ユグドラシルでバランス崩壊がおきました   作:Q猫

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今回も思ったように話が進みません。
最初この話自体短編にしようと思ってたはずなんですが、自分はどうやってまとめる気だったのか。


ワールド・サーチャーズ

今後の方針を決めた後、アインズ・ウール・ゴウンのメンバーは【永劫の蛇の腕輪】取得のために動いた。

少人数で大丈夫かとの意見もあったが、いくつかの推測から祠に襲撃をかけにくるプレイヤーはほぼいないだろうということで意見がまとまった。

 

「限界突破チケット」を集めるにあたり、レベルは高いほうがいい。ボスと戦う必要があるからだ。

邪魔しにいった場合、PKされる確率は普通よりも高い。アインズ・ウール・ゴウンはPKされる可能性はギルドとして名高いからだ。

現状プレイヤーは可能な限りデスペナを受けたくないと考えるのは確度の高い予想と言える。

おまけに準備もなく【永劫の蛇の腕輪】を取得することはできないのだから、嫌がらせのためだけに襲撃をかけるには割に合わないと判断される可能性が高いのである。

 

前回の使用からちょうど1月のというのも都合がよい。

アインズ・ウール・ゴウンは少人数で意見取りまとめに時間がかからないからこそすぐに行動できるわけだが、普通のギルドがそのタイミングで動くのは入念な準備、具体的には人員をきっちりそろえて計画を立てていると見るのが普通である。

 

予想は当たり、アインズ・ウール・ゴウンは無事【永劫の蛇の腕輪】を入手した。

 

 

*   *   *

 

 

それから数日後、ぷにっと萌えとモモンガはワールド・サーチャーズとの同盟について相談していた。

 

「とりあえず連絡したところ、拠点で同盟について話し合いたいとの事です」

「話を聞いて貰えるのはありがたいですが、我々を迎え入れるのってあちらとしては大丈夫なんですか?」

 

言ってはなんですが悪役(PK)が乗り込むんですよ、と言うモモンガにぷにっと萌えは肩をすくめて答える。

 

「彼らにしてみれば、どこで会おうが危険度が変わらないのだからせめて有利な場所で会おうってことじゃないですかね」

「それじゃあ敵意がないことを示すために会う人数は制限しないといけないですね。こちらから同盟を持ちかけるのですし」

「それが妥当ですね。最悪モモンガさんと私だけってことになりそうですが」

「あまり貧相な装備で行ってなめられるのもありがたくないですが、威圧してもいけないし……加減が難しいな」

 

悩み始めるモモンガにぷにっと萌えはひとつの提案をする。

 

「そうそう、ついでだから『人化』して会いましょうか。確か異形種は所属していなかったはずですから興味を引けるかもしれません。こちらが能力を制限していれば、本気で交渉する姿勢だと示すことができます」

「えー……確かに能力値も下がるし特殊能力もいくらかは使えなくなりますけど」

 

はっはっはと愉快気に笑う目の前の男性アバターをにらむ様にしつつモモンガはため息をついた。

そう、現在ぷにっと萌えは『人化』スキルを使用しているのだ。

美男子だがどこか胡散臭い、油断ならない雰囲気をまとったアバターでぷにっと萌えのイメージによく合っていた。

 

「あなたはいいかもしれませんが、私はあんまり使いたくないんですよね……」

「まあまあ、ルールを決めたのはモモンガさんじゃないですか」

「こうなるって分かってたら、あの時、あんな事言いませんでしたよ」

 

過去の自分を恨みつつモモンガはもう一度大きなため息をついた。

 

 

*   *   *

 

 

ワールド・サーチャーズの拠点「名も無き図書館」は拠点としては下から2番目のサイズである。

さほど広くない内部の大半が資料室が占められ、わずかに分析室や展示室などがある冒険家たちの拠点であった。

 

モモンガとぷにっと萌えは入り口から案内役のNPCに先導されつつ進んで行ったが、プレイヤーとほとんどすれ違わなかった。

数日前の自分と重ね、ワールド・サーチャーズの衰退を感じ取ったモモンガは少しばかりこれから交渉を行う目の前のプレイヤーに共感を覚えた。

 

「はじめまして。アインズ・ウール・ゴウン代表。モモンガです」

「こちらこそはじめまして。ワールド・サーチャーズ、ギルドマスター、ワイズマンです」

 

まずはお互いに名乗り軽く握手をする。

ワイズマンは眼鏡をかけた実直そうな人間種のアバターだった。

背は高いがひょろりとしており、これで戦士職だったら詐欺だろうという見た目だ。

モモンガ自身には縁が無いが、きっと学者とかがこんな格好なんだろうと想像するような姿だった。

 

「あの、同盟を申し込みに来てなんですが、他のメンバーがいらっしゃらないようですし都合が悪ければ日を改めますよ?」

 

同席するメンバーもいない中で重大な決断をしなければならないワイズマンを気遣ってのモモンガの発言だったが、ワイズマンは、そしてぷにっと萌えも首をかしげた。

 

「うん? ……ああ、モモンガさんは異形種で、しかも小規模ギルド所属でしたね」

「それがなにか?」

 

なにやら馬鹿にされたような気がしてムッとした声を出したモモンガにワイズマンはすぐに謝罪の言葉を述べた。

 

「ああ、馬鹿にしたように聞こえてしまったなら申し訳ない。ご存知のとおりうちのギルドは探索系を好むメンバーが集まったギルドでして」

「そうですね」

「ほとんどのメンバーにとってこの拠点は資料を置きに来る倉庫であり、過去に収集した情報を参照しに来るだけの場所なんですよ。加えて人間種は街を普通に利用できますので探索中は最前線に近い街に行ってしまいます。最盛期もこの拠点に常駐するようなメンバーは少なかったですね」

「なるほど……」

「おまけに所属人数が多いので全員の意見を統一するというのは難しいのです。何しろ自分こそが新発見をするんだと意気込んだ連中ばかりです。内部で戦闘が起こるようなことは無くとも、メンバー同士がお互いをライバルだと看做していました」

「そういうギルドもあるのですね」

 

一応理解はしていたが自分の世界が狭いことを改めて実感するモモンガ。

 

「ですので極端にギルドに不利益を与えるのでない限り、自分のためにギルドで集めた情報を使うのは全員了解済みなのです。なにしろムスペルの火山攻略中のメンバーがニブルのクエスト情報を拾ってきたりしましたからね」

「ほほう」

「もちろん持ち出し禁止の情報もあります。ワールドアイテム関連はその代表例です。『燃え上がる三眼』の二の舞はごめんですから。レア職業などの情報は条件が折り合えば出せる類の情報です」

「つまりワイズマンさん自身の利益になり、ワールド・サーチャーズに迷惑をかけない条件を提示できれば我々に協力していただける、と考えてよろしいので?」

「ええ、あなたに私を動かすだけの条件が提示できますか?」

 

しばらくモモンガは沈黙し思考する。

そしてワイズマンについて事前にぷにっと萌えから語られたことを思い返す。

 

「……我々が2ch連合とトリニティを倒す、というのはどうです? 我々はそのためにワールド・サーチャーズの知識を欲しています」

「ほう……」

 

ワイズマンとこの会談中ずっと黙っていたぷにっと萌えから驚いたような気配が伝わってきた。

 

「ぷにっとさんがあなたとは『俺の前で隙を見せたお前が悪い』という関係だと言っていました。そんなあなたがぷにっとさんの前で引退するなどと弱音を吐くとは思えません」

 

ワイズマンがこのお喋りめとでも言いたげにぷにっと萌えをにらみ、俺は知らんと言うかのようにぷにっと萌えが顔を背けた。

 

「なんで2ch連合とトリニティを倒したいのかはわかりません。一位になりたいわけではなさそうですし、引退する気だったのは事実でしょう? ぷにっとさんが復帰すると言ったから、わざわざ口にして遠まわしにぷにっとさんが動くように仕向けた。違いますか?」

 

しばらく黙った後、ワイズマンはこらえきれないというように笑った。

 

「くっくっく。これだから人付き合いはやめられないんですよね。あなたのように面白い方に出会えるのだから」

「では?」

「目的が一致しているのですから問題ありません。我々(ワールド・サーチャーズ)が集めた知識を使ってください」

 

改めて握手をしたところで、ふとワイズマンが言った。

 

「しかしアインズ・ウール・ゴウンのマスターは男性だったはずですが、『人化』のアバターは女性を選んだのですね。何か理由でも?」

「あ」

 

交渉に集中して自分がなぜ『人化』スキルを使うのを嫌がっていたのか思い出したモモンガはしどろもどろになりつつ弁明した。

 

「いや、これは、その。『人化』スキルの仕様のせいでして……」

「それだけじゃなく、モモンガさんがルール決めちゃいましたからね」

「ほほう、それは興味深い。人間種には縁の無いスキルですから是非知りたいですな」

 

目を輝かせるワイズマンに、モモンガは何度目になるかわからないため息をついた。




とりあえず同盟締結です。
いまいち自分で納得できていないところもあるので書き直すかもしれません。

とりあえずようやくモモンガさん最強化計画に入れそうです。
長かった。
最強化ついでにアルベドの出番を作れそうです。
モモンガさんにお姫様抱っこしてもらえるはず。わたしがちゃんと書けば。

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