東方夢幻魂歌 完結   作:ラギアz

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真「ねえねえ新作は」
ラ「・・・予想以上に文字数が・・・!」
真「今何文字?」
ラ「1600程度」
真「すくねえな!」
ラ「モンハン、掃除、夢幻の合間にちょくちょく書いてるからね。」
真「どんなの?」
ラ「どんなの、って・・・。うん、夢幻魂歌に似てる気がしなくも無い。」
真「俺とそっちの主人公どっちが強い?」
ラ「・・・うーん、話の進み具合による。最終なら真。途中ならもしかしたら。」
真「うお、強いのな。能力は?」
ラ「言えません。気になったら是非読んでみてね♪」
真「あからさまな宣伝するな!」


第八章第二話「霧雨魔理沙の記憶」

「・・・さあ、行きましょうか。」

紅魔館の玄関。

曇りなのにも関わらず日傘を持って来たレミリア様は、それで自信を覆い隠すようにしながら先頭を歩き始めた。

その後ろに続く咲夜さん、俺。

皆悲しそうに俯いている中、空は空気も読まずに晴れ始めた。

雲の隙間から太陽が覗き、暗かった幻想郷を照らす。

いつもなら喜んでいただろう。でも、この時ばかりは心底邪魔だと感じた。

 

 

親友に裏切られ、大怪我を被い。

この一週間、何も音沙汰が無かったのだけが救いか。

今も永遠亭で寝ているであろう彼女は、果たしてどんな顔をしているだろうか。

 

向日葵の様な、綺麗な笑みを咲かせているだろうか?

森の中に入り、木漏れ日が地面を彩る。

 

霧雨 魔理沙の事を考えている時には、少しばかり不釣り合いな世界になっていた。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「はい、ここよ。」

「ありがとう、優曇華。」

 

永遠亭に着いた俺たちは優曇華に事情を伝え、魔理沙が居ると言う病室にやって来た。

白一色の壁は、やはり魔理沙に似合っていない。

レミリア様がドアノブを掴み、祈る様に目を閉じた。

 

『困っている。』

と八意先生は言っていた。

それがどういう事なのか。

確かめるためにも、そして現実を潔く認めるためにも、俺はしっかり目を開いた。

 

ドアノブが回され、開けられる。

 

白い病室のベッドの上、儚げな木漏れ日を受けて佇んでいるのはーーーーーー

 

 

 

 

「よっ!差し入れなら・・・私はリンゴが好きなんだぜ!」

「「「・・・は・・・?」」」

 

 

 

いつも通りの魔理沙だった。

天真爛漫な笑顔を此方に向け、何故かぐっと親指を立てている。

ひとまず元気な事に安心し、そして優曇華に向き直る。

 

 

「困っているってどういう意味ですか・・・!?」

「元気すぎる!よく食べる!病室は抜け出す!薬は盗んでいく!『盗んでないぜ!借りてるんだ!』うっせえ!他の病室に遊びに行く!暇だ暇だ弾幕しようぜっていつも言う!弾幕は頭脳!戦略よ!『弾幕はパワーだよ!』うっせえ!」

 

優曇華、いや永遠亭に努める人々達の悲痛の叫びを解き放った優曇華は、一通り叫んだあと荒く呼吸をし始めた。

 

「とりあえず、・・・ぜえぜえ。元気よ。・・・ごふっ」

「「「優曇華の方が心配だよ!」」」

 

三人揃って優曇華に突っ込み、咲夜さんは水を取りにはしって部屋を出て行った。

俺とレミリア様は魔理沙に小走りで駆け寄り、話しかける。

 

「魔理沙、傷は大丈夫なの?」

「ああ、ぽっかり空いた穴も塞がったぜ!やっぱ凄いよなあ、永琳って。流石名医(ヤブ医者)だよなあ。」

「何か変な気がしたんだが!?」

 

何故か得意げに話す魔理沙に、レミリア様は何度か躊躇った後、一つの質問を投げかける。

 

 

 

 

 

 

 

「魔理沙・・・・霊夢の事は・・・・どう思ってる?」

 

 

 

 

 

シン、と。

白一色の広い病室が、一瞬で静まり返る。

風がさわさわと落ち葉を騒めかす以外、何も聞こえない。

静寂を打ち消したのは、魔理沙だった。

 

 

 

 

「あーー・・・うー・・・ん・・・。」

 

 

顎に手を当て、首を傾げる魔理沙は何度か首を捻った後ーーーー

訝しむ様に、ぽつりとつぶやいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢ってそもそも誰だ?(、、、、、、、、、、)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本当に、純粋に。

子供が難しい問題を分からない、と言って放棄する様な時の眼。

何も知らないのか。

覚えていないのか。

 

レミリア様は少しの間その紅い瞳を見開き、俺は何も言えずにただ何処を見ていいか分からなかった。

それほどまでに、衝撃的な言葉。

時が止まったかのように動かない俺達の沈黙を、真っ先に終わらせたのはレミリア様だった。

 

 

「・・・そう。・・・変な事聞いて悪かったわね、魔理沙。・・・・じゃあそろそろお暇させて貰おうかしら。」

「えー?もう行っちゃうのかー?もっと話そうぜ。」

「私はあんたみたいに暇じゃないの!」

 

びし!っと指を立てて強く言い放ったレミリア様は、そのまま笑顔で呟いた。

 

「次は林檎を持ってくるわね。・・・お大事に、魔理沙。」

「じゃあね、魔理沙。」

 

「おう!真もレミリアも咲夜もまたなー!」

 

来た時と同じように元気に手を振る魔理沙は、何も可笑しい所が無い。

落ち着いた優曇華と共に病室を出て、10mくらい歩いたところでーーーーー

 

ドゴォオンンッッ!!

 

急にレミリア様が壁に手を打ち付け、鈍い音を廊下に響かせた。

それでも、咎めるものは誰も居ない。

優曇華でさえも、唇を噛みしめていた。

ぽつぽつ、独り言としか聞こえないような音量で、優曇華が話し始める。

 

 

「・・・目覚めたときからああだった。私の狂気を使っても元に戻らない。・・・余程、ショックだったのね。体とか、表面上の傷は幾らでも治せるわ。・・・でも、心の・・・深い傷は、本人以外干渉できないのよ・・・。」

 

 

悔しそうに、己の無力さを呪うかのように。

段々語気を強めた優曇華の呟きは、諦めで終わった。

 

ギリっと歯を食いしばる音が聞こえる。

レミリア様が赤い瞳に黒が入り、犬歯が剥き出しになっているまま呟いた。

 

「許さない。八雲紫・・・貴様だけは・・・・っ!!」

 

震えるほど強く握りしめられた拳からは、鮮やかな鮮血が滴っていた。

それでも運命は変わる事が無く。

彼らが何をしないでも時は過ぎて行く。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

レミリア達が見舞いに来た、その翌日。

朝日が病室の窓から魔理沙を照らした時、彼女は体をほぐしながら呟いた。

 

 

「・・・そろそろかな。」


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