ハドラー子育て日記 異世界家族旅行編   作:ウジョー

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時系列的には
黒太陽さん作の東方大魔王伝 -mythology of the sun--秘伝-前奏曲の翌日ぐらい
拙作では前話IFストーリー 眠れ、オレのもとで のダイが旅立つ前の出来事です



IFストーリー 世界を超えた再会 勇者ダイ復活!!の巻

 

   ―幻想郷 某所―

 

「兵どもが夢の跡、か」

 

『また ここにきましたね』

 

一面に広がる花畑の中 手入れをしていると

おぼえのある気配が隠れるようにこちらを見ているのを感じる

 

「・・・そんなところにいないでこちらに来たらどうだ ダイ」

 

この幻想郷に訪れていた オレのいた世界とは似て非なる世界のダイ

かつての大魔王バーンとの決戦後 オレが関わることなく地上へ帰還し

救ったはずの世界との摩擦で心を痛めたが幻想郷との交流

大魔王バーンとの再戦を通して笑顔を取り戻したと聞いた

 

《うん 何してるんだ ハドラー?

ここは一体?》

 

オレの言葉に素直に姿を見せ近づいてくるダイに

 

「ここはかつての戦場 そして散っていった魂を見送った場所だ

つまり 墓場だな」

 

《墓場・・・》

 

「オレも幻想郷側に立ち共に戦った

一方的に押しかけただけだがな」

 

《・・・なんで?》

 

「悪魔にも友情がある、ということだ おまえのようにな」

 

《そっか》

 

「藤原妹紅やロランから この地で起きた大戦については聞いていないか?」

 

《ああ そういえば聞いたよ 操られたもう一人のオレ?もいたんだっけ》

 

「ああ 名前も意識も奪われた状態でな

・・・・・・そのお前を取り返すためにオレは力を尽くした

お前の胸にこのヘブンズクローを突き刺し回復呪文(ホイミ)をたたきこんでな

オレだけではない お前の中で戦い続けていたバラン、聖母竜、

そしてもう一人のオレも協力し

どうにか取り戻すことに成功した」

 

『神々の思惑も超えた縁と絆の奇跡でしたね』

 

《なんか へんなかんじ》

 

ダイが自分の胸に手をあて首をかしげる

 

「【ダイ】 良い名だ

おまえの揺り籠に残っていたDの頭文字をもとに

名付け親は鬼面道士ブラス」

 

《ハドラーがなんでそんなこと知ってるの?》

 

「その鬼面道士に【ブラス】と名前を与えたのはオレだ

つまりオレはおまえの名付けの祖父と言える」

 

《え!?そうなの!?》

 

「そもそもあやつがデルムリン島にいたのは

オレがあの島で魔王軍の戦力となるモンスターを育成させるために命じたからだ

不思議に思わなかったのか?

あの狭い島に多種多様なモンスターがいたのはそういう理由だ」

 

《へー そうだったんだ

あの島で育ったけど知らなかったな

じゃあオレがじいちゃんに拾ってもらえたのはハドラーのおかげだったのか》

 

『まあ かつて赤子だったダイが人間の国を追放されたのも

ある意味魔王時代のあなたのせいでもありますが』

 

「ではそんな孫に・・・ む!?」

 

目の前の空間がゆらぎ 新たに気配があらわれる

これは合流呪文(リリルーラ)

 

『まさか この気配は!?』

 

《どうしたんだハドラー、え!?》

 

      フッ

 

《あれ ここはどこ?あ ハドラーじいちゃん

それに・・・》

 

  ()()()()()()()

 

なんとダイが二人になった だがその外見は少し違う

 

《え!?なんで オレがいるの!?あ でもオレより背が小さい!?

それにほっぺたの傷がないよ!》

 

《じいちゃん!ばあちゃん!だれこいつ!?

それにどこ ここ!?》

 

「落ち着け ダイ」

 

オレは二人のダイの頭をそれぞれ押さえつける

後からあらわれたダイ こいつは・・・

 

「お前には 留守を任せたはずだが」

 

《うん 家事が一区切りしたから おれはジゼル姉ちゃんと瞑想をしてたんだ

ふとハドラーじいちゃんがどこに行ったのかなって気になって

そしたら・・・》

 

「ここにあらわれた、と 瞑想で魔力が高まったところで

オレをイメージしたことでリリルーラが発動したのか

しかし幻想郷は異世界だ そう簡単にこれるはずが・・・」

 

『こちらのダイはもう一人の私が入ってますから

異世界の移動が可能なのでしょう』

 

「ああ そうだったな」

 

《ちょっと待ってハドラー!

えっと 状況を説明してほしいんだけど

結局なんでオレがもう一人いるんだ?》

 

前からいたダイが混乱しながらも聞いてくる

とりあえず頭の中ではダイ(大)とダイ(小)としておくか

 

「ああ 今あらわれたこいつは 例の大戦でオレ達が取り戻したダイだ

転生に近い形でな 一度卵の状態に戻し今はオレの元で生活している

今は10歳

そのときの影響か かつての記憶をかなり失っている」

 

転生のときに失ったのか

あまりの過酷な過去から未熟な体と心を守るためにバランがあえて封じたのか

ダイ自身が封じたのかはわからんがな

 

『ダイの中の私かもしれません 

・・・少なくとも私なら 封じられるものなら封じますよ』

 

過保護なやつらだ

 

『バーンと接触させて記憶がもどることを危惧して

連れてこなかったあなたも同じですが』

 

だがダイ(大)を前に記憶がもどった様子はないが

 

《うーん なんか父さんや母さんに似てる?》

 

《え そうかな?》

 

『バランが中にいるのでバランやソアラの顔はおぼえているのですね』

 

「それよりもダイ いい機会だ 今のお前の力を見せてやれ」

 

オレはダイ(小)に小さな袋を渡した

 

《何これ?》

 

《え 種?なんの?》

 

「幻想郷の里で買った花の種だ」

 

《花!?え!?ハドラーが!?》

 

《ああ そういうことか

ジゼル姉ちゃんほど うまくないけど・・・》

 

ダイ(小)が種を蒔いていく

 

《じゃ 見てて》

 

   フワ・・・・・・

 

 パワワワワ・・・・・・・

 

ダイ(小)の木竜術によって墓場が鮮やかな赤い花畑に変わった

 

《すごい・・・こんな魔法はじめて見た

なんて呪文?》

 

《木竜術の初歩だけど》

 

《木竜術って何?》

 

「竜の力を使った植物を操る術、

つまりブラスやポップなら使えないがお前なら使える術だ」

 

《じいちゃんやポップでも使えない

オレなら使える術・・・

オレの・・・竜の力で 本当に?》

 

オレはダイ(大)の手に残った種を一粒渡し ボサボサ髪の頭に手をおいた

 

   ブワ  ほわわわ・・・・

 

《あっ・・・ きれい・・・》

 

ダイ(大)の力を借りた竜術で一輪の花が咲いた

 

「その感覚をおぼえておけ

紛うことなきおまえの力だ

いずれ自由に使えるようになる 必ずな」

 

《おれの・・・力 竜の、ちから・・・》

 

大事そうに花を抱くダイ(大)

 

『ありがとうございます

私も、神々さえも竜の騎士に竜の力を戦うためのものとしか

伝えることができなかったものですから』

 

どう受け取るかはダイの勝手だ 礼を言うほどのことではない

 

《ブラス・・・じいちゃん ポップ・・・・・・》

 

『あなた! ダイ(小)の様子が・・・』

 

「なんだ?」

 

震えているダイ(小)の視線の先には・・・

 

'すげえ呪文だな・・・'

 

《あ ポップいたんだ》

 

隠れてダイを見守っていたポップが姿をあらわし

ダイ(大)も気が付いたようだ

 

「最初からずっといたぞ 気配は消していたがな

お前を心配していたのだろう」

 

'いや~ なんのことかな

俺は大先生達のシゴキからちょ~っと逃げて休んでただけだぜ'

 

「フン そういうことにしてやろう」

 

《ポップ・・・

ポップ~~~~~!!!!!》

 

'ダイ!?'

 

ダイ(小)がポップに抱きついた

 

《ポップ!!みんな!!ごめん!!

おれが ふがいないばっかりに・・・

また おまえを・・・みんなを・・・!!!

ごめんよぉぉぉーーーーーーーーーーーッ!!!》

 

ポップの胸でダイ(小)の激しい嘆きが響く

 

「記憶がもどったか 大魔王に敗れ全てを失った記憶が・・・」

 

'ダイ・・・'

 

《もう一人のオレ・・・》

 

《ポップ~~~~~~~~~~~~~!!!!》

 

ダイ(小)の体から竜闘気があふれる

 

『あなた!』

 

「・・・・・・いや」

 

オレがダイ(小)の頭に手をおく

・・・がそれだけだ

 

ポップがダイ(小)を抱き返し ダイ(大)もダイ(小)を抱きしめた

隠れて見守っていた ヒュンケルとラーハルトもすぐ隣で佇んでいた

 

 

 

 

しばらくするとダイ(小)が泣きやんだ

竜闘気も暴走することなく 笑顔にかわっていた

 

'大丈夫かダイ?'

 

゜ダイ゜

 

〔ダイ様〕

 

《・・・ありがとう ポップ ヒュンケル ラーハルト

ハドラーじいちゃん そしてもう一人のおれ・・・》

 

《・・・・・・うん》

 

   ギュ・・・

 

二人のダイが改めて抱き合う

 

 

 

しばらく抱き合った後 離れたダイ達は互いに笑いあう

二人ともどこか決意を秘めた 勇者の顔だ

 

《ねえ ハドラーじいちゃん

この花はなんて名前?》

 

ダイ(小)が 自分が咲かせた花の名前を聞いてきた

 

「彼岸花 という名だ

種が珍しく たまに幻想入りしてくるらしい

毒性があるがこうして墓場に植える花としては一般的なものと聞いた」

 

《そうなんだ うん、これからおれがやりたいことが見つかった!

じゃあ おれ 先に帰るよ!ハドラー家に!!

おれ こうしてみんなとまた会えてよかった!!

もう会うことはないだろうけど 元気でね!!さよならみんな!!

リリルーラ!!!》

 

  フッ

 

リリルーラを唱えたダイ(小)が姿を消した

 

《あっ・・・  さよなら もう一人の【おれ】・・・

オレも 会えてよかった》

 

'ハドラー あんたがさっきのダイを育ててるんだよな'

 

「そうだ ポップよ」

 

゜・・・子は親をうつす鏡だという・・・・・・

どうやら バーンとは違う意味で

とてつもない存在となったようだな   魔王様゜

 

〔そうだな できれば戦いたくない程だ〕

 

根っからの戦士である ヒュンケルとラーハルトにそう言われるとはな

 

『ずいぶんと嬉しそうですね』

 

「ふん お前たちもさっさと戻った方がいいのではないか?

今のままではやはり お前たちはまだまだアバン達には及ばん

アバン刀殺法やメドローアなど やつらの力の一端に過ぎん

オレがあえて言うようなことでもないがな」

 

'だってよ ダイ 先生の宿敵にここまで言われちゃ

特訓に気合いれないわけにはいかねえよな!'

 

《うん わかった

オレ・・・ ここでまた ハドラーにも会えてよかった》

 

'俺もな!'

 

「ククク 次に会ったときに腑抜けたざまを見せれば

今度はオレが相手をしてやろう

ヒムに見せた力程度がオレの底だとは思わんことだ」

 

オレは去っていったダイ(大)達を見送り

彼岸花が広がる墓場を改めて手入れした

 

 

 

コーセルテルに戻ったダイ(小)はこれまで以上に

心・技・体が大きくのびていった

ジゼルとの連携では ときにオレに勝つほどに・・・

記憶がもどっただけではない 何かを覚悟し

未来のために強くなろうとする断固たる意思を

過酷な道に踏み出そうとする勇気をその瞳に宿していた

 

「ダイが勇者として 旅立つ日が近づいているようだな」

 

『そんな!? 竜の騎士の使命などもうなくなったのになぜ!?』

 

「冒険心は抑えられるものではない

あいつは【ダイ】なのだからな」

 

 

とある魔界に赤、白、黄色の弔いの彼岸花の花畑が生まれる少し前のことであった

 




ダイの大冒険の家庭用ゲーム インフィニティ ストラッシュ発売日一週間をきってワクワクしているウジョーです

ちなみに彼岸花の花言葉は「情熱」「独立」「再会」「あきらめ」「悲しい思い出」「旅情」「また会う日を楽しみに」といったものがあるようです

暑さ寒さも彼岸までと言いますが 急な温度変化は体調を崩しやすいものです
お疲れのでませんように

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