「ここは……どこ?」
知らない天井――というよりも知らない場所だった。
外は騒がしい。
こんなに騒がしいのは綿流しの時くらいのものだ。
「いやあ梨花ちゃん。ついに初ライブだね! 君に、この961プロのアイドルにふさわしい舞台を用意した! 頑張ってくれたまえ」
「…………」
知らない天井の次は知らない男が現れた。
961プロってなに? 私がアイドルってどういうこと? それにこの男、誰よ?
「おやおやどうしたんだい無言で。もしかして緊張しているのかなぁ? 駄目だなぁ! そんなことでは到底、我が961プロのアイドルとしては――」
なにこの人。テンションが変だし、なんかイラッとするわ。
何とも言えないこのイライラ感はいったい何?
「……誰、なのですか?」
「んん? 今、この私のことを、誰などと言わなかったかね?」
「……言いましたですが」
何なの反応といい喋り方といい何かイラッと来るわ。
「はーはっはっ! 面白い冗談だ。だが私は君をそっち方面の、糞雑魚弱小アイドル事務所の……あのッ!765プロのような売り出し方はッ!しないッッ!そのことを肝に銘じておくように! では君の初ライブ、楽しみにしているよ」
「あ、ちょっと……」
なんだかよく分からないけど怒らせてしまったらしい。
765プロというのがどういう事務所か知らないけど、あの男は961プロとかいうところの人間らしいあいつは765プロというのを嫌ってるらしい。
嫌ってるって言うか憎んでるって感じがしたけれど。
「梨花ぁ~準備は出来たのですか?」
「は、羽入! いったいこれはどういうこと!? 961プロとかこの場所とか私がアイドルって――」
「残念ながら今は説明してる暇はないのです! とにかく今は単独ファーストライブを成功させることだけを考えるのです!」
「はあ!? ファーストライブって何の話――ってなにこの格好!?」
さっきの男が出ていったかと思えばやたら可愛いアイドルみたいな衣装を着た羽入が入ってきて訳の分からないことを口走る。
私の言葉に答えることなく羽入はライブがどうのと言いながら腕を引っ張ってくる。
そこでふと自分の姿を映した鏡を見て私は驚く。
「今頃気付いたのですか? 今の梨花、とっても可愛いのですよ!」
「ばか、今はそんなこと聞いてな――」
「さっ、今の可愛い梨花のままでステージに上がるのです!」
「ちょ、羽入! 私の話を聞きなさいよ!」
結局、羽入に引っ張られるままライブがあるステージに舞台袖にまで連れて来られてしまった。
「おっ。やっと来ましたね? 出番、もうすぐですよ!」
「良かった~梨花ちゃん、間に合ったんだね。レナ、梨花ちゃんが来ないんじゃないかって心配してたんだよ?」
「詩音にレナ……どうして、」
そこには何故か詩音とレナがいた。
二人はいつもの私服だ。
私と羽入のようなアイドル衣装ではなかった。
「そんなことより開演ですわ! 梨花はさっさと舞台に上がってくださいましっ」
「わっ! さ、沙都子……?」
沙都子の声と同時に背中を思いっきり背中を押された。
そして舞台の幕が上がった。