ハドラー子育て日記 異世界家族旅行編   作:ウジョー

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里帰り編 お供え物選び

「まずリング作りか」

 

〔指輪のことじゃないですよね?〕

 

【もちろん オレたちの戦いの舞台のことだ

別にあの祭りのときのような素材のキャンバスや

ロープを無理に用意する必要はない

極端な話 地面に線をひくだけでもよい】

 

〔子供のお相撲ごっこで線をひくようなものでもいいんですか?〕

 

【ああ それでいいのだ

超人にとってはあらゆるものがキャンバスとなりロープとなる

だからこそ様々なデスマッチが生まれ 

世界各地 宇宙のあらゆる星にリングがあるのだ

そこで流れた血と汗が大地に力を与え

その力のぶつかり合いに惹かれ超人や人間たち命あるものが集まってくる

そして戦いが戦いをよんでいく】

 

「なるほど 面白い世界観だ 参考になる」

 

【特に悪魔は戦いの末に死んでも残した血から

悪霊として労働力になる 十分な功績をつめば

悪魔超人に昇格することもできる】

 

『ええ・・・』

 

まあ オレもそういった術に心当たりがある

不死系怪物を生者にもどすことはできぬがな

 

【我が主である あのお方の流す汗はリングを

宇宙一の硬さを誇るダイヤモンドにすることができる

血や汗にはそれほどの可能性を秘めておるのだ】

 

〔ダイヤモンドのリング・・・プロポーズには使えそうにないね〕

 

『そんなプロポーズはどこの世界にもありませんよ』

 

[よくわかりませんが串カツおかわり!]

 

【串カツだけでは胸やけするぜ 間・・・間にキャベツを食べるんだ

同じように戦いの衝撃でこなれた地面に種をまくんだ

太陽の恵みがなく どんな根の侵入を拒んできた岩盤にも

植物が根付くようになっていくのだ】

 

    パリパリ

 

[なるほど もっと串カツが 食べたくなるね]

 

【そうだ それも命の循環や戦いの連鎖の一端と言えよう

・・・ワシに語れるのはこんなところだ】

 

「なるほど 一理ある」

 

『なんという力業・・・』

 

「結局どうすればいいの?

フレちゃんたちのお墓の前でハドラー様と戦えばお花が咲くの?」

 

【グオッフォフォフォ

まだまだジゼル嬢相手ではハドラーは汗もかかんだろう

わしが言ったのはあくまで超人による開拓術だ

弔いのかたちに正解があるわけではない

ハドラーとともに色々と試してみるといい

それ自体がお前さんの兄達にとってなによりの供養となる】

 

そう言ってジゼルの頭をなでるサンシャインの顔は、

非常に穏やかなものだった

この男も多くの者を見送ってきたのだろう・・・

 

 カリ  ングング    ジーー・・・

 

大将の料理の技に注目しながら適当に次を注文する

次は揚げ物ではなく煮物にするか・・・

 

【お供え物には花も定番だが・・・

合わせて食べ物を供えることもある

そういったことを考えてみるのもどうだ】

 

〔あ シノブさん あのカミダナのイナリズシも

御供えですよね〕

 

〔そうね エーファちゃんも食べたあれは

お稲荷さんの大好物なんだよ〕

 

「イナリズシ?

イオナズンと似ている気になるひびきだな

大将 頼めるか?」

 

〔あいよ!〕

 

大将が手早く飯を何かに包んで握っている

黒川が祭りでつくっていたおむすびに似ている

そういえばあれもあったか?

 

〔ご注文の品 お待たせしました〕

 

しのぶが持ってきた一皿にはイナリズシが二つ乗っていた

 

「おまえもひとつ食えジゼル」

 

[ハイ!ハドラー様♡]

 

    カプ

 

フム 食べられる袋に飯をつめほどよく握ったものか

袋から染み出す味が飯にうまく馴染んでいる

 

[面白~い モグモグ]

 

〔そういえば供養に花火を使うというのを聞いたことがありますね

あのお祭りにもいらっしゃったあの将軍様が その昔、

災害で亡くなった方たちを慰霊するための打ち上げ花火が

東京の有名な花火大会のはじまりというのを聞いたことがあります〕

 

〔あれは送り火だったんだね〕

 

「火や煙を供養に使うのはどこの世界でもあるのだな」

 

【そうだ 東京といえば話は変わるが これを預かっている】

 

サンシャインから何かの券のようなものを渡された

 

【あの祭りでジゼル嬢と前座を務めたメアリ・ノートンの

世界タッグタイトルマッチのある女子プロレス大会のチケットだ

大会は一週間後 リングサイドの特等席4人分だ】

 

「4人?おまえもいっしょに行くのか?」

 

【いやわしもアシュラマンと共に行くつもりだが

わしらは対戦相手の狂獣(ヒール)コンビベノムナイトの応援だから

別の席をとってある ほかの者を誘えばよい

それと大会場所はここから少し離れた東京だ

わからなければ当日そこまでは案内するが?】

 

「トウキョウ・・・・・・たしか前に聖人の助太刀に行ったのが

東京立川という地名だったはずだ

あの近くで会ったヴァンプ将軍の拠点が神奈川県川崎支部だったか

どちらかに行って聞けばわかるはずだ」

 

【なるほど たしかに会場近く知己がいるなら問題ない

チケットに会場の名前と住所がある

聞いてもわからなければワシらに合流すればいい

この大会は世界タッグ以外にも見どころが多い

他団体の多摩川女子プロレスとの団体対抗タッグマッチ

ヤングドラゴン杯の予選 KOM(キングオブマッスル)予選 セヴンスター 

そして世界無差別級シングルマッチ王者の初防衛戦と

退屈する暇もないビッグマッチ揃いだ】

 

「人間同士の戦いはオレも昔から興味があった

ジゼルにもいい刺激になるかもしれん 行ってみるか」

 

[メアリの応援!楽しみです!]

 

「ならばそれまでは墓場の土いじりでもしてみるか

数日程度効果がでるとは限らんがな」

 

【ハドラーよ・・・

ワシはその墓場を直接見たわけでも

かつてのそこでの戦場も知らんが・・・

あんたとその子どもたちが命をかけた激しい戦いの記憶は

たとえどれほどの爆弾をもってしても消えることはない

今は死んだように見える土地でもその古戦場が 何かのきっかけで

闘う意志に反応し往年の姿の一部を見せることがあるかもしれん

魂の安息を願うのであれば 穏便にな】

 

「そうか ではリングの設営はまたの機会にするか」

 

流石にただ花を供えるだけでそこまで大掛かりにする気はないが

 

【ああ そういえば砂地といえば ピラミッド・パワーがあったか】

 

〔ピラミッド・パワーとはまた懐かしい

久しぶりに聞いた気がします〕

 

〔知ってるの大将?〕

 

〔しのぶちゃんは知らないのか

まあ今時使わないからね〕

 

[ピラミッドって何?]

 

【実物を見せた方がいいか

これを使うぞ】

 

    ギュ

 

サンシャインが小瓶から砂をすべて手に乗せ握りしめた

 

【これだけあれば・・・サンシャイン・パワー全開!!】

 

   ギュン ギュン ギュン

 

【これが地獄のピラミッド・ミニだ】

 

サンシャインの手のひらに四角錘の砂の塊があった

角は鋭く砂も崩れる様子もない出来だ

 

『地獄の というのはいらないですよね』

 

尖ったところが刺されば痛いだろう

 

『え?そんな地獄!?』

 

【この形がパワーを集め貯める効果があるらしい

ミスター・カーメンの方が詳しいのだがまあ形は

これを参考に大きくつくればいいだろう】

 

「ほう 魔法陣や道具ではなく

結界の形を工夫することで効果を高める発想はなかったな」

 

サンシャインからピラミッドを受け取り手に乗せる

 

・・・

 

なるほど 力の流れを感じる

規模を大きくすればある程度の効果が・・・

 

[・・・・・・]

 

腹がふくれてきたのか 膝の上のジゼルがウトウトしてきた

情報も得た そろそろ帰るか

 

「ではオレ達は失礼する また会おう」

 

ジゼルを抱えて店をでた

 

〔ありがとうございました~〕

 

一度家に帰って寝ておくか・・・

 

 

 

・・・・・・

起床し食事を終えたジゼルに補佐竜の正装を着させ

オレも久しぶりに竜術士の正装を着た

 

[正装姿も素敵ですハドラー様♡]

 

「地竜と木竜の服も持っていけ しばらくはここに帰らんぞ」

 

[はい ハドラー様♡]

 

ジゼルを連れてまず向かうのはホルキア大陸パプニカ王国、王宮

 

 

〔いらっしゃいませ おじいさま〕

 

「その呼び方はダイをつかまえてからにしろと言ったはずだ

レオナ姫よ」

 

[はじめましてお姫様]

 

パプニカ王家最後の一人にして

アバンの使徒の一人 レオナ姫

実は異世界の祭りにもアバンやフローラと共に来ていたが正体を隠し

非公式で城を抜け出していたのでここでは久しぶりに会い

ジゼルとも初顔合わせということになっている

大したおてんば姫だ

 

『ダイの伴侶としてはお似合いのお嬢さんですよね』

 

まあ ダイ次第だろう




相変わらず着地点をあまり考えずに書いてるウジョーです
帰郷編がこんな流れになるとはフレちゃんらとのふれあい中は考えもしなかったのに
しかも他にも書きたい話ができたりして次はどうなることか

蒸し暑さももちろんですが大雨による水害も要注意です
雨が降らないのももちろん困りものですが・・・
おつかれのでませんように

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