いやはや、決め台詞って難しい。
特に行き当たりばったり執筆の俺にとっては・・・(笑)
はい、グロいのは作者的に大っ嫌いなので今回は出てきません。
前回、酷かったなあ。
天子は幸せにします。救いのないグロなどは嫌いなので。
・・・ネタバレ待ったなし!
では、どうぞ!
天子は、どんどん森の奥へ歩いていく。
後ろは振りかえらず、前だけ見ていた。
確かに助けてくれたし、ありがたいとも思った。
でも、そこまでだ。
私を助けてくれた人は皆あの傷を見せるだけで遠のいていく。
きっと、あの少年も。
私と歳が近いから、あんな言葉が出てしまったんだ。
感情何ていらない。
私は所詮、人形なのだから。
天子は心の中で呟き、唇を噛みしめる。
「っ!」
握り締めた拳を、近くにあった木に打ち付ける。
ドン!と鈍い音を立て、木が少し揺れ、木の葉が散った。
「おお、恐いねえ。」
「誰!?」
突如、頭上から声が聞こえた。
咄嗟に誰、と言ったが天子はこの声の主を知っていた。
良くお父様と一緒に居る、妖怪の一人。
「おいおい、酷いなあ。俺は”永”だよ。忘れちゃったかい?」
軽く声を掛けた永は、いきなり妖力を放出した。
紫色の光を発し、爆風。
木や草が薙ぎ倒され、その場に居た生き物は逃げまどう。
その場に立ち尽くしていた天子はそれを体全体に喰らい、吹き飛んだ。
響いた轟音は、遠く離れた真の耳にも届くーーーー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「今のは・・・!」
一瞬、とてつもない量の妖力を感じた。
それと同時に、爆発が遠くで起きる。
その方面は。
・・・・天子が、歩いて行った方面だった。
俺はすぐに腰を浮かせ、口を開く。
しかし、そこで止まる。
さっき、天子は迷惑だ、と。
来るんじゃない、と言った。
言葉がまだ頭に残り、俺は足を動かせない。
一歩踏み出せば、駆け出せるだろう。
でも。
一歩目が、踏み出せないのなら・・・。
拳をぐっと握り締めると同時に、もう一度遠くで爆発が起きた。
爆風に乗って、何かが宙に舞っている。
「天子の・・・被り物・・・!!」
迷ってる暇は無い。
ぼろぼろになっている被り物を視界の端に捉えながら、俺は駆け出す。
「バースト!!」
体に霊力が回り始める。
出力、5%。
全速力で森の中へ突っ込み、そのまま大きく跳躍する。
一気に木々を見渡せる程の高さまで言った俺は、木の上に着地。
そのまま上を走り、下を見回す。
一個、更地になっている所があった。
薄く見えるは、一人の男。
そして、快晴の青空を思い浮かばせる綺麗な髪。
天子だ。
俺は膝を曲げ、思いっきり蹴り飛ばす。
木が大きくしなり、細い音をだす。
加速した俺は、男と天子の真ん中に立つように突っ込んだ。
「はいはい、無駄無駄。いくら君が天人だからってさ、大妖怪に勝てる訳ないでしょ!」
永は明るく笑いながら手を叩く。
その正面にある大木に、天子は叩きつけられていた。
顔には生気が無く、瞳は霞んでいる。
しかし永はそれを気にする事も無く、髪をガッと掴んだ。
「ね、諦めよ!そっちのが良いからさっ!さっさとくたばれよ生ゴミ姫♪」
いっそすがすがしい程の笑顔を天子に向ける。
異変に気付いたのは、その直ぐ後だった。
風切り音がする。
それも、かなり高速の物が近づいて来てる・・・!
永は急いで警戒態勢を取る。
しかし、その時にはもう。
拳が自身の頬にのめり込んでいた。
「だあああああああああああああ!!!」
全力の大ぶり。
男の頬に見事ぶつかった拳はその勢いを全て使い、男を数m吹き飛ばした。
骨と骨がぶつかる鈍い音を響かせ、地面を転がった奴は直ぐに立ち上がった。
俺は天子を抱きかかえ、男に向く。
「・・・てめえ、何もんだよ。」
「俺か?俺は・・・。」
ニヤッと笑い、俺は言い放つ。
「天音 真。捕らわれの姫を助ける、ヒーローだ。」
天子の目が驚きによって見開かれ、男はめんどくさそうに首を鳴らす。
「あーはいはい。お遊びは帰ってやってなっ・・・!」
男が加速し、俺の目の前に蹴りが迫る。
俺は天子を抱えたまま跳躍。
蹴りを躱し、お返しにと俺も蹴りを放った。
「なあっ!?」
予想していなかったのか、男は腹に蹴りを喰らい、再度吹き飛んだ。
天子が、今にも消え入りそうな声で尋ねてくる。
「さっき・・・言ったよね・・・!自分の思いで、勝手に行動しないでって・・・!」
抱えられたあま、俺の服をギュッと握る。
「何で来たのよ!さっき見たでしょ!私の醜い傷跡を!何で・・・。どうして、離れて行かないのよ・・・!」
俺を見上げる目には、涙が溜まっていた。
「俺、馬鹿だからさ!」
天子が体を震わせ、更に強く服を握り締めた。
「ただの傷跡だけで、離れて行くとか分かんないし!自分の意思で行動すること”しか”出来ない!」
「天子!お前は確かに傷を負って、逃げてきて!俺が嫌いかもしれない!でも!それは、天子の思いだ!」
「俺が天子を見捨てて良い理由には、ならないんだよ!!!」
天子が俺を見つめ、目から涙を零す。
俺は優しく笑いかけるように告げる。
「例え一人でも。俺は、天子の味方だ。・・・少し、休んでて。」
俺は天子をそこに寝かせる。
顔を両手で抑え、嗚咽を漏らす天子はどうして、と呟いていた。
「たった一人の女の子がそこまで戦ったんだ。生き延びたんだ。」
そろそろ、”二人”になっても。
「後は、黙って俺に任せとけ。」
ーーーーー良いだろう?
男が妖力を溜め終えたのか、拳を振りかざしてきた。
俺も、それに迎えうつように拳を振るう。
紫と薄い青の軌跡を描き、二つは空気を焦がしながらーーーー
轟音。そして、衝突ーーーー!!