ハドラー子育て日記 異世界家族旅行編   作:ウジョー

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里帰り編 子守りの救世主???の巻

オレ達をバルジの塔へと案内するフレイザード

その体にはこいつの栄光の象徴とも言うべき【暴魔のメダル】がない

手柄にこだわるこいつがそれを外しているとは

 

『子守りの邪魔だから外したのでしょうか?』

 

たしかに邪魔になるかもしれんが

こいつがそんな理由で外すとも思えんぞ

それも含めてこいつの口から直接聞くとしよう

【オレの娘】・・・というのも気になるが

 

    ~バルジの塔の中~

 

‘’こいつがお袋から預かったハドラー様の娘のラーゼルですぜ‘’

 

   \ふやあ ふやあ/

 

赤子か!?しかも禁呪法で作られたタイプではないだと!?

 

[かわいい~~ラーゼルちゃん~ ]

 

『ええ 本当に・・・』

 

「色々と言いたいことはあるが・・・

まず最初に・・・おまえのいう 【お袋】とは

一体だれのことだ?」

 

‘’何言ってるんですか?

ハドラー様の、魔軍司令親衛隊隊長にきまってるじゃないですかい

お二人が俺を禁呪法で生み出してくれて

俺が死んでる間にこいつが産まれたと聞きましたぜ

そこにいるガキもハドラー様の娘なんだろ?

どう見てもお袋にそっくりじゃねえか

双子だったとは聞いてなかったが・・・‘’

 

「魔軍司令親衛隊隊長だと・・・?」

 

オレが魔軍司令時代の親衛隊はアークデーモンやガーゴイルらだが女はいなかった

もしや親衛騎団女王アルビナスのことか?

 

『私、じゃないですよね』

 

「そいつの名前は・・・」

 

\ふやあ! ふやあ!/

 

[ハドラー様!

ラーゼルちゃんのオシメがずれてるからなおしていいですか?]

 

「ええい!適当にやっておけジゼル!!」

 

‘’ジゼル?

お袋の名前そのまんまか

こりゃ男との双子だったらそいつの名前

ラーゼルじゃなくてハドラーになってたんじゃねえか?‘’

 

「・・・ということは ラーゼルの母は」

 

『ジゼル、ということでしょうか』

 

・・・・・・つまり、ここは過去の世界ではなく

 

『平行世界、でしょうね

多分この世界に【聖母竜】や【ハドラー】【ダイ】もいるのでしょうね』

 

ならばこの世界のオレやジゼルに会うのは避けた方がよさそうだな

 

『ええ 私も立場上 色々まずいので

こちらの私に会わないようにしてください』

 

その後フレイザードに、ついでにジゼルにも聞こえるように事情を話した

流石オレの子らだ 理解も早い

ラーゼルは聞こえているかどうかもわからんが

フレイザードからも事情を聞いた

やはりオレの知るフレイザードとは多少違うようだ

ダイ達との戦いでは優勢の状態からミストバーンによって

無理やり鎧に押し込められた挙句 捨て駒扱いされ死亡

この世界のジゼルによって蘇生されミストバーンへの復讐のために魔王軍離脱を決意し

産まれたばかりのラーゼルの子守りを命じられたそうだ

 

‘’あ~ まあそういったところですハドラー様

それじゃすぐに元の世界とやらに帰るんですかい?‘’

 

この世界に直接 物を残したり目立つのはまずいが・・・

 

「いや いい機会だ

おまえの知らないオレの新たな力を見せてやろう

ジゼル 手を貸せ」

 

[はい!ハドラー様♡

行こ!フレイザードお兄ちゃん ラーゼルちゃん]

 

‘’あ~ お袋 と呼んでいいのか?あ ダメ?

でも名前でも呼ぶのもなあ 変な癖がつきそうだし

それにお袋からお兄ちゃんと呼ばれるのも変な気分だし

フレちゃんと呼んでくれ‘’

 

[わかったフレちゃん!あ なんかしっくりくる!!]

 

フレイザードはジゼルに対して戸惑いが隠せないようだ

オレがフレイザードに見せる新たな力 それは

 

「このバルジ島はパプニカ王家の最後の拠点

籠城に必要なものは一通りそろっているはずだ

つまり 食料 衣服 その原材料となる各種植物の種

そして それを育てる畑・・・

おまえはその価値を それを生かす力を知る必要がある

今のおまえにこそ そこのラーゼルのためにもな」

 

塔の中にあるツボを調べると種がいくつもある

どうせオレのいた世界ではこれからまもなく消し飛んだ物ばかりだ

遠慮はいらん 持ち出して外に出る

やはり塔の外には畑がある

実がなっているものもいくつかある

 

「この畑の土を参考にしろ 見ているがいい

まずは荒地を耕す 岩や石を砕き土に空気を含ませる

これは素手でもできる」

 

   ズボ ズボ ズボ ズボ 

 

素手で直接 土を耕すところを見せる

この程度は木竜術士や獣人たちとよくやっていた

地竜術や木竜術を使えばはやいだろうが

オレやフレイザードなら術や道具すら必要ない

魔界にいるおおみみずが通ったような程よい土壌ができた

 

「そして種をまき必要な水を適量まく

ここは腕の見せ所だ 見るがいい

メラ(火炎呪文) ヒャド(氷系呪文)」

 

‘’二つの呪文を同時に!?‘’

 

「これはおまえ向きともいえる技術だ

炎と氷 同時に使い新たな可能性を引き出す

同時同調術とも呼ばれる術だ

おまえのセンスは申し分ない ひたすら使って慣れろ

何もないところで任意の温度の水、湯が作れるのだ

子守りにこれほど便利な術はそうない」

 

    ブワ   シャーーーーー

 

畑に水をまいてみせる

この水量・水温を自在に制御できるようになればさらなる応用の幅もでてくる

 

‘’ウヌ・・・‘’

 

[見てて ラーゼルちゃん]

 

    バッ  ぱあああ・・・

 

ジゼルがオレのまいている水に竜術をつかい虹の橋をかける

 

     \ふわあ~~・・・/

 

虹に見とれるラーゼルにジゼルも満足そうだ

残った種をフレイザードにわたしておく

 

『持って帰るのもまずいでしょうしね』

 

 

 

塔に戻ってタンスを開ければ 質のいい服も揃っていた

 

「パプニカの衣服は耐火 耐魔に優れたものが多く

特にここにはそういったものが多い」

 

‘’そういや パプニカの姫さん周りのザコですら俺の炎の息を耐えやがったな

ですがハドラー様 そいつは弱っちい人間のためのもんだろ

俺やラーゼルにそんなものが必要ですかい?‘’

 

「たしかにオレたち魔族は人間よりもはるかに強靭な体だ

だがその故郷 魔界は太陽の光も差さない暗黒の地だ

そのせいでこの地上での昼は眩しすぎて夜にしか活動できない魔物は珍しくない

極寒のマルノーラ大陸でしか活動できないものもいる

産まれたばかりのラーゼルがそうならないとも限らんだろう」

 

‘’ああ・・・ 俺の部下もそんなのばっかりだったな‘’

 

[ラーゼルちゃん これ着てみない?

こうやって巻き巻きして あ! おにぎりみたい]

 

     \ふやあ♡/

 

ラーゼルが黒いマントに巻かれてご機嫌のようだ

 

 

 

    ジャキィン! ボウ!!

 

オレはヘブンズクローに炎をまとわせ炎の爪と化した

 

‘’こいつはダイの使ってた魔法剣とおなじ!?‘’

 

「このように体の一部に呪文をまとわせた方が制御しやすいかもしれん

おまえなりに色々と試してみるがいい」

 

‘’たしかにこいつは使えそうだ‘’

 

「ただ熱くするよりも温める、凍らせるよりも冷やす方が

はるかに繊細さを必要とし技術が磨ける 見ろ」

 

ラーゼルにオレのヘブンズクローを握らせた

 

    ギュっ

 

  \ふわあぃ♡/

 

[あ 気持ちよさそう 爪によってぬくもりがちがう

こっちはひんやり~ かぷっ♡]

 

「おいジゼル 爪をかじるな」

 

ジゼルがヘブンズクローをあまがみすると

となりの爪をラーゼルもくわえだした

 

     \あむあむ♡/

 

「もうラーゼルが真似しているぞ!

いらんことを教えるなジゼル!」

 

 

 

オレは自分で作った紙芝居をとりだした

 

‘’ハドラー様 そんなものどうすんですか!?

いくらなんでも!‘’

 

「この紙芝居にはヒュンケルの弱点がのっている」

 

‘’ラーゼル!しっかり見ておくぞ!!‘’

 

     \ふやい!/

 

[わあ♡

地底魔城のおはなしだ!]

 

 

 

備蓄の食料もまだわずかにあった

 

「ただ野菜を食うだけでも効果があるが

切り裂き 焼き 砕き 冷やすことで

さらなる力を引き出すことができる

ジゼル 見せてやれ」

 

[はい!ハドラー様♡]

 

食材を手早く料理するジゼル

フレイザードも驚きながらも冷静な目で見ている

 

[たべてみてね!フレちゃん ラーゼルちゃん]

 

‘’お・おう 赤ん坊の食事まで作れるのか‘’

 

   \もきゅ もきゅ/

 

[もちろんハドラーさまのお料理の方がおいしいよ!]

 

「当然だ そして保存食の作り方も見せておこう

これはこの世界において知る者のいない超技術ともいえる」

 

料理をジゼルに任せながら残った野菜で

ヴァンプ将軍仕込みの漬物の作り方を教える

これは作り手により味も変わる

いずれはフレイザードだけの味が生まれことだろう

 

‘’こんなに小さくても料理がうめえとは流石お袋と冷静に思いながら・・・

ハドラー様がそれ以上にうめえことに驚きがおさまらねえ!‘’

 

 

 

「オムツを替えるときは尻をしっかり拭いておけ

そして便の状態から健康状態を分析できる

これは大人になっても有効だ おぼえておけ」

 

‘’俺はエネルギー岩石生命体だから馴染みがないもんで

・・・クソは全部燃やしちまいました‘’

 

 

・・・

・・・・・・

 

などなど とりあえず一通り子守りの技を仕込んでみた

後は実戦で経験を積みレベルを上げるだけだ

 

『闘う術は教えなくていいんですか?

大魔王の邪悪な気配がありますからまだバーンも生きてますよね

フレイザードはメドローアとか使えそうですし

あなたの超魔爆炎覇もいずれは使えるのでは?』

 

生兵法でダイにそれを当てるかもしれんぞ

 

『やめておきましょう』

 

そのあたりはかえって教えない方がいい

特にフレイザードの蘇生やラーゼルの誕生など

ただでさえ未知の要素が大きいこの状態だ

それにこいつはオレの知るフレイザードと大きく違うところがある

 

『強さ・・・ですか?』

 

いや もっと決定的なところだ

このフレイザードはこの世界のオレやジゼルの命令ではなく

ミストバーンへの復讐のために大魔王のもとを離れた

それはこいつが【誇り】に目覚めた、ということだ

 

『誇り?』

 

オレの知るフレイザードは生み出してから1年足らず

自分の人格への自信がなく誇りを持てなかった

だからこそ手柄を求め出世に走り仲間からの羨望や

勝利を求め続けていた

だがこいつが過去の栄光を捨て魔王軍を離れたということは

ただ利用されたことに怒っているわけではない

自分の人格を無視し ただの捨て駒として扱われたことが許せんのだ

傷つけられた『誇り』があるからこそ怒るのだ

かつてオレの体から黒の核晶(コア)が抜き出され

それを目にしたときのオレのようにな・・・!

 

 

 

‘’ハドラー様 今日ほど俺はあなたを偉大に思ったことはないぜ‘’

 

洗濯物を乾かしているときにいきなり

隣にいたフレイザードからそんなことを言われた

 

「嬉しい言葉だが それはこの世界のオレのためにとっておけ」

 

『本当に嬉しそうですね』

 

黙っていろ聖母竜

 

「・・・フレイザード さっきも言ったが

氷の国や火山周辺など活動できる場所が限られている魔物は多い

溶岩魔人 氷河魔人 フレイム ブリザード・・・

そういったものたちが外で活動できるのはおまえの近くのみ

だからこそおまえに氷炎魔団の軍団長を任せた

これは魔王軍最強の竜騎将バラン

武徳を持った獣王クロコダインにもできない

おまえだけにできることだ それがどういうことかわかるか?」

 

‘’あん?そりゃそのためにハドラー様が俺を作ったんだろ‘’

 

「おまえにはオレや大魔王バーンとも違うタイプの魔王となれる可能性がある

ということだ」

 

‘’!?俺が魔王!?‘’

 

フレイザードの洗濯物を持つ手が止まる

 

「魔物が生きていける世界を作ることができる

それを魔王と言わずなんと言う

今のおまえがなんのために生き 戦うのか 何を目指すのか

そんなことはこのオレが知ったことではない

だがオレは、おまえのもつ可能性をおまえよりも

かつてのオレよりも知っている」

 

‘’ハドラー様・・・‘’

 

「オレ達はもう帰る もう会うこともなかろう

オレ達のことをこの世界のオレ達に知らせる必要も隠す必要ない

帰るぞ ジゼル」

 

[はい!ハドラー様♡

じゃあね!フレちゃん ラーゼルちゃん]

 

     ぴょん  すりすり

 

「ええい!抱きつくな!」

 

‘’そういうとこ見ると やっぱお袋とハドラー様、なんだな‘’

 

「・・・フレイザードよ

これはオレの世界では直接言えなかったことだが

かつて六大団長がはじめて一堂に会し

大魔王の業火中からおまえが【暴魔のメダル】を掴み取ったあのとき

オレは最高に誇らしかった」

 

‘’あれか!‘’

 

「竜の騎士バラン

忠誠心の塊クロコダイン

出世欲の化身ザボエラ

大魔王の腹心ミストバーン

そしてアバンの一番弟子でありバルトスの子ヒュンケル

オレの子であるおまえが・・・

それら全てに先んじて傷つきながらもメダルを握り

全軍団長からの視線を独り占めにし 大魔王からの賞賛をうけた!

そのメダルの輝きを見るたびに

魔王軍の切り込み隊長の活躍を聞くたびに

オレも誇らしかった・・・」

 

オレはこれを言うためにこの世界にきたのかもしれない

オレの誇り その源 そして感謝を

 

『もう思い残すことはありませんか?』

 

・・・いずれフレイザードは己の誇りを踏みにじった、

あのミストバーンに戦いを挑むのだろう

あやつ相手ではたとえ更にレベルアップを重ねても分が悪かろう

だがこれは意地と誇りをかけた男の戦い

・・・勝ち負けよりも大事なものがある

 

『・・・』

 

オレもポップに気づかされたことだがな

だからこそオレに言えるのは もうこれだけだ

 

「我が子フレイザードよ

おまえの健闘を祈る

そしてラーゼルよ

・・・達者でな

さらばだ ルーラ!!」

 

‘’ハドラー様!!‘’

 

   ギュオーーーーーーーー

            ――――――――ン

                    ✨

 

 

‘’いっちまったか・・・

ありがとうよハドラー様・・・‘’

 

     \ふやあ~!/

 

‘’あーあ なってねえな

俺もよ・・・!

妹になぐさめられちまった

ま いいさ これで俺はまた強くなれる

待っていやがれ ミストバーン

てめえに落とし前つけるのはこの俺だ

ハドラー様とお袋によって生みだされた

このフレイザード様だ!!

クカカカカカーーーーーツ!!!!‘’

 

   \ふやややあ~~!/

 

 

 

 

            フレイザードはレベルがあがった 

 

             ちからが1あがった

 

             すばやさが1あがった

 

             たいりょくが3あがった

 

             かしこさが2あがった

 

             うんのよさが2あがった

        

             さいだいHPが3あがった

         

             さいだいMPが3あがった

 

 




ドラクエビルダーズ2の影響を受けすぎたウジョーです
ハドラーさまが子守り術士というよりビルダーみたいになってしまいました

今回のバルジ島はディアさん作の「魔軍司令親衛隊隊長の恋愛! 氷炎将軍と勇者一行、苦戦する」あたりのコラボ小説です
ディアさんからのご許可いただき感謝です
その後のフレちゃんの活躍は「魔軍司令親衛隊隊長の恋愛!」本編の続きでお楽しみください
拙作ではフレイザードもラーゼルも出しようがなかったので今回の交流は
ハドラーさまにとってもジゼル嬢にとってもホクホク顔の出来事でした
そしてディアさんの手による今作の逆パターン「ジゼル異世界出張日記~ハドラー子育て日記番外編~」も連載中です

急に暑くなってまいりました 強い日差しに昼夜の寒暖差と体調の崩しやすいこの気候
おつかれのでませんように

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