F-1で怪異に物申す!   作:べっけべけ

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どうもおはこんばんにちは。
前回投稿した話を一旦区切ってこの話が友人の投稿小説と同じ所で終わるように調節しました。


番外編:異世界ファンタジーその3

場所は変わってあの駐機場(エプロン)。操縦席まで登る機材が無いので機体の空気取り入れ口(エアインテーク)に手足を掛けてよじ登る。

 

しばらくの間陽射しの下に晒されていたからか、触れた手にはかなり温かい温度が伝わってきていた。

 

キャノピーのヒンジ部分の少し後ろにはこの機体の電子機器室がある。T-2の頃には後部座席のキャノピーだった部分をF-104やT-4のキャノピーのように横に開けると、その開けたドアの裏に黒い箱のような部分が見受けられた。

 

手荷物室の中から9mm拳銃を取り出す。航空自衛隊である事を示す桜のみのマークが刻印されていた。

 

「それは……9mm拳銃か?」

 

「そうそう。護身用には良いかなって」

 

それともう二つ手荷物から取り出した。

 

「……それは?」

 

「さすがにこの格好で歩き回るのはちょっとアレだからね」

 

取り出したのは作業着と半長靴。電子機器室を閉じてから機体の上から飛び降りるとまたもや鈍い痺れが脚から腰にかけて走り回った。

 

「コックピット見てみたいんだけど……梯子とかあるかな?」

 

救命胴衣と耐水服を脱いでいる途中で吉晴に聞かれた。

 

「一応ある筈だよ。外付けのやつ」

 

そう答えるのもつかの間。吉晴が手をかざすとF-1の操縦席の淵に梯子が掛けられていた。

 

「これ?」

 

「うん、たぶんそれ」

 

何やら後ろの吉晴嫁〜ズが騒いでいるかと思えば、自分の格好に気がついた。

 

耐水服を脱いだ状態なのでパンツ一丁なのである。

 

俺はすぐに着替えを再開した。

 

 

 

 

 

 

 

「……よしっと」

 

半長靴の紐を結び終わり立ち上がる。制式配備ではないが、カタログなどにも載っているP220対応のカイデックス製のホルスターに9mm拳銃を差した。

 

「うわー……」

 

梯子の上では吉晴が未だに結奈と機体の中を見ていた。どうやら計器が古い事に驚いていたようだった。

 

(アイツは零戦の計器は名称もあるから見やすいって言ってたな……)

 

懐かしい友達の事を思い出し、少し耽っていると彼から声を掛けられた。

 

「んじゃ、今度はこっちも良い物を見せよう!こっち来てー」

 

カンカンと金属音を立てて梯子を降りると、足早に歩き出してしまった。

 

 

……そして歩く事数十秒。先ほどの駐機場(エプロン)とは真反対の所にもう一つの巨大な格納庫(ハンガー)がそびえていた。

 

正面の大きな扉ではなく作業員用の小さな出入口から中へと入る。

 

「おおっ暗いな……」

 

そう俺が呟く隣で吉晴は証明の操作でもしているのだろう、操作盤のスイッチをガチャガチャと切り替えていた。

 

すぐに慣れた目にボンヤリと映る何か。何本もの垂直尾翼らしきものが幾つも佇んでおり、その内の半分程はステルス性を有しているのかある程度角度が付けられていた。

 

「うわっ……」

 

徐々に明るくなる室内。白く照らされたそれらの光景はどこかゲームのようだった。

 

F-22A(ラプター)Su(スホーイ)の……30?MKIか」

 

すぐにわかったF-22と違いスホーイファミリーは判別が難しい。何故わかったかというと、灰色に塗られた機体とそのキャノピーの下に丸いインド空軍の国籍マーク(ラウンデル)が塗られていたからである。

 

2機のF-22Aと1機のSu-30MKI。現役戦闘機がこんなにも並んでいるとは思ってもみなかった。

 

どちらも今までに見たことが無い機体。はしゃがずにはいられなかった俺は隅々まで眺め始めた。

 

 

 

 

 

「吉晴達が戦ってる国はこんな戦力が必要な程なのか?」

 

「俺はそう思ってる。なんてったって敵の戦闘機にF/A-18(ホーネット)が機動戦で負けたんだ。こいつらで負けたら、今度こそ困るな……」

 

「そんなにか……」

 

おそらく機動戦というとキャノピー・トゥ・キャノピーからの巴戦で負けたのだろう。……視界外戦闘範囲からでは攻撃する事のできなかったのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって草原地帯。俺は今 M998HMMWV(ハンヴィー)の後部座席で上下左右に揺られていた。

 

「けっ、けっこう揺れるんだな」

 

口を開けば舌を噛みそうな程激しい振動がひっきりなしに襲う。

 

「舗装路じゃ無いからっねっ、多少はガマっンさ」

 

かく言う彼も途切れ途切れに話す。

 

何故か全く木の無い草原……まるで牧場内を走っているようだ。

 

唐突にブレーキが掛けられ、俺の身体はシートベルトに食い込んだ。

 

「───っ、どうしたの?」

 

「吉晴さん、前方600mにゴブリンの群れです。数は15程ですかね、まだこちらには気づいていないようです」

 

「さすがリュミ、助かるよ」

 

そう言って吉晴はシートベルトを外し、後部座席の方へとやって来た。

 

(ゴ、ゴブリン?)

 

ただ1人状況が理解出来ていない俺は何をすべきかわからなかった。

 

吉晴の手によって開けられる天井の銃座ハッチ。すると彼の手には1丁の小銃が握られていた。

 

外見はAR-15やM16などあの有名どころっぽいが、どうやら5.56mmでなさそうだ。それは彼の手中にある弾倉の大きさが物語っていた。

 

二脚を開きガコン、と重い金属音を立てて置かれたその銃にはスコープが付いていた。

 

「その銃は?」

 

「SR-25。聞いたことない?」

 

「あぁ、アレか」

 

よくFPSゲームなどをやっていた友人が何度か口にしていた名前。沢山あるバリエーションに覚えることを諦めた中学の俺が懐かしい。

 

弾倉が押し込まれ、槓杆(チャージングハンドル)が引かれカシャン!と薬室内に実包が装填される音がした。

 

(マジか、撃つのか)

 

あとは引き金を引くだけで発砲が可能な銃を目の前にして俺は自分の耳を両手の人差し指で塞いだ。

 

 

 

パアァン!

 

耳を塞いでいる為か少し篭った破裂音が1つ。銃床から顔を離した彼は何か話しているようだったので耳から手を離すことにした。

 

「──。そうだ、ハジメも銃持ってたろ?」

 

「イヤ……こいつ(9mm拳銃)でやれと?」

 

「……そうだった」

 

ホルスターに手を添えながら半笑いすると、彼も思い出したように苦笑いをしていた。

 

「こんなのから……こんなのまであるよ?」

 

そう言いながら彼の両手に次々と銃が光を放ちながら召喚される。

 

猟銃などでよく見るM700系統やM4A1、終いにはM82A1が車内の足元に置かれた。

 

この中で撃てるとすれば12.7mmよりも小さな口径。しかし俺としてはこれらの銃よりも今は機体の中に置いてきてしまっているアイツ(・・・)の方が使いたいと思った。

 

「64とか出せる?」

 

「ロクヨン……64式小銃の事か?」

 

「ああ」

 

「別に良いけど……」

 

少し驚いたような、呆れたような顔をすると、彼の手にはしっかりと64式小銃が握られていた。

 

「ほい」

 

「ありがとう」

 

そう礼を言って受け取り一通り確認をする。

真新しい輝きを放つ木製の握把(グリップ)銃床(ストック)。スライドから銃口まで塗られた黒い塗装は全く剥げた箇所が無かった。

 

車内の銃座には吉晴が居るので俺は下車してから撃とうと思ったが、俺に撃たせる気満々なのか場所を譲ってくれた。

 

「スコープとかいる?」

 

「うん、お願……いや、やっぱりいらないや」

 

最初はスコープを付けてやってみたいと思ったが、生憎俺にはミルなどの調整はわからない。……1km先の1mのズレが1ミルだっけか?

 

「ほい、マガジンと7.62mm弾」

 

そう言って渡された黒い64式用の弾倉と弾。しかし問題が起きた。

 

問題があるのは弾の方。手渡された紙箱に描かれた表紙だった。

 

茶色の箱に描かれているのはライフル銃を持って夕焼けに照らされる男性。明らかに日本の自衛隊で運用される物とは違うものだった。

 

箱を開けて1発取り出すとその薬莢底部には【.308 norma】の刻印が。これでは猟銃に使う為の装薬量になる為、規整子の方を調整しなければならない。

 

「これって減装弾…じゃないな」

 

「減装弾?」

 

最初は「?」といった感じで首をかしげた彼だったが、すぐに理解したのかすぐに召喚を行った。

 

「これでいいかい?」

 

その手には枯草色の箱が握られていた。

受け取るとそこには

 

A1・22 JA

7.62mmM80普通弾、

減装弾、20発

 

と印刷されていた。これなら間違いない。

 

箱から5発程実包を取り出し、弾倉に詰めていく。

 

レールとスコープを手に取るが……やはり自分には使えない。そう判断してハンヴィーの屋根の上に置いた。

 

耐水服から作業着に着替えた時から持って来ていたタブレットを操作してあるアプリを開く。

 

銃 クリック計算機

 

そう書かれたアプリを開くと、幾つかの入力画面が表示された。

 

距離 600m

風向 3時

風速 1m

 

修正量 右へ2クリック

 

指示された通りに右へ2クリック修正。コイツ(64式)の有効射程は確か400mだった筈……いくら何でも無茶がある。照門下の上下調整部分を回してガンガン上に上げていった。

 

「この方は何をしていらっしゃるのですか?」

 

「この銃を……何て言うかな……自分に合うように調整してるんだ。ちなみに自衛隊……伝説の勇者かな。彼らもこの銃を使っていたかも知れないよ」

 

「っ!?それは本当ですか!?」

 

下の車内で吉晴達が何か喋っていると思ったら金髪の王女さんが突然目の色を変えた。

急に食い入るようにこちらを見る視線は俺の体に穴が開くんじゃないかと思う程。

 

王女さん、そんな鼻息荒くしないでもっとお淑やかにいこう?

 

「な、なんだかやりづらいんだけども……」

 

「あっ申し訳ありません!」

 

「それより伝説の勇者……だったっけ?他にもこの世界には転移者が居るの?」

 

自衛隊が伝説の勇者……まぁ陸上自衛隊だろうなその部隊。

 

「いや、大昔の伝説だよ。その話は後でゆっくり話すよ。それより腕前を拝見しようか」

 

「そんなに期待されてもなぁ……」

 

俺みたいな素人の射撃は見るものじゃない。少しプレッシャーを背中に受けながら弾倉を差し込んだ。

 

槓杆を引いて薬室内に初弾を装填。切換金(セレクター)を引っ張り(安全)から(単発)に切り換えて人差し指を引き金にそっと添えた。

 

ゆっくりと引き絞り……解放。

もはや横に細長い影にしか見えないゴブリン達の群れへと弾頭が尻を一瞬こちらに光らせて消えていく。

 

キィィィィィィン……

 

イタズラで耳を叩かれた時のように甲高い音が耳の中で長鳴りする。

 

「───────ぇ」

 

なんて言ってるのかわからない。聞き返そうとすると、そこで耳鳴りは治まっていった。

 

「足元に着弾してたよ。もうちょい上」

 

「わかった……イヤーマフとか無い?」

 

「……渡すの忘れてたね」

 

大きさ的には補聴器程のイヤープラグを渡され、耳に押し込んだ。

 

(もうちょい上……)

 

照門の高さをもう少し上げると、再び構えた。

ちなみに2脚は使用していない。車の天井に両肘を置き、左手は弾倉前の下部被筒(ハンドガード)に手首を返した状態で掌底に載せていた。

 

息を吸い、8分目。

 

絞り切る。

 

ダァンッと空包とはまた違う重い音が少し篭った状態で聞こえた。すぐにイヤープラグは小さな音を拾い始め俺の耳にも周囲の音が届くようになっていた。

 

「おぉっ!」

 

「あ……当たったのか?」

 

「おぉ~首かな?ありゃ即死だねぇ。なかなかやるじゃん」

 

全然そうした感覚が無い。ナイフなど近接武器のように(コイツ)には人や動物の命を絶つ感触が伝わってこない……伝わるのは燃焼後の火薬の匂いと多少の反動だけである。

 

 

「………ありがとう?……だけどあれゴブリンこっちに向かって来てない?」

 

前方では何やら砂埃が立つ程に駆け足をしているらしい。砂色を背景に影の塊が横に広がっていた。

 

「ハジメ、そこ代わってくれ。一気に蹴散らす」

 

「あいよ」

 

すぐに銃座から降りると、俺はドアを開けて外に出た。

車内からでは彼の手元が今ひとつ見えづらいからだ。

 

「……こい!」

 

銃座でそう言いながら両手を伸ばすと両手の中心でまた召喚が発生した。長い銃身を幾つも束ねた無痛ガン……M134が姿を現した。

 

(ミニガンかよ……)

 

「よしっ!」

 

撃つ気満々。俺は彼の視線の先に居るゴブリン達の群れらしき黒い影へと手を合わせた。南無三。

 

途端に音を遮断するイヤープラグ。繋がり過ぎて一つにしか聞こえない銃声がこの辺りに木霊でもしているのだろう。無縁火薬にも関わらずハンヴィーの周りは薄くはあるが真っ白になっていた。

 

「……よしっ!行ってみるか!」

 

そう言って彼は車内の運転席に戻っていった。

…………真っ赤になった銃身のM134は支える主が居なくなってしまった為かバランスを崩し斜めに上を向いていた。

 

 

 

足下の7.62mmNATO弾の空薬莢をジャラジャラと足で蹴飛ばしながらハンヴィーに揺られていると、先程のゴブリン達の居た場所に到着した。何でもゴブリンから体の一部を剥ぎ取ってギルドに持って行くそうだ。

……ミニガンの掃射を受けて死体が残っていると良いな、吉晴よ。

 

 

車から降りると第1歩目。グチャリと地面が沈んだ。やはり辺りのゴブリン達はゴブリンだったナニカに変貌を遂げていた。鹿や熊、猪などとは少し違った臭いが鼻を刺し思わず顔をしかめた。

 

これまた吉晴に渡されたM9銃剣でゴブリンの頭部を探し、頭蓋骨の上顎に刃先を当てる。

ミシリと骨と骨との結合が外れていく音が銃剣を通じて手に伝わる。

 

狙いはコイツらの犬歯。1本単位でギルドで引き取っているそうだ。さすがは異世界、冒険者ギルドがあるらしい。

 

血の匂いと内容物だった物の放つ悪臭が鼻を刺す。どうやら吉晴の嫁〜ズはこの臭いに耐えられないらしく、大人しく車内で待っていた。

 

幾度となく嘔吐感に襲われながらもどうにか犬歯の回収を進めていく。

 

「今頃だけどハジメはこういうのは平気なのか?」

 

こういうの……とはこの目の前のR-18指定の掛かりそうな光景のことだろう。

 

「まぁ、慣れてる……ってわけじゃないけど元の世界で叔父さんの鹿の解体見てたからなんとか耐えられる状況」

 

しかしアレは作業場であり食肉加工のようなものだ。今のこの状況は殺戮の現場であり辺りが血の海とかグロすぎる。

 

「そうか……俺は口の中が酸っぱい……」

 

幾つかの犬歯は主諸共粉々のミンチになってしまっており、とてもじゃないがどれがどれだか判別も不可能な状態だった。……やっぱミニガン(M134)はオーバーキルすぎたな、吉晴よ。

 

「ふんっ!」

 

吉晴が先程のSR-25とやらの銃床をゴブリンの亡骸へと叩きつける。どうやら彼はそれで回収しているようで、その銃床は血に濡れて肉片までもがへばり付いていた。

 

ピチョン

 

そんな音を立てて一つの肉片が俺の顔……鼻先にくっついた。

 

スーパーで並ぶ肉や解体中の鹿や猪の肉とは違う匂い。血なのかどうかわからないが、それは解体中に内蔵、それも消化器官を傷付けた際のトラウマを思い起こさせる。もしくは相当な年月が経って変質した機械油に似ていた。

 

「う"っ……」

 

「大丈夫か?ハジメ」

 

「大丈bおろろろろろろろろ」

 

「ハジメぇぇぇぇぇぇ!」

 

訂正。やっぱ無理だった。

……そもそも俺の胃袋にモノって入っていたんだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

召喚してもらった飲料水で濯いだがまだ喉が痛い。

 

「これは……どうするんだ?」

 

目の前の赤黒い池を前にそう口にする。ここまで悪臭を放つものを放置しようものなら他の野犬などが来るわ腐敗して伝染病などの原因にもなるわで大変な事になる。

 

「これは食おうにも食えないからねぇ。かと言って売れもしないし、ほっとけば他の魔獣呼び寄せるだけだから、燃やす」

 

そう言って手元に召喚された赤いポリタンク。吉晴が撒き始めると揮発油の独特の臭いがしたのでおそらく引火性の液体なのだろう、灯油だろうか?

 

どこからともなくマッチを取り出し、着火。火を纏いながらほんの少し宙を舞った木片は地面に落ちると同時に一気にその燃焼範囲を広げていった。

 

「よし、じゃあ行こうか」

 

「あいよ」

 

(……大丈夫か?これ?)

 

辺りには草原だけが広がっているが、元の世界で野焼きが原因で山火事が起きた事を思い出しながらも知らないふりをした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから暫くの間吉晴の運転により揺られること数十分。ある程度舗装された街道に到達した。

 

それからこの世界の文明レベルを示すような馬車を何度か目にし、話に聞いていた街の様子が脳裏に浮かび上がった。

 

「どう?モンハンみたいな世界に現代兵器持ち込んだチートは」

 

「何というか……カオスだね。きっと今無敵でしょ?」

 

俺は異世界ファンタジーで俺TUEEEしてるものだと思っていたが、意外な答えが返ってきた。

 

「いんや、案外そうでも無いんだ。7.62mmを弾く魔獣もざらに居るし、電撃で銃弾を融かす化け物もいるし、20mm機関砲を弾くドラゴンはいるわ戦艦大和の46cm砲でも倒せないやつも居る……」

 

サラッと大和って言いやがった。てかあの主砲で倒せないとはいったい何なのか……

 

「うわぁ大和って……本当に何でも出せるんだな……代償とかないの?」

 

ここまでポコポコ出しているのを聞くと思わず聞いてしまった質問。

 

「そういうのは無いかな。寿命とか犠牲にしなくて本当によかったわ。まぁあえて代償と言うなら、元の世界を捨てたことかな? まぁ、それに余りある恩恵を受けてるけどね」

 

あのフィー何とかさんっていう女神の事なのだろう。

 

「そうみたいだな……とても幸せそうだ。爆破したい程に」

 

彼の隣の座席と俺の隣に座っている嫁〜ズを見るが、そういった印象しか受けなかった。

 

「お、見えてきた。あれがトローデスの入り口、関所みたいなもんだ」

 

そう言って彼が指差すその先には……城壁らしき壁。

 

「あれって……モンハンっていうよりも進撃の巨人かアサシンクリードじゃね?」

 

 

 

 

かなり近づき、街道に並ぶ馬車が見え始めた。その先には門があるらしく通行の許可でも貰っているのだろう。

 

「あの甲冑の人は兵士か?」

 

「そうだよ。門番的な?並んでいるのは他国の商人とか冒険者とかハンターとか色々だ。特に商人の集団がいるとかなり時間を取られる」

 

「なら結構かかりそうかな」

 

「いや、俺達はこっちだ」

 

そう言ってハンドルが切られた。唐突に街道から外れた道なき道をガタガタ揺れながら街道に並ぶ馬車の横を通り過ぎていく。

 

一応屋根のある荷馬車は見た様子はアメリカのフロンティア時代の物が1番近い物だと思う。それらの真横を次々と抜けると、停車したのは門の目の前だった。

 

 

「っ!?姫様がお見えになられたぞ!」

 

「なっ!そんな予定……」

 

「馬鹿野郎!ご多忙なミーシャリア様だぞ!予定なんぞあてになるか!さっさと表へ出ろ!」

 

目の前に居た検問を行っていたのであろう兵士が彼女の存在に気がつくと、弾かれたように周りの人間へと伝え始めた。

 

すると隣に居たミーシャリアさんはシートベルトを外し、天井のハッチから身を乗り出した。

 

「毎度、いきなりで申し訳ありません。私どもはすぐに去りますのでお構いなくお仕事にお戻りください」

 

「慈悲深きお言葉、身に余る光栄にございます……。姫様自ら前線に行かれているというお噂は私どもにも伝えられております。姫様のご苦労に比べれば私など足下にも及びません」

 

何やらお固いやり取りが始まった……かに思えたが、先程やり取りをしていた現場監督?が部下に命令を出し始めた。

 

再び各自の持ち場へと戻る甲冑姿の兵士達。……あの装備で沼地に行ったらやはり沈んでしまうのだろうか?

などと考えていると、車はノロノロと徐行運転で進み始めた。

 

「ハンヴィーは割と浸透しているのか?」

 

先程からの疑問。周りの人の視線は物珍しさがあまり見受けられず、むしろ笑顔で手を振る人が多かった。

 

「最初は大変だった。奥にある2つ目の門あるでしょ?あれが王都への入り口なんだ。あの中はサイズの問題で入れないから手前で下ろすよ」  

 

「了解」

 

「そうだ。絶対俺達と離れるなよ?間違っても店の裏路地には近づかないこと」

 

「例えばどんなのがあるんだ?」

 

「……ゲイバー」

 

「…………わぁお。まぁ気をつけるよ」

 

一瞬で想像がついた。

 

 

「やはり自分の国に貧困で苦しむ者が居ると思うと、胸が痛いです……」

 

「気に病むことは無いよ。俺達の国でも程度の差こそあれども、確かに存在したから。どこの国でもいるさ。もっとも今は軍に志願して居るやつも多いだろうし」

 

彼曰く、軍隊に入れば衣食住は必ず提供されるらしい。そしてこの国は現在吉晴達が相手にしている国と戦り合っている。そこで人員の募集枠が広がった事で志願する人数も増えているらしい。

 

 

 

王都の前で停車。ここからは徒歩となるので全員が下車し、ハンヴィーは光り輝くと消失した。それと同時に彼の出した火器の類いも薬莢の一つも残さずに消えていった。

 

「ごっはん~♪ごっはん~♪」

 

「ふ~っっ!はぁぁ~ずっと座ってたから体が鈍ったかも……」

 

「王都は久しぶりですね、お買物したいです」

 

皆それぞれ楽しみにしている事があるらしい。俺は何があるのかなど全く知らないので誰かについて行くしかないが……それでは彼らのお邪魔虫だ。どうしよう?

 

「ようこそ、トローデス王都へ。ハジメ君」

 

HAHAHAHAと笑いそうな顔をして吉晴は振り向いた。

……俺はいったい何をすれば良いのだろうか?

 

 

 

 

 

……この時既に事は始まっていたのを俺は知る由も無かった。

 




本編の方はどうしましょうかね……原作沿いにするべきか少し違う話にしていくか……

ちなみに吉晴に空戦で勝つ方法を考えましたが……無理でした。

http://ncode.syosetu.com/n9019cn/

最近GATEを見直したら空自視点の二次創作書きたくなってきてしまった……短編で出すかもです

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