔界樹に傷がつかなければ何をしてもよい………。

 ゴルゴナよ……ヴェルザーが二度と下らぬことをせぬように、

 その者らに……………地獄を見せよ――――」

 

冷たく、老いたる大魔王は言い放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

知恵ある純粋なドラゴンは、正真正銘ヴェルザーが最後であるが、

”混ざった”ドラゴンには一定の知性は、まだある。 しかし純粋種に比べればその分力も劣るが、

それでもこうして隊を率いるのには重宝している。

 

「グギャギャ! 見えたぞ! あれがマカイジュとやらを守っているバーンの軍勢か!

 我らドラゴン族は魔界一の猛者の群れゾ! 者共蹴散らせェーー!!」

 

先頭を飛ぶりゅうせんしの掛け声に合わせて、竜族の群れが猛り、突撃を開始するが

 

「おいチョット待て! なんだあれ! あの雲おかしくないか?」

 

別のりゅうせんしが指をさすと、そこには不気味な雷雲が広がっていた。

魔界の住人から見ても、明らかに邪悪で恐ろしげなその暗黒の雲。

今の今まで猛っていた竜の群れがピタリと止まってしまう。

 

「こ、こっちに来るぞ!」

 

「雲の上に………ま、魔族…なのか?」

 

瘴気纏う暗黒の雷雲の上に座す黒衣の者。

誰が見ても普通では無いと分かる。

栄光あるヴェルザーの一族……

ヴェルザーに属する者として抱いてはならぬ感情が彼らを蝕んでいく。

怯えと恐怖。

 

「ぐぶぶぶ…………我が名は冥王ゴルゴナ。

 冥界を司る死の支配者……………お見知り置きを…そして……」

 

漆黒のローブから異形の右腕が突き出されると、

その瞬間、ヴェルザー一族のモンスターらの眼下の大地が、ごっそりと抉れ浮かび上がる。

 

「なんだ!? 何の呪文だ!」

 

「散れっ! 散れぇー!」

 

りゅうせんし達は、即座に”浮かぶ大岩が次に何をするか”を理解できて叫んだ。

しかし既に、群れを包むように岩石のベールは完成し、

 

「死ぬがよい」

 

冥王の宣告とともに、三本の指がグッと握られる。

次の瞬間には、群れが存在した空間は轟音とともに巨塊で埋め尽くされて、

岩々の隙間から僅かに血肉が覗く。

瞬間的に大多数のドラゴン族が圧死すると、

 

「ひ、ヒィィィ~~~!! なんなんだコイツ! た、退却しろー!」

 

「ギギギギ! グガァァァ!!」

 

残されたりゅうせんしとドラゴニット達は、矢も盾もたまらず逃げ出す。

しかし、

 

「ぐぶぶぶ……どこに逃げる、下郎。

 貴様らが行く着く場所はヴェルザーのもとではないぞ……?」

 

嘲笑うゴルゴナが、今度は左腕を冥き天へ掲げ

 

「我召喚す! 天に燃ゆる金蠍宮(スコーピオン)の火の心臓よ、我が従僕にかりそめの命を与えよ!」

 

呪言を唱えると、先ほどの岩石群の隙間……

圧潰したモンスター達が、その狭間からぐじゅる、と這い出てき…

 

「や…めろ……やめてくれぇ………いた、い……」

 

「死なせてくれ………た、た、す…け、て…」

 

「グ、ガァァァァ……! アゴゴゴギギィィ…!」

 

見るも悍ましいひしゃげた肉体を引きずりながら次々に甦りだした。

 

「殺せ…! 貴様らが安息を得るためには我が命に従うしかないのだ………ぐぶぶぶ」

 

必死に逃げるりゅうせんしが振り返って見た光景は、

崩れる肉体の同胞が、同胞のはらわたを食いちぎり、

そして飛び散った臓物から更なる化け物が生まれる地獄絵図。

そしてそれを眺めながら、嘲笑う冥王であった。

 

「あ、悪魔………!」

 

その言葉を最期に、りゅうせんしは数分前まで仲間だったモノに首をはねられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日、ヴェルザーの領土に400体のアンデッドが攻め寄せてきた。

「バーンの意趣返しか」と部下の竜達に迎撃を命じたヴェルザーであったが、

簡単に片付くと踏んでいた予想はあっさりと裏切られる。

切っても潰してもアンデッドどもの進撃は止まらず、

しかもその切り口からはどんどんと異種の腐敗モンスターが発生し、

混乱はとどまることを知らなかった。

部下からの報告に、とうとう冥竜王その人が出陣するはめになり、オマケに

 

「こ、こやつらは……!!」

 

400体のアンデッドは、全員己の部下の成れの果てと判明した。

さすがにヴェルザーのブレスには敵わず全ての骸は灰塵に帰したが、

それ以後、ヴェルザーはバーン領への”ちょっかい”を控えるようになった。

この小規模ではあったが衝撃的だったこの戦により、

『大魔王のもとに冥王あり』とゴルゴナはその名が広く知られるようになる。

 


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