ハドラー子育て日記 異世界家族旅行編   作:ウジョー

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大魔王の遺産

オレは今 ジゼルをヒム達に預け魔界にいる

かつて大魔王バーンが本拠としていた建物だ

 

『・・・本当に入るのですか?』

 

「バーン様本人からのご依頼だからな

やることはあくまで掃除だけだ」

 

『それはそれでどうかと・・・』

 

「対価として拠点内のものは好きにすればよいとのことだ

大魔王の遺産 興味はないか?」

 

『ジゼルやダイのためになるのであれば・・・』

 

地上のダイ達の戦いでバーン様が戦死され

魔王軍の地上・魔界の精鋭たちも壊滅したが

魔界にはまだこの拠点を含め大魔王の息がかかったものが多く残っている

既に戦死の報は魔界全土に広がっていたが

この拠点が荒れている様子はない

そもそも肉体がない怪物は魔界に限らず珍しいものではなく

大魔王ともなればどのような姿で復活するか

わかったものではないという認識なのだ

 

『たしかに死体系や幽霊系ですめばいい方でしょうね』

 

まあ太陽として見守る存在になったらしいから

光が差さない魔界に帰ることはもうないだろうがな

留守番役の魔物どもはオレが実力を示すと

おおむね協力的になった

 

『連戦でしたがあなたには問題なかったですね』

 

当然だ 魔界の強豪といえどミストバーン級ほどではない

力が全てというバーン流が浸透していたことで

オレのもっとも得意としたやり方が効果的だった

案内されて拠点内を一通り回ったが

大魔王のたたりを恐れた魔界の住人によって

拠点の中は綺麗なものだった

荒されるどころかいつ主を迎えても

恥ずかしくない状態ということだろう

 

・・・だが予想はしていたが食料庫だけはひどいものだった

 

・・・

・・・・・・案内役に聞いたところ

大魔王含め主力が抜けたことで拠点内での食料の消費が激減

だが支配下から集まる貢物が減ることはなく

また大魔王への貢物はあくまで大魔王のものであり

留守番役のものには勝手にどうにかする考えすらなく

ただ溜め込み溢れさせ腐らせていく一方だったようだ

オレは早速食料を分類 腐敗したものは

くさった死体などのゾンビ系やじんめんじゅなどの

植物系の魔物向けに調理し その他の食材で

できるだけ多様な魔物向けの献立を考える

流石に量が多かったが多人数を相手にするのは燃えた

 

  ダダダダダダダ!!!

     ボッ  バアアアアァァァ!!!

          カッ!!!

 

調理の音が聞こえたのか魔物が集まってきた

そやつらに料理は食わせその分食料庫の掃除をさせる

食材を勝手に消費したことにうだうだぬかしたやつは

拳で黙らせ調理補助に回すと従順なものですぐにコツも掴んだ

食料庫の床が半分見えたあたりで後は任せた

こいつらはオレの配下ではないが実力を示し

対価を用意すれば仕事はこなす

 

『意外と素直ですね』

 

それが当たり前なだけだ

この調子ならオレがいなくてもこれからは問題なかろう

・・・オレは大魔王の配下が近づくことがない私室

バーンのアトリエともいえる場所に足を踏み入れた

 

『まあ玉座は掃除しても私室は勝手に入れませんよね』

 

だが掃除を自分でするとも考えられん

おそらくミストバーンあたりがやっていたのだろう

・・・

・・・・・・

ざっとみたところここは研究室のようだ

 

『なんの研究でしょうか?』

 

・・・おそらく太陽をつくろうとしていたのだろう

ラナルータやレミーラなどの呪文の資料

聖なる種火や魔法の筒などの道具といった

直接武力とは関係のないものが多い

そしてダイやバランから聞いた大魔王の真の目的

そこから考えればこれ以外にあるまい

 

・・・

・・・・・・・

のこされた資料にひととおり目を通したが

長き時を生きた魔界の神全知全能たるバーン様といえど

やはり困難を極めた研究のようだ

その研究の副産物として「カイザーフェニックス」

「凍れる時の秘法」「魔法の球」などを生み出したようだ

・・・いや それだけではない

魔界の地に天をもたらす闘い それこそが

「「天地魔闘」」大魔王バーンの生き方そのものなのだろう

 

ほう?バーン様のお力をもってしても破壊できない

一時的に力を溜め込むことができる玉もあるのか

太陽の核として期待されていたようだな

 

『ですが結局太陽を生み出すことはできず

地上の破壊にのりだしたと・・・

そして死後太陽そのものになった

・・・あなたに似てませんか?』

 

・・・たしかにオレは竜の騎士の存在を知ってからは

それを参考に力を積んだ挙句 超魔生物となって

竜の騎士に敗れた死後 竜の養育をしていると・・・

 

『まあ それはさておきこの研究はどうしますか?』

 

「これは公開するべきだ 魔界全土にな

どうやらこの研究はバーン様おひとりでやっていたようだ

だからこそのこういった副産物の成果だろうが

だからこその限界があったのだ

魔界にすべての命の源たる太陽がふりそそぐ

その為の研究 これこそ魔界の神がこの魔界に遺し

そして託すべき遺産だ」

 

オレは今回の報酬として聖なる種火の一部と白紙を一枚

5000ゴールド相当の金貨を持ち帰り

バーンのアトリエを開放 その研究の成果を

魔界に広める手はずを整えた

 

『これで魔界は変わるのでしょうか?

もしや世界のバランスを乱すきっかけになるのでは?』

 

そうかもしれん だが・・・

この魔界が我ら魔族や竜の故郷である理由が

大魔王バーンのだした結論

「「神々が地上を脆弱な人間に与え

魔族と竜を地底におしこめた」」

とはオレは思っておらん

長き時を生き強大な力を持つオレたちならば

いつの日か太陽さえ生み出すことができる

 

『神々はそこまで期待していたと・・・』

 

いや今の魔界の神が期待しているのだろう

魔界の未来をな・・・

 

オレはルーラで魔界を去り次の目的地に移動した

 

『ここは・・・あなたがパプニカ王国につくった

バルトスさんたちのお墓ですか』

 

ああ バルトスの墓はヒュンケルが先につくったものだがな

 

 星の勲章をかけた墓標

 暴魔のメダルをかけた墓標

 チェスの駒の形をした墓標・・・

 

そのちょうど真ん中で一枚の絵を描き準備を整えた

 

『はじめてのお焚き上げ入稿の準備完了ですね

これでバルトスさんたちの元へ届くはずです』

 

聖なる火が必要だからな オレやジゼルでは作れず

今まで試せなかったが いい機会だ

この絵 ジゼルを見て驚いた顔のヒュンケルとヒムは上出来だ

 

『ジゼルはもっとかわいく描けますよね?』

 

・・・こんなものだろう よし絵に点火だ

 

     聖なる種火をつかった

 

       ボッ

 

     メラメラメラ・・・・・・

 

煙が天へと昇っていく・・・

 

―――

 

火が暮れ 絵は燃え尽き 煙も完全に消えた

 

「さてこれからどうするか 折角ジゼルを預けたのだ

たまには酒場でも行くか」

 

『ジゼルを迎えに行かないのですか?!』

 

おまえの子離れとジゼルの親離れのためにも必要なことだ

 

『親離れ?! ジゼルはまだ5歳

少年竜になったばかりですよ!』

 

やれやれ

・・・む あんなところに建物はなかったはずだが?

オレは一際強い光を放つ建物に向かった

このホルキア大陸では見かけない建造物

強いて言えばヴァンプ将軍のアジトに似ているが

この匂いや空気どうやら酒場のようだ

 

「看板は・・・居酒屋 のぶ か」

 

今宵は飲みたい気分だ

オレはガラスの入ったドアを開けた

 

 




お盆らしい要素があるのでもう少し早く投稿したかったウジョーです

本当は居酒屋のぶに入ってからがメインのつもりだったのですが
いつものように膨らみすぎて一話書けてしまいました

連日の真夏日にとんでもない集中豪雨で 少しワクワクしましたが
翌日の蒸し暑さに参りました 自然の驚異はあなどれません

台風にもくれぐれもお気をつけて


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