中学生が幻想入り?!   作:銀の鰹節

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前回のあらすじ
演奏している七人と出会う
 ↓
突如、隊長(麟)が現れて一気にピンチへ陥る…!!(今ココ!)



#112 覚醒

『ヨウ、久シブリだナ…チカラヲ、貸シてヤロウカ?マサル…』

 

辺りにまるで全てを凍らせるような冷たく、鋭い声が響く。

 

『…答エレナイ、カ…。マァ、コノママダッタラお前ハ死ヌ。ソレハサスガニ困ルカラ、勝手ニヤラセテモラウゾ…』

 

 

 

 

 

麟「さて…快進撃の始まりだ!!こんな世界なんぞ俺が求めている物ではない!!」

 

ミスティア「こ、こっちに近づいてくる?!」

 

雷鼓「…早く逃げなさい。私が惹き付けるから」バッ

 

弁々「ら、雷鼓?!」

 

雷鼓は麟に一直線で走っていく。

 

麟「…時間稼ぎをするつもりか?止めとけ、一瞬も持たんぞ?」ブワァ

 

雷鼓「ッ?!(避けれない、死ぬ――――)」

 

黒いモヤが大きな刃となり、目にも留まらぬ速さで雷鼓を真っ二つにしようと突き進む。雷鼓も死を覚悟し目を閉じた時、刀と刀がぶつかり合う音が響く。

 

 

『ギィンッ!!』

 

 

麟・雷鼓「?!」

 

麟から放たれた黒い刃は、似たような黒い刃に受け止められていた。

 

麟「な、何だ?!私の一撃を…受け止めた、だと…?!」

 

八橋「何…?優から、アイツと似たようなモヤが…」

 

優「…」ブワァ

 

麟「…頭半分を潰したって言うのにまだ生きているのか?生命力は妖怪並みだな…まぁいい。跡形も残さずに消してやるよぉ!!」ブワアァ

 

麟から放たれたモヤは優を包み込む。どうやら優を高速で分解させているようだ。だが、麟の顔に曇りがでる。

 

麟「何故だ…何故分解されない!?――ッ?!」

 

 

『バァンッ!!!』

 

 

優を包み込んでいたモヤが弾け飛び、消滅する。そこには左の頭が潰れた優が立っていた。

 

優?「クカカカ…トンデモナイ奴ガ現レタナァ! 力 ガ俺以上カァ?!ダトシタラドウシヨウカ…」ググッ

 

麟「…一体誰だ?先程と随分と変わったじゃあないか…!!」

 

狂気「…俺は狂気、つまり俺も優って事だ。…喋り方はこんな感じか、大分スムーズになった。っとと、まずは治さないとな…」

 

麟「成程、自分のオーラを具現化させて損傷した部分を復元する方法か。悪くはないが…俺がそれを許すわけなかろう!!」ブワァ

 

狂気「ッ?!」バッ

 

狂気が顔にオーラを纏おうとした時、麟が全方位から攻撃を仕掛ける。

 

麟「そらそらそらそらぁ!!何時まで避けていれれるんだぁ?!」

 

狂気「何て言う出鱈目な強さ…!!(これは…予想以上にヤバい?!)」ガギギギギンッ

 

麟は狂気に決定打を決める事は出来なくとも、どんどん体力を削っていった。そんな時、麟に絶好のチャンスがやって来た。

 

狂気「何っ?!」バリンッ

 

何と、狂気のオーラが割れたのだった。

 

麟「そこだぁ!!」ブワアァ

 

狂気「ぐああっ?!!」ズバァンッ

 

麟はすかさず刃を放つ。すると狂気の叫び声と共に体は2つに分かれる。

 

狂気「ゴホッ…!?」ドササッ

 

麟「ハァ…ハァ…!!時間かけさせやがって…。これで最後だ…」ブワァ

 

麟は狂気に近づき、力を溜め始める。だが、その中で狂気はある決心を決める。

 

狂気「(まだ体が成っていない。だが…ここで死んでしまうなら、やってしまった方がまだ希望がある!!行くぞ…優)能力…覚醒!!!」ピキッ

 

狂気がそう叫んだ時、優の体から霊力が溢れ出る。同時に煙も爆発するかのように、飛び出してくる。

 

麟「な、何だッ?!(急に霊圧が上がった…?!まだこんな力をぉぉ?!!)」

 

煙が晴れると、何の変化も無い真っ二つにされた優の体があった。

 

麟「な、何だ…何も変わっていないじゃあないか…」

 

狂気「変わっていないな…今は。俺が覚醒させたのは能力、『分裂と分身を操る程度の能力』だ」

 

麟「覚醒…?能力…?何を言っているんだ?最後の悪あがきか?フッ、滑稽だな」

 

狂気「そりゃそうだ…まだ発動したばかりだからな。でも…発動した時点で貴様に勝てる確率が上がったぞ!!」

 

麟「…どうやって俺に勝つって?えぇ??潔く負けを認めて死ねや」ヒュッ

 

狂気「残念だがそれは出来ないな…何故なら――」

 

優「俺が目覚めたからだ!!誘え、神睡」パキキキ

 

麟「ぐうっ?!」ドグッ

 

優の体からもう一本の腕が出てきて、刃がない刀で切りつけられる。すると、優の体からもう一人優が出てきた。

 

麟「アイツが通常時の奴か…!!」ググッ

 

狂気「フフフ…能力覚醒してお前も目覚めるとはな」

 

優「そんな事はどうでもいいさ。どうしてお前が居る?!能力の覚醒って何だ?!」

 

狂気「おいおい…そんな一気に質問するなよ。今伝えた方がいい内容を伝える。能力の覚醒は言った通り、能力が覚醒し本来の力を発揮させる物だ。本来ならある程度年月や条件が必要だが、状況が状況で止むを得ず無理矢理覚醒させた」

 

優「なっ…?!くっ、確かにあのままだったら死んじまうから仕方なかったか…!!覚醒したからには絶対に勝つぞ!」

 

狂気「当り前だ。おっ?どうやら覚醒させた能力の効果が今来たぞ?」ズズズ

 

すると顔半分がどんどん元に戻っていく。5秒たたない内に完全回復していた。

 

優「な、何だコレ?!元に戻った…」

 

狂気「これが覚醒した能力の力…『細胞分裂』!!これなら覚醒時間が切れるまでいくら攻撃を受けても直ぐに元通りだ」

 

優「覚醒が切れた後が怖いなぁ…一体どれほどの反動が来るのだろう。あっ、右目の干渉無効機能をつけておかないと」ブゥン

 

優は機能を起動させる。

 

麟「く、ううぅぅ…!!!(クソッ!!何でこう何度も立ち上がる?!こうなったらこの辺りごと『無』へと変えてやる!!)」ゴゴゴゴ

 

狂気「…(あの力…この場所ごと消滅させる気か?!付喪神達はまだ逃げれていねぇ…仕方ねぇ)おい、俺と斬魄刀を融合させろ」

 

優「そ、そんな事が出来るのか?!」

 

狂気「いいからさっさとしろ!!」ズズズ

 

すると狂気は勢いよく神睡の中へ入っていった。すると刀が黒く染まる。

 

神睡〔ぬわぁ?!お主、何で俺の所に?!〕

 

狂気〔うるせぇ!!いいからお前は俺に協力しやがれ、オルァアッ!!!〕

 

神睡〔ブッヘェッ?!!お、お前今俺を殴ったな?!まだ主にも殴られた事がないんだぞ?!〕

 

狂気〔俺も主の内だっつうの!!〕

 

優「うわぁ…何か刀の中で暴れてる…」カタタタ

 

狂気〔このぉ…!!ッ?!おい、避けろ!!〕

 

優「ん?うおっ?!」バッ

 

 

『ズバンッ!!』

 

 

優が斬魄刀に気を取られている内に、地面からモヤが具現化された大きな刃が突き出る。狂気が声を掛けてくれたお蔭で何とか間一髪で避ける。

 

麟「ふ、フハハ…フハハハハ!!!!溜まったぞぉ…優ぅ。今度こそ、今度こそ消えてもらう!!」ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

 

優「ッ!!(何て濃い力だ…いくら細胞分裂が出来るからと言って、分裂できる細胞が無くなったら終わりじゃあないかッ…!!)」

 

狂気〔おい、月牙天衝『無月』をやれ!!〕

 

優「な、できねぇよ?!模擬で大体の技をやっちゃっているけどさすがにできる技とできない技があるって!!」

 

神睡〔そうだそうだ!それでは俺までも消えてしまうではないのか?!〕

 

狂気〔大丈夫だ、『模擬』だからよ。俺が何のために斬魄刀に入ったと思う?〕

 

優「まさかお前…」

 

狂気〔俺が持っている全ての力を斬撃へ注ぎ込む。勘違いするなよ?俺自体が斬撃になる訳じゃあない、俺の持っている力を斬撃へ注ぎ込むだけだ。俺は消えはしない〕

 

優「し、神睡の方はいいのか?!耐えきれずに壊れたりでもしたら…」

 

神睡〔な、何ぃっ?!おい、俺には眠らせる能力と言うのがある!!俺の力だったら無月の反動を眠らせることだって可能だ!だから早くしろ、アイツがもうエネルギー玉を放つ寸前だぞ?!〕

 

優「…わかった、もう放っても大丈夫だな?!」

 

神睡・狂気〔ああ!!〕

 

麟「この土地もろとも、ゴミにしてやる!!死ねぇぇぇーーー!!!」ビ ュ ン

 

優「…くらいな、これがお前を倒す技だ。月牙天衝―――」ズズズ

 

神睡から黒い霊力が出る。優とエネルギー玉が接触しそうになった直前、神睡を振り下ろす。

 

優「無月!!」ザァァァ

 

神睡から放たれた斬撃は、一瞬で地を、岩を、木を、エネルギー玉を、麟を切った。しかしそれでも斬撃は止まらず、その後もキロ単位で伸び続けた。

 

麟「ガッ?!!」ザシュッ

 

狂気(まだだ…まだいける!!)

 

神睡〔?!な、何をしている?!〕

 

優「神睡が勝手に…?!」ブンッ

 

 

『ザァァンッ!!!!』

 

 

麟「ウッ?!」ザンッ

 

これで終わりかと思ったら、神睡が勝手に動いて2発目の無月が放たれる。

 

優「お、おいッ?!どういうつもりだ、神睡、狂気?!」

 

狂気〔アイツ…オーラを具現化して体を復元させ、まだ生き延びていやがる…!!〕

 

麟「ぐ、うぅ…?!(マズイ?!マズイ、マズイ、マズイ、マズイッッ!!?こうなったらこれを使うしかないッ!?)時よ止まれ、『世界(ザ・ワールド)』!!」バッ

 

麟がそう言い放った時、世界が白黒へと変わり、風も、鳥も、太陽も、全てが止まった。ただ、1人を除いて。

 

優「…効かないな、時止めは」ギンッ

 

麟「な、何だとぉぉ?!貴様、最初は止まっていたじゃないか?!」

 

優「最初とは違うんだよ…残念だが、俺の勝ちだ」

 

狂気〔もうラスト1発しか撃てないぞ…しっかりと決めろ!〕

 

優「…あいつにはもう避けれないさ。月牙天衝―――」

 

麟「アアアァァァ?!!これでもくらいやがれぇぇぇ!!(デスビーム!!!)」ピュンッ

 

優「無月!!!」ザンッ

 

無月は意とも簡単にデスビームを打消し、そのまま大地ごと麟を縦に切り裂いた。

 

麟「ヒグゥァァッ?!!」

 

優「…」ザッザッザ

 

真っ二つになった麟へ優が向かう。そして麟のすぐ前まで来た時、口を開いた。

 

優「ごめんなさい…モヤの存在に気付けなくて…」

 

麟(?!)

 

優「本来なら、命蓮寺にてその存在に気付いていれば貴方を助けれたかもしれない…!!」

 

麟(な、何を…言っているんだ…?!やめろ、これ以上言うな…これ以上、俺に情けをかけないでくれぇ…!!)

 

優「ですが…モヤは貴方の魂と殆ど融合してしまい、逆刃刀では対応できなくなってしまいました。モヤを弾き出そうとすると魂も一緒に…つまり既に『死』しかなかったんです…」

 

麟(やめろ、言うな!!聞きたくない…!!)

 

優「俺が…俺が早く気付けなくて、助けれなくて…本当に、申し訳ございませんでしたっ!!!」バッ

 

麟(涙…?クソッ…最悪だ…お前を、死んでも恨んでやる…)

 

優は頭を下げた時、涙を流していた。その涙には、後悔や責任、悲しみが込められていた。優は、自分の所為で助けれなかった事を、麟を殺してしまう事に悔んでいたのだった。

麟の意識もだんだん薄れて、生気が失っていく。もう既に、目が見えなくなる程に死が近づいて来ていたのであった。

 

―――最悪だ、最悪だ、最悪だ…!!お前を、許さない!!…………………………

……………………………………………………………………………………………ありがとう…。

 

優「――ッ?!う、うぁ…ゔあああぁぁぁぁああぁ!!!!」ガクッ

 

麟の意識内で放った最後の言葉だけは…何故か優に届いていた。その言葉を聞いた瞬間、優はその場に蹲り、まるでダムが崩壊したかのように目から涙が溢れ出る。誰も咎める者が居ない。優は自然に涙が止まるまで流し続けた。

そしてその様子を遠くから雷鼓達が見守っていた。

 

雷鼓「優…」

 

こいし「お兄ちゃんが…泣いている…」ググッ

 

弁々「ちょっアンタ、アイツの攻撃を受けて動いていられるの?!」

 

こいし「大丈夫、あの時無意識を操って威力を極限にまで減少させたから…ゴホッ」

 

ルナサ「吐血しているじゃないか…休んで居た方がいい」スッ

 

ルナサはこいしをそっと寝かせた。

 

 

 

優「グスッ…!!(ここで泣いている場合じゃない!!こいしさんを、こいしさんを助けなきゃ…!!)」ザッザッザッ

 

優はこいし達の方へ向かう。

 

リリカ「だ、大丈夫なの、優…?」

 

メルラン「大丈夫よ!優は強いから!」

 

優「(いや、俺は弱いさ…また守れなかった…)…」スッ

 

優はしゃがみ、こいしと接触する。するとどんどんこいしの傷が治っていき、元通りなった。

 

こいし「あれ…体が治った…」

 

優「どうやら大丈夫な様ですね…ガッ?!」ドクンッ

 

急に激痛が襲いかかる。

 

 

『ドクンッ!!』

 

 

優「ゴホォッ?!!」ビチャチャッ

 

ミスティア「吐血?!しかも量が尋常じゃない、明らかに致死量を超えているわよ?!」

 

優「グッ…!?」ドサッ

 

ルナサ「お、おい?!しっかりしろ、気を保て!!」

 

狂気〔条件を満たさずに能力を覚醒するとここまでの反動が来るとは…!!まずい、俺まで意識が朦朧と…〕

 

雷鼓「早く竹林の屋敷へ!!」

 

リリカ「ここから全速力で飛行しても30分はかかるよ?!それじゃあ優が死んじゃう…!!」

 

雷鼓「じゃあ一体どうすれば…」

 

行き詰った時、覇奈がメルランに何かを渡してきた。

 

メルラン「…!!人魂さん、一体コレをどこから…」

 

覇奈「!」グイグイ

 

ルナサ「どうしたメルラン?」

 

メルラン「いや…優と一緒にいた人魂が私にこんな物を…」ポロッ

 

メルランが手に握っていた物、それは輸血する時に使う医療器具だった。

 

全員『!!!!』

 

ミスティア「そうだわ、コレを使って輸血すれば…!!」

 

雷鼓「優が助かる…!!」

 

ルナサ「で、でも待って!血液型とかはどうなんだ?!もし違ったらとんでもない事になるぞ?!」

 

??「大丈夫よ、いいから急いで輸血しなさい!!」

 

後ろから声がする。その声の主は、この状況ではとても頼れる者だった。

 

メルラン「竹林のお医者さん?!」

 

永琳「人魂が勝手に器具を持っていくと思ったらこんな事になっていたなんて…」

 

声の主は永琳だった。どうやら覇奈を追いかけて来たらしい。

 

永琳「この吐血量…もう死んでもおかしくないわ…!!全員腕をまくって寝て頂戴!」

 

その後、永琳の迅速な処置により、優は何とか意識不明の状態を保てたのであった。

 

 

 

 

 

悪「やられてしまったか…アイツは唯一、魂と融合化できた成功体なんだが…残念だ。まぁ…いいさ。まだその時ではない…!フッフッフッフ…」

 

 

 

 

 

 




この作品をご覧になってくれて有難うございます。銀の鰹節です。
今回は優君が能力で新たな事をしましたね。まぁ実際は狂気がやったのですけどね…。あ、『細胞分裂』の事ですけど、覚醒が切れたとしても、分裂して出来た細胞は存在し続ける事ができます。

そして再び皆様にご協力して頂きたいのですがよろしいでしょうか?実は読者様から『優の狂気にも名前をつけてあげたら?』という意見をいただきましたので、狂気の名前を応募させて頂きたいと思います。前回の名前決めでは選んでもらった意味が無くなってしまったのですが、今回は作って応募して頂きたいです。多数、応募が集まった場合、私が一番いいなぁと思ったものにさせて頂きます。
どうかご協力をお願い致します。

↓応募したい方はこちらに応募して頂けると有難いです。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=110897&uid=118836
(昔の意見が5件ありますが、今回とは関係ありませんのでご注意を)

それでは長々と失礼しました、今回はここまでにしたいと思います。
次回もゆっくりしていってね!

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