本当に身勝手な作者であることをお詫び致します。
申し訳ございません。
前の五章は、パラレルワールド的な作者の気の迷いが起こした物です。
俺にラブコメは早かった・・・!!
妖夢は・・・でて、来ないな。うん。
その変わり絶壁地震少女がでます。
お楽しみに!
最後に、ご迷惑をお掛けしますがこれまでと変わらぬ応援、宜しくお願いします!
では、どうぞ!
第五章第一話「二兎追うものは一兎も得ず」
爛漸苦との激戦後、紅魔館の皆は美鈴以外全員入院していた。
咲夜さんとフランはケガの処置、レミリア様とパチュリーは一応混沌が残ってないかを確認する為。
俺の破壊で負った傷は薬と吸血鬼自慢の回復力により治り、安静と言われているがもう自由に歩き回っている。
俺は粉砕した右腕の治療。
神経と骨と血管がグジャグジャで。かなり危ない状態だったらしい。
医者には、「もう少し自分の体を大事にしなさい。」と言われたが。
ひとまず訪れた平穏。
暫し、これを楽しむとしよう・・・
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「いやー、まさか退院するのに二週間もかかるなんてねー。」
レミリア様が体をぐーっと伸ばしながら嬉しそうに告げる。
幻想郷と言うのは凄い人が沢山いるものだ。
あの医者は能力者。
聞けば、”どんな薬も作れる程度の能力”らしい。
程度で済ませられるのか微妙に思うが、ルールならば仕方がない。
紅魔館の損傷はそんなに酷くなく、美鈴が全て終わらせてくれていた。
咲夜さんが来る前、美鈴がメイドをしていたらしい。
そのおかげで、俺たちは直ぐに日常に戻ることが出来た。
でも、普通に暮らしている様に見えても。
胸の奥には、何を秘めているのか・・・。
俺も。
口には出せない重たいものが、まだ払拭出来ないでいた。
そんな時、俺はレミリア様に呼び出された。
びくびくしながら部屋に入り、後ろ手に扉を閉める。
彼女は珍しく、青空を眺めていた。
克服した太陽の光を浴びながら、流れゆく雲を見つめる。
「・・・あ、来てくれたのね、真。」
くるっと椅子を回転させ、レミリア様は窓を背にして此方を向く。
「何か、御用でしょうか?」
「ふふ、そんなに畏まらなくても良いわ。・・・椅子に座りなさい?」
レミリア様に椅子をすすめられ、素直に座る。
俺が座ったのを確認したレミリア様は、少し笑みを浮かべる。
「この間は、紅魔館を守ってくれてありがとう、真。・・・皆、外側の傷は治って、元気になれたしね。」
そこで一拍置き、もう一度言葉を紡ぎなおす。
「不思議な物ね。目に見えない物の方が治りにくいなんて。・・・皆、内側の傷は癒えてない・・・。まあ、生きていられて、本当に良かった。」
生きていられて。
その言葉に含まれたレミリア様の思いを、俺は肌で感じた。
彼女の瞳は、いつも通りの深紅に染まっている。
でも、どこか深みのある深紅になっている。
底が見えない、深海の様な。
「真、これは私の推測なんだけど・・・貴方、少し責任を感じてない?」
俺の体がびくっと震える。
そして、部屋に閉じこもっていた日、逃げた時の記憶がフラッシュバックする。
断片的に思い出される記憶の数々に、俺は唇を噛んだ。
「走り過ぎると、いつかはコケる。・・・少し、歩いてみたら?」
・・・無理だ。
あの日、あの時動けたのは俺だけ。
もっと、強くなっていれば。強くなければならない。
歩く?
そんなのは、認められない・・・
「・・・まあ、これだけよ。私が言いたいのは。ごめんね、真。時間取っちゃって。」
「いえ、大丈夫です。」
俺は俯いたまま立ち上がり、少し足早にドアへと向かう。
「失礼しました」
ドアを後ろ手に閉め、俺は長い長い廊下を走り始めた。
「・・・周りには、沢山の仲間が居る。真、少し落ち着きなさい・・・」
午後の日差しがレミリアの体を照らす。
少女はそっと目を閉じ、時間の流れに身を任せる。
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「じゃあ、買い物行ってきますー!」
「はーい、気を付けてー!」
俺は厨房に居る咲夜さんに声を掛け、外に出る。
日差しが強く、蝉の声もあって俺の体から汗がぶわっと出る。
目に入りそうな汗を拭い、俺は木陰に入った。
「八咫烏。」
ナイフを投げ、いつもと同じ3m8mの八咫烏を生成する。
今日は、森の中をなるべく通ろう。
そう思いつつ、俺は八咫烏を飛翔させた。
一気に草が飛び散り、風が巻き起こる。
ミーンミンミンミン・・・シャクシャクシャク・・・
蝉時雨とは正にこの事だな、と思いつつ空気を斬りながら低空飛行を続ける。
結構スピードを出してるお蔭か風が体に吹き付け、汗ばむ体を冷やしてくれる。
木陰をなるべく通っているという事もあり、中々涼しい。
木漏れ日を眺めながら、俺は更に速度を上げる。
今日買うのは、主に食材だ。
メモの確認をしつつ、俺は木陰を抜け大空に羽ばたき、人里へ急降下しながら速度を更に上げた。
「毎度お!ありがとな!」
「はーい、また!」
ふう、これで終わりだろうか。
俺は両手一杯に持った紙袋を片手に纏め、メモの確認をする。
・・・うん、後は醤油だけか。
いくら洋風の紅魔館と言えども、醤油と言う世界屈指の調味料には手を出したらしい。
大好評も大好評で、必ず数本ストックしてある。
「あのー、醤油五本下さい。」
「ああ、ちょっと待ってね・・・・・・はいよ!千二百円だ!」
「ありがとうございます!」
ここ、幻想郷では殆どが自家製、産地直送なので物価が非常に安い。
財布を持ってきた俺も助かるし、なによりパチュリーの魔法でいくらでも売るものは手に入る。
紅魔館はかなりお金持ちだ。
俺が醤油を受け取ると、まるでズシ、と聞こえるんじゃないかと言うほどの重量が加算される。
流石に重たい。
が、まさかここでバーストを使う訳には行かないので頑張って持つ。
暖簾をくぐり、人里を出ようと関門に向かおうとした時だ。
誰かが叫び、上を指さした。
「お。おいあれ!」
釣られて俺も上を見上げる。
太陽が眩しいが、上空から降ってきている何かが日光を反射している。
そいつは、それを大きく掲げる。
・・・刀だ!!
少し先を見ると、そこには転んで動けなくなっている子と、もう少し先には赤ちゃんが倒れている。
もう一度、上空で何かが輝く。
大きく、ごつごつした岩が少し離れた赤ちゃんを狙い、刀は倒れている奴を狙っている。
「ッバースト!」
俺は荷物を放り投げ、駆け出す。
距離的に、二人を守ることは不可能。
どちらかを助ければ、恐らくどちらかが死ぬ。
二人の間は13m程。
その子らを助けようとする人はおらず、皆が皆逃げまどっている。
さあ。さあ!
・・・・・・どうする!!