ハドラー子育て日記 異世界家族旅行編   作:ウジョー

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居酒屋ハシゴの旅 THE大虎

空を移動するときに目印となった塔がよく見える

サンシャインに案内された居酒屋・・・

 

「THE 大虎か」

 

暖簾に書かれた文字をそのまま読んだ

 

「先の店[のぶ]はできて間がない新しい店だったが

ここは明らかに古強者のような風格を感じるな」

 

【グォフォフォフォ 

たしかにワシが現役時代の頃とまるで変わらん店構えだ

・・・そういえば看板に電飾が加わっているのう

さあ 入るか】

 

ガラ             ピシャン

 

〔いらっしゃいませ〕〔らっしゃい〕

 

〔あ、 サン、サンシャインや!〕

 

〔やっぱりきたで もう一人でかいのつれとる!〕

 

歴戦のたたずまいの店に入るとにぎやかな声が出迎えてきた

たしかに[のぶ]とは店員や客からしてまったく違うな

その中でカウンター席に座る客

三つの顔 一際大きな背中 六本の腕 膝から先を失った片足

そしてこの王者のような風格・・・ この男がサンシャインの・・・

 

【またせたなアシュラマン】

 

【先にやってるぞ サンシャイン そちらは?】

 

「オレの名はハドラー ・・・はぐれ悪魔だ」

 

【そうかわたしは・・・おなじく はぐれ悪魔超人のアシュラマンだ

まあ座るがいい 飲むか?】

 

「ビールか・・・ さっきも飲んだが最初の1、2杯はうまかったが

どうにも酒精がものたりなくてな」

 

〔そらあんさんらみたいな でかいガタイのレスラーやったら

ビールの一本や二本じゃ酔えへんやろが こうしたらどや!〕

 

近くにいた一際小さな男の客がアシュラマンのすすめてきた

ビールのコップにストローをいれてきた

 

「こうか?」

 

そのコップを受け取りストローで飲んでみる

・・・ほうたしかにひと味違うな

 

〔どや コップでガブ飲みやと酸素も一緒に吸い込むさかい味もええが

ストローやとそれがなく呼吸が苦しい上に ノドに首周りにも

力が入るさけ血圧も上がると

ついでに飲むときに炭酸がとばへんで胃の中であったまって炭酸が

発生して吸収がようなるんや 簡単に酔えるようになるで〕

 

「なるほど 理屈だな」

 

【面白い 流石酒屋のボンさんだ 今のお話に一杯おごりましょ】

 

〔こらーボン、おんどりゃえらそーに薀蓄たれてからに

昔日照り顔のお客はんのうけうりそのまんまやないか!〕

 

〔とっつあんもようおぼえとるな 鷹も雁も大阪に巣があった頃やろが

流石に専売特許かて期限切れやて〕

 

〔なつかしいですね景虎くんも夏子ちゃんもこんなに小さかった頃ですね〕

 

〔中島先生もよう憶えとりますな〕

 

【大将 こっちにもビールをストローつきで】

 

【わたしももう一杯】

 

〔まいど!〕

 

\\カキィーーン  なんだー2回表四番の微笑も初球攻撃だー!!//

 

〔なんや!?〕

 

店内の者が一斉に快音につられて悪魔の目玉のような

映像装置に振り向いた

 

   \\微笑三太郎にっこり笑ってレフトスタンドだあーー!!//

 

〔ああー!池畑打たれとるやないけ 

大阪出身の意地を見せたらんかいな〕

 

〔京都に新球団ができたんはうれしいけどな〕

 

【京都か我ら悪魔超人にとっても聖地とも呼ぶべき場所だ】

 

【あのお方が我らの始祖を導いた土地だからな】

 

「ほう!なかなか面白そうな話が聞けそうだ」

 

・・・

・・・・・・・

・・・・・・・・・・

 

酒がすすみ話もすすみ周りの客も巻き込んで盛り上がっていく

 

   \\ああ~~~~ なんという投法だあー//

 

〔でたで!大回転や〕

 

     \\ああ~~~~ 空振りだあー//

\\大回転にタイミングが狂わされバットが踊らされた~~//

 

〔男やで池畑!!〕

 

【見事な一投だったな 打たれた四番に対してこれ以上ないリベンジだ】

 

【グムゥ~~ 超人顔負けの投法だのう 新技の参考になりそうだ】

 

「打ちも打ったり 投げも投げたり 野球を見るのははじめてだが

酒を片手に野次を聞きながら真剣勝負を見るのも

なかなか面白いものだな」

 

『私にはよくわかりませんが・・・その煮込みはおいしそうですね』

 

たしかにここの煮込みはうまい

サンシャインがすすめるだけのことはある

深みがあり酒にも飯にもあう

あの大将がつくっているようだが この味が盗めないものか

 

〔なかなかのドリームホークスやけど

やっぱりちょっとものたりんのう〕

 

〔キヒヒヒ そらしょうがないわな肝心な人がおらんのやから〕

 

〔そや山田屋!肝心なやつがおらんで!

おやっさんここにおらんゆうことはそうゆうこっちゃないんか!?〕

 

〔あ~

わしもそれやったら店閉めてでも甲子園球場へ

かけつけるところやが・・・〕

 

〔サッちゃんも知らんのかいな?〕

 

〔別になんとも言ってません ただしばらく店にはでれないと〕

 

「何の話だ?」

 

〔なんや知らんのかいな でっかい兄さん

ここの店の娘ムコののんべはただもんやないで!〕

 

「ほう」

 

【野球界の超人・景浦安武 通称あぶさんだ】

 

【まてサンシャイン まさかそれはオレ達が現役時代に

あの三冠王と代打のみで本塁打王争いをしていたあの男か?】

 

【そう 球界屈指の酒豪と呼ばれながら

30年以上のプロの現役生活 40代での三度の三冠達成

60歳を超えての4割達成 あげればキリがない伝説のスラッガーだ】

 

ぐびっと酒を飲みながらサンシャインの解説が入る

野球の記録はピンとこないが人間の古強者のようだ

 

[あぶさん]とやらの話題がでた途端さらに店内は盛り上がり

野球観戦の熱も上がっていく

 

【甲子園球場か・・・ 魔物の住む聖地

ワシにとっても思い出深いのう

あのお方の側で観戦の栄誉をえたあの日が懐かしい】

 

【あのキン肉マンとネメシスの試合は正義超人と完璧超人の

新たな歴史の一歩を踏み出した重要な試合だったな

・・・わたしはあのときジャスティスマンにKOされて意識がなかったが】

 

アシュラマンの顔が無表情な面に切り替わり沈んでいた

 

〔そ!そういえばつい最近 そこの通天閣でもキン肉マンⅡ世が

超人オリンピックの本戦をやってるのを見に行ったな〕

 

〔いったいった!関空でも試合があったし

あのときには大阪が随分盛り上がったもんや〕

 

〔もっと前には大阪ドームであんさんらが主催した興行もあったのう〕

 

【改めて考えるとここ関西は悪魔・正義超人にとっても重要な土地じゃ

兵庫、大阪、そして京都・・・ 感慨深いのう・・・】

 

「オレにはよくわからんが

腰をすえて聞かせてもらえるか?」

 

サンシャインたちの空いたコップに酒を注ぎつづきを促した

 

・・・

・・・・・・・

・・・・・・・・・・・

 

 \\さあーーー 例によって四股踏みの儀式です大垣!!//

 

【カーカカカ! 力士に忍者に侍 さらには覆面・・・

まるでリングの上だな 野球場も中々懐が深い】

 

〔そうやな 両チームともすごい面子を揃えたもんや〕

 

〔そう聞くと超人レスリングも大概やな なんでもありや〕

 

    \\グワキィーーーーーーン//

 \\な なんとレフトスタンドに飛び込んだーーー//

\\勇み足の大垣が雪辱の同点ホームランだぁーーーー//

 

〔おお!!7回にまた同点や これはまた面白くなるで〕

 

〔ここや!こういった試合にこそあぶさんの出番やないか!

よっぱらいの白川使うぐらいなら

・・・ってあいつバッターボックスで寝とるで!?〕

 

「戦場でよっぱらって寝るとは あの男どんな心臓をしている」

 

『あなたのように二つあるのでは?』

 

【グオッフォッフォッフォ どうやら今度はそのよっぱらいの白川が

投げるようだぞ まだまだ楽しめそうだ 大将 ひやをおかわり】

 

〔こっちもやおでんとビール追加!!〕

 

「オレも煮込みをもうひとつ」

 

・・・そしてついに試合は

 

\\さあーー反撃です!!ワンアウト一・二塁とチャンスを広げたのです!!//

 

〔9回裏!一点負けとるこの正念場 打順は六番の根暗

もうここしかないで!〕

 

    バン!!

 

〔せや!!代打の切り札ここで切らんでどうするんや!!〕

 

〔なんでや なんでベンチは動かへんのや!?〕

 

【たしかにあぶさんがでるとしたらここしかない】

 

「だが 代わりはなしか」

 

 \\カキィ!!   根暗これを逆らわず軽打!!//

 

〔ああ・・・〕

 

〔つっこんだ音武田が本塁でアウトや〕

 

  \\真田 空中から大垣にタッチだあーーー//

 

「終わったな」

 

【ああ】

 

\\アウトー!!鮮やか真田 回転ジャンプの劇的忍者プレーだあーー//

 

     \\ウォーリアーズ決勝進出だあーーー//

 

〔ああ なんでや監督 あぶがでれんならトラがいるやないけ・・・〕

 

〔そうやな 物干し竿をうけついだトラまで出番なしとは・・・

一発勝負のトーナメント もうこれでおしまいや〕

 

【虎? 鷹のチームではなかったのか?】

 

【ぬ】

 

アシュラマンの疑問の声にサンシャインの表情が凍った

 

〔あんさん知らんのかいな トラゆうたらあぶの息子の景虎や

つまりこのとっつあんの孫でサッちゃんの息子っちゅうこっちゃ〕

 

【む・・・むすこ・・・】

 

【アシュラ・・・】

 

アシュラマンの様子が明らかに変わった

隣に座っていたサンシャインがそれに気付き声をかける

 

【ち・・・父と子が同じチームで共に戦っているのか?】

 

〔そうや 野球界最高の親子鷹やで

まあ そこにいたるまでホンマ長かったけどな〕

 

〔そうやな 運命のドラフトでくじびきの末同じリーグで敵同士

あんときは試合のたんび 勝負のたんびに

店の空気がなんともいえんものになったもんや〕

 

〔そうでしたね 大虎さんも屋号を変えようとか言っていたり

ユニフォームを重ねて着ていたりしてましたね〕

 

〔ほんまあんときはしんどかったわ わても苦悩の日々やった

わてのほれこんだムコどのと愛する孫との骨肉の争い

かわいいサチ子もどっちが勝ってもいつも辛そうで・・・

二人とも常に必死な真剣勝負・・・ ほんまなんちゅうたらいいか〕

 

『大将さんも給仕をしていたサチ子さんも涙をうかべていますね』

 

【・・・】

 

「骨肉の争いか・・・」

 

手に持った酒にあの男の面影がうつる

 

「オレの最初の息子は・・・

アシュラマンのように6本の腕をもっていた

オレの当時の部下の中で最も優秀で骨があり

つねに最も重要な役目を任せていた」

 

【・・・・・・・・・】

 

あえてアシュラマンの顔を見ず酒をあおる

 

『むこうは3つの顔で見てきますが』

 

「だが・・・ 最悪の時に決定的な裏切りをはたらき・・・!

オレは大敗を喫し そしてこの手で直接引導を渡した」

 

コト・・・  グ・・・!!

空のコップを置き右拳につい力が入る・・・

この拳で・・・!

 

【ハドラー・・・ おまえも・・・】

 

【わたしと同じ・・・業を背負っていたのか】

 

「オレはあのときの言動はともかく

行動そのものは悔いていない・・・いないが」

 

『・・・・・・あなた』

 

トクトクトク・・・

 

【飲むがいい・・・ いや飲んでほしい】

 

アシュラマンがオレのコップに酒を注ぐ

その隣ではサンシャインが泣いていた

 

『サンシャインさん悪魔にしておくには心が優しすぎませんか?』

 

・・・情が深いのだろう

 

グビ ドクドク

 

「ふう」

 

オレはアシュラマンの方を向き やつのコップに酒を注いだ

 

トクトク

 

【ウ・・・    シ・・・   シバ・・・・・・・】

 

アシュラマンの三面が全て泣いていた

 

『あの顔 あの目・・・ 見覚えがあります』

 

ム?

 

『バルトスさんたちのことを思い出しているときのあなたの・・・

子供を亡くした 親の目です』

 

・・・そうか

 

【育てるというのは 本当に難しいものだ】

 

店にいる者全員が頷いたようだ みな心当たりがあるのだろう

 

「・・・さて 結局 噂の[あぶさん]とやらが見れなかったのは

少し 残念だったな」

 

〔せ・せやな! まったくあぶのやつどこでのんだくれてんねん

恩師の岩田鉄五郎はんかてこないだドカベン山田太郎を

見事におさえたったちゅうのに!〕

 

〔そ!そうや あのピッチングみて老けこんどるようなムコどのやない!!〕

 

【!?ちょ、ちょっとまってくれ 岩田鉄五郎というと

わたしたちが現役のときでさえ60とかではなかったか?!

あのときでさえ選手として活躍していたのが驚きだったが・・・】

 

【グオッフォフォフォ そう その岩田鉄五郎だ

ワシらが現役のときにちょうど今のワシらぐらいの歳だったはずだ

ワシもつい先日その登板していた試合をみたが

あのときに劣らぬ勝利に対する執念 鋭さを増した老獪な駆け引き

超人よりも超人のような男だった ワシも老け込んではいられん】

 

『マトリフさんやブロキーナさんのような方ですかね』

 

あのアバンの仲間の老いぼれたちか やつらは強かった・・・

 

〔さすが!ようわかっとるなサンシャインのおっちゃん!〕

 

〔おたくら次の超人レスリングの興行はいつや?

今度は応援したるで!!〕

 

〔せやせやプロ野球がこんだけ盛り上がってるんや

負けずにドリーム見せたらな客が離れてまうで〕

 

【グオッフォフォフォフォ ワシもそれは考えていたところだった

だからこそ今日アシュラマンに声をかけ ハドラーを誘い

ともにこの店でのんでいるわけだ】

 

〔おお!〕

 

【まさに時が来た!

現在新世代正義超人(ニュージェネレーション)の主力は過去に派遣され戦力を大きく欠き

タイムマシン作成のために人間たちの建造物を破壊したことで

色々と面白いことになっている】

 

【弱体化していたのではつまらんだろう

満天下に悪魔超人の強さを見せるのであれば

万太郎たちがいるときの方がよかろう】

 

【アシュラマンよ おまえやワシが本当にリングで戦いたいのはだれだ?

万太郎やテリー・ザ・キッドたち新世代正義超人ではなかろう

今は伝説超人(レジェンド)とよばれる・・・

初代キン肉マンやテリーマン ジェロニモたちではないのか】

 

【そうか!主力がいない今だかろこそ引退したあいつらを

我らのライバルたちをひっぱりだすまさに好機!!】

 

【そう そしてその大義名分もある

人間と超人 その交流を目的とすればやつらは必ずでてくる

超人委員会も後継者たちが過去に行き前委員長のハラボテの指揮だ】

 

【連絡もつけやすいか

カーカカカ ダテに歳はとっておらんなサンシャイン】

 

オレの目の前で何かがつくられていく

 

【レディース アンド ジェントルメン!

ここに関西を舞台にした大興行を提案する!

その名も! 超人一等祭!! 悪魔・正義の属性 超人・人間の種族

新・旧世代も超えて行う超人オリンピックを超える一大興行!!】

 

〔そいつはおもろそうや!!

この弁当屋も協力はおしまんで!〕

 

〔山田屋ばっかりにええかっこさせんで!

わてんとこの酒屋も負けん!〕

 

〔ボン!おんどれこそワシの居酒屋大虎を忘れたらあかんで!

屋台で赤ちょうちん大虎 煮込みつきでだしたるがな!!〕

 

〔私も絵描きのはしくれとして関わりたいですね

せっかくのご縁です〕

 

〔中島先生も乗り気ですね〕

 

【グオッフォフォフォフォ どうだ アシュラマンにハドラー

できる気がしてきただろう

年なんて関係ない メラメラと燃える闘志がオレたちにはあるんだ】

 

「オレもか!? まあ面白そうなのは間違いない

おまえたちがこれほどまでこだわるライバルたちにも興味がある

よろこんで参戦しよう 協力は惜しまん」

 

【グオッフォフォフォフォ!さあ今日はオレのおごりだ

そして改めてみなさんにも興行への協力お願いする!!】

 

【わたしももとう 人間の岩田や景浦に負けてはいられん

老いてますます夢が心が猛るままに!

魔界のプリンス・アシュラマン本当の再生(リボーン)の前祝だ!!

カーーーカカカ!!!!!】

 

〔よっしゃ サッちゃん焼き鳥追加!あと乾杯するからビール!〕

 

〔よっしゃ!わても飲むで!〕

 

\\\\ かんぱーーーい!! ////




好きなものをひたすら書き散らかしたウジョーです
バルトスさんいなかったら「ダイの大冒険」要素なくなりそうです。
今連載中のドカベンにあぶさんが出るドリームはくるのか?!
やっぱりウォーリアーズ最後の打者で代打かそれともスターズの秘密兵器か?

書きたいことがたまる一方で体がついていきませんが
超人一等祭の冒頭ぐらいは年内に書ければいいかな、といった調子です。

霜月に入り朝晩は本当に寒くなってまいりました
インフルエンザの脅威も含め特に体調を崩しやすい時期
健康にお気をつけくださいませ。

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