ハドラー子育て日記 異世界家族旅行編   作:ウジョー

38 / 80
里帰り編 パプニカの過去

〔この土は異常ですな・・・

旧魔王軍との戦の頃より砂漠化した土地の再生事業に携わってきましたが

これほど 生命を感じない砂は見たことがない

これでは水を貯える力もなく植物が根付くことも困難でしょう〕

 

テムジンはどうやら経験者のようだ

 

「では この荒地に花を咲かせるにはおまえたちならどうする?」

 

〔そうですな・・・

まずは砂地に適し悪環境に強い生物・・・

たとえばサソリ系怪物やサボテンなどを持ち込み

魔法で水場も作っておきます

徐々に生物が増えていくのを待ちながらからくりを用い

適宜手を加えていきます

もちろん環境によって事情が異なりますので

必ずしも正解がだせるとは限りませんが・・・〕

 

なるほど どうやら無能ではないようだが

 

・・・・・・サソリ・・・からくり・・・

・・・テムジンとバロン・・・

! そうだこやつらは

 

「オレがかつてつくったキラーマシンを持ち出し増長した挙句

パプニカ王国乗っ取りのため魔のサソリでレオナ姫殺害をもくろみ

それら全てをデルムリン島でダイに叩き潰されたやつらか

そういえばバダックを除けば謀反に加担した人数も合うな」

 

〔!?よくご存じで・・・〕

 

「ブラスの日記に書いてあったぞ

ダイが竜の騎士にはじめて目覚めた戦いであり

パプニカ国王が勇者の家庭教師としてアバンをダイに送り出したきっかけらしいな」

 

『つまりあなたの死亡フラグが立ったわけですね』

 

おまえは役にたたないくせに いらんことばかりおぼえるな

 

〔そうですかブラス老が・・・

さぞわしを恨んでいることでしょうな

明確に殺害を指示したこともあったしのう・・・〕

 

「とくにそういったことはあの日記に書いてなかったが

それより あのキラーマシンをよく使えたな

力はそれなりにあるはずだが人間が使う仕様でつくってなかったが」

 

〔魔王の遺産の有効利用は当時流行しておりました

特に戦後復興のお題目を掲げれば 国を挙げて動きますからな

魔物だけではなく人も対象にできることでコスト削減効果の大きい『魔法の筒』

強力な力を人の手で操作することによって土木作業に使える名目の『キラーマシン』

これらを堂々と研究・使用しておりました〕

 

「人間のこういうところがあなどれん」

 

〔その功績で司教の座まで出世しましたよ

わしを・・・許せませぬか?〕

 

「ククク この地に眠るのは我が子と配下たち

そしてその敵たちだ おまえたちの入る余地はない」

 

ジャリジャリジャリ・・・

 

[・・・じゅーーく、にーじゅう!]

 

    ザクッ

 

[ハドラー様!線引きおわりました!!]

 

「ご苦労!

ジゼル サンシャインから渡されたピラミッドをだせ」

 

[はい これです!]

 

サンシャインがつくったピラミッドの模型をうけとり

ジゼルによくみえるようにゆっくりと結界術をとなえる

 

「むぅんっ!!」

 

      ドドォン

 

    ブアアアアアア

 

[うわあ きれい・・・!]

 

〔これが魔王の魔法・・・〕

 

〔いったいどんな効果が・・・〕

 

〔魔法陣がただの四角で ピラミッド型の結界なんてはじめて見るぞ〕

 

「とりあえずこんなところか

ジゼル 結界術は描いた魔法陣の内容や

用いる呪文によって効果が変わってくる

今回は特にこれといった効果を仕込んだわけではないが

道具や建造物を利用して効果を高めることも可能だ

たとえばこのピラミッドの模型を結界に用いることもできる」

 

[これ入ってみてもいいですか?]

 

「そうだな 試しに入ってみるか

お前たちも入れ 人間への影響も気になる」

 

〔おお では早速〕

 

    ザッ

 

〔バダック! いきなり入るやつがあるか

そもそも魔法力がないおまえに何がわかる!〕

 

〔ふむ 多少影響を感じますが・・・

呪文が使えなくなるほどではないですね

結界の場所によって効果が違うのかもしれません〕

 

テムジンやバロンらも結界の中に入っていく

オレも中で効果を感じてみたが・・・

 

「微妙に力の流れが変わった気もするが・・・」

 

『私にはわかりませんが

ジゼルに悪い影響がなければよいのですが』

 

「この程度でどうこうなるとも思えんが

とりあえず ジゼルは結界からでろ」

 

[はーい!]

 

     ぴょん!

 

[あ!? あーーーーーー!!!??]

 

  ズザザザゴロゴローーーーー!!!!

 

『ジゼル!?』

 

「どうしたジゼル!?」

 

〔ジゼル嬢が大穴に落ちた!?〕

 

「なぜよりによってそっちにとびだした!?

この方向音痴が!!」

 

〔方向音痴とかそういう問題ですか!?〕

 

〔この穴 底が見えないほど深いぞ!〕

 

ヒュンケルがオレに使ったグランドクルスでできた大穴にジゼルが転げ落ちた

 

「あれでも火竜のはしくれだ この程度のことで死にはせん」

 

   ドボぉン!!

 

この音はジゼルが底に落ちた音か?

これは水 いや泥に落ち込んだか?

この大穴の底には砂ではなく 泥があるのか

 

〔ジゼル嬢は無事か!?すぐに救出行かねば!〕

 

〔バダック殿ここは私に任せてください

照明呪文(レミーラ)!〕

 

  パアア!!

   バッ

バロンが大穴を照らしながら飛翔呪文(トベルーラ)で救出にむかっていった

 

『火竜は水に弱いのですよ!

いくらジゼルでも泥水に埋まっては危険です!

早くあなたも!!』

 

「・・・そういえばこの大穴の中はまだ見ていなかったな

オレも降りてみるか」

 

『言い訳はいいですから早く!!』

 

やれやれ・・・

 

     ザッ

 

大穴の底には泥に埋まってるジゼルと・・・

それを助けようと手こずっていたバロンがいた

だがそれよりも気になるのはその周りにある

 

「これは薬草!? ここに自生しているのか?」

 

   ズボッ!

 

[ぷはあっ! あっハドラー様♡]

 

バロンの手によって引っこ抜かれたジゼルがオレに気づいたようだが

 

「ろくに光も差さないこんなところで薬草が育つはずないが・・・」

 

〔ハドラー殿 ジゼル嬢は助け出しましたが・・・〕

 

「ジゼル これを食ってみろ」

 

薬草を引き抜きジゼルに渡した

 

[はい!ハドラー様♡ バリボリ

おいしいです ハドラー様!!]

 

効果も問題ない 本当になぜこんなところに薬草が?

 

〔この大穴の中は生命力にあふれているように感じますね

薬草が自生するほどの土があるのはこの島ではここだけでは?〕

 

「そのようだな ということは

これはあのグランドクルスのせいか・・・」

 

ゴクリ・・・

あのすさまじい威力を思い出すといまだに冷や汗がでる

 

[ハドラー様 こんなところに袋がありました!]

 

ジゼルがもってきた薬草袋、見覚えがあるような・・・

これはもしやヒュンケルがポップに渡して食ってたあれか

まさかあのときの食べ残しがこの穴の中で落ちて根付いたのか

 

『誰も知らないところでドラマがあったのですね』

 

そう考えるとオレも当事者だがな

 

「さてジゼルよ地竜術で泥を塊にする

とりあえずおまえの頭分程度の量を持って帰るぞ」

 

ともあれ貴重な生きた土を

ジゼルの竜術で固めて持って帰った

3人とも泥まみれになったが中々得るものはあった

 

[ハドラー様 できました!]

 

ジゼルが薬草袋に泥をつめ 花の種を植えこんだものをバルトスの墓前に供えた

 

「バルトスよ おまえの息子が用意した袋と

作り出した命の土に 供えていた花の種を

末の妹が改めて供えているぞ」

 

〔ここが バルトス殿の墓ですか〕

 

「そうだ 地獄の騎士バルトスを知っているのか?バダックよ」

 

〔・・・かつて戦場で何度か剣を交えたことがありましてな

わがパプニカ一刀流の剣の冴えをもってしても

あの変幻自在の6本の剣には及ばなかった

しんがりの役目のときは命からがらどうにかしのいだこともあった

常に正々堂々とした騎士の鑑のような敵であったと・・・

ワシは思うよ・・・!〕

 

・・・・・・ありがとう

 

『直接言えばよいのでは』

 

オレが言わずともバルトスが言っておるわ

バルトス・・・

最初にオレが生み出しオレの手で葬った我が子よ

おまえの生きた証はたしかにここにあるぞ

 

・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・

 

それからしばらくの間 このバルジ塔でパプニカのやつらと

土いじりをしていた

木竜術を使わなければこの種が芽吹くまで10日はかかるらしく

今のところとくに変化はない

だがパプニカのやつらは意外とよく働いていた

やはりただの馬鹿どもではないようだ

オレを恐れながらもジゼル効果かバダックの人徳か

この数日でオレのつくった鍋を囲み安ワインを飲むほどになっていた

 

〔ヒック・・・わしにとってもっとも障害となっていた

かの勇者の仲間だった大魔導士を追い出したことで

計画は一気にすすんだ いや暴走した・・・〕

 

「ほう あいつをか!? なかなかやるではないか

やはり裏切りを行う者はなにかしら取り柄があるものだな」

 

〔そしてパプニカ王国唯一の後継者レオナ姫の

教育係の一人バロンを取り込み・・・

デルムリン島での地の神の儀式を強行し・・・〕

 

「ダイにやられたと」

 

〔クッ クククッ

ワッハッハハハハハッその通りだ魔王殿

もし計画通りレオナ姫を殺してしまっていたらと思うと今でもゾッとしますよ

レオナ姫こそ生きていてもらわねば困るということを!〕

 

〔ダイくんがおまえたちに教えてくれたんじゃな〕

 

「ククク・・・」

 

[ハドラー様も楽しそう]

 

〔しかし この島でフレイザードの墓がのう

はじめてあやつを見たのは あのバルジ塔で

まさに姫を氷漬けにしようとするにっくき姿じゃった

そして次に会ったときはごっつい鎧を着てダイくん達と闘う姿じゃった

あのときはワシは無様にも腰を抜かしクロコダインに助けられねば

間違いなくおっちんでおったわ かっかっか!!〕

 

「ほうフレイザードの最後の戦いを見届けたのか

もっと聞かせてもらおうか どうだもう一杯」

 

[ハドラー様もどうぞ!]

 

 \\\\\\乾杯~っ!!//////

 

・・・

 

「かつてあの大魔導士はこのオレに

【いいやつはみんな死んで

オレやおめえみてえな悪党だけが生き残っちまった

・・・いやな世の中だよなぁ・・・】

とぬかしてオレにたった一人で闘いを挑んできおったわ」

 

〔わしもダイ君が行方不明になったときは・・・

同じようなことを思いましたよ

なぜわしらが生きているのにあの子がと・・・〕

 

〔ワシとて 王様が亡くなられフレイザードが死んだのに

姫の氷が溶けなかったときは何度も思ったものじゃ・・・〕

 

老いぼれどもが・・・ いや

酒をあおるものたちがみな、泣いていた

 

・・・・・・

・・・オレとしたことが飲み明かしてしまった

 

『困った人ですね

ジゼルが楽しみにしていたあの日を忘れないでくださいよ』

 

もうそんな日か まあ異世界の人間の武術にも興味がある

行ってみるか 

「起きろジゼル 行くぞあの世界へ

バダックたちは直に迎えがくるそのまま寝かせてやれ」

 

[はい!ハドラー様!!

いきましょう メアリの応援に!!]

 

ククク やはり人間は面白い

 

『あら?ジゼルのお供えした薬草袋から・・・』

 

[あ!芽がでてる!!]

 

〔幸先がよいですな〕

 

「なんだ起きていたのか おまえたち」

 

\\留守の間はこの墓地のことはお任せください//

\\腐っても神に代々つかえる身//

\\こういったことは任せてください!//

\\ジゼルちゃん この芽は大事に育てるから安心してくれ//

\\墓の手入れもお手の物//

\\こんな何もない所だけど パプニカの民として!//

\\花を咲かせてみせますよ//

\\姫を守った同胞たちにいつか!胸を張って会えるように!//

 

〔みんなおまえさんたちの土産話を待っておるよ〕

 

「・・・いいだろう 好きにするがいい」

 

[いってきます!]

 

 \\\\\\いってらっしゃーい!//////

 




忙しくなって筆が止まってしまったウジョーです。

正直この話はもっと短く終わって10月1日のメアリのタッグタイトルマッチに合わせて
次の話をもっと早くに書くはずでしたが新しい仕事がよりにもよって10月1日に
初出勤日が重なって準備やらやりつつ書いてた今回の話も勝手に膨らんでいって・・・
バダックさんはともかくなぜ読切のみで本編にまったくでないテムジン達がこんなに喋る?

すっかり涼しくなって・・・と思いきや妙に暑い日や 夜に元気な蚊がいたりと
彼岸を過ぎても残暑を引きずることもありますが おつかれのでませんよう

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。