ここは東京・立川 以前黒川から聞いた土地の名だが今回は別件だ
オレの腕を是非とも貸して欲しいと天界からの依頼でやってきた
「なぜ紙芝居持参なんだ・・・
今度の依頼はまた子守りか?」
『いえ こちらで休暇中の聖人の創作活動に協力してほしいそうです』
「ああ・・・それでか
しかし休暇中の創作活動で天界が外部のオレを動かすとは
よほどの者かそれとも・・・」
『なんでも締め切りが近いので修羅場中とのことです』
「休暇中じゃないのか!?」
などと話しているうちに目的地【松田ハイツ】に到着した
『この建物の2階 階段を上がって左側の部屋です』
「・・・聖人が住む場所には見えんが」
教会や祠かと思っていたが大きいが質素なつくりの宿の一室のような住処だな
[ハドラーさまー! このボタン押してもいいですかー?]
「好きにしろ」
せいのびして扉の横にあるボタンを押すジゼル
ピーン ポーン
{あ ハーイ}
〈あ 私がでるよ 君は原稿に集中してて〉
こんな狭そうな部屋に聖人が2人もいるのか
〈天界が手配したアシスタントさんで・・・
あなた ひょっとして【ダイの大冒険】のハドラーさん!?
魔軍司令だった?!〉
「たしかにそうだが オレを知っているのか?
まあいい こいつは娘の・・・」
[ジゼルと申します]
『私は聖母竜マザードラゴン
竜の騎士の生と死を司る神の使いでありジゼルの母です
お目にかかれて光栄でございます』
〈ああ聖母竜さんもいらっしゃるんですね
じゃあジゼルちゃんは竜の騎士なんですか?〉
「いや そうではないが そんなことより仕事の話だ
参考までにこれはオレが最近描いた紙芝居だ
どうだ?オレの仕事はあるか」
オレを出迎えた男に紙芝居を預け 部屋の中に入ると
もう一人机に向かい紙にペンを走らせる男がいる
この二人が聖人か たしかに只者ではないような気がする・・・か?
『・・・よくわからないですね』
〈ほら見てよこの紙芝居 ダイの大冒険の別視点みたいだけど
絵はうまいし面白いよ!〉
{これちょうどこないだ歯医者さんで読んだジャンプに載ってた話だ
へー このときこっちはこんなだったんだ・・・}
[ダイの大冒険って なーに?]
「ネタバレはやめてくれ聖人ども」
{ああ ゴメンなさい 前情報を与えてしまって
私としたことが作り手への礼儀を失してしまった}
〈でもこれだけ描けるなら即戦力だね〉
{そうだね じゃあ『悟アナ』の背景をお願いしてもいい?
ジゼルちゃんは・・・}
「ジゼルはインクを乾かせ 皿よりも繊細な微調整が必要だが
・・・できるな」
[お任せください!ハドラー様♡]
筆ペンははじめて使ったが 使い勝手がいい
漫画の原稿の手伝いなどはじめてだが
白黒のみで表現するのもなかなか味があるし
紙芝居とは違う表現方法もなかなか面白い
・・・などと考える余裕があったのは最初の一時間程度だろう
カリカリカリカリ
カリカリカリカリ
カリカリカリカリ
ペタペタペタ・・・
作業音が狭い部屋に響く・・・
とてつもなく長い時間がたったような 重い世界・・・
{あ、消しゴム 消しゴム}
〈ハドラーさん ここの背景はベタで あ、黒く塗って下さい〉
「・・・ああ」
[・・・お水です ハドラーさま・・・]
「うむ お前は少し休んでいろ ・・・と言っても
もう部屋の中には寝れるスペースはないな・・・」
〈大丈夫です・・・ そろそろ アレ?
ない!! 終わったよみんな!!〉
{え・・・
ええーーーーっ
本当かい 祝福せよーーー!!}
〈漫画修羅道からの解脱・・!!
ニルヴァーナーーーーーーーーーーー!!!〉
『よかったですね・・・・!』
シャーーーッ
〈ごらん世界は美しい・・・・・・!!〉
たしかに明けたカーテンから見える太陽はいつにもまして・・・
「うつくしいな・・・」
[はい とても・・・・・・]
{そうだね
いつものことだけど室内は嵐の後のようだけど・・・・・・}
部屋の床は散乱する紙くずや消しゴムのカスで足の踏み場もない
とりあえず掃除するか・・・
{ああジゼルちゃん足にスクリーントーンついちゃってるよ}
〈じゃあ私は原稿の最終チェックしますから
掃除とお焚き上げ入稿の準備をお願いします〉
「お焚き上げ入稿? なんだそれは?」
〈天界に直接送る方法です〉
{あれ心臓に悪いんだよね・・・ あ、ちょっとしつれ・・・
バ・・・
バッチカン!}
[へんなくしゃみ!]
・・・
・・・・・・
これが神々の領域か・・・
まさかあれだけ苦労して仕上げた原稿を燃やすことで天界に直送するとは
たしかにあれは心臓に悪い オレのふたつある心臓がひとつ止まりかけたぞ
『私もあんな方法があるとは知りませんでした
煙が天界に通じるというのは知ってましたが・・・・・・』
[次はわたしが点火したいです!ボッって]
「オレは正直この仕事は二度とゴメンだがな」
{いやー おつかれさまでしたハドラーさん
あなたが聖人の列に入ってくれたことを心から感謝します}
「いやオレは聖人になったおぼえはないぞ」
〈ありがとうございました ハドラーさん
おかげで地獄印刷所のお休みまでに間に合いそうです〉
聖人たちが同時にオレの手を片方ずつ握手してくる
本来ならすぐにふりほどくところだが 不思議とそれができない
これが聖人の片鱗・・・ということか
〈ハドラーさん この後はゆっくりしていきますか?
ビールもだしますよ〉
「いや それはまたの機会だ 今のオレは
太陽のもと 散歩でもしたい気分だ・・・」
〈わかります その気持ち 苦行明けの太陽の美しさは
ビールいっぱいの気持ちよさに並びます〉
{そうだ!お礼にパンチとロン毛の一発ネタなんてどう?
せっかくだから君がメインのネタで・・・}
〈そうだね じゃあ・・・jrで〉
原稿をかいていた方の聖人が自分と同じ髪型の像を転がし
自身も同じ向きで奥側に寝転んだ
〈幽体離脱~~!〉
!?
[アハハハハハ!!!]
ジゼルは爆笑しているが
「・・・ククッ クハハハハハ!!」
オレも笑ってしまった 今のネタが・・・というわけではない
聖人のはずのこの男がやったことに・・・
いや どこか聖人というものに気圧されていた自分にか・・・
ひとしきり笑った後 ようやくここを離れることにした
{ハドラーさんの紙芝居を本人に読んでほしかったのですが残念です}
〈いや 君・・・ 自分がかいたものを朗読なんてかなり精神的苦行だよ
私でも今やるのはためらうレベルの・・・〉
「・・・オレはそうでもないが まあそれも次の機会にしてくれ」
『もう2度と呼ぶな とは言わないのですね』
・・・オレとしたことが その言葉がでない
やはりさっさと出るべきだな
「・・・いくぞジゼル」
[はい!ハドラー様♡]
オレたちは松田ハイツをあとにし 空を飛びながら街を眺めた
「ずいぶんと空気が違う世界だな オレが今まで行ったどの世界とも違う
・・・ふむ 大きな川があるな ここを下ればやはり海があるのか?」
[海・・・ 見てみたいですハドラーさま!!]
「そうだな・・・ 異世界の海・・・見てみるか」
川を下っていくと地上から僅かに太陽の力を感じた
「・・・どういうことだ これは?
おいジゼル一度地上に下りるぞ」
[はい!ハドラー様]
地上に下りるとそこには・・・
【まったくてめぇらは あいかわらずよー・・・】
≪ククク・・・ 今日こそは太陽が屈するときだ・・・≫
戦闘がはじまろうとしていた・・・!
今回は書いてて本当に楽しかったです。
まあいつも好きで書いてるのですが、今回はクロス相手が濃すぎて
色々ふっきれました ハドラー家が押されてしまいます
もうだめだ・・・みんな救われるんだ・・・・・・・
登場人物は実在の人物であり規約等(もっとヤバイものにも)にひっかかるおそれもあり
あえて名前を伏せていますがタグでわかる人にはわかると思います。
(織田の殿様や劉皇叔が実名で出る作品もあるし聖☆お兄さんの二次創作を投稿する方もいらっしゃるので漫画やゲームになってる偉人はセーフかもしれませんが)
そして次回はまた別作品とのクロス 本当はこっちの方が先に思いついていたので書くのが楽しみです。