ジゼルが世話になっている世界の人間の間で流行している伝染病が
さらなる猛威となっていた
オレとジゼルには感染しないのだが オレとの模擬戦の希望者が集まり過ぎることから
オレはしばらく東女道場の出入り禁止となった
『まあ仕方ないでしょう こちらの人間社会の都合ですから
とはいえ、7日に一度の楽しみの ジゼルと共にこの世界で一般公開されている
あなたのかつての戦いの記録を見る機会がなくなったのは困りましたね』
そもそもなぜこの世界でそんな物が広まっているのかわからぬが
だが 事情が変わった
[ハドラー様ーーーー♡♡♡]
バッ!! ペシッ
東女寮が見えてきたところで やってきたジゼルダイブをはたき落とした
「出迎えご苦労 ジゼルよ」
[はい!ハドラー様!
既に準備は整っています]
「よかろう ルーラ!」
ギュン!
ジゼルを小脇に抱え
―神奈川県川崎市 フロシャイム川崎支部―
ドン!!
[到着しましたね それでは呼び鈴を・・・]
ブー
[東女寮の呼び鈴の音と全然違う 面白ーい!]
〈はーい!
いらっしゃいませ ハドラーさん ジゼルちゃん〉
「世話になる ヴァンプ将軍
これは手土産だアジトの部下たちと食うがいい」
〈いえいえ 気を使わせてしまって
毎週アジトのみんなで見てますから
テレビの中と外でハドラーさんがいるなんてすごい豪華!〉
『豪華 ですか』
玄関で出迎えに来たヴァンプ将軍はこの世界の人間のようにマスクを装備していた
「この世界で流行している伝染病はお前たち怪人にも感染するのか?」
〈う~ん 人間を改造したタイプの怪人なら可能性はあると本部から通知が来てます
今のところ川崎支部では確認されていませんが
何よりも予防が大事ですから ハドラーさんとジゼルちゃんも
ここでまず消毒をしてもらえますか〉
最近この世界ではどこの建物でも行う消毒をすませ川崎支部に入ると
と て て て て て
{ハドラーさん ジゼル いらっしゃーい!}
{いらっしゃい!}
{・・・右折シマス}
{ハドラーさん ジゼル チュキ}
[ウサコッツたちだ!]
『やっぱりヴァンプさんのところのぬいぐるみ怪人とジゼルの組合せは犯罪的愛らしさですね』
{アニマルソルジャーが久しぶりに5人揃ったね
テレビ見たらレッド抹殺に行こうよ!}
[外でケンカしないように寮長に注意されてるんだけど・・・]
{大丈夫!直接戦わないレッド抹殺の作戦をみんなでねろう!}
「ククク それは大作戦だな 興味深い」
アニマルソルジャー以外にも怪人が3人いた
狼男にミイラ男 覆面男だ
〔おきゃく!おきゃく!〕
〈あらあら タイザ君!そんなテレビの前にいたら
みんなで見れないでしょ もっと下がって下がって
はい ハドラーさん ジゼルちゃん 座布団をどうぞ〉
「ああ ありがとう」
[ありがとうございます!
楽しみですハドラー様♡]
座布団を抱えて結局オレの膝の上に座るジゼルにこれまでの流れを聞く
[ハドラー様のお願いでお城ごとパプニカに攻め込んだミストバーンですが
城はダイに真っ二つにされてキルバーンと一緒に帰るふりをして
ポップを死の大地、だったかな
そこに釣りだしたて暗殺しようとしたところに
ダイが駆けつけてきてにらめっこ状態に・・・
そこで!
ついに!!
ハドラー様が!!!!
ド――――――ンとあらわれて前回は終わりました]
「ふむ・・・ あのときか」
膝の上で興奮するジゼルの話を聞いて当時を思い出す
どうやらオレが超魔生物に生まれ変わってすぐのことだろう
あのときは肩慣らしをする暇もなかったがこればかりは仕方がない
[お歌がはじまりましたよハドラー様!!]
「見ればわかる」
『ジゼルは本当に待ち遠しいようですね』
「今までオレの晒してきた負け続けた姿に思うところがあったか」
[そんなハドラー様!?]
〈そんなことないですよハドラーさん!
司令官という立場でありながら常に最前線で戦う姿勢!
たしかに何度も負けはしましたが常に勝利を求める不屈の精神
レッドさんにいつもやられている私たちは勇気をもらいました!〉
「ヴァンプ将軍 その扱いではまるでオレが勇者のようではないか」
『嬉しいのですか?』
馬鹿を言うな 歌が終わった 本編がはじまるぞ
[ハドラー様が兜とマントを吹き飛ばして
ハドラー様のお姿が!!]
〔うおおお かっけええ ハドラーさんのバトルフォーム!
レベルたけええ!!〕
『これって全裸なのでは?』
お前と同じだろう
〔ハドラーさん 改造手術のすぐ後ですよね
痛みとかはなかったんですか?〕
「あのときは どうだったか・・・
たしか気分としては歓喜で高揚していたからな」
『歓喜?ダイがいたからですか?』
・・・・・・久しぶりに動けるからだ
『今日の映像のあなた 笑顔多いですね』
[ハドラー様 すごく楽しそう]
オレとダイの一対一の勝負がはじまった
〈すごい!
あのお城を真っ二つにしたダイ君を圧倒してますね!〉
「まあこのときはな・・・ダイが消耗していたこともあるが
地上最強生物である竜魔人を目指した超魔生物への改造
研究者だったザムザでは劣化クロコダイン程度だったが
そのデータを元にオレを母体とすることであそこまで完成した」
〈なるほど 勉強になります〉
【海破斬!!】
[ハドラー様の爪が切られた!?]
〈ああ!?〉
〔爪切り! 爪切り!〕
映像内では左手で持ったダイの剣の一閃でオレのヘルズクローが斬られた
「ダイが剣を右手に持ち替えアバンストラッシュの構えか・・・
ジゼルよく見ておけ この一撃の行方を」
ジゼルが不安を隠しきれない表情でオレの右手を握る
今のオレの右腕にはないがこのときのオレには切り札が宿っていた
【アバンストラッシュ!!!!】
[ハドラー様!?]
『!?』
{ああハドラーさん!?}
ジゼルの悲鳴があがるが映像内のオレはアバンストラッシュ
[すごい・・・
フレちゃんをバラバラにしたあのアバンストラッシュをうけてなんともないなんて
流石ハドラー様♡]
〈おお ハドラーさんの右腕に剣が!
ヘンゲル将軍のハサミみたいに!〉
『ハサミなんて武器になるのですか?
薄い紙を切るときにジゼルが使っていた道具ですよね?』
ガニラスのようなカニ系モンスターは持ち前のハサミを使うし
オレ達の世界の人間の戦士も
と ここで戦いの映像は一時中断
〈いや~ここでCMに入るなんて あっというまでした
手に汗握る戦いでしたね ハドラーさん〉
{ハドラーさん ハドラーさん ぼくのデーモンクローと
ヘルズクロー どっちが強い?}
ウサコッツがぬいぐるみにしては鋭い爪をだしてきた
「・・・それは難問だな」
〔正義の
しかも伝説の名工の特注最高傑作の剣対伝説の名剣!
燃えてきたーー!〕
〈私たちもレッドさんとこんな対決してみたいね~〉
〔ヴァンプ様がヘルアーマー着てレッドと戦ったときはいいセンいってましたよ!〕
〈え! そう!?〉
ほう そんなこともあったのか
〈そういえばハドラーさん
先程死神さんがあのバトルフォームから戻れなくなったと言ってましたけど
今のハドラーさんは角やトゲトゲがないですよね〉
「ああそれは・・・」
〈あ もうCM終わっちゃいましたね〉
『あなたの体の元になった灰は少量でしたからね
子守りに不要な部分まで再生させてもしょうがないですし』
今 わざわざ言うようなことでもないか
映像による戦いはオレが発した魔炎気でダイを捉え
必殺の超魔爆炎覇が炸裂・・・
『・・・してませんね よかったダイは無事です
ポップ君のおかげですね そもそもここに来たのも彼のせいですが』
[ルーラって便利ですね あの状態で助けられるなんて]
「いい加減にお前もルーラをおぼえろ
トベルーラにリリルーラ バシルーラも使えるのに
なぜいまだにルーラが使えない・・・」
[なぜなんでしょう?
あ ポップ魔力切れだ 最初からパプニカに飛べばよかったのに
流石ハドラー様 余裕で追いついてますね]
「ポップはダイを助けるためにとっさに動いているからな
冷静な判断力が欠けている
まあそもそも冷静な判断力があればこんな窮地になってないが」
だがここでポップがオレの精神的成長に気づきオレに対する評価が改まったのは・・・
『随分と 嬉しそうですね』
〈ミストバーンさんがここまで誘いこまなかったら
ハドラーさんはどうするつもりだったんですか?〉
「そのままパプニカに乗り込んで戦うだけだ
ダイ達パーティ全員を相手に命の限り戦うまでだ」
『あなたは元々そういう方でした』
わずかに視点がザボエラに移った
この戦いを水晶玉で覗き見しながら自らの研究成果に興奮していた
息子のザムザや多くの怪物を犠牲に神の生み出した竜の騎士を圧倒したことに
これ以上ない喜びを表していた
・・・だが このときのオレの頭にはザボエラのことはまったくなく
共に喜べる気もしない
『一蓮托生が聞いてあきれますね』
・・・その通りだ それが後で決定的な決別となる
[ハドラー様がいったーーーー!!]
【超魔爆炎覇!!!!!】
【 ズカ ァ ァ ア ン 】
〈ダイ君が海に落ちた!?〉
〔すっげええ ハドラーさん超つええ!〕
[ハドラー様が勝ったあ!!]
オレの膝の上で大はしゃぎしているジゼルには悪いが・・・
【さすが勇者・・・ こうでなくてはな!!!】
[ああ!?ハドラー様も海に落ちた!!?]
〔あんな冷たそうな海に!
あ でもハドラーさん 焦げてたから冷やしに行ったのかも?〕
「あれは相打ちだ ダイの反撃を受けて不覚にも一瞬意識がなかった」
オレとダイが海に落ち ミストバーンがオレの救出に向かい
空にはポップとキルバーンが残った
そして死神の鎌がポップに迫るところで今日の放映は終わった
〔ハドラーさんが海ポチャしてからどうなったか
ハドラーさんは知ってますか?〕
「いや 知らん ポップとはまた顔を合わせたから
このときは逃げ切れたようだが」
〔海ポチャ 海ポチャ〕
この狼男は少々かしこさが足りないようだな
〈こらこらタイザ君 失礼でしょ!
すみませんハドラーさん
そうだ もう10時になりますしおやつを食べましょう〉
「ああ よかろう」
東女道場ならこの後模擬戦となるがここではおやつか
〔ジゼル ずっとハドラーさんの膝の上に座ってるな〕
[大好きなハドラー様と久しぶりに会えたから
ハドラー様がお許しになる間はここを離れないよ]
「別に許してはおらぬが・・・」
{へー じゃあウサちゃんがレッドの家まで行って
膝の上に乗ってるのって・・・}
{そんなんじゃナイやい!
大体はあそこはかよ子さんの家だよ!
レッド抹殺のために乗り込んだついでに絵本を読んできただけだい!}
「そんな抹殺作戦はじめて聞くぞ」
{もー!ヴァンプ様ー!おやつたべよー!}
〈はいはい みんな食べる前にちゃんと手を洗ってね
ハドラーさんとジゼルちゃんもお願いします〉
\\はーーい//
ヴァンプ将軍が立ち上がり台所に向かい
オレもジゼルをおろし腰を上げようとしたところで
ガラッ! ドカドカドカ!
【おい ヴァンプ!!】
〈あ レッドさん!? 今日は対決の予定じゃないですよね?
また珍しいスーツ着て・・・〉
【てめえらに用はねえよ
オレのレッドイヤーがハドラーの声を捉えた
テレビの声じゃねえ 間違いなく本人の声だ!
あいつを出せ!!】
{レッド!ぶっ殺すよ!!
デーモンクロー!!!!}
ガシィ!
【だからおめえらに用はねえんだよ!】
{ああ ウサちゃんが捕まった!?
弱い者いじめはやめろよレッドー!}
{ピー・・・チャージカイシシマス}
{レッドコロチュ!}
[ハドラー様を狙うなら私を倒してからにしてもらいましょうか!]
【なんでちっこいのばっかワラワラ来るんだよ!!
いいからハドラーを出せ!ハドラーを!!】
廊下が途端に騒がしくなった
どうやらあの太陽の戦士が来たようだ
前にオレが上には上がいることを教えてやったが
懲りずに再戦が望みか
ならばまた相手をしてやろう
映像のオレばかり いい格好させていられん
【あんなヘロヘロになってたガキに相打ちになるような再生怪人に
見せてやるぜ!オレの高機動形態プロミネンスフォームを!!】
「ククク 面白い話をしているな
ならばオレも見せてやろう
今のこのオレが・・・
超魔生物さえも超え 何度も生まれ変わった先で磨き続け
手に入れた力を・・・!!
そしてそれが・・・
この世界の勇者の力をどれほど超えているかをなっ!」
『やはりあなたはテレビを見ているよりも
そうやって動いている方が性に合うのでしょうね』
8月はコロナ療養で潰れてたウジョーです
ホテル療養終えても後遺症と落ちた体力もあっていまだに本調子に戻りませんが
またボチボチ書いていきます
ちょうど今回の話はそんな療養中に放送されていた アニメ化が楽しみだったハドラー様
復活+リベンジマッチ!に元気をもらったりしてこれだけは拙作でも絶対やろうと思ってました
本当はこれ以降の回も書きたいところなんですが執筆ペースが上がらないのが何とも
キン肉マン最新話のサンシャインがジェロニモに言いたいこと全部言ってくれたりして
次回はサンシャインだそうかなとか ハドラー親衛騎団のときはヒムもだそうか
など書きたいネタは次々あるので余計にもどかしいところ
コロナ禍がなかなか落ち着かないこのご時世
お疲れのでないよう どうぞお労りください