ハドラー子育て日記 異世界家族旅行編   作:ウジョー

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女子プロレス編 入門後 暇人は語りたい

ジゼルが人化術を習得し東女寮入りを果たした

 

『さびしいです・・・』

 

しつこいぞ聖母竜よ

 

『あなたもいまだにこの世界にいるということは

さびしいのでしょう』

 

・・・・・・この世界にはサンシャインたちのような強者や

参考になりそうな武術もある

オレなりに得るものが多いと判断したにすぎん

 

『・・・・・・の裏側が私にはよめるのですが』

 

     ー!?ー

 

『この気配は!』

 

強力過ぎる火竜に暗竜の気配だと!

ジゼルとは比べ物にならん これほどの力 バーン級だぞ!

ここは人間の街の中 昼過ぎで人通りはやや少ないが

とてもこんな大物がいるような場所には見えんぞ

 

『神か大魔王でもいるのですか!?』

 

この気配 近いぞ・・・

 

ーーーーーーー

 

この建物か この世界のダンジョンに入るのは初めてだが

 

『まわりの建物とあまり変わらないですよね』

 

たしかにな この竜気がなければ通り過ぎていたところだ

羽の生えた犬の看板が目立つ3階建ての建物か・・・入ってみるか

 

『・・・そうですね ジゼルのいる東女寮からそう遠くないここで

これほどの竜の存在は無視できませんね』

 

・・・竜気は地下からか

階段を一階分下りたところに魔力を秘めた樫の木の扉があった

扉には猫の絵と【洋食のねこや】の文字があった

 

「なんだ?猫を食べるところか?」

 

『猫がやっているお店ではないのですか?』

 

「まあいい 入るぞ」

 

   ガチャ    チリンチリン

 

扉を開けると備え付けの鈴がなった

この鈴からも魔力を感じる

 

〔いらっしゃいませ!〕

 

中は席に着いた人間が何人か見える どうやら食堂のようだ

オレを出迎えた人間にたずねた

 

「・・・ここは食堂か?」

 

〔はい 洋食のねこやへようこそ

お客様 おタバコはお吸いになりますか?〕

 

「いや 支払はこれでいいか」

 

サンシャインにこの世界で金がわりに使えると渡されたカードを見せた

 

〔はい 使えますよ お支払いのさいにもう一度お見せください

それではお好きな席にどうぞ〕

 

   トントントントン   ザーッ

 

店の奥から調理の音が聞こえる

できる かなりの腕前だ どうやら料理の方は期待できそうだ

 

『目的は忘れないで下さいよ』

 

わかっている

竜の気配が特に濃いところへ近づいていく

そこには二人の男がいた

黒髪の筋肉質の人間の男と赤髪にメガネをかけたの犬型獣人の男か

どうやら竜はここにはいないようだ

残り香程度でこれほどの竜気とは やはり相当な大物が通う店のようだ

とりあえずオレはそのとなりの席に座り様子をうかがう

この男たちが竜の関係者かどうかはわからんが・・・

 

〔高橋先生 俺たち秘密警察犬(シークレットドーベルマン) いわゆる狼男が

亜人(デミ)として扱われたのはごく最近 ここ数年の話だ〕

 

〔え そうなんですか?でも因幡さんはもっと前から警察でお勤めと聞きましたが〕

 

人間の方が高橋 獣人の方が因幡か 

この二人から直接竜の気配は感じない

 

〔俺達狼男は一般的な亜人(デミ)と違って意図的に生み出されたものでな

歴史的に本家はフランスにあるらしいが

人間ではないからと人権はなく 超人扱いでもなく警察の所有物扱いだったんだ

俺自身 それを疑問に思わなかったしな〕

 

〔そんな・・・〕

 

人間社会のルールとやらも色々と面倒そうだな

しかしどうでもいいが 二人とも同じような声で聞いていて紛らわしい

給仕から注文を聞かれたので日替わり定食を頼んでおく

この席から料理人の姿はよく見えないが盗める技もあるだろう

 

〔まあ動物愛護管理法で守られていたわけだ〕

 

〔狼男にも適用されるんですか!?〕

 

〔それを崩す一因となったのが俺の存在だ〕

 

〔・・・因幡さんがそれだけの功績を積んできたと?〕

 

〔いや 俺のクソ親父のたとえ話では

ブタとイノシシは生物学的に同種だが ウマとロバは別種だ、

という話だそうだ〕

 

〔なるほど 種の定義で重要視されるのは・・・

交配可能で繫殖能力がある子を生み出せるかという部分

ということは、因幡さんは〕

 

〔流石生物教師 話がはやい

俺のクソ親父は狼男と人間のハーフで・・・

俺と弟はその遺伝子を人工授精した人間の母親から産まれたわけだ〕

 

〔・・・?でも因幡さんが産まれて数年ってことはないですよね

亜人に関する法律はデリケートなところがありますが

適応されるのに時間がかかりすぎでは?〕

 

〔さっきも言ったが俺自身そのことに疑問を持たず警察犬の訓練を受け

法の番犬の仕事に誇りを持っていたからな 弟がいたから頑張れた

クソ親父がテロやった挙句行方不明になった事件を起こさなきゃ

・・・もっと時間が かかってたかもな〕

 

〔そんなことが・・・

失礼ですが因幡さんの母親はどうされたんですか?〕

 

〔俺は直接会ったこともないまま 死んだらしい

はじめて顔を知ったのは

・・・銃をぶっ放してきたロボットになってたな〕

 

〔えー・・・〕

 

『色々な親子の形がありますね』

 

そうだな 

 

〔今の俺は狼だらけの五人暮らしで楽しくやってるよ

すごいしっくりくる〕

 

〔狼には群れをつくる群棲本能がありますからね

やっぱり狼男にもそういった特性があるんですね〕

 

〔もちろん狼男の能力は捜査にも役立つ

データ収集能力ってやつだ

だからこそ秘密警察犬(シークレットドーベルマン)の歴史がある〕

 

〔それは興味深いですね やっぱり嗅覚が発達しているんですか?

ひょっとしてここではにおいが強すぎてストレスだったりしますか?〕

 

〔い~や たしかに匂いフェチや音フェチだとそういうこともありえるが

俺は・・・毛フェチだ!!〕

 

〔毛フェチ?〕

 

また聞き慣れん言葉がでたな

亜人(デミ)に超人 毛フェチ オレ達の世界では使わない言葉が多い

この世界でジゼルがどう育つか楽しみだ

 

『ふふふ・・・』

 

〔高橋先生の髪と オレの髪を比べてもらえばわかりやすいが

キューティクルがまるで違う

動物によってキューティクルは様々で俺の毛は犬猫のと同じものでな

俺が人間じゃねーと思ってた根拠のひとつだ〕

 

〔因幡さん・・・〕

 

どうやらあの二人は竜とはまったく関係なさそうだな

あの席に座っていたのはただの偶然か

注文していた料理もきたし とりあえず食うとしよう

肉料理か 期待させるにおいだ

 

「あむ・・・ ほう」

 

繊細で 丁寧な仕事だ 香辛料の加減もうまい

仕込み 調理に十分な手がかかっている

店の規模からみて かなりの人数を相手にしているようだが

提供と手間をギリギリまで踏み込んだ技が見て取れる

この料理人はやはりかなりの腕前だ

 

〔俺にとっては高橋先生の立派な黒髪剛毛一本の海の波のような

キューティクルが口よりも雄弁に語ってくれるのさ〕

 

〔こっちとしては自分の口で語り合いたいんですが〕

 

〔そんじゃ えーっと おっ! ここに一本長い髪の毛があるな

燃えるような美しい赤い髪 このキューティクルは人の毛じゃない

俺も見たことのない未知のキューティクルだ

亜人(デミ)、いや 超人の毛かもしれないな〕

 

〔超人ですか それは私も間近で見たことないですね〕

 

!あれは 強烈な火竜の気配! あれがあの席から感じたものか

 

『店全体からもですが この店を守ろうとする意志を感じます』

 

もしそうなら 持ち出しはまずい

最悪 その竜がでてくる可能性がある!

毛一本でこの力 オレでも分が悪い・・・!!

 

〔高橋先生 狼男の特性と聞いてどんなものを思いつく?〕

 

〔え?そうですね 一般的な伝承ですと

満月の夜に 変身したりとか〕

 

〔そう 実際満月で変身までできるのは狼男の中でも俺を含めごく一部だが

例えば満月の夜に俺が赤い毛を噛むと狼に変身できる〕

 

〔なるほど因幡さんのご先祖に同じようなことができる狼男がいたんでしょうね

赤い毛、因幡さんの髪と同じ色の毛で狼になるということは

そこに何か因果関係があるのでしょうか?〕

 

〔俺は正直 狼のときの自分の姿はあんま好きじゃないけどな

まあ 今は新月の昼間 変身するわけじゃない

ちょっと噛んでみるだけ あむあむ・・・ん!!?〕

 

竜の髪を噛んだ!?

 

     バウン!

 

〔因幡さんが赤い狼に!?

これが狼男の変身能力!?でもなぜ?〕

 

    バタン!!

 

赤い狼が倒れた

 

「どけ!オレがみてやる」

 

となりの席で倒れた狼を間近で診た

狼は竜の髪を咥えたまま倒れていた

どうもこの髪の竜気をわずかにとりこんだようだ

過剰な力で破裂寸前だったところを自力で止めたか

とりあえず髪をとりのぞくしかあるまい

 

〔どうしましたお客さん!!〕

 

調理場から男が駆けつけてきた

こいつがここの料理人か

 

『また似たような声ですね

この世界も結構広そうですが これほど似た声が3人も揃うなんて』

 

確率だけなら奇跡とよべそうなレベルだな

 

「今 処置をしている

おい高橋とやら オレがこいつの口をこじあける

すぐに髪を取り除け」

 

〔はい わかりました!〕

 

   ガシ! ギギギ・・・!

 

「この狼の力・・・!

オレを手こずらせおって これが【けふぇち】とやらの力か・・・

!!

今だ!!!」

 

〔はい!〕

 

     パッ

 

    ボン!!

 

高橋が竜の毛を掴み取ると狼が元に戻った

・・・いや髪がのびて体も少し大きくなっているか

これも竜気の影響か 

 

〔大丈夫ですか お客さん?

ひょっとして料理に髪の毛が入っていましたか?

俺はこの店の料理人で店主です〕

 

〔いや この毛は赤い長髪 しかも 人間のものじゃない

店主を含めこの店の料理人はだれも該当しない

まあ店主の短髪黒髪も興味あるが〕

 

〔それにこれはテーブルにあったものですから〕

 

「これは竜王か竜神級の竜の毛だ

店主 心当たりはあるか?」

 

〔このテーブルでいつもビーフシチューを召し上がる常連の女王様のものだと思います

掃除が行き届いてなかったようで申し訳ございません!〕

 

店主が頭を下げ謝罪しているが・・・

 

「いや 店主

この毛はその竜の女王がこの店を守るために人知れず仕込んでいたものだろう

普通の人間には気づくこともできんはずだ」

 

〔俺は現在亜人課に出向中の警察犬で毛フェチの因幡洋だ

未知のキューティクルに食いついてしまったが店の一部に手を出した俺に非がある

法の番犬としてそこはハッキリしておきたい

毛フェチとしてはまったく後悔してないが!〕

 

人型に戻ったため服を着直しながら因幡が答え頭を下げた

 

〔そこはハッキリ言わなくてもいいのでは?

こちらもお店やほかのお客さんにご迷惑をおかけをおかけして申し訳ございません

つい因幡さんとの語り合いに盛り上がってしまい迂闊なことをしてしまいました〕

 

同じような声をした男たち3人が頭を下げあっている なんだこれは

 

『声は同じでも職業や性格はバラバラですね』

 

「そんなことより 竜の女王が注文したというビーフシチューが興味深い

1皿いただこう

先の料理は丁寧な仕込みと確かな技術を感じるいい仕事だった

期待してやる」

 

〔私もお願いします ここの料理おいしいですから楽しみです〕

 

〔あ 俺も俺も さっきあの髪の毛をくわえたとき

女王様がルンルン気分でビーフシチュー食べてるの見えたから

俺も食ってみたくなった〕

 

〔はい ご注文承りました ビーフシチュー3皿お持ちいたします〕

 

その後オレはこの二人と同じ席につき

ビーフシチューを食べながら存分に語り合った

その結果この世界では どうやらオレや竜人状態のジゼルが超人

人化したジゼルは人ではあるが特殊な力を持つ亜人(デミ)という扱いになるだろうと

 

『人化術を仕込んだ甲斐がありましたね

バランの悲劇のようなリスクを回避できますよ』

 

あんな話は人間社会ではよくあることだ

種族的差別だけの問題ではないが・・・リスクは下がるか

 

『それはなによりですね』

 

因幡がこの国での戸籍が必要なら亜人課に出向中の自分が便宜を図れるとの申し出もあった

もちろんオレには必要ないが

 

『ジゼルには必要ですね 私たちの目の届かないところへ預けるのですから』

 

・・・・・・まあ修行の妨げにならないように用意しておくか

 

〔あんたのは サラサラとした極上の髪だ シャンプー1回払いであらゆる協力を惜しまないぜ〕

 

〔今日は実に有意義なおはなしでした またこのお店で語り合いましょう〕

 

〔またのご来店お待ちしております〕

 

『やはり同じ声が3人並ぶと妙な感じですね』

 

まだいるような気がするがな




書きたいことがたまるのに書くペースが落ちているウジョーです
正直リングドリームのサービス終了までにジゼルのデビュー戦を書きたいのですが
間に合うかどうか

今回はアニメ
『キューティクル探偵因幡』の因幡洋
『亜人ちゃんは語りたい』の高橋鉄男
『異世界食堂』の店主
の中の人が同じ三人による世界観の説明回のようなものだったはずですが
アニメ見ながらのせいか また色々長くなってしまいました

新型コロナ インフルの流行の中 私はノロウィルスにやられてました
もう治りましたが 予防はやっぱり大事です 手洗い 消毒 換気 休息
何よりお体ご自愛下さい

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