東方夢幻魂歌 完結   作:ラギアz

46 / 163
どうも!ラギアです!
天子可愛い・・・。
ふう、この先が分かっていても辛いもんですな。
では、どうぞ!


第五章第八話「ごめんね」

空から落ちてきた男は、変貌する俺を見て警戒心を強める。

短剣に妖力が付与され、紫色に光始めた。

ドンっ!と地面に着地した男は、短剣を俺に突き付けた。

 

「俺の名前は止! ”止める程度の能力”だ! よろしくうおっ!」

 

ウルサイ。

 

俺は黒と白の霊力を纏った右手を振り上げる。

力も何も入れずに、まるで挨拶するように。

たったそれだけ。

その動作一つで、地面が大きく抉られた。

止との距離はおよそ20m。

抉った後は、30mに及ぶだろう。

手が霊力を纏い、一回り大きくなる。

爪が黒く、鋭利な刃物の様になった。

 

「あぶねえな!今度は、俺から行くぜ!」

止が左手を突き出すと、そこが黄色く光始める。

それと同時に、体が動かなくなった。

幾ら力を入れても、全く動けない。

「お前は動けない。残念、ここで終わり

言葉が途中で途切れる。

何故か?

答えは単純、俺が止を吹き飛ばしたからだ。

大きく振った右手を今度は強く握りしめる。

一回、二回、と軽くジャンプし、俺は一瞬でそこから消えた。

霊夢でも視認できないだろう速さで止に近づいた俺は、握り締めた拳を全力で止に叩きつける。

地面に大きく亀裂が走り、近くにある木はみな風圧によって薙ぎ倒される。

慌てて体を捻り避けた止に向かって、俺は一瞬で20発の蹴りを打ち込んだ。

体を九の字に曲げながら再度吹き飛んだ止は、俺に向かって問う。

 

「何でだ!?何で俺の能力下で動ける!」

「カンタンダヨ。」

俺の口から出るのは、ただただ冷たく、一言一言が鋭い刃物を思わせる。

「オマエノ、ノウリョクヨリ。 オレノ、チカラガツヨカッタ。」

「嘘・・・だろ・・!?」

 

能力。それは、世界の法則、答え、理。

世界に直接干渉する、絶対に破る事の出来ない力。

人が死ぬのと同じように。

時が進むのと同じように。

変えれない、変えてはならない存在。

 

「お前・・・能力は・・・」

 

ルールブレイカー。

 

「”世界の理を破壊する程度の能力”だって言うのか!?」

 

天音 真。

 

 

「イヤ、コイツジタイハ、チガウ。」

「じゃ、じゃあお前は誰なんだ!」

止が焦ったように叫ぶ。

少しづつ後ずさりする止を確実に仕留めれるように、俺は膝を曲げ手をゆっくりと開く。

「オレノ、ナハーーーーーーーー」

次の瞬間。

俺の手は、止の眼前に迫っていた。

そのまま止の頭を握り、力を込める。

 

「・・・・・・・✖✖✖✖ダ。オボエトケ。」

「そんな・・・!お前は死んだはず

 

グジャッ。

 

紅い鮮血が飛び散り、俺の白いシャツを染める。

生を失った妖怪、止はその体を段々と灰に変えていく。

風が吹き、灰を散らした。

俺は自身の体、いや”器”を確かめるように手を開き、握る。

「・・・ヨワイナ。ツカイニクイ。」

そのまま何回か手を握り、開いていると天子が近づいて来た。

 

「真!大丈夫・・・だ・・・った・・・?」

俺は振り返りざま、右手を大きく振った。

天子の胸に、五本の血線が入る。

服が大きく裂け、綺麗な淡雪のような肌が露わになった。

そこに、大量の血が流れゆく。

天子は眼を見開きながらバランスを崩し、倒れ込む。

 

「何、で・・・?」

激痛に顔を顰めながら、天子は口を開く。

 

 

 

「キタナイ、ニンギョウニ。キョウミハ、ナイ。」

 

 

 

俺がそう言い放つと、天子の顔が一瞬驚きに包まれーーーー

 

直後、太陽を思わせるような明るい笑顔を浮かべた。

「そっか。そうだよね。ごめんね?迷惑かけちゃってさ。」

天子は俺の右手を両手で包み込む。

纏っている霊力が天子の手を切り裂くが、全く気にしていない様子で自分の心臓部分に手を持っていく。

 

「ありがとう。何回も助けてくれて。時間、取っちゃったね。ごめんね、ごめんね・・・・。」

天子の瞳には大粒の雫が溜まっていた。

それを手で拭い、天子は再度、大きく笑う。

 

「・・・・本当に、本当にありがとう。・・・頑張ってね。」

天子は目を閉じ、体から力を抜く。

安らかな笑み、というのだろうか。

木々の隙間から除く木漏れ日を浴びて横たわる少女は、一つの絵画のようだった。

 

俺は右手をゆっくりと上げる。

拳を強く握りしめ。

 

全力で、振り下ろした。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。