ハドラー子育て日記 異世界家族旅行編   作:ウジョー

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アニメ鑑賞編 父との決別

今日は恒例となった例の映像を見る日だ

東女の道場を訪ねたわけだが

 

[ハドラー様ー!]

 

  べシ!!

 

ジゼルダイブをはたき落とし道場に入った

 

「前回より人間が多いな」

 

〔三密にならないように人数制限はあるのですが・・・〕

 

〔視聴後のハドラーさんとの手合わせが評判よくて

希望者が増えてますから〕

 

〔みんなコロナ禍でストレス溜まっているうえに

練習相手にも不自由してますからね〕

 

〔人間じゃないから感染リスクがない上にとっても強い

ハドラーさんが相手をしてくれる週に一度のこの貴重な機会

みんな参加したいんスよ〕

 

「あれは別にダイ達に感化されて動きたくなっただけで

毎度お前たちの相手をしてやる必要はないのだが」

 

そんな会話をしながらこの世界でテレビと呼ばれる悪魔の目玉の前に座る

すかさずジゼルが膝の上に座ってくるが構わず人化術で人間の姿になる

 

〔あれ?今日はその姿で見るんですか?〕

 

「ああ 今日はダイとバランの戦いに決着が着くはずだからな

バランが竜魔人となって捨てた人間の姿・・・

あえてその姿で見届けたくなったのだ」

 

『ダイとバランの戦いは心臓に悪すぎますよ』

 

お前が住みついているのはオレの心臓だがな

 

『あのバランがダイにドルオーラを撃ち

ダイがバランの首に斬りかかる・・・

竜の騎士が、紋章の力がこれほど恐ろしいと思ったことはありません』

 

お前が言うと重いな 聖母竜よ・・・

 

〔ねえ ジゼルはハドラーさんに勝つために東女に入ったんだよね

いつかこんな戦いをするの?〕

 

『!?』

 

「その心配は百年早い」

 

『・・・百年ぐらい あっという間ですよ』

 

〔ハドラーさんの首に牙を突き立てたりするの?〕

 

「それは今までも普通にやる」

 

   ゴソゴソ  カプッ! モグモグ

 

オレの膝の上にいたジゼルが体勢を変えて首にかじりついてきた

 

   ベリ!  ポイ!!

 

ジゼルを引きはがし 後ろに放り投げる

 

「かじりついていいとは言っておらん」

 

〔おっとと で、ジゼル 味は?〕

 

「聞くな そんなこと!」

 

[ハドラー様♡]

 

ジゼルが背中にはりついて映像をのぞきこんできた

映像ではヒュンケルが捨て身でダイに魔剣を渡していた

 

〔あのナイフが砕けなかったら アバンストラッシュが首に・・・

ダイ君にとっては砕けてよかったような〕

 

「あのナイフはこのオレに手傷を負わせたほどの逸品だが

歴戦の寿命もあったのだろう

しかしあの魔剣なら そう簡単には折れん 次の必殺の一撃で決まる」

 

〔さすが実際にその身で味わった人が言うと重みが違いますね〕

 

『次の一撃で・・・』

 

聖母竜の不安が強くなっていく

 

〔あれはギガブレイク!?〕

 

「いやあれはライデインだ

クロコダイン達の決死の消耗戦がここで効いてきたか」

 

【オレの力と・・・ 先生の技と・・・ ヒュンケルの剣と・・・!!

・・・そしてポップがとりもどしてくれた おれの思い出のすべてをひとつにして・・・

・・・おまえにぶつけてやるッ!!!!】

 

「今 ダイにかつてないレベルで心・技・体が揃った

このアバンストラッシュ いやライデインストラッシュは

まさにバランも制する会心の一撃となる」

 

〔お互いにフェイバリットを決めるための削りあいになった

プロレスでもよくある展開だね〕

 

・・・そして映像は様変わりした 激しい戦場ではなく

静かな世界でポップがただ一人で歩いている

ここは見覚えがある

 

「生と死の狭間の世界か

何度見てもあまり気分のいいものではないな」

 

〔流石ハドラーさん 作中で何度も死んでた この世界の常連〕

 

〔常連になりたくないな・・・〕

 

〔・・・行ったことある気がする〕

 

〔セッシャもこの光景に見覚えが・・・〕

 

〔え!?〕

 

   ギュ・・・

 

ジゼルが不安そうにオレの背中にしがみつく

オレはこうしてここにいる 何の不安があろうことか

 

『それを直接言ってあげればよいのに・・・』

 

そんなことより

 

「ポップ・・・ やはりここにいたか」

 

〔ゴメちゃんもきた!〕

 

「あの世界からは自力での脱出はできん

外部から何らかの働きかけがなければ・・・」

 

〔そのためのレオナ姫の蘇生呪文(ザオラル)なんですね!〕

 

・・・だが効果が薄い このままでは本当にポップが死んでしまうぞ

しかしあのゴールデンメタルスライムはなぜいる?

あの世界で自分以外の存在が介入 しかも会話ができるとは・・・

 

目まぐるしく映像が戦場と狭間の世界を移りかわり

そして 戦場でのダイの危機にポップの呪文がバランを直撃

決定的な隙を作り出した

 

【アバンストラッシュ!!!!】

 

地上最大の戦いに決着をつけたダイの会心の一撃は

鎧の魔剣が砕け バランの真魔剛竜剣は折れ

両者相打ちのようにも見えたが ダイは無事な姿を見せ

バランは竜魔人化が解け人間の姿にもどっていた

胸のアバンストラッシュの傷 出血は派手だが致命傷ではない

 

『やっと終わった、のですね』

 

[バランお兄ちゃんの胸の傷

ハドラー様がデルムリン島で負った傷に似てますね]

 

「あれか・・・

ダイが竜の騎士の力に目覚め始めたときだな

あの時はオレの両腕を犠牲にして致命傷は避けたが・・・

あのとき感じた未来の脅威がこうして現実になっていくわけだ」

 

バランの血によって蘇生を果たしたポップ

そして戦場を去るバランを見送るダイ・・・

 

『バラン・・・ ダイ・・・』

 

そして映像は魔王軍へ・・・

 

『というより あなたですね』

 

まあ そうなのだが

 

〔ハドラーさん顔面蒼白ですね もともと顔色悪いですけど〕

 

「このときのオレも言っているがオレにとって最悪のケースだったからな

敵ばかり増えて強力になっていき オレの立場どころか命も危うい

ミストバーンや大魔王バーンの言葉ひとつに本気で怯えていた」

 

〔あ、ハドラーさんが土下座してる

あの世界にもあるんだ〕

 

「オレが実際にしていた土下座と少し違うな

あんな指を揃えた構えではなかったはずだが」

 

『話を逸らそうとしても無駄ですよ

大魔王による最後通告にみなさん見入ってますから』

 

〔大魔王が失敗は三度まで許すって言ってるけど

それって三回の失敗まではセーフって意味じゃないの?

ハドラーさん 今にも死にそうな感じに見えるよ〕

 

〔アバン先生を倒した実績が評価されてラストチャンスがもらえたのか〕

 

「結果的に アバンに命を救われた形になった

あの時のオレの無念・・・

そしてオレをそこまで追いつめたアバンの弟子達・・・」

 

大魔王はもう一化けと言っているが

死んで生まれ変わるほどの決定的な敗北がこの後・・・

と いうところで今日は終わりか

 

人化術で人に近い姿になっていたせいか いつのまにか随分と汗をかいていた

ジゼルが張り付いていた背中は特に濡れている

 

[ハドラー様!東女寮でお料理の腕をさらに磨いています

朝のおやつとして持ってきています 食べてください!]

 

「ほう いいだろう この姿でいるときは味覚も冴えているようだ

味を見てやろう」

 

いつもならこの後ジゼル達と手合わせをするところだが

ジゼルの申し出を受け 持参したものを食べることにする

茶の用意もはじめているようなのでそれを待ちながら

先ほどまで見ていたかつてのオレを思い出す

あのときオレに一杯の茶を楽しむゆとりがあれば・・・

大魔王が指摘したオレの精神的なもろさもそのあたりにある気がしてきた

そして思い浮かぶのがやたらと楽しそうに茶の支度をする宿敵の姿・・・

 

「我ながら 当時のオレでは想定もしていないケースになっているようだ」

 

そうつぶやきながら茶を楽しみに待っていることに気づいてしまった




ダイの大冒険のアニメが毎回面白くて書きたい話が膨らむ一方で書くペースがまったくおいつかないウジョーです

このあたりから毎回鑑賞編を書きたい内容なのに筆が・・・
蒸し暑さの厳しさが本格化してきましたがおつかれのでませんように

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