ハドラー子育て日記 異世界家族旅行編   作:ウジョー

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女子プロレス編 トレーニング

   プロレス---・・・

リング上 ときには リングを飛び出して展開する攻防を

観客に見せることを目的としたスポーツである

その主役とも言えるレスラーの練習は時に試合本番よりも過酷なこともある---・・・

 

〈ハドラーさん見てこの動画!

東京女子プロレスのソニックキャットさんの練習風景なんだけど

以前テレビ放送されたもののまとめ動画だって!!〉

 

またも聖人たちの漫画の原稿作業に呼ばれ それがひと段落付いたところで

聖人のロン毛の方から面白そうなものを見せられた

 

『その呼び方 本当によいのでしょうか・・・』

 

「ソニックキャット・・・たしかメアリのパートナーだったな

どれ・・・」

 

・・・

むき出しのコンクリート部屋での受け身の練習

光のない暗闇でのチェーンデスマッチ・・・

なかなか面白い光景が続く

 

『ジゼル・・・ 大丈夫でしょうか・・・』

 

〈あ この人 芸能人のメルぴょんさんだ

そういえばプロレスデビューしたんだっけ

うわ大玉に追いかけられながら坂道ダッシュしてる!〉

 

{コントじゃないよねこれ・・・

限界を感じたところからが 特訓のはじまりで

極限状態で感覚を磨くって 発想が苦行僧だよ!!}

 

「・・・一理ある」

 

『それはどうでしょう・・・』

 

〈君の得意そうなジャンルだよね〉

 

{やめてよ 天部が聞きつけたらまたとんでもないことになるから!}

 

「オレを倒した勇者ダイは ナイフ一本で落下する岩や竜の炎を斬り抜け

目を閉じながらオレの息子を倒し剣の奥義に辿りついたと聞いた

本人からな・・・」

 

     ズキリ

 

かつてうけた ダイのアバンストラッシュのダメージを思い出す

ジゼルもいずれはこういった修行の果てに・・・

あいつだけの奥義に辿りつくのだろう

そんなあいつと戦う日が来るのが楽しみなような 怖いような

 

『ジゼルが強くなろうとするのは

あなたに勝って あなたと結婚するためですが』

 

・・・・・・

 

『あ 楽しみより怖い方が強くなりましたね』

 

「・・・世の中 上には上がいる

やがてあいつにも オレよりももっと惹かれる者があらわれるはずだ」

 

      プルルルル

 

{あれ 天部からだ さっきお焚き上げ入稿した原稿についてかな?

ちょっと失礼・・・

・・・・・・え!?単行本に4ページ書き下ろし追加!?

アシスタント修行中の阿修羅君が1ページ担当!?

そんないきなり!しかも締め切りが今日まで!!?}

 

「今 アシュラマンがアシスタント修行中と言ったか?」

 

{いや 多分同族の別の人のことじゃないかな?}

 

      カチリ

 

〈あ 苦行スイッチが入っちゃった

ハドラーさん もう少し修羅場にお付き合いいただけます?〉

 

「いいだろう ジゼルに負けていられぬからな」

 

 

 

 

 

後日 ヴァンプ将軍の料理教室に行った帰り

かつてサンレッドと戦ったあの川に沿って歩いていると

見覚えのある者達がいた

 

「あれはバッファローマン」

 

かつてこの世界の祭りで共に協力した超人だ

あのときとは違いジャージ姿だったが

 

『共にいる人間にも見覚えがありますね』

 

「ああ たしか東女の試合でリングに上がっていたな

たしか多摩川女子プロレスの望宮と白木だったか

ということは あれはプロレスの特訓中か?」

 

『声をかけるのですか?』

 

「ああ どうせなら間近で見てみたい

バッファローマンよ」

 

【ん?

おおハドラーか? どうした?】

 

「面白そうなことをしていると思ってな」

 

【あの祭りで知り合ったバッファロー北村が

最近この多摩女で働くようになってな 声を掛けられた

正義超人養成学校ヘラクレスファクトリーの教官であるこのオレが

超人流の特訓メニューを人間のプロレスラーに応用できないか

色々と試してみようと思ってな】

 

「それは興味深い オレも参加させてくれ

協力は惜しまんぞ」

 

【それはありがたい

多摩女の社長を紹介しよう

現役のレスラーでこの団体のエース・・・】

 

〔スペシャル小原 本名は小原冴だ〕

 

鋭い眼光のいい面構えをした女がやってきた

若い白木や望宮よりもできるな

 

〔現役超人レスラーのハドラーさんまで協力してくれるのは本当に嬉しいんですが

ウチはなんつうかアレだ ちいせえ団体なもんで大したお礼はできねえ

ぶっちゃけ金がねえ バッファローマンさんは完全に無料ロハだ

それでもいいんですかね?〕

 

「気にするな 今 娘を人間のプロレス団体に預けていてな

プロレスの練習に興味があるだけだ 礼はいらん

それにそこの二人が東女のリングに上がった試合をたまたま見た

期待しているぞ」

 

〔ご協力感謝します!〕

 

社長に続き他のレスラーたちも頭を下げてきた

ここにいる数人が多摩女の全レスラーとのことだ

ジゼルを預けた東女とは確かに規模が違うが

どいつもまだまだ強くなる可能性を感じる

これは面白くなりそうだ

 

【まずは簡単なところでこのサンドバッグのキック打ちだ】

 

ジャージ姿で竹刀を持ったバッファローマンが

火のついた袋を吊るし指さした

 

「なるほど この火に焼かれないほどの速度の蹴りを見せろと」

 

【ホホー さすがハドラー理解が速い

おまえにはそれともうひとつある

これを支える鎖はおまえが本気で蹴ればたやすく切れるだろう

スピードとフォームを維持したまま力加減を身に着けるのだ】

 

「なぜだ?」

 

【蹴り一発で試合が終わっては盛り上がらんだろ

試合を通じてお互いに分かり合うためにはこういった練習も必要だ

悪魔超人ではやらんがな】

 

「なるほど ただ敵をたおすだけではないか

フン!」

 

  ドス!   ドス!ドスドス!! 

 

〔すごい!速射砲のようなキックの連打!

しかも完璧なフォームを維持している!〕

 

〔サンドバッグの鎖もきしむ音はしているけど

切れない絶妙な力加減〕

 

〔スペシャルだぜ・・・!〕

 

・・・こんな調子でバッファローマンが持ち込んだ

いくつかのトレーニング器具を用いたものや

身一つでできるものなど多摩女のレスラーも交えて色々試してみた

いくつかは改良次第で普段の練習にいかせるものあったようだ

だがやはり試しているうちに・・・

 

〔ぐあっ!!?〕

 

回復呪文(ホイミ)

 

    パアア・・・

 

〔すっご!痛みも傷も完全になくなったっすよ!!〕

 

人間の身ではやはり怪我がたえない

その都度回復しているが

 

〔ありがとうございますハドラーさん

その魔法?ですか

何度も使ってもらってますが お疲れではないですか?〕

 

「問題ない

たかがホイミ 消費する魔法力は微々たるものだ」

 

〔本当にありがとうございました

特にこの甘粕己虎(あまかすことら)はまだ新人の大事な時期なので〕

 

〔社長!社長もKOM(キング・オブ・マッスル)を控えてる身なんですから

治療を受けた方がいいっすよ!〕

 

〔いやオレはケガはしてないが・・・〕

 

「ほう KOM(キング・オブ・マッスル)というと あのブラッディ井上の・・・

なるほどやつの後継者か ならば万全の肉体で闘うがいい」

 

      ガシィ!

 

小原の顔をつかみホイミをかけた

 

     パアア・・・

 

「・・・ほう!

かなりの修羅場をくぐり抜けてきたようだが

深刻なダメージは少ない 丈夫な肉体だ 大事にしろ」

 

〔か・・・体が軽い・・・!

アレだ・・・まるで若返ったみたいだ!!〕

 

「さすがにそんな効果はない

体に蓄積されたダメージが回復しただけだ

あとはおまえ次第だ」

 

〔ハドラーさん・・・

KOMのタイトルマッチ 必ず見に来てください

いつもスペシャルな試合を心がけてますが

このお礼に・・・一段とスペシャルな試合を見せますよ!!〕

 

「それは楽しみにしておこう」

 

〔ここらで休憩にしようかねえ!

特製ハヤシライスだ バッファローマンさんもハドラーさんも

ぜひ召し上がっておくれよ!〕

 

「ほう 特製・・・だと

見た目はいつぞやに食ったビーフシチューを飯にかけたように見えるが」

 

【ホホー 腹が減る匂いだな!

こいつはうまそうだぜ!】

 

     \\\いただきます///

 

   もぐもぐ・・・

 

「・・・濃厚な味だな

材料そのものはそこまで特別ではないが

味と栄養の濃さが

・・・・・・・・・これはまさか水分が?」

 

〔そう!この水分はタマネギやトマトから作られているのさ

さらに北村さんが調達してくれた牛肉の肉汁もたっぷり混ぜ込まれた、濃厚!〕

 

【こいつは力がつきそうだ!

ヘラクレスファクトリーの学食に出したいものだ!】

 

「これは応用が効きそうだな」

 

〔デザートに己虎が買ってきてくれた黒糖饅頭もあるよ〕

 

【おお北村 おまえさんは練習しなくてよかったのか?】

 

〔私ゃ、もう現役復帰するつもりはないよ

ここには事務助っ人(臨時手伝い)ってことでいるんだ

リングに上がる気はないよ〕

 

【ハドラーに古傷治してもらえりゃまだいけるんじゃないか

たしかスペシャル小原の2コ上ぐらいだったろ】

 

〔女の歳を言うんじゃないよ!〕

 

【でもそんな格好でいい体見せてんじゃねえか】

 

〔格好のことも言うんじゃないよ!〕

 

【ところでハドラー、飯の後 ちょいとスパーにつきあってもらえるか?】

 

「スパー? ああ組手か よかろう

おまえなら不足はないだろう

あの祭り以来の本気がだせそうだ」

 

【オレは歳は50をとうに過ぎたが

1000万パワーは健在だ

肉体だってまだまだいけるつもりだぜ・・・!】

 

〔おお!こりゃすごいカードじゃないの!

これだけで金とれるっすよ!〕

 

〔肉体派の超人レスラー同士のスパー

勉強になりそうっす〕

 

〔リングの上はやめとくれよ

もちそうにないからさ〕

 

〔うわ バッファローマンさんジャージ脱いで

バッファローサポーターまでだしてる

すごい体 あれが超人のスーパーヘビー級・・・〕

 

〔ハドラーさんもすごい体 あの二人の写真だけでもすごい売れそう〕

 

〔それは冗談でもやめろ アレだ 仁義に反する〕

 

〔わかってますよ社長〕

 

〔・・・・・・・・・スペシャルだぜ〕

 

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

 

「いい汗をかいた」

 

『力比べであなたと互角の人が

引退して指導者をしているなんて

この世界も相当なものですよね』

 

「まったくだ」

 

バッファローマンとの組手を終え

多摩女の連中から別れ際に試合のチケットをもらい

川沿いを適当に歩いている

さて・・・これからどうするか・・・

と しばらく考えていると またも見知った顔がいた

あれはジゼルを預けた東女寮の・・・

 

〔ああ!ハドラーさん!お久しぶりです!

東女寮の寮長の田中えり子です

すみません!ロードワーク中にジゼルが迷子になりました!

ひょっとして見かけたりしませんでしたか!?〕

 

「それは手間をかけたな

オレはみておらんがジゼルのいる場所くらいすぐにわかる」

 

ジゼルがリリルーラで互いの元に行けないようにしてあるが

あやつの気ぐらいはすぐに感じ取れる

 

「・・・・・・この川沿いにすすんだ先、

さっきまでオレがいた多摩女のある場所か

どうやらオレがバッファローマン相手に出した本気に

ジゼルがひかれたかもしれぬな」

 

『あなたのせいですね』

 

〔多摩女にバッファローマンさんがいるんですか!?〕

 

「ああ 先程まではオレもいたからな

いくのか?」

 

〔ええ ジゼルを迎えに〕

 

〔寮長~~! あ ジゼルのお父さんといっしょだ

こんにちは!〕

 

東女の他のレスラーもやってきた 迷子になったジゼルを探していたのだろう

 

「おまえから見てジゼルはどうだ?」

 

〔本当にがんばってますよ あんなに小さな体で

新人だめしの耐久マラソンでもちょいちょい迷子になりながらですが

新人の最高記録出しましたし

いつも練習熱心で 熱血すぎて本当に熱くなるのを

組み合いに生かすのにあと少しのところまできました

うちの副寮長 台所の守護神からも料理の手伝いが優秀で

魔法による料理法とか逆に勉強になるとか言ってましたよ〕

 

『ジゼル・・・』

 

あやつなりにやっているようだな

ならばオレからもひとつだけ 余計な世話を焼いてやろう

 

「田中 おまえからは強い火の気質を感じる

それはジゼルにとっては非常に好ましいものと言える

もしジゼルに対し何か遠慮があれば捨てるがいい

おまえの心のままぶつかれ」

 

〔ええ!? でもあたしのって ゲンコツとかですよ!?〕

 

「そのゲンコツはオレの拳よりも強いと?」

 

レスラーである田中よりもはるかに太く鍛え上げたオレの腕を見せる

 

〔うわあ うらやましいですね その腕

わかりましたそこまで言われたら 変な遠慮なんかしませんよ

他の寮のみんなと同じようにビシバシ扱いますんで!

ハドラーさん このままジゼルに会っていきませんか?〕

 

「それはやめておこう それはあやつの成長(レベルアップ)の妨げになる」

 

『まあ残念ですが 否定できませんか・・・』

 

「では、な」

 

ルーラでここを離れた これ以上近づけばジゼルに気づかれる

次に会うときは あやつがレスラーとなったときだ

 

『・・・それは つまり あの子が戦う日がくる、ということですね

戦うために生まれる竜の騎士の生と死を司る神の使いである私が

今更言えたことではありませんが・・・

ありませんが!心配でしょうがいないのです』

 

・・・・・・今まであったレスラーの顔でも思い出せ




リンドリのサービス終了までにジゼルのデビュー戦を書きたいウジョーです
終了日の3月26日まで残りわずか 厳しいですがもうひとがんばり

春のお彼岸をむかえ 寒さもやわらぎ 暖かい日もありますが
世界的なコロナ流行に加え季節の変わり目 年度の節目の忙しさと
体調を崩しやすい時期と重なっております より一層ご自愛くださいませ

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